げんぱつのえほん ≪その1≫
こちら と こちら でも 一部がご覧いただけますが36年前に、絵も文も 見よう見まねで つくった 原発のえほん 一冊目の全文を載せてみました。 エネルギー問題をかんがえるげんぱつのえほん(1) 原子力発電所は、便利な 電気といっしょにたくさんの放射性毒物をつくるところです。1976年10月 発行 えとぶん しみずゆりこ この絵本に出てくる主人公たちです。ウラン235が燃えると、その分の【死の灰】ができます原子力とわたしたちの生活について考えてみよう エネルギー不足がさけばれてから、もう久しくなります。それを解消するためにということで、原子力発電所がいくつもつくられました。これからは原子力の時代だともいわれ、原子力発電を中心としたエネルギー政策が何回も発表されました。原子力を中心にすえた社会は、はたして、いわれているほど良いものなのでしょうか? たしかに原子力発電では、石油や石炭より少ないウラン燃料で、べんりな電気をたくさんつくることができます。でも、どんなに最新の設備と技術を用いたとしても、ひとたび原子力発電所が動けば、電気といっしょに大量の 【死の灰】 や 毒性の強い 【プルトニウム】 も できてしまうのです。 ですから、『公害をださない、きれいな原子力発電所』 なんて、世界中のどこをさがしてもないのです。原料の採掘から、精錬、運搬、再処理などにいたるまで、危険がいっぱいの原子力発電所のひとつひとつについて、これから見ていき、日本のエネルギー政策と私たちの生活について考えてみたいと思います。 ウラン238が中性子を吸収してプルトニウムになります原発がうごけば、かならず できる死の灰とプルトニウム 原子力発電の燃料はウランです。ウランにはもえるウラン235と、もえないウラン238とがあります。ウラン235がもえると、それと同じだけの死の灰ができます。たとえば、100万KWの発電所を一年間、稼動させるためには、1トンのウラン235が必要ですから、死の灰も1トンできることになります。 広島上空では、約1kgのウラン235が、瞬間的にもえたといわれていますから、これは、その1000倍もの死の灰の量です。また、同時に、ウラン238の一部が変化して250kgのプルトニウムもつくられます。これは、長崎におとされた原爆(原料はプルトニウム)の50発分にあたります。 原子炉のなかでウラン235に中性子がぶつかると、ふたつの原子核にわかれます。このとき、2個~3個の速度の早い中性子と熱がつくられます。このような現象を 核分裂 といい、あたらしくできた原子核が死の灰です。核分裂でできた中性子を、効率よく利用するために 減速材 で 中性子の速度をおとします。 この中性子をウラン235が吸収して、連鎖反応的に核分裂がくりかえされるわけです。原子力発電のしくみ ― 核分裂は 水の中でおこなわれる 核分裂によってできる熱でタービンをまわして、電気をおこそうとするのが原子力発電です。発電炉にはいろいろな型があります。現在、日本では、イギリス生まれのコールダーホール型発電炉の東海一号炉をのぞいて、アメリカ生まれの軽水炉が用いられています。軽水炉には、沸騰水型(BWR)と 加圧水型(PWR)とがあり、どちらも、減速材と冷却材にふつうの水(軽水)をつかいます。 沸騰水型軽水炉の場合には、燃料棒に接している一次冷却水を沸騰させて蒸気をつくり、その力でタービンをまわし、発電します。加圧水型軽水炉では、原子炉の中が加圧されているため、一次冷却水は沸騰しません。熱せられた一次冷却水が、蒸気発生器の中の水を蒸気にかえ、その力でタービンをまわすのです。どちらも、原子炉の中には うすい金属のサヤでつつまれたウラン燃料棒が、直径約1cm、長さ約4mぐらいの大きさで束にされて、約1万~2万本も挿入されています。この燃料棒の間を、減速材と一次冷却材をかねた水が流れていて、核分裂がおこなわているわけです。 原子力の発電量を今の20倍に!私たちはどこに住めばよいのか これまで、何回も原子力発電所の設置計画がだされ、そのたびに手直しされてきました。その結果、1985年までに4900万KWを開発する計画がたてられていましたが、1976年5月、原子力発電の長期ビジョンの中間報告がまとめられました。 それによると、1995年度には原子力発電の規模が1億2900万KWにされることになっています。現在は、約660万KWですから、20年間で20倍にふやす計画案です。このほかに、1995年度までに、海外に7つのウラン鉱山を開発すること。ウラン濃縮の技術を開発し、1988年から実用化すること。1993年度までに、第二・第三の再処理工場の運転をはじめること。1995年から高速増殖炉の運転をはじめること、などがもりこまれています。 この計画が実行されれば、北海道から九州までの海岸に原子力発電所がたちならび、1億の日本人すべてが放射線の射程距離に入ってしまいます。また、この計画に必要な資金は、原子力発電所の建設費が21兆9000億円、再処理工場などの設備費が2兆4410億円という膨大な金額を想定しています。くり返される 原因不明のままの事故 原子力発電所が原爆のように爆発することは、たぶん、ないだろうといわれています。けれども、死の灰の危険は、原爆よりはるかに多いのです。100万KWのたった一基の発電炉には、核実験によってこれまで地球上にばらまかれたストロンチウム90の約半分が入っています。100万KWというような大型炉は、運転を始めてから日が浅いため、それほどたくさんの死の灰が外にもれるというような大事故はまだおきていません。(1976年当時)けれども、小さな事故はたくさんおこっているのです。 現在、日本の約5倍の原子力発電所が稼動しているアメリカで、事故の報告が、年間、約1400件もあったのに、日本では10件そこそこしかありませんでした。これは、日本の関係者が事故の表面化するのをさけ、もみ消しているためです。その上、日本には、事故の原因を究明する機関がないのです。おなじような事故がくりかえされては、『安全性には問題ない』 と処理されていますが、重要な部分や部品の小事故や、人間のミスなどが重なって、大事故になることが心配されています。空だき事故を防ぐ、緊急炉心冷却装置の有効性は未確認 発電炉が大型化されて、もっとも恐れられている事故が 原子炉の空だきです。原子炉につながっているパイプが破損すると、高温・高圧の冷却水は破損したところから、あっというまに外にでてしまいます。ウラン235は、減速された中性子しか吸収しませんから、減速材の水がなくなってしまえば、連鎖反応は自然に止まります。 けれども水がなくなって、核分裂はおさまっても、炉は空だきの状態となります。死の灰から出る熱で、水が沸騰して吹き出し、炉が空になるからです。溶けてドロドロになった燃料棒は、底にたまって、原子炉の容器や、その土台に穴をあけ、土をとかして、どんどん沈んでいくことが考えられます。アメリカでは、地球の反対側の中国にまでいくかもしれないと冗談めかして、チャイナ・アクシデントと呼んでいます。 このような空だき事故を防ごうというのが、緊急炉心冷却装置(ECCS)です。でも、ECCSの有効性をためすアメリカでの実験は完全に失敗しており、この装置がうまく作動するかどうかは、そのときになってみなければわからないというのが実状です。げんぱつのえほん≪その2≫へ つづきます