げんぱつなんか いらないぞ! ≪その1≫
こちら と こちら で 一部をご覧いただけますが全文を 載せてみました。エネルギー問題を考える(2) げんぱつなんか いらないぞ!こどもたちから 未来をうばい、石油がなくなれば 止まってしまうものそれが 原子力発電です1978年10月 発行、1988年3月 4刷 えとぶん しみずゆりこひろくんが テレビをみていると、おじちゃんたちが こぶしをにぎって かなしそうな 顔をしていました。げんぱつを そんなにつくって 大丈夫? 西暦2000年 ― 政府の計画では、日本に100基近くもの げんぱつ(原子力発電所)がつくられることになっています。そんなにたくさんの げんぱつをつくって、いったい大丈夫だろうか、という私たちの不安をよそに、買収、供応、宣伝費などだけでも、何十億ものお金がばらまかれ、さまざまな手段を使って、計画が強行されています。事故をかくしたり、住民の反対を押し切り、危険性を訴える学者の声を無視してまで、なぜ、げんぱつをつくらなければならないのでしょうか? みなさんと共に、考えていきたいと思います。 初め、原子炉の耐用年数は、30年位といわれていました。けれども、その実態はひどいものです。設備利用率も、運転をはじめて、初めの1~2年は50~60%を保っていますが、すぐに下がりはじめ、5年をすぎると20%位になって、そのまま止まってしまうものもあります。これでは10年も使えるかどうか、あやぶまれており、まもなく【寿命】がきて、日本の各地に、閉鎖された原子炉が続出することになりそうです。 閉鎖された原子炉は、本体も周辺もおびただしい放射能をおびており、炉の中には、放射性毒物がたくさんつまっているため、危険で解体することもできず、コンクリートで固めて、放置しておくほかありません。そして、その土地は、ほぼ半永久的に使えない廃墟となってしまいます。※1978年7月、日本で運転中の げんぱつは 15基です。ほかに、建設中、建設準備中のものが11基あります。これを10年後には50基にふやそうというのが、政府や電力会社の計画です。毒物は たまるばかりで、打つ手なし げんぱつがふえるにつれて、危険な毒物もどんどんたまっていきます。げんぱつ 敷地内には放射性毒物をつめたドラム缶が、毎年、数千本ずつ、すでに全国には何万本もたまっています。行き場のないドラム缶は、倉庫の中に積みあげられていますが、思わぬ災害で、放射能が外にもれだす事故もおこるでしょう。今でも、放射性気体のほとんどや、一部の廃液はうすめられて環境に放出されています。 また、わずか数万分の1gでガンをおこし、簡単に原爆をつくることのできるプルトニウムも、世界中にたまりつつあります。2000年には全世界で、長崎におとされた原爆100万発分ものプルトニウムがたまるということです。裁判官よ、あなたもか!? 住民が国に対して、原子炉の設置許可の取り消しを求めた≪伊方原発訴訟≫の判決が、1978年4月にだされました。私たち国民に対する許容被ばく線量を、年間0.5レムと定めていることは違法ではない、など、国の主張を全面的に認めた判決でした。これだけの放射線を全国民があびると、ガンと遺伝障害が数万人ずつ出ると推測されていますが、『公共』 のためには、それもがまんしてくれというわけです。 裁判では、住民の追及に、国側の学者が答えきれなかったこともたびたびあり、しどろもどろになり、絶句してうつむいてしまい、裁判長に、『病気ですか?』 と たずねられたこともあったそうです。最高裁の介入によって、判決の直前になって裁判長が変えられてしまい、住民側、国側双方のやりとりを、ほとんど見聞きしていない新しい裁判長によって、判決はだされました。※レムとは、放射線が人体に与える影響の度合を示す単位おじちゃんたち どうしたのかな? げんぱつ? げんぱつ? げんぱつ?ママ、げんぱつって なあに?げんぱつっていうのはネ、べんりなでんきはほんのすこししか つくらないで‥ たくさんの毒物を つくるところよ。げんぱつは 石油がなければ動きません テレビでも新聞でも、くり返し宣伝されているので、私たちは、げんぱつがウランを燃やして、新しいエネルギーをうみだすものだと思っていました。ところが、げんぱつは 石油がなければ一基もつくれないし、燃料のウランを掘ることも、運ぶことも、精製することも、濃縮・加工することもできず、石油がなくなると、まもなく止まってしまうものだったのです。 げんぱつ一基つくるのに投入される石油は実に莫大で、ジャンボジェット350~500機分、あるいはりっぱなレンガづくりで、建坪30坪の住宅10万個分にもなるちうことです。(消費者レポート第321号より) ですから、石油のねだんが上がれば、当然、げんぱつのコストも上がるわけで、1973年の石油ショック以降、石油価格の大幅な値上がりにつれて、それ以上に、ウラン価格や、げんぱつ建設費も急上昇し、今では電力会社の人たちでさえ、火力発電より げんぱつの方が割高になると認めているほどです。 また、げんぱつが動けば必ずできるプルトニウム239は、少なくとも、その半減期の10倍、つまり24万年間は 外界から完全に遮断される形で管理しつづけなければなりません。それには、大量の石油やセメント、鉄や鉛などが必要で、そのためにかかるエネルギーは、げんぱつが 耐用期間中にうみだすエネルギーをはるかにこえてしまいます。ですから、プルトニウム以外にも げんぱつがつくりだす死の灰などの管理に必要な分はもちろん、げんぱつ建設に投入される莫大なエネルギーは完全にマイナスになるわけです。 危険な げんぱつでも、多少の電力をつくりだすのかといえば、そうではなく、どんなにがんばっても、つくりだすのは毒物ばかりで、石油を浪費した上、あらたなエネルギーはいっさい、うみださないものだったのです。 ※ 半減期とは、放射性毒物からでる放射能の強さが半分になる時間のこと。 プルトニウムの半減期は、実に2万4000年です。動かなくても、つくることに意義がある? そんなげんぱつの建設がなぜ、つぎつぎと強行されるのでしょうか? 政府はエネルギー危機だといいながら、エネルギー消費を毎年5~10%ずつふやし、10年毎に倍にしていく計画をたてています。そして、そのための景気浮揚策の中核に、げんぱつの建設をおいているのです。莫大なエネルギーを浪費する げんぱつ一基のねだんは約3000億円(1978年当時)だといいます。 現在、建設中、建設準備中のものはあわせて11基ですが、その他に政府は、1978~1979年度中に14基を認可しようという積極姿勢を示しています。これにあわせて、げんぱつ以上に規模も大きく、危険を伴う再処理工場や高速増殖炉、燃料工場などがつくられれば、何十兆円ものお金が動くことになります。 ほとんどの産業が1978年度の設備投資を減らしている中で、電力会社はどこも大幅にふやしています。電力11社の投資額だけでも3兆円をこえる見込みで、全産業の4割近くをしめています。それらの主な投資先が げんぱつになるわけです。けれども、そのげんぱつも、1977年度は故障が相つぎ、修理も長期化したため、史上最低の稼働率を記録しました。そのための損失額は1200億円にもなるということです。しかも、この計算は電力業界自身が行ったもので、1基あたり100億円ともいわれる修理費などを含めると、もっと多額なものになります。 関西電力の美浜1号炉は1974年7月以来、動いていませんし、東京電力の福島原発は3基とも、1977年夏の電力需要のピーク時を含み、7か月間もいっせいに止まってしまいました。つまり、どんなに投資をして、つくってみても動くかどうかわからないのが げんぱつです。その穴埋めをしているのは 私たちの電気料金で、一部の電力会社では、1980年4月以降、いつでも料金値上げできるよう、すでに準備をはじめているということです。げんぱつなんか いらないぞ! ≪その2≫ へ つづきます。