万国の兵士 反戦歌史抄 #2
湾岸戦争時に、テレビはゲーム画面のような映像を流し続けた。きれいな戦争?そんなものあるはずがない。殺され、傷つき、苦しみながら死んでいく人の姿を隠すのに、テレビは大きな役割を果たしていた。抽象化された無関係な死を、どこまで生身の人間の手元に取り戻すことができるのか。「9.11」はニューヨーク市民の眼前で行われた大量殺戮だった。イラク侵略には説得力があるように思わせてしまった。ところが、戦地から帰ってきた遺体に、ベトナム戦争の記憶がよみがえる。なぜ合州国の市民が海外で戦死しなければならないのか。生身の人間の戦死によって、やっと具体的な死が身近に帰ってきたのだ。「世界人類が平和でありますように」自分とは無関係なところで、いくらでも祈ることができる。それではこの戦争は止められない。名指しでブッシュを罵倒し、コケにして、笑いとばすことによって、戦争を止めるのだ。誰かに語りかけるのではない、君に言ってるんだ。私が中学生の時に買ったドノバンのベスト盤に「ユニバーサル・ソルジャー(Universal Soldier)」という曲が入っていた。ずっとドノバンが作った歌だと思いこんでいたが、これは「サークル・ゲーム(The Circle Game)」をヒットさせたバフィー・セントメリーが作った曲である。そういえば、アグネス・チャンのデビュー曲は「サークル・ゲーム」ではなかっただろうか。固有名詞が並ぶ。中学生の僕は、「Japan」が出てきて嬉しかったのだ。万国の兵士たちは、自分たちがそうすれば戦争が終わるのだと思って、戦う。 ♪ And he's fighting for Canada, ♪ he's fighting for France, ♪ he's fighting for the USA, ♪ and he's fighting for the Russians ♪ and he's fighting for Japan, ♪ and he thinks we'll put an end to war this way具体的にいろいろな宗教の名前を挙げているのだと思いこんでいたが、意外なことにイスラム教徒は出てこない。 ♪ He's a Catholic, a Hindu, an atheist, a Jain, ♪ a Buddhist and a Baptist and a Jew ♪ and he knows he shouldn't kill ♪ and he knows he always will ♪ kill you for me my friend and me for you →UNIVERSAL SOLDIER----------------------------------------------I wrote "Universal Soldier" in the basement of The Purple Onion coffee house in Toronto in the early sixties. It's about individual responsibility for war and how the old feudal thinking kills us all. Donovan had a hit with it in 1965.「ユニバーサル・ソルジャー」は60年代初めに、トロントにあるコーヒーハウス、パープル・オニオンの地下で書きました。戦争に対する個人の責任と、古くさい封建的な考え方が私たちみんなをどうやって殺すかということに関する歌です。1965年にドノバンがヒットさせました。---------------------------------------------- →Buffy Sainte-Marie sings "Universal Soldier" (Live, 1970) →Donovan- Universal soldier ♪ He's the universal soldier and he ♪ really is to blame ♪ His orders come from far away no more ♪ They come from him, and you, and me ♪ and brothers can't you see ♪ this is not the way we put an end to war.どんな英雄も、兵士たちがいなければ戦争を続けることができない。兵士よ、銃を捨てて逃げろ。それが本当に戦争を止める方法なのだ。僕がドノバンの歌うこの曲を繰り返し聴いたのは、1971年のことだったろう。それはとても自然な言葉だと思った。 Universal Soldier