某会編~第二章 フュージョン狂時代 覚醒~
おことわり:某会編は、私と友人の間の楽しかった思い出を振り返るという趣旨のものです。他人の思い出なんぞ興味がないという方は、これより先はご覧にならないでください。なお、文中に登場するアーティストはすべて敬称略とさせていただきます。第一章 其の壱からのつづきshk君に貸してもらったCDを早速聴いてみた。当時は、SANYOのダブルラジカセと、弁当箱のような旧式のポータブルCDプレーヤーが、私の音楽鑑賞の環境であった。「音楽、音楽」とこだわる割には、たいしたものは保有していなかった。ちゃんとしたコンポを買ったのは、これからずーっと後のことである。では、思い出のCD、『T-SQUARE F-1GRAND PRIX』を当時の記憶とともに振り返ってみようと思う。#1 GRAND PRIX 作曲:安藤まさひろCDをプレーヤーにセットし、この曲のイントロが始まった瞬間、私は「うおぁぁあ~」と声を上げた。これは中学校の給食時間、昼の校内放送のBGMとしてよくかかっていた曲である。5,6年前の記憶が、ぶわぁぁぁ~~っと蘇ってきた。「これがスクエアかぁ~!」#2 TRUTH 作曲:安藤まさひろ私とインスト音楽に覚醒するキッカケは、スカパラであった。本場ジャマイカのスカがジャズに影響を受けたとのことだったので、その流れでビッグバンドジャズを聴き始め、大学で吹奏学部に入部してからは、モダンジャズのCDを聴きあさっていた。ビバップやらハードバップやらモードやら、はっきり言ってよくわからなかった。しかし、どういうわけか、管楽器、鍵盤楽器、リズム楽器(ドラム、ベース)で演奏されるいわゆる4ビートの音楽と、バンド形態こそ似ているとはいえ、使用楽器もリズムもまるで違う、このバンドの曲を聴きながら、「これもジャズだ」と認識した記憶がある。なぜ、あの時、スクエアとモダンジャズを結び付けてしまったのか、いまだもって謎である。#3 BREEZE AND YOU 作曲:和泉宏隆「この曲もかぁ!」これも聴いたことのある曲だった。爽やかなメロディー。「さわやか~!」という言葉が、このあとshk君と繰り広げられる音楽鑑賞会で頻繁に使われる言葉である。何でもかんでも気に入った曲は、「さわやか!!」で片付ける。ボキャブラリーはなくとも、熱意だけで盛り上がってしまうという某会精神の原型といえるだろう。我々には、根拠だとか、論理的な話など必要ないのだ。#4 IN THE GRID 作曲:安藤まさひろ#5 CELEBRAITION 作曲:安藤まさひろ#6 CRISIS 作曲:安藤まさひろ#7 PRIME 作曲:安藤まさひろ以上の4曲は、聴いたことがない曲だった。しかし、#4はホーンアレンジがかっこよかったし、#6の冒頭のバスドラの「ドッドドドッ」というのが、当時の私にはたまらなかった。バスドラ・・・当時私は、目をかけてもらっていた吹奏学部の先輩から、ヘビメタの洗礼を受けようとしていた。先輩の家で、ライブビデオを見せられた。そこにはバスドラムを2台置いて、ドコドコドコと演奏するガイジンが映っていた。「ホラホラ、ツーバスだよ!スゲーだろ!」「はぁ・・・」何のことだかよくわからなかったが、とにかくバスドラムをドコドコと速く鳴らすテクニックがあるということだけは理解した。「カシオペアみたいにシングルのバスドラでも、こうやってドコドコと鳴らす人もいるんだけど・・・(以下略)」先輩の口からこんな発言もあった。というわけで、このころ覚えたばかりの用語・・・”バスドラ”「おお!これは、あのドコドコってヤツではないかっ!」覚えたばかりのことを発見できたというだけで、私は興奮していた。#5は当時、好きな曲ではなかったが今改めて聞いてみると、このアルバムの中で一番好きな曲かもしれない。#7は、後にまったく違うバージョンでセルフカバーされる曲である。この曲については、次回触れることにしよう。知らない曲ばかりが続いた。こんな感じが最後まで続くようだったら、あのフュージョン狂時代は、やってこなかったことだろう。ところが、次の曲で私は再び叫び声ともため息ともなんともいえない声を発したのだった。#8 GO FOR IT 作曲:安藤まさひろ「こ、これはぁ~っ!」この曲は、何のテレビ番組だっただろうか、まったく思い出せないがとにかく私が見ていたテレビでよく使われていたBGMであった。#4同様、ホーンアレンジがかっこよかった。「ぬぅ!T-SQUAREかぁ・・・」私の頭の中では、ある構想が動き始めていた。#9 EL MIRAGE 作曲:和泉宏隆ボサノバやサンバといったラテン系の音楽も好きだったので、この曲もたまらなかった。「これも確かどこかで聴いたことがあるぞ」頭の中の構想は、より鮮明なものとなってきた。#10 OMENS OF LOVE 作曲:和泉宏隆とても聴きやすい曲だった。のちにEWIを買ってこの曲を真っ先に練習した。演奏もしやすかった。エレクトーン教室の課題曲として、使用されているらしい。中学時代の記憶、当時聞き始めていたモダンジャズとの共通点(テーマ→ソロ回し→テーマ)いろんな演奏技術、さまざまなジャンルの音楽が融合されている、などなど聴き所満載のこの音楽。私は一度聴いただけですっかり、T-SQUAREの虜となっていた。そして、T-SQUAREのCDに埋もれる自分の姿を想像し、身震いしていた。「全部 集めるどーーー!」毎日学校から帰宅したら、まずこのCDを聴いた。カセットにダビングしてさっさとshk君に返却するべきなのだったのだが、劣化した音で聞くのは、もったいない。クリアな音で隅々まで聞きたい・・・。そんな思いがあって、shk君には、「もうちょっと借りててもいい?」と、一週間で返却する予定が、2週間3週間と延長に次ぐ延長で、結局1ヶ月くらい借りていた。私は、興奮冷めやらないまま、このCDの感想・熱い想いをshk君に思い切りぶつけた。彼は黙って聞いていた。「なんなんだ?この男は?」と思っていたかもしれない。ついに返却の日、「いやぁ~長いこと借りちゃって申し訳ない」と私。shk君は笑いながら「こんなに長く借りた人は初めてだよ」と言った。「ももも申し訳ありません・・・」と私。そして、彼は次のように切り出してきた。「タカラジマといういい曲があるんだ」とshk君。「え~~!聴きたい、聴きたい!誰の曲(誰の作曲)?」と私。「作曲、和泉宏隆!」と彼。「聴きたい!聴きたい!」と私。「是非!!」と彼。さらに、shk:「ビッグシティという曲もすごくいいんだ」私:「聴きたい!聴きたい!誰のきょ・・・」shk:「作曲、安藤まさひろ!!」まるで、早押しクイズのような回答だった。彼は高校時代、クイズ研究会だったか同好会に在籍していたらしい。私:「いやぁ~いいねぇ、スクエアは」 shk::「是非!!!」shk:「今度、(スクエアの曲)持ってくわぁ~。アパートどこだっけ?」数日後、彼は私のアパートにやってきた。こうして私とshk君の”フュージョン狂時代”が始まったのである。つづく