『年中行事の報告』

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• 某会編～第五章　再会（後編）

  【おことわり】このブログは、当初、私のごく個人的な音楽的嗜好ついてダラダラ書き綴るというコンセプトで始めましたが、友人との思い出を長々と作文することに快感を覚え始め、２０１６年現在、年に一度開催される「アニソン限定カラオケ大会」の集まり（通称・某会）の歴史を延々と書きなぐり、メンバーである友人たちとの思い出を、再確認するだけのものとなっております。他人の思い出に興味がない方は、この先は読まないでください。前回の続き１９９７年９月。彼らに会うためＪＲ旭川駅に降り立つ。２０１２年に開業となる第４代駅舎の前、まだ高架駅になる前の第３代駅舎だった。どこで彼らと落ち合ったか、どういうルートで歩いたか、全く覚えていない。街中のスガイビル（当時）で、ビリヤード、ボウリング、ゲームセンター、カラオケ、そんなカンジだったと思う。ＳＨＫくんの記憶によれば、我々は学生時代を過ごした旭川市永山の安い焼肉屋が、夕食会場となったそうだ。これもよく覚えていない。Ｎくんのクルマでその焼肉屋に向かったが、学生らしき人で混雑しており、そこをあきらめた記憶がある。それがこの時だったかどうか、わからない。別にどこで食べようがどうでもいいのだが、某会では、大体この会食会場をきっかけとして、一気にヒートアップするのが恒例なのである。では、私がこの日忘れられないこととは何か。そしてそれはなぜか。忘れられないこととは、Ｎくんのアパートにお邪魔して翌日帰るまでのことで、その理由は、その後の私の人生に大きく影響しているからと言っても過言ではないからである。市内で唯一だったアミューズメントビル・スガイビルで、大学時代と同じように遊び、食事をしながら、バカ話で大いに盛り上がり、Ｎくんのアパートがこの日の宿泊場所だった。ＳＨＫくんももちろん一緒である。半年ぶりに会う二人は、仕事を辞めてせいせいしていたのか、とても元気だった。ＳＨＫくんに至っては、学生時代以上だったかもしれない。これには理由があった。彼は、就職した税理士事務所で、有無を言わさず後継者になるためのサバイバル競争を強いられ、社会人生活が始まって早々、精神的にかなりヤラれてしまったというのだ。そんな厳しすぎる現実の前に「心が完全に折れ」、悩みに悩んだ挙句、退社の道を選んだ。ちょうどこの時期は、その悪夢から解放され、その間に蓄積された鬱憤が大爆発し、メラメラと燃え続けていた時期だったそうなのだ。片やＮくん、初めて出社してからわずか数日、「ここは俺の居場所じゃない」と採用された建設会社で、ネーム入りの作業服を渡されるとほぼ同時に、辞職したそうだ。それから約半年、今の彼からはとても考えられないのだが、彼はいわゆる”パチプロ”という身分で生活していた。実家暮らしの私は、親のスネをかじり続けていたし、同じく実家暮らしのＳＨＫくんも、学生時代のバイト代や一時期働いていた頃の蓄えがあった。Ｎくんが、学生時代にバイトしていた姿を見たことはないし、仕事は数日でやめているし、見た目はとてもマジメそうな青年なのに、やってることはカタギと言えるものには程遠かった。ＳＨＫくんは、すぐ仕事を辞めてしまったことで、実家に居ずらい状況だったらしい。そんなわけで、Ｎくんの家に入りびたりの生活だったと振り返る。深夜までテレビゲーム、ＳＨＫくんはそのまま泊まり込み、朝になるとＮくんがパチンコ店へ”出社”。留守を預かる（といってもそのまま寝てるだけの）ＳＨＫくんは、Ｎくんの家に来た新聞の勧誘員がくると、このようにして断ったそうだ。勧誘員：「新聞とっていただけないでしょうか」ＳＨＫ：「私はここの住人ではありません。ここの住人はたぶん新聞を読みません。」勧誘員：「？？？」（退場）そんなおかしなエピソードもあったが、Nくんがその正反対の厳しい現実にさらされているのもまた事実だった。毎晩のように開催されるＮくんとＳＨＫくんによるアルコール抜きの宴は、立派なアパートではないから、薄い壁の向こう側に住んでいる隣人にとって、迷惑千万であることは言うまでもない。帰宅したら、クルマにキズをつけらていたとか、タイヤに穴をあけられていたとか、そういったトラブルがあったという。また、Ｎくんの実家から「早く帰ってこい」という催促の電話がかかってくるのを、ＳＨＫくんは目撃している。隣人とのトラブル、まともに働いていないという”うしろめたさ”に、Ｎくんはさぞ悩んでいたのだろう。街中でヘラヘラ笑い楽しんでいた表情が、アパートに帰ってくるなり一変し、さっきまでの笑顔が突然影を潜めた。まるで突然黒く暗い曇がかかったような具合だった。私は、彼の部屋に入って、なんともいえない陰鬱な空気に支配されているようなものを感じ、なにかしら恐怖を覚えた。２Ｋのアパートで、台所がある南側と思われる部屋には、自転車が格納してあり、それ以外はゴミの山だった。居住部屋には、テレビとせんべい布団とセガサターンしかなかった。しかしそんな中で、ひときわ怪しげな光を放っているものがあった。ＳＨＫくんの大きな二つの目である。彼は、まるでこの部屋に充満する負の生気を食い物にして成長し続ける怪物のような目をしていた。その一方で、Ｎくんは見た目こそやつれているわけではないが、精神的に衰弱しているのは明らかだった。もう私は訳が分からなくなった。私は、公務員試験を突破し、おそらく次年度から始まるであろう社会人生活の前にして、”最後の学生気分”を存分に楽しむべく、旭川を再び訪れただけだった。ほんの軽い気持ちだった。不真面目な学生生活を共にした悪友二人と、二度と戻ってこない青春時代を懐かしむという、ちょっとした”息抜き”のつもりだったのである。しかし、眼前に広がるのは”厳しい現実”であり、癒されるはずのない”現実逃避”という空間に私はどっぷりとつかっているのだった。もっと厄介なのは、私がこの空気・空間を、強烈なほど肯定的に受け入れていることだった。Ｎくんには失礼な話だが、こんな生活は精神衛生的にもよくないし、いつまでも続かない。私は御免である。でも、心のどこかでこんな生活を渇望している自分がいるということも否定できなかった。そして、現実にここで英気を養っているＳＨＫくんが、たまらなくうらやましくもあった。こんなところで英気を養っているのは間違っているのではないか。でもうらやましい。この先私は、世間的に至極まっとうな生活をしていたとしても、心の奥底ではこういうものを求めつづけることになるのではないかという、複雑な心境に陥った。この気持ちを、どう表現したらよいかわからなかったのだろう。「オレたち、結婚できねぇ」と私はつぶやいたと記憶している。これから５年後、私は結婚し２人の子供をもうけた。マイホームを建て、世間一般的には”まっとうな人生”といえるだろう。しかしながら、こういう人生だけでは私は息が詰まってしまって、本当の意味で生きてはいけない。表向きにはマジメであっても、たまには陰でコソコソとこういったダメダメな時間を過ごすことこそが、本当の私の生き方なのだと確信する。季節の変わり目、一晩Ｎくんの家で過ごしただけだったが、喘息になりかけるほどカゼをこじらせてしまった。帰り道はどうだったか、それもよく覚えていない。とにかく、Ｎくんのアパートで過ごしたわずか数時間の記憶だけが、鮮明に残っているだけなのである。劇的な再会ではなかった。ただ、何か心に引っかかってとれない事だけは間違いなかった。そういったわだかまりを抱えたまま、私の社会人生活はスタートしてしまった。

  September 25, 2016

• 某会編～第二十回大会～

  大学を卒業し、Ｎくん、ＳＨＫくんの両氏に会うため、旭川駅に降り立ったあの日から１８年半が経過した。２０１６年５月７日（土）、某会は第２０回大会という節目の時を迎えた。あの日、つまり第０回大会を含めると、今回が通算２１回目となる。実は昨年９月、２０１６年現在、旭川市内のアマチュアバンドで暗躍活躍するＳＨＫくんが、ライブを行うということで、”事前打ち合わせ”として、我々３人は「旭川食べマルシェ」という地元のグルメ祭り会場に集結したのだった。「雪が降る前には、（カラオケ）やるぞ！」と意気込んていたのだが、Ｎくんの持病である腰痛が悪化し、その後、ＳＨＫくんの家族の体調やら、私の引っ越しやらで、互いになかなか日程調整ができず、いつのまにか年が明け、あっという間に春になってしまった。第二十回大会の集合場所は、秋に閉店となる旭川西武デパートであった。集合時間の１１：００、ほぼ定刻どおりにＳＨＫくんと私は、集合場所の９階・三省堂書店に到着。留萌市の自宅から車で駆けつけるＮくんから、「ちょっと遅れるかも・・・」というメールを受信していたので、我々はいったん外に出ることにした。２００８年、３年半のブランクを経て久々の某会が大復活を遂げようとしていたとき、Ｎくんは開催日を一日間違え、我々は３時間以上も待ちぼうけを喰らった。私は、その時の記憶をどうしても拭い去ることができず、彼からは、「”ちょっと”遅れるかも・・・」というメールが送られてきたのにも関わらず、「３０分遅れはカタイな・・・」と、たかをくくって集合場所から離れてしまった。私の予想は見事に外れ、ＳＨＫくんと旭川西武を出て間もなくして、Ｎくんから連絡が入る。慌てて元の集合場所に戻り、昨年９月以来、３人が顔を合わせることとなった。まずは歩きながら、Ｎくんがおもむろに前髪をかき上げ、生え際を指さしながら「ココがちょっとヤバくなってきたよｗｗｗ」と切り出す。ＳＨＫくんは、「白髪がひどくなってきたから、白髪染めを使ったら頭皮に赤い斑点ができてきて、（白髪染めを）やめたんだ」と返す。私も、「陰○に白髪を発見し・・・」とカミングアウトしようと思ったが、真昼間なので自粛した。当初予定していた旭川西武のレストランは、いいお値段の割にはボリュームが少ないとの情報を、ＳＨＫくんから聞き、薄毛の悩みを打ち明けたＮくんと、○毛の悩みを打ち明けられなかった私が、「それはちょっと（物足りない）な～」と口をそろえる。しかしこれは、気持ちだけ２０代前半の、４０過ぎのオジサンたちの悪あがきにすぎない。結局我々３人は、旭川駅前のイオンのレストラン街へと向かった。おなかも空いてきて、店選びにさんざん悩んだ挙句、「五穀」という釜飯の店に入る。メニューを見て、再びどれにしようか迷いに迷い、ようやく決まってオーダー。Ｎくんは金目鯛の焼き魚定食（五穀米釜飯付）、ＳＨＫくんはてんぷら定食と宣言していながら、土壇場でデミとんかつ釜飯定食にチェンジ（ビール付）、私は鯛釜飯定食とそれぞれ注文。３人集まっては、当時３８０円の学食のカツカレーを飽きもせず、毎回のように食べていたころと比べ、あれから２０年たった今、注文の品はすっかり大人そのものである。ただし、食事中の会話の内容は、相変わらず中学生以下であることを、断っておかねばなるまい。ペロリと平らげた後は、デザートタイムということで、先ほどランチを断念したレストラン（カフェ）に行こうとしたが、３人とも胃袋は年相応であり、すっかりおなかがいっぱいになってしまったので、おとなしく本日のメインイベント会場であるいつものカラオケボックスへと足を運んだ。１３：１３、シダックス旭川３条店に入店。まずは、３人着席し一息つく。いつもより静かにスタートしたかに見えたカラオケ大会だった。「（受付で頼んだ）飲み物が来てから・・・」そんなカンジで、３人ともまずはおとなしくしていたのだが、いざ曲を入力し始めると、空気がガラリと変わるいつもの某会の様相を呈してきた。以前は、Youtubeで何度も繰り返し再生をしながら、ＪＯＹＳＯＵＮＤや歌詞タイムといったページで、目を皿のようにしてパソコンの画面とにらめっこしていたものだったが、前回は前々回からの延長ということで、あまり準備をしていかなかった。しかしこれがかえって功を奏し、地獄の長丁場を楽しく乗り切ることができた。今回はさらに準備をしていなかった。といっても、最近見始めたテレビドラマ「アオイホノオ」で登場する古いアニメ映像を参考に、序盤の選曲にはさほど困らなかった。１曲目「カムヒア！ダイターン３」で、『ワンツースリー！』と私が叫ぶと、ＳＨＫくんが、「機動刑事ジバン」で、『ジバーン！　ジバーン！』とつなぎ、Ｎくんが、「ぼくらのマジンガーＺ］で、『マジンガーゼーーーット！』と応える。ＳＨＫくんが弾けた歌を歌い始めると、Ｎくんが別の角度から飛び道具を繰り出し、負けじと私が必死に喰らいつく。こういった応酬が、エンドレスで終了時間まで延々と繰り返される。まさにジャズで言うところの「コール＆レスポンス」。私にとっては、年に一度の壮大なるジャムセッションなのである。腰痛という持病を抱えており、体調面では一番ハンデを負っているハズのＮくんなのだが、先陣を切って激しい曲にトライし、苦悶の表情と巨体をくねらせ声を絞り出すその姿に、私とＳＨＫくんはいつも圧倒されている。やはり今回においても、いつもの展開であった。なにせ、今日のＮくんの第一声は、「留萌から運転しながら練習をしてきたよ」というものだったのだ。「龍角散のど飴」も持参し、盤石の態勢である。３人の中では、いつもアタマひとつ飛び出しているカタチで攻防は繰り広げられるのであった。彼に遅れを取るわけにはいかない私とＳＨＫくんは、いつもなら終盤で歌う曲を、早い段階で出さざるを得なくなった。私は、２巡目以降「誰がために」（サイボーグ００７ＯＰ）、「炎のさだめ」（装甲騎兵ボトムズＯＰ）と、他の２人のレパートリーを、あえて選曲してみたのだが、この挑発的ともいえる行為をものともせず、ＳＨＫくんは、４巡目にして「高速戦隊ターボレンジャー」、この歌に対しＮくんは「ソルジャードリーム～聖闘士神話～」を熱唱。ＳＨＫくんに至っては、曲の合間・終盤に、異常なまでにノリまくり、さながら”ひとりライブハウス”という新境地を、完全に我がものとしたようだ。防戦一方となった私は、もうアレを出すしかなくなった。７巡目「ガツガツ！！」（トリコＯＰ）これで、ようやく落ち着いた。今大会のスタートダッシュも、いつもと…いやそれ以上に凄まじかったかもしれない。これで流れが止まったわけではない。コール＆レスポンスはまだまだ続いていた。さらに、ただの掛け合いだけでは終わらないのが、長年にわたり培ってきた我々の底力である。コールに対してレスポンスではなく、同じ歌でお返しするのである。漫才に例えるなら、ボケをボケで返すようなモノといったところだろうか。私がＳＨＫくんの得意曲「光速電神アルベガス」を選曲すれば、何も言わずに同じ曲を入力してくるＳＨＫくん。さらに「さらばやさしき日々よ」（太陽の牙ダグラムＯＰ）の重厚なメロディを、私がぶち壊しながら歌えば、今度はＮくんが、「これが本物だ」と言わんばかりに、正統派らしく迫力ある歌声で歌い上げる。こうして、私の挑発に二人とも全く動じることなく、正々堂々と真正面から返してくる。私もＳＨＫくんの「失われた伝説を求めて」（モスピーダＯＰ）に対し、同じ曲で返す。一歩も引かない三つ巴の戦いに、終わりは見えない。しかし、同じ曲のイントロがくりかえし淡々と流れてくると、なぜか大爆笑を誘う。そして奇跡が起こる。１９巡目「ランナー」（超時空要塞マクロスＥＤ）のイントロが、３回続けて流れてきた。『ぼくはもう、追いかけはしない。きみの走る影のあと・・・』それどころか、我々の追いかけっこは、まだまだ続いているではないか・・・。２１巡目の６３曲目にＮくんは「永遠にアムロ」を選曲。この曲をきっかけに、恒例バラード対決に突入する。待ってましたと私。ほかの二人と比較すると、キーが低い私にとって、中低音域で勝負できるいいチャンスなのである。バラーディな曲の低音域は、やや歌いずらそうなＳＨＫくんに対し、Ｎくんはここでも実力を発揮。彼の音域の広さは、相変わらず恐れ入るばかりだ。前述の「アオイホノオ」もそうだったが、今大会を迎えるにあたって、私にはもう一つ刺激された出来事があった。４月２２日、札幌で行われた。本田雅人ＢＡＮＤのライブである。間近で本田雅人の奏でるＳＡＸ、フルートの音色を聴いて、なにかが私の中でインスパイアされた。これは幻想ではない。言葉では表せないのが悔しいのだが、あの息使いとでもいえばよいのだろうか、あの時聴いた音がいつまでも耳に残っており、それに少しでも近づけるような感覚で歌っていたといってもいい。それが最もうまくいったのは、２２巡目「砂の十字架」だった。１０曲続いたバラード対決だったが、Ｎくんの「そろそろ元に戻さんか・・・」という声を聴き、私は２７巡目に「駆けろ！スパイダーマン」を選曲。いささか元に戻しすぎた。この時点で、私はかなりのスタミナ切れを起こしていて、ＳＨＫくんの「戦え！レッドバロン」「ＧＡＩＫＩＮＧ」、Ｎくんの「勇者王誕生！」（ガオガイガーＯＰ）「ジョジョ」に対し、力不足感は否めなかった。なんとか「ゲッターロボ號」で盛り返しを図ったが、Ｎくんがまさかの「Ｔｈｉｓ　ｉｓ　ＡＮＩＭＥＴＡＬ」で今日一日を振り返るという、この期に及んで無謀極まりない荒業に挑戦。見事完全に燃え尽きる。「合体！ゴットグラビオン」を歌い終えたＳＨＫくんは、翌日バンド練習があるためか、深入りせず、私は、前から歌いたかった「力石のテーマ」を歌ったが、ちょっと不完全燃焼のまま終わった。最後に、某会のエンディングが待っている。私が好きな音楽だけで語るのは、伝わりずらいこととは思うのだが、Ｔ－ＳＱＵＡＲＥには「ＴＲＵＴＨ」、ＣＡＳＩＯＰＥＡには「ＡＳＡＹＡＫＥ」、本田雅人バンドなら「ＭＥＧＡＬＩＴＨ」、神保彰ワンマンオーケストラなら「パイレーツ・オブ・カリビアン」といった具合に、ライブには欠かせない曲がある。我々にとっても、この曲は欠かせない。「マクロス」（超時空要塞マクロスＯＰ）この３分足らずの曲を、三者三様思うがままに歌い上げ、今大会におけるカラオケ対決は終了となる。名付けて、『トリプルマクロス』。今回もカンペキに歌い切ることができた。激闘６時間３０分。歌った曲は、延べ９１曲。２年ぶりに、我々は大仕事をやってのけた。昼に入場したため、料金はいつもの半分以下。「こっちのほうが、（安くて）いいね～」ガラガラ声で、声を張り上げる。しかし声になっていない。ＳＨＫくんの家の近くに引っ越してきた私は、昨年末から二人きりの飲み会、「神楽岡会」をこれまで２度開催してきた。今回は、その第３回も兼ねている。スペシャルゲスト・Ｎくんを加え、「５．７通り・ふらりーと」にある新子焼きの店「ぎんねこ」にて、第３回神楽岡会および第２０回某会・反省会が行われた。入店したのが２０時過ぎと遅かったため、ご飯が品切れとのことで、お酒が飲めないＮくんは気の毒であったが、お土産に焼き物を買い、焼きたての肉に舌鼓を打った。徹夜カラオケにこだわりを持っていた我々だったが、互いの体力、次の日からのことを考えると、昼集合、夜解散がベストだろうという意見で一致した。私とＳＨＫくんが、日本酒でいいカンジにほろ酔い加減になり、土産の焼き物が出来上がったところで、我々は店を出た。３人とも１７５センチ前後の背丈なので、とても狭かった。帰りはＮくんが、私とＳＨＫくんをクルマで自宅まで送り届けてくれた。耳がキーーーンとなっている。周りの音がよく聞こえない。なんかヘラヘラしたくなってくる。しかし妻には、いつまでもニヤニヤしている姿など見せてはいられない。私は、また普通の家庭人に戻らなければならないのだ。次の日の朝は、妻とケンカしている夢で目が覚めた。とこからが夢で、どこからが現実なのかわからなくなった。「某会の最後の晩餐は、ここ（かに本家）にしようｗ」「（この会に）最終回はないよ！」あの日、歩きながらそう言い放ったＮくんの言葉が、胸に深く突き刺さった。

  May 11, 2016

• 某会編～第五章　再会（前編）

  【おことわり】このブログは、当初、私のごく個人的な音楽的嗜好ついてダラダラ書き綴るというコンセプトで始めましたが、友人との思い出を長々と作文することに快感を覚え始め、２０１５年現在、年に一度開催される「アニソン限定カラオケ大会」の集まり（通称・某会）の歴史を延々と書きなぐり、メンバーである友人たちとの思い出を、再確認するだけのものとなっております。他人の思い出なんぞに興味がない方は、この先は読まないでください。なおブログタイトルは、文中に登場するshkくん制作の幻のサイトより拝借しました。目次は上記の＜新着記事＞からどうぞ。実家に眠っていた卒業証書を十数年ぶりに発掘するまで、”あの日”の出来事がいつのことだったかすっかり忘れていた。記憶は美化されてしまいがちだが、それはともかくあの日のことは、平成９年３月１９日に起きた出来事であることは間違いない。大学生活最後の日は、数多くの友人たちと過ごすことができた。・・・といっても本当に仲が良かったのは数名で、あとは顔見知り程度の仲だった。大学側主催の謝恩会～ボーリング～カラオケと、３次会まで一緒だったその大所帯の中で、一番仲が良かったshkくんとは、きっと大学卒業後も何かと連絡を取ったり、またいつでも会えるような気がしていた。実際、彼は地元での就職が決まっていた。「旭川にはきっとまた来ることができる・・・」私には、これから続くであろう”お楽しみ”にちょっとワクワクしていた。しかし、それ以外の友人たちとは、誰ひとりとしてまた会えるような気はしなかった。shkくんの次に付き合いがあったNくんにしても、旭川に就職したとは聞いていたが、家業を継ぐために、いつかは実家の留萌市に戻ることだろうと思っていた。３次会のカラオケが終わって、たしか永山駅前のマンションに住んでいた別の友人の家に泊めてもらったような記憶もあるのだが、はっきりしない。大学４年に進級する際、大学の近所のアパートから実家に引き上げてしまっており、旭川市内のネットカフェの場所も知らなかったし、ビジネスホテルなどに泊まるほどの経済的な余裕もなかったから、たぶん誰かに泊めてもらったと思うのだが、全然覚えていない。ひょっとしたらその日のうちに実家に帰ったかもしれない。つまりは、私にとってあの日は、”生涯忘れられない一日”というほどでもなかったということである。確かにあの日、カラオケでその場にいあわせた人たちから拍手喝采をいただくという、インパクトのある出来事があったことはあったのだが、それ以外のことはほとんど記憶にない。「あぁ、あの日が自分にとってターニングポイントの一つなのかもしれない」と思い始めたのは、１０年以上も後のことである。大学は卒業したものの、私にはまだ受験生生活が残されていた。公務員試験は卒業から３ヶ月後に始まる。あと３ヶ月、最後の追い込みである。とはいえ私は、高校卒業後の１年間の浪人生活同様、楽しい日々を過ごしていた。公務員予備校の帰り道、ちょっと足を伸ばして中古屋、ＣＤ店に立ち寄り、時には映画を見たり、実に気楽なものだった。試験が始まる少し前のことだったと思うが、私あてにひとつの郵便物が届いた。封筒には見慣れた文字。shkくんの筆跡である。自作のフュージョン・ベスト盤のカセットテープに書いてあった細かい文字が真っ先に思い出された。「なつかしいなぁ」封筒を開けてみると、なんとカセットテープだった。再生してみてさらに驚いた。声の主は、shkくんとNくんだった。そのカセットテープは、ラジオ番組風に始まった。おかしくて、ニヤニヤが止まらない。オープニングのあとは、あの日のカラオケで、最大の盛り上がりを見せた「マクロス」をＢＧＭに二人のフリートークコーナーが始まった。もうおかしくておかしくてたまらなかった。なにをやってんだ、この二人は（爆）その答えは、次のコーナーで明らかになる。もの悲しいキーボードの旋律が流れてきた。shkくんの生演奏である。そして、二人の重大発表が告げられた。なんと、就職から３ヶ月も経たないうちに二人共、無職になっていたのだった。彼らの就職先は、shkくんが確か税理士事務所で、Nくんは確か建設会社。これはいったいどういうことなんだ？！卒業単位ギリギリだったNくんが、パチンコで生計を立てているというのはなんとなく想像がついた。しかし大学在学中に教職員免許まで取得していた堅実なshkくんが、そんなに早く仕事を辞めていたなんて、衝撃的だった。職を失った自分たちのことを「フリーーーーダム！」と叫んでいたふたりは、こともあろうにまもなく公務員受験が始まろうとしている私に向かって、こう呼びかけてきた。「こっちへおいで～　こっちへおいで～」まさに悪魔の囁き。腹筋がネジ切れそうになるくらい笑った。このカセットテープ、永久保存版として家宝にしたいところだったのだが、残念ながら、大学時代に無理して聞いていた洋楽ロックを処分するときと一緒に間違えて捨ててしまったようだ。悔しいの一言に尽きる。shkくんとNくんのゴキゲンなラジオ番組風のカセットテープの後半は、なんだかよくわからないグダグダな内容で終わった。試験前だというのに、またバカ学生モードに戻ってしまいそうだったが、そこはグっとこらえて、平成９年度の公務員試験に臨んだ。５つ願書を出した試験のうち、４つの試験で不合格となり、「こりゃ今年はダメか・・・」と思っていたら、２４歳になった翌日に最後に受験した一次試験の合格通知が届いた。二次試験は簡単な面接だった。緊張はしたが、無事通過。こうして大学卒業から半年後の１９９７年９月、社会人になることが決まった。試験の重圧から解放された私の頭の中は、旭川市にいる彼らのことでいっぱいだった。まずなによりも、あの二人にカセットテープのお礼を、そして無職の二人をちょっと冷やかしに、彼らの元へと向かったのだった。つづく

  October 20, 2014

• 某会編～第四章　起源

  おことわり： 以下の文章は、私とある友人の思い出について長々と綴ったものです。 他人の思い出に興味がない方は、読まないほうが良いです。(文中敬称略)１９９７年３月１９日、学校法人旭川大学卒業式。 無事我々は、４年で卒業することができた。 私が大学４年時に出席した学校行事は、授業を含めてこれで二つ目。 ４月のオリエンテーションと、この卒業式だけだった。 前章で述べたとおり、３年で卒業単位を取得し、実家に引き上げてしまったからだ。 別に希望した職種でもないのに、就活気分を味わいたいがために、始めた就職活動。 面接先の企業へ提出する「在学証明書」を取るため、夏に一度来校したことがあった。shkくんをはじめ、みんな元気だった。あれほど、日本のフュージョンについて熱く語りあっていた、私とshkくんだったが、 少し離れているあいだに、私はすっかり冷めてしまい、shkくんも「実は女性ボーカルモノを・・・」といった具合であった。 「もう（我々は）破門だな」と、ふたりでケラケラ笑った。 先物取引の営業職の採用担当の人に気に入られていたようだが、最後の最後でせっかくの内定を蹴った。 「私には夢がありまして・・・」とか適当なことをヌカしてたら、ムッとした声で「そうか（ガチャリ）」と電話を切られた。そうして上京し兄の家に転がり込んで、CM会社の試験を受験するという無謀すぎる挑戦で玉砕。グズグズしてたら、兄に「目障りだ」と追い出され、旅をしながら北海道に戻ってきた。 青森県の大間からフェリーに乗って、北海道は函館市に上陸。 甲板から北海道が見えてきたとき、頭の中に流れていた曲はフュージョンではなく、 玉置浩二の「田園」という歌だった。 「愛はどこにある　キミはどこにも行けない」なんだか心に染みた。 玉置浩二の故郷は、たしか旭川市永山。はっきりは覚えていないが、津軽海峡の海風に吹かれながら、 大学の仲間たちのことをぼんやりと考えていたと思う。 実家に帰ってきてひと月、頭の中は真っ白だった。とりあえず、札幌の外食チェーン店の店長募集の広告を見て、履歴書を送ったが書類で落とされた。どうしようか考えあぐねていたら、新聞の番組欄の下の方に掲載されていた公務員予備校の広告に目が止まり、電話をかけてみた。 感じの良い女性が対応してくれた。早速学校の窓口を訪ね、やさしく説明してくれたその女性職員の勧めるがままに入校を即決し、当たり前のような顔をして、親に多額の入学金を払わせ１９９６年１１月、高校卒業後以来２度目の予備校生活がスタートした。もうこの時点で、新卒採用という道は絶たれた。 予備校に通い始めて五ヶ月して、再びパッとしなかった青春時代を過ごした地へと足を踏み入れた。 卒業証書を授与され、しっかりと手を握って「がんばって」と声をかけてくれた当時の学長を、 内心冷めた目で見ていた。学校にはなんの愛着もなかったからだ。 卒業証書なんてどうでもよかった。私の中で”黒歴史”とも言ってもいいくらいの４年間だったと、その時は思っていた。 学校主催の謝恩会に参加。ほとんど記憶がない。あとで写真を見せてもらって思い出したのは、となりにshkくんとNくんがいて、 少量のビールでNくんの顔が真っ赤になっていたことくらい。そのあと、「ボーリングに行こう」というグループについて行った。 全く記憶がない。shkくんによると、この謝恩会からゾロゾロとボーリング会場に向かったメンバーに某会の正規メンバーは全員参加していたということだ。ボーリングが終わって、今度はカラオケ。 名残惜しいのか、帰る人はほとんどいなかったのではないだろうか。ここでも某会メンバーは同席していたようだ。かなり広い部屋だったが、すし詰め状態だったような記憶がある。そうして始まったカラオケでは、なんとNくんが主導権を握った。そういえば、大学時代の仲間でカラオケに行ったのはこれが初めてだった。Nくんの歌声を聞くのは、生まれて初めてだったのだ。 歌声を聴いて、一つだけすぐにわかったことがある。 「歌い慣れている」そういえば、不動産業を経営している彼の実家では、賃貸物件のうちスナックがあるということを聞いたことがあった。ここからは私の勝手な想像だが、きっと彼はその店によく父親に連れられ、 父親を含め大人たちの歌を聞き、「歌ってみるか？」なんて誘われて自分でも歌ってみることが あったのだろう。 「息子さん、うまいねえ」なんていう周りの客の声も、あったかもしれない。とにかく、彼はカラオケ初心者ではないことは間違いなかった。 私はというと、高校時代から友人たちとカラオケに行くことは、珍しいことではなかった。 部活動にいた大学一年時もよく行っていた。人前で歌うことに、何の抵抗もなかった。ほとんどの人が、カラオケなんてそっちのけで学生時代最後のひとときを楽しんでいた。 携帯電話なんて普及していない時代だったから、互いの連絡先を書いたメモを交換しあったり それぞれ会話に熱中していた。shkくんもその中にいた。 誰も歌おうとするがいなかったためか、Nくんがマイクを離すことはなかった。 「またかよ～」なんて言いながら聞いたていたのだが、Nくんは実際歌がうまかった。Iくんも当時のことを振り返って、あるときこういったことがあった。 「あの時、Nくんが一番上手かった（酔）」ひとり快調に歌い続けるNくんを見て、根が目立ちたがり屋の私は、ちょっとしたイタズラ心で彼の足を引っ張ってやろうという気がフツフツと湧き始めた。このカラオケボックスの中で、Nくんがカラオケを楽しんでいる空気をなにかちょっとでも変えることができたら・・・彼は、よくカラオケで歌われている歌謡曲や、当時はそんな言葉はなかったがいわゆるJ-POPを披露していた。彼と同じような曲では面白くない。 「これだ・・・」 私が選んだ曲は、 超時空要塞マクロス（’８２）　オープニングテーマ「マクロス」 この曲は、今まで歌ったことなんてなかった。どんなアニメだったかもよく覚えていない。ただ、子供の頃（小学校低学年）、毎週日曜昼と言えば、欠かさずこのアニメをよく見ていた ことだけは覚えている。頭の片隅に残っているあの歌。 ＜たしかこんな感じだったはずだ＞ 私は小学校の頃、学級代表を４年生から毎年務めた。目立ちたかったからである。 中学校ではバスケ部に入部し、真面目に練習に参加した。試合に出て目立ちたかったからである。 高校でも、何か人と違う才能が自分にはないだろうかと必死に考えた。目立ちたかったからである。 大学に入部し、テナーサックスを買って、必死に練習した。上手くなって目立ちたかったからである。しかし、どれも実を結ぶことはなかった。 学級代表の仕事は、ただめんどくさいだけだし、練習に出てるだけではバスケは上手くならない。 才能なんて、自分で見つけるものではない。天から与えられるものだ。ましてや、どこかで買ってくるものでもない。 才能が後発的なものだとしても、それは努力と根性と忍耐力が一体となって初めて生まれてくるものなのだ。 結局、私にはそこまで考える力がなかった。うまくいかないとすぐ諦め、また目新しいものに次から次へと飛びつく・・・ そんなことを繰り返してきた。 ３分足らずの「マクロス」を、私が歌い終えた時、 今まで会話に没頭していたはずの、その場にいた人たちから、拍手喝采の嵐が巻き起こった。 「え？」ウケたことに満足だったが、あそこまでウケるとは思わなかった。あんなに大きな拍手を頂いたのは生涯初だったのだ。 印象的だった２つの表情。これだけは今でも覚えている。まずは、shkくん。大きな目をさらに大きく見開いて、驚きを隠せない様子だった。たぶんshkくんにとって、大学時代を共に過ごしてきた友人の中で、私とつるんでいた時間は、かなりの割合になると思う。しかしこの日まで、一度として歌声を聴く、聴かせるということはなかった。 私と音楽の話で盛り上がっても、インスト音楽一辺倒だったのだから。 彼の高校時代の友人も、相当カラオケが上手だそうで、「あんなふうに歌えたらなあ」とは思っていたそうだ。しかし、こんな事態は想定しているはずがなかっただろう。”事件”、”事故”といってもいいのではないだろうか。 大学時代一番近くにいた友人の一人が歌った曲が、彼にとって思い出深い作品だった「マクロス」だったのだ。 「マクロス」のあとは、一気に流れが変わり、その場に居合わせた者が、子供の頃に見ていたアニメの主題歌で盛り上がるというちょっと変わった雰囲気のカラオケになった。それまで気持ちよく歌い続けていたNくんも、意気込んでアニメソングにトライしたが、 歌いすぎていたせいか、ペースを乱されたせいか、うまく声が出せなくなっていた。 挙げ句の果てには、歌いながら「あーーー！あーーー！」と、発声練習を始める始末。 「うるさいよ」と注意したところ、憮然した表情を浮かべていた。 驚きの顔と少しムっとした顔。そして、大満足のドヤ顔（推定）。この３人で半年後再び顔を合わせることになろうとは、想像すらできなかった。１９９７年３月１９日、某会の歴史の扉がこうして開かれたのであった。

  October 12, 2014

• 某会編～第三章　礎（いしずえ）

  おことわり： 以下の文章は、私とある友人の思い出について長々と綴ったものです。 他人の思い出に興味がない方は、読まないほうが良いです。(文中敬称略)我々３人の奇妙な関係は、１９９４年から本格化してきた。私は、部活動の人間関係に嫌気がさして退部。頼れる友達はshkくんただひとりというとても寂しい状況だった。しかし、例外としてＮくんとはshkくんを介して、何かと一緒にいることが多かった。３人集まってやることといえば、テレビゲーム、ビリヤード、ボーリング。実にパッとしないキャンパスライフであった。当時ハマっていたのは、「ヴァーチャファイター２」である。旭川市永山にあるイオン（当時：サティ）のゲームコーナで、我々は大いに盛り上がった。いつも結果は、Ｎくんの一人勝ち。強すぎる彼に汚い言葉を投げつけては笑い、乱入してきた小中学生に対しても容赦しない彼に大爆笑の連続であった。彼の容貌に似合わず、画面の中のキャラクターの動きは、芸術的だった。そして、ここに２０１４年現在の某会会員である、Ｓくんの存在もあった。彼は、この変な３人組を暖かくアパートに向かい入れ、そしてテレビゲームに熱中していた。Ｓくんの部屋には、私とshkくんが常連客として入り浸り、王者・Ｎくんが時々参戦するという具合だった。つまり、我々３人で修練を積み、王者に挑戦するのである。結果は、惨敗に次ぐ惨敗。おそらく多少は手を抜いていても、その芸術的な動きに我々３人は圧倒され、彼のちょっとハニカミがちな高笑いを聞かされるのであった。そんな彼に我々は、仕返しというにはあまりに残酷非道な一撃を喰らわせたことがある。大学の授業よりもパチスロに情熱を注いでいたＮくんは、我々より単位取得が遅れていた。彼は、我々が２年次に取得した科目を３年次に取得しようとしていた。「そんなの簡単だって」「余裕、余裕」「そんなことより、君の番だよ！」まもなく始まる試験直前、テキストを片手に慌てている彼のアパートで、「桃太郎電鉄」を始めた我々は、これ以上にないほどの邪魔者だった。しかし、いつの間にか一緒に「桃鉄」に興じていたＮくん。試験の結果は・・・「不合格」　　Ｎくん、あの時はホントにすまなかった・・・前章で述べた「フュージョン狂時代」が終焉を迎え始めた頃、大学生活も４年目となり就職活動が始まった。私は、彼らとの関係を断ち切るつもりはなかったが、憧れの「東京暮らし」という今思うと、くだらなすぎる妄想がまた体を侵食し始めていることにも気づかないまま、旭川から札幌の実家に引き上げてしまった。買ったばかりのリクルートスーツに身を固め、札幌の街中を悠々と歩く。ただそれだけで満足していた。就職セミナーに参加し、誰も興味を示さない業種のブースで説明を聞き、簡単に内定をもらった。その頃から就職難と呼ばれる時代であったが、仕事を選ばなければこんなもんだと甘い考えの私は、内定の通知と同時にその会社への入社を断り、東京の兄の家に向かった。目指すはＣＭ会社の就職試験である。一ヶ月ほど兄の家に居候し、試験を受けるも筆記試験で不合格。空港で忙しそうに歩くビジネスマンを見て、急に怖気づき北海道にトボトボ帰った。その頃、shkくんたちは学生生活最後の年を謳歌していた。「バーチャファイター２」に飽きたら今度は、徹夜マージャン。深夜にボーリングをするためわざわざ市外まで車で移動中、交通事故まで起こすというおまけまでついたそうだ。王者・Ｎくんは、「バーチャファイター道北大会４位」という輝かしい成績を残した。ここで特筆すべきは、上位入賞者が皆、攻撃力が高く、私でも使いこなせる簡単な操作で動かすことのできるキャラクターを使っていたのに対して、Ｎくんは、そこをあえて攻撃力も操作性も正反対のキャラクターで勝ち抜いていったことである。卒業単位を３年終了時に全てとってしまった私とshkくんと違ってＮくんは単位取得に忙しい一年を送っていたようだが、無事誰ひとりとして留年することもなく卒業式の日を迎えた。そして某会の起源となる事件が勃発するのだった。

  July 19, 2014

• 某会編～第二章　フュージョン狂時代　絶頂（後編）～

  おことわり：以下の文章は、私とある友人の思い出について長々と綴ったものです。他人の思い出に興味がない方は、読まないほうが良いです。(文中敬称略)１９９５年１２月２２日、ついにその日はやってきた。shkくんとの六本木ピットイン巡礼の旅が始まるのである。旭川空港までのバスの車中、「Ｎくんが滑走路で我々が搭乗する飛行機を妨害しているのではないか」などとおバカ話で盛り上がり、羽田空港に到着。日が暮れる頃だったろうか。宿泊は当時都内に住んでいた兄のアパートであった。兄貴の家に泊まるのは私は、すっかり慣れっ子だったがshkくんはもちろん初めてである。とても緊張していたんじゃなかっただろうか。慣れない長距離移動のためか、彼は西武新宿線の電車の中にカバンを置き忘れてしまった。翌日のライブチケットが入っているというではないか！これは一大事である。駅員に問い合わせたところ、彼のカバンはその電車の終着駅にて無事保護されているとのこと。夜も更けてきて、二人で駅前の食堂で遅い夕食をとった。１２月２３日、「ＪＩＭＳＡＫＵ」ライブ。この数ヶ月前、カシオペアのライブでshkくんが野呂一生の演奏に圧倒され、目の焦点が合わず口をパクパクさせている姿に、吹き出しそうになった私だったが、この日、神保彰の演奏を間近で見て、私はあの時のshkくんと同じようなカンジになったのだった。目を開けているのに神保彰の残像が目の前から消えることなく、口から出てくるのはため息だけである。人は本当に感動すると、こんなふうになってしまうものなのかと驚いた。１２月２４日「ＫＯＲＥＫＡＴＡ　ＳＵＰＥＲ　ＰＲＯＪＥＣＴ」メンバーは是方博邦（g）、難波弘之（kb）、鳴瀬喜博（b）、熊谷徳明（ds）であった。カシオペアのリズム隊を見るのはこの年２度目。「やっぱりスクエアのリズム隊よりもこっちのほうが･･･」と改めて思った。どんな曲をやったか全く覚えていない。しかし、ＭＣも楽しく＜とてもいい＞ライブだった。１２月２７日「須藤満のみなさんのおかげです～オレオレバンドスペシャル～」メンバー多数。ギターが大橋勇だったことは覚えている。知らない曲ばかりでソロが長くてちょっと飽きた。終電の時間が気になってくるライブであった。１２月３０日「Ｔ－ＳＱＵＡＲＥ　ＹＥＡＲＳ　ＥＮＤ　ＳＰＥＣＩＡＬ　’９５」この時のメインイベントは、スクエア。この年３回目のライブ鑑賞である。しかし、一年に３回も見ると流石に・・・あきた。終盤、冬の東京で「夏の蜃気楼」の演奏はとても印象的だった。ライブがない日のことは、あまり良く覚えていない。神田神保町で中古屋めぐりをして、歩き疲れから具合が悪くなったが、夕食に食べた天丼がめちゃくちゃうまかった。自由行動の日ということで別行動をとったときのこと、彼は高田馬場のゲームセンターで、当時流行っていた「バーチャファイター２」というゲームで、見知らぬ都会人相手に次々と勝ち抜いたらしく、待ち合わせ場所にものすごい形相で帰ってきた。周りのギャラリーから「かっこいい」という声が聞こえたそうだ（おそらく幻聴ではｗｗｗ）。旅行直前に買ったレーザーディスク（カシオペアの「ＪＯＩＡ」）をエサに、日中は仕事で不在である兄のアパートで、旭川の私のアパート同様「音楽鑑賞会」を開催。これでもかとばかりに２人きりで中身の濃～～～い時間を過ごした。shkくんは大晦日に旭川へ帰宅。私はたしか年が明けるまで東京でブラブラしていたと思う。今振り返ると、恋人同士でもあるまいし、よくもまぁあんなにベッタリと１０日間もの間、一緒にいたものだと呆れるばかりである。フュージョン狂時代はこの旅行を境にして、熱が冷めていき徐々に収束していった。このあとshkくんとは、一度カシオペアライブに一緒に行ったきりである。フュージョンは、私にとってただ聴くだけのものとなってしまったが、shkくんは、聴くだけでなく演奏家としても鍛錬を重ね、２０１２年現在、アマチュアバンドマンとして、地元で活躍中である。フュージョンに関していえば、我々は違う道を歩むこととなったが、あることがきっかけで＜音楽熱＞が再び燃え上がることとなる。今度は、Ｎくんという強烈な個性も加わって・・・次章では、某会の基盤と言える時期について述べようと思う。

  August 31, 2012

• 某会編～第二章　フュージョン狂時代　絶頂（前編）～

  おことわり：以下の文章は、私とある友人の思い出について長々と綴ったものです。他人の思い出に興味がない方は、読まないほうが良いです。(文中敬称略)１９９５年３月２０日、私は東京在住の兄の部屋にいた。正午近くに起床。テレビをつけるとなにやら異様な雰囲気であった。日本の犯罪史上最悪のテロ事件、「地下鉄サリン事件」が起きたのだ。前年３月に兄に連れて行ってもらった今は亡き「六本木ピットイン」で観たライブをきっかけに私はこの時のとても楽しかった経験に味を占め、再び東京で「ジャズ／フュージョン・ライブハウス巡りの旅」を敢行しようとしていた。当時２１歳、怖いもの知らずというよりただのバカである私は、事件発生による外出自粛など考えるわけがなく、あるときは吉祥寺のライブハウス、またあるときは新宿ピットインへと足を運び、挙句の果てには被害者が多数出た地下鉄六本木駅に降り立ち、聖地・六本木ピットインへと足を運んだ。午後６時過ぎにもかかわらず、六本木駅はガランとしており、数日前の消毒液のにおいがホーム内に充満していた。ある駅で電車を待っていると、「ただいま不審物が発見されました・・・」とアナウンスが流れたが、ざわめきたつホーム内で、私はなぜか『怖い』などという恐怖心が全くなく、妙に冷静だったことを記憶している。自分がどうなってしまうのだろうかとか全く考えていなかった。私は本当にバカそのものであった。このときの私としての収穫としては、六本木で観た「ノブケイン」のライブであった。村上秀一、故・青木智仁などが名前を連ね、ハービーハンコックの「カメレオン」をカバーしたりとにかく「カッコいいおじさんたち」という印象を受けた。帰宅してから、早速shkくんにご報告。「ポンタさんがすげーカッコよかったんだよぅ」音楽的解説などまるでなし。shkくんも「なんじゃそりゃ」という感じだったかもしれないが、私が興奮してしゃべっていたことで、熱意だけは伝わったものとしておきたい。～この興奮をぜひ分かち合いたい～そんな私の想いは、とんでもない提案を彼にぶつけた。「今度いっしょにピットイン行こう！！！」「いいね！！！」この年の前年、１９９４年６月２７日、我々は「T-SQUARE　CONCERT　TOUR　夏の惑星」を札幌市民会館で鑑賞。このときまだ私はフュージョン初心者で、往年の名曲メドレーでも知らない曲が多く、楽しいことは楽しかったのだが、「あぁ、もっと知っておけば、楽しみは倍増するんだろうなぁ」と思った。途中のドラムソロの終盤で舞台が暗転し、メンバーの誰かが登場してきたので、ベースの須藤満と思い込んだ我々は声を合わせ「すとうさーーーん！！！」と大絶叫したところ、ＳＡＸの本田雅人のソロが始まったという恥ずかしすぎる思い出が残ったスクエアライブ初体験であった。１９９５年６月１６日、札幌市ペニーレーン２４にてカシオペア「FRESHNESS　LIVE　'95」を鑑賞。当然ながらメンバーは第二期であるわけだが、第二期といってもドラマーによって次のとおり分類されるだろう。第二期その一：Dr.日山正明在籍時　１９９１～１９９２　同　その二：Dr.熊谷徳明在籍時　１９９３～１９９８　同　その三：Dr.神保彰(サポート)在籍時　１９９９～活動休止までこのときのメンバーは、「その二」ということになる。まず旭川から札幌へ移動する合間にshkくんと「一曲目当てクイズ」をした。新譜の一曲目に違いない！と私。かたやshkくんは新譜の三曲目であると主張。そんな話で盛り上がりながら、ライブ会場に到着。開場前の列の横を、熊谷徳明がスーっと通り過ぎていったことが思い出される。ライブ一曲目には、かなり自信があった私だったが、shkくんが見事正解！さすがカシオペアファン暦は、私より一枚も二枚も上であることを痛感した瞬間だった。前年の反省もあり、ライブに向けて勉強していったおかげで、思う存分楽しめた。我々の前の列には、ファンクラブ会員と思われる集団が陣取っており、相当カシオペアライブに通いつめていたのかテンションが他の客と歴然としていた。キャーキャー騒ぐだけでなく、曲にあわせ腕をヒラヒラさせ踊りだす始末である。「うわっ・・・」ちょっと腰が引けてしまう光景でもあった。しかし、舞台のセンターに位置するリーダー・野呂一生の一言が私の眼前に広がっていたちょっと不快な光景を吹き飛ばしてくれた。「ちょっと、そこうるさいよ」後にも先にも、盛り上がっているオーディエンスに対して、注意するアーティストというのは見たことがないし話にも聞いたことがない。私はこの言動に、心の底から畏敬の念を抱いた。しかし注意されたそのファンクラブ会員衆は「キャーー！！！野呂さんに怒られたぁ～～～（喜）」という感じでますます盛り上がっていた。実にすばらしいライブであった。舞台からかなり近いところで観ることができたことも影響していると思うが、まず野呂一生の演奏に圧倒された。左手の指は、まるるで芋虫が高速でネックの上を這いまわっているようだった。次々と奏でられるフレーズのすべてが、胸に突き刺さってくるような感じだった。その凄まじい演奏で呆然としていたら、向谷実のＭＣが始まる。７０～８０年代風に言うなら、”超ゴキゲン”なＭＣは、演奏同様快調に進行していった。前年に見たスクエアライブ、東京で見た何本かのライブでは見受けられなかった、”面白い！”という言葉以外思い当たらないほどの名司会振りであった。なにかの雑誌で見かけた「別名・司会屋　実」の意味がよーくわかった。鳴瀬喜博が客席に乱入するパフォーマンスを生で観ることができたことに感激し、熊谷徳明のドラムソロにあいた口がふさがらなかった。至近距離で体感したこと、ライブ会場の広さの違いはあるだろうが、カシオペアのリズム隊の迫力は前年に観たスクエアのそれをはるかに超えていた。何かの批評で「カシオペアはライブバンドだ」とあったが、まさにそのとおりだと思った。「いや～～～凄かった～～～」と完全にノックアウトされた私はキーーーーんとなった耳のまま、となりのshkくんに話し掛けようとすると、彼は私以上に打ちのめされており、しきりに瞬きをして目の焦点が怪しかった。どこを見ているかわからない。何も聞いていないのに、彼が「参った・・・参りました」とくりかえしていた。大丈夫かな･･･とちょっと心配になるほどだった。９月、「T-SQUARE　CONCERT　TOUR　WELCOME　TO　THE　ROSE　GARDEN」に足を運ぶ。我々は、５日・旭川市公会堂、６日札幌市民会館と２日連続で見に行った。１９９０年代初頭のバンドブームの頃、姉があるバンドを追いかけて、札幌・帯広と喜び勇んでライブ会場に足を運ぶ姿を見て「バカじゃなかろうか」と軽蔑していたが、それから数年後自分が全く同じことをやっていた。旭川のライブではＮ君も我々に同調し、３人で鑑賞することとなった。なんと座席は一列目！あまりに近すぎて、ちょっと緊張してしまった。Ｎ君は大喜びだった。そのときの彼の満面の笑顔は、なぜかはっきりと覚えている。つい先日そのことをＮ君に聞くと、最初は忘れていたようだったがそのうち思い出したようで「あれは良かったな～」と言っていた。このときのライブで演奏された「ＰＲＩＭＥ　ＴＩＭＥ」という曲がある。８０年代のアルバムに収録されていた「ＰＲＩＭＥ」という曲のリメイクである。企画もののＣＤで「Refreshest」というリメイクされた曲だけで作られたアルバムがあったが、私個人としては、新メンバーで新たに収録された昔の曲の中で、「ＰＲＩＭＥ　ＴＩＭＥ」が一番好きである。旭川～札幌と二夜連続でスクエアライブを満喫し、私のアパートでの”二人音楽鑑賞会”もとどまるところを知らない勢いだった。そして１２月、この年最大のイベントであり、フュージョン狂時代が最高潮に達した”六本木ピットイン・ライブ鑑賞ツアー”がいよいよ始まろうとしていた。つづく

  October 1, 2011

• 某会編～第二章　フュージョン狂時代　隆盛～

  おことわり：以下の文章は、私と友人の昔の思い出を長々と綴ったものです。他人の思い出に興味がない方には、読まないほうが良いです。（文中敬称略)それはある日の夜のことだった。一人暮らしのアパートで、台所を片付けていたときのことだったろうか、よく覚えていないのだが、つけっぱなしにしていたＦＭの番組から、なにやらインスト音楽が流れてきた。「おー！カッコいい曲だな」と思うと同時に、「あれ？どっかで聞いたことあるな」とも思った。『・・・というわけで、カシオペアの曲でした。デビュー当時は、今よりもジャズっぽいというかこういう曲もやってたんですねぇ』とかなんとか、そんな感じで番組は進行していった。「ああ、そうだ。shkくんから聞かせてもらった曲だ」このときＦＭから流れていた曲名は、「ＴＩＭＥ　ＬＩＭＩＴ」shkくんが目をギラリと輝かせて、私の部屋でカシオペアのカセットを持ってきたあの日に聴いた曲だった。この日一番最初に聞いたドラムソロ～ベースソロは、フュージョン初心者の私にとってはあまりに複雑難解だったため、現在使われている言葉を使うと、私はまさに”ドン引き”状態であった。凄い演奏らしいことだけはわかったが、全くわからない。フュージョンというジャンルの音楽がどんなものかようやくわかり始め、中学の頃校内放送で流れていたＴ－ＳＱＵＡＲＥに傾倒していた頃のことである。そんなわけで、カシオペアのリズム隊によるソロ演奏２連発は、当時の私にとってハードルが高すぎた。shkくんが持ってきたそのカセットには、他にも「朝焼け」など私でも耳にしたことがある曲が収録されてはいたが、なにせこのソロ演奏のインパクトが強烈過ぎた。そうした経緯があって、ちょっと敬遠していたカシオペアの音楽だったが、この夜の出来事をキッカケにカシオペアにちょっと興味が沸いてきた。翌日のこと。「昨日の夜にＦＭでカシオペアの『TIME　LIMIT』がかかってさぁ、なんか良かったんだよね。前に聞かせてもらったけど、もう一回聞かせてくれるかな・・・」shkくんにそう伝えると、彼は少し驚いた顔をして、そのあと彼の目はギラリと怪しい光を放った。それからまもなくして、いつものごとく彼が私の部屋にやってきた。これまでも”二人きりの音楽鑑賞会”は何度も開催されていたが、この日は鑑賞会史上最高にハードなものとなった。彼はなんと、当時発売されていたカシオペアの全アルバムをダビングしたカセットを持参してきたのである。学校の講義なんてそっちのけ。我々はひたすらカシオペアを聞きまくった。午前中からスタートし、すべて聞き終わった頃には日が暮れかけていた。彼はあまり多くを語らなかった。しかし彼の熱い視線はなんとなく覚えている。音楽聴きすぎて具合が悪くなるという経験は、後にも先にもあの日だけである。聴き終わって外に出たときに軽いめまいがした記憶がある。夜通しカラオケでバカ騒ぎして、午前５時か６時に店から出たときの感覚に似ているかもしれない。こうして、スクエアのベスト盤に始まり、カシオペアの音楽で意気投合した我々のフュージョン狂時代は、あきれるほど盛り上がることとなった。スクエア一辺倒だった私が、カシオペアにも大きく傾くきっかけとなったのは、「タモリの音楽は世界だ」という音楽番組も大きく影響している。http://www.ab.auone-net.jp/~ky_gm2/tamori94.htm（無断転載）カシオペアについていうと、私は当時のメンバー(第２期)のなかでベースの鳴瀬喜博のライブパフォーマンスが好きだった。しかし、メンバーチェンジ後のこのバンドに対しては賛否両論あるようで、第１期をよく知るファンの中には第２期のカシオペアについての否定的な見解があるらしい。たしかに第１期メンバーによるワールドツアーを記録した「ＪＯＩＡ」という作品を見れば、若かりし日のカシオペアは、第２期とは明らかに違う。私はどちらがいいかというより、第１期と第２期は、まったく”別のバンド”と解釈している。スクエアであれば、当時私はとにかく「本田！」「ホンダ！」「ほんだ！」といった具合であった。１９９１～１９９８年のスクエアこそが”私にとってのスクエア”なのである。２０１１年の現在でもバンドとして存続しているとても息の長いグループではあるが、私のスクエア暦は１９９８年で途絶えたままである。この二つのバンド以外では、渡辺香津美のグループ、村上ポンタ秀一のトリオなど日本のフュージョンバンドを中心に二人で次から次へと聴きあさっていた。演奏の方はというと、ＥＷＩを購入した私だったが、シンセサイザーというものがよくわからず、アンプの代わりにＥＷＩをラジカセに接続して、スクエアのＣＤに合わせてピーピープープーピロピロ吹いては見たものの、shkくんとセッションできるほど上達するわけでもなく、ＥＷＩはさっさと飽きてしまい、音楽は高校時代と変わらず”聴くだけのもの”となってしまった。こうして「カシオペア」が二人の音楽の嗜好における、いわば”最大公約数”的なものとして、フュージョン狂時代が隆盛を極めていくのだが、ここにたどり着くまでの道のりは全く異なる。フュージョン音楽に触れるキッカケで言うと、shkくんは小学生の頃から聞いていたゲームミュージックがそのルーツであり、私の方は、毎日何時間も見ていたテレビ番組、小学校の給食時間、ラジオの深夜番組のＢＧＭがそのルーツなのである。そんな二人が、全く偶然に出会い、ひょんなことから意気投合し、学生時代が終わって別々の道を進むこととなっても、ちょっと照れくさい言い方ではあるが、”終生の友”として現在に至っているわけである。縁とは不思議なものだ。ちなみにこの章のタイトルである『フュージョン狂時代』は１９９５年にカシオペアのキーボード担当である向谷実が発表した著作のタイトルである。どういうわけか、まず私が本屋で見つけ「こんな本があるぞ」とshkくんに貸したところ、彼も私同様大変感銘を受けたようだった。そうして「フュージョン狂時代」は、この年絶頂を迎えることとなるのである。つづく

  September 9, 2011

• 某会編～第二章　フュージョン狂時代　計画変更！～

  おことわり：某会編は、私と友人の間の楽しかった思い出を振り返るという趣旨のものです。他人の思い出なんぞ興味がないという方は、これより先はご覧にならないでください。なお、文中に登場するアーティストはすべて敬称略とさせていただきます。前回のつづき私は六本木ピットインで観た本田雅人と坂田明の演奏に衝撃を受け、数日後、実家へ帰宅してからも興奮が収まらず、自分の楽器（サックス)を自由自在に操りたいという願望は、どんどん膨らんでいった。演奏の基礎を身に付けようと、大学に入学してすぐに入部した吹奏楽部で懸命に練習していたが、なかなか上達せず、頭の中だけで自分の理想とする姿がどんどん膨らんでいくというバブルな日々を送っていた。吹奏楽部はつまらなかった。大学合格してまもなく、ヤマハのテナーサックスを購入し、意気揚揚と入部したが、本当に楽しかったのは最初の一ヶ月くらいだった。たびたび起こる部内のいざこざ、しかし私はそんな部活の中で、誰とでも愛想よく接していたためか、ろくに楽器も弾けないくせに、次年度からの役員候補となっていた。その一方でshkくんとの関係は、どんどん深まっていき、”フュージョン狂時代”は、日々充実していた。しかし、この頃の生活の中心は、まだ部活動にあった。三年次に東京都内の大学へ編入するという計画もあった。shkくんとの付き合いも、２年次終了時には終結する予定だった。そんな矢先、前述の”ピットインショック”が、私を混乱に陥れた。「こんなところ（吹奏楽部)になんかいられるか！辞める！楽器を練習する場所がなくなるのなら、大学にいる意味がない。大学も辞めっちまおう！」部内でモメ事があるたび、兄から電話で「そんなトコ辞めちゃえよ」と再三いわれていたが、踏ん切りをつけることができなかった。部活から抜け出せないほど、ドップリと部内の人間関係にハマってしまっていたのだ。「大学編入まで我慢しよう･･･」と思っていたが、状況は変わった。「計画変更！早く上京して、ライブハウスでバイトしながら、音楽の修行をしよう」実に短絡的な発想である。しかし、今振り返ると「それもアリだったかな･･･」と思ったりもする。今まで自分の足かせとなっていたものすべてを捨てて、全く違う別世界に身を投じてみるのもよかったのではないだろうか。まだ若かったし・・・。当時は演奏家になることしか考えていなかったが、何にも知らずにゼロから初めて、行く行くは何か音楽と関連した仕事に就くことができたとすれば、それはそれで良かったんじゃなかっただろうかと・・・。というわけで、親に退学したいことを告白したが、当然ながら答えは「ＮＯ」。親は私を懸命に説得し、私も結局折れた。それまでの２０年間を捨てる度胸がなかったのだ。私は、幼い頃から父親と同じ「学校の先生になる！」と繰り返していた。私がそう発言すると、父親は喜び、父親の同僚は「よくできた息子さんで･･･」といった反応を見せる。ガキの頃の私は、それがなんとなく快感だったのかもしれない。とんでもないガキである。お題目のごとく、くりかえし「先生になる！先生になる！」と言っていると、なんだか自分が教師になるのは義務であるような感覚に陥り、中学生の頃には、自分が学校の先生になることは、当然の道であると思い込んでいた。しかし、高校に入学する頃から事態は一変する。父親が管理職である教頭試験を受けはじめたのが、事の発端だった。それまで、教師というものは、「生徒あるいは児童を教え育てていく」つまり「教育」こそが教師の職業だと思っていたのだが、父親を見ているとどうやらそれだけではないことに、気づきはじめた。教師同士の人間関係、管理職（教頭・校長）という出世コースに乗るための対策など、教えることだけが教師の仕事ではないということらしい・・・父親の姿からそう感じ取った。「計画変更！」教師を目指すことは、辞めた。大学試験に合格したとき、父親はあまり良い顔をしなかった。私が高校卒業後の浪人一年間、某予備校の「難関私立大学コース」に在籍し、難関私立大学を目指したのだが結果を出せず、２浪する気もなかったので、無名の３流私立大学にとりあえず入学を決めた。合格通知を受理した日、憮然とした表情で「一生懸命勉強して、優等生になれ」と父親は言った。おそらく、こういうことを言いたかったのだろう。「レベルの低い大学なんだから、せめてそこでトップをとるくらい勉強しろ」・・・冗談じゃない。受験勉強が終わって、勉強する気になんかなれるわけがない。当時の私は、全く未知の世界である「聴くだけではない音楽」に早く手を染めてみたかったのだ。私の高校時代にメジャーデビューした、東京スカパラダイスオーケストラのテナーサックス奏者・ＧＡＭＯＵに憧れ、テナーサックスを購入。大学に入学してすぐに吹奏楽部に入部。大学生活が始まり、ソニーロリンズ、ジョンコルトレーンやら、テナー奏者のジャズを手当たり次第に聞いていた。「教職免許を取っておきなさい」という忠告にも、全く耳を貸さなかった。あれは、大学一年の夏休みだったと思う。しつこく教職免許の取得を促す父親に対し、私は断固拒絶した。爽快だった。中学・高校時代、グレるわけでもなく、まじめに学生時代を過ごしていた私。親の言うことに対し、ここまで徹底して「ＮＯ」を貫き通したのは、生まれて初めてだった。それに味を占めた私は、今度は退学希望を親に突きつけた。しかし今度は、見事に返り討ちにあってしまった。別に殴られたとかそういうわけではなく、父親は言葉巧みに私を説き伏せようとし、当時２０歳の私はあっけなく説き伏せられた。私は頭から冷や水を浴びせられたような感じで、札幌の実家から１５０ｋｍ離れた旭川のアパートにとぼとぼと帰った。そうして、ピットインショックによる興奮は一気に冷めていった。さて、これからどうしよう。大学の新学期が始まり、私の大学生活は２年目に突入していた。吹奏楽部には新入部員も入ってきた。なんだか、これから先のことを考えるのが、とてつもなく面倒くさくなってきた。大学編入のこと、音楽の道を模索すること・・・あーめんどくさい！！！「計画変更！」大学編入は辞めた。吹奏楽部も辞める。どうせ親の目が届かないところにいるんだから、親の脛をかじり放題かじって、好き放題にやってやろう！そして私の目の前には、いつもshkくんがいた。フュージョン狂時代が名実共に本格化し、さらに某会の基盤ともいえる世界が形成されようとしていた。つづく追記（2011　2/4）昨日、松原正樹の「ＳＫＹ　ＨＩＧＨ」をＢＧＭに、ｓｈｋくん二人で次回某会のことについて打ち合わせをしているという夢を見た。これこそ「ア　ニ　ソ　ンとフュージョン」今日は一日中気分がよかった。

  February 4, 2011

• 某会編～第二章　フュージョン狂時代　スクエア！！！～

  おことわり：某会編は、私と友人の間の楽しかった思い出を振り返るという趣旨のものです。他人の思い出なんぞ興味がないという方は、これより先はご覧にならないでください。なお、文中に登場するアーティストはすべて敬称略とさせていただきます。前回ののつづきshkくんが私のアパートにやってきた。私は大学3年次に、旭川から東京都内の大学に編入することを考えていたので、部屋の中には必要最小限のものしかなかった。電化製品は、冷蔵庫、テレビ、掃除機、ラジカセ、ポータブルＣＤプレーヤーのみ。じゅうたんも敷かず、引越しに使用したダンボールをそのままＣＤラックとして使っていた。心ここにあらず。「早く北海道から脱出して、大都会・東京で暮らしたい。」それしか頭になかった。そんなとき、私の前にshkくんが現れた。彼は、私が昔からなんとなく耳から入ってきて、記憶に残っていた音楽～T-SQUARE～のことをよく知っているようだった。彼がオススメの「タカラジマ」「ビッグシティ」。どんな曲なんだろう。カセットテープだったかＣＤだったか、shkくんは早速持ってきてくれた。二人きりの音楽鑑賞会が始まった。「タカラジマ」をかける。イントロの最初の２小節で、記憶がぶわ～っと蘇ってきた。「ああ！あれか！」この曲も中学生時代の校内放送のＢＧＭとして使われていたものだった。私は大喜びして、この感激をどうあらわしてよいかわからず、とりあえずshkくんに手を差し伸べガッチリと握手した。そのあとも、T-SQUARE関連の曲などを聴いた。私の知っている曲がかかると、やはりガッチリ握手。これを何度も繰り返した。「もっと、聴かせてくれるかい？」「もちろん！！！」次に来たときは、まず「ビッグシティ」をかける。これもイントロの２小節目でガッチリと握手。同じことを何度も何度も繰り返していると、バカバカしいのを通り越して笑いが止まらなくなってくる。彼はダビングしたカセットに、曲目を細かい字で記入し保有していた。シールでタイトル等を記載してあるのもあった。この几帳面さに「本当に音楽が好きなんだな～」と思った。その次に来たときは「HYPER　BEST」と題しshkくんが作成した、オムニバスのフュージョン曲集のカセットも聞かせてもらった。聴いたことがある曲がかかると･･･以下同文･･･彼は、矩形波倶楽部、S.S.T　BAND、とか私が聴いたこともないバンドの音楽についても熱く語った。どちらのバンドのカセットテープも聞いたが、バンドとしてのまとまりというか、いろいろ聞かせてもらっても私の好みは、「T-SQUAREが一番」で揺るがなかった。矩形波倶楽部の１ｓｔアルバムを聴いたときの記憶は、わりと残っている。彼が初めて買ったCDだったこととか、大変失礼な話ではあるが、古川もとあきの容貌にshkくんと二人で大笑いした。「フュージョンやる人って見た目じゃないんだなぁ」と思った。その次に印象的だったのが、曲によってメンバーが変わるいわゆる”セッションアルバム”だったことである。「へぇ～モダンジャズみたい」そんなことが頭をよぎったような気がする。たしかこのとき、私はリズム隊（ベース＆ドラム担当）に、着目して聞いていた。「あ、これはT-SQUARE(須藤＆則竹）だ。これはカシオペア（櫻井＆神保）か？いいねぇ～」そんな私の姿を見てか、shkくんはまた他のカセットテープを持ってきた。カシオペアだった。shkくんが作成した何作目かの「HYPER　BEST」だったろうか、カシオペアの曲だけで編集されていた。カシオペアについては、日本を代表するフュージョンバンドということしか知らなかった。いつか聴いてみたいとは思っていた。期せずしてそのときがやってきたのだ。どういうわけか、B面から聴き始めることとなった。そのB面の一曲目、「Drum　solo」shkくんのカセットにはそう書かれてあった。ドラムソロ･･･当時私が所属していた大学のサークルは吹奏楽部で、愛想が良かった私は２学年上の先輩に目をかけてもらっていた。その先輩から、ヴァンヘイレンのライブビデオを見せてもらった際に、ガイジンのドラマーによるドラムソロの映像があった。というわけで、ライブの途中に、ドラムソロというコーナーがあるということは知っていた。shkくんと知り合って間もない頃、スカパラのドラマー（青木達之・故人)が好きなんだと話したことがあった。まだフュージョンが、何なのか知らなかったときのことだ。shkくんが持ってきたカセットの収められていたカシオペアのドラマーは、神保彰であった。神保彰･･･この名前も知っていた。なんか凄いテクニックの持ち主らしいということだけ知っていた。さて、ドラムソロが始まった。「・・・え？」今まで聴いたこともない演奏が、ラジカセから流れてきた。これはどう反応してよいのだろう。私は目を見開き、硬直している間にドラムソロが終わった。引き続きラジカセから流れてきたのは、「Bass　solo」「・・・？？？」T-SQUAREの曲の間に短いベースソロが入る曲は、何曲か聞いていたが、こんな長いベースソロを聴くのは初めての体験だった。何がなんだかわからない。私の思考回路が完全にフリーズした。ようやく、リズム楽器による２曲が終わり、普通の曲が始まった。聴いたことある曲もあったのだが、私は最初に聞いた２曲のインパクトが強烈過ぎて、頭の中で、「カシオペア＝ちょっと近寄りがたい音楽」という図式が出来上がってしまった。その後もカシオペアについて熱く語るshkくん。しかし私の耳にはT-SQUAREの音楽の方が、断然聴きやすかった。フュージョン初心者の私には、カシオペアはちょっとハードルが高すぎたのだ。思わず口から出た言葉は「わからん」shkくんは、私の心無いこの言葉を聞いたからか、その後カシオペア関連の話は一切しなくなった。当時の私の好みは、結成時から１９９０年までのT-SQUAREだった。SAXが伊東たけしの時代である。今振り返ると、理由は簡単である。「聴いたことある曲が多いから」ド素人の私でもこれだけは、はっきり断言できるのだが、80年代のスクエアは、安藤、伊東、和泉の3人がバンドの中心だった。若きリズム隊（須藤＆則竹）は、最初は地味だったような気がする。90年代に入り、伊東が脱退。これは、ロックバンドに例えるならボーカルが抜けるのと一緒だ。バンドのイメージもがらりと変わる。スクエアというバンドの看板プレーヤーが、交代したことで離れたファンも少なからずいたことだろう。私が本格的にスクエアを聞き始めたころは、すでにＳＡＸが2代目の本田雅人になっていた。80年代スクエアに夢中だった私は、現在進行形（当時）のスクエアには興味がわかなかった。ある日、shk君が伊東たけし脱退後の１９９３年発表のアルバム「HUMAN」を、大事そうに手に抱えていた。私はそれを見て、「なぜ、伊東たけし脱退後のスクエアがいいんだろう」と思っていた。中学生のころに耳から入ってきた音楽を、改めて、じっくりと、よ～く聞いてみる。私がフュージョンにはまり始めたころは、それが楽しかった。しかしそれは、単なる懐古趣味でしかなかった。私は、７thアルバムの「うち水にRAINBOW」を皮切りに、中古品やら新品やらで、あっという間に１９７８年から１９９０年までのT-SQUAREのアルバムを集めてしまった。そのあとは、脱退した伊東たけしのアルバムを集めはじめた。大学１年の夏休みには、shkくんと札幌の楽器屋に行き、店員がスクエア＆伊東たけしファンだと知ると1時間以上も3人で立ち話したこともあった。その年の秋(１１月)には、札幌での伊東たけしバンドのライブに足を運んだ。生まれてはじめてのフュージョンのライブだったが、ちょっと物足りなかった。アルバムを聴いても、やはり何か物足りない・・・。「！」私はあることに気付いた。このバンドには、「安藤まさひろがいない」「和泉宏隆がいない」私が好きだったのは、80年代スクエアを牽引した安藤～伊東～和泉によるサウンドだったのだ。伊東たけしだけでは、やはり物足りないのだ。’９４年の正月。shkくんに宛てた年賀状には、下手くそな字で、「フュージョン　最高　！」からはじまり、はがきの隅には、「伊東たけしの新アルバム買ったけど、イマイチでした…」というようなことを追伸として書いたはずだ。（shkくん、もし17年前の年賀状があったら確認してほしい）そして、この年賀状から約2か月後、私にとって衝撃的な”事件”が起こる。今は亡き六本木ピットインでのことだった。私は年末年始の郵便局でのバイトで貯めた金を使って、東京に住んでいた兄の家に遊びに行った。兄は私が音楽にハマっていたことを知っていたので、私を六本木ピットインに連れて行ってくれた。余談だが、兄は上京したての頃、以前から東京に住んでいた、いとこにピットインに連れて行ってもらったそうだ。兄と見た生まれて初めてのピットインでのライブは、坂田明バンドだった。フリージャズ。言葉は知っていた。間近で見たその演奏に度肝を抜かれた。見た目は小さなおじさんなのに、演奏が始まるや否や巨大なエネルギーの塊を客席にぶつけてくるような迫力だった。何を演奏しているのかわからない。でもとにかくすごいの一言だった。こうして、兄の家から六本木ピットインへのルートを覚えた私は、雑誌の「ぴあ」を頼りに何か面白そうなライブはないか探した。残念ながらスクエアも伊東たけしのライブもなかった。ところが、六本木ピットインで「和田アキラセッション　ゲスト本田雅人」というライブスケジュールを発見した。「今のスクエアのＳＡＸの人か・・・一見の価値はあるな」shkくんへ良い土産話（orｱﾎｱﾎ自慢話）にもなるかと思い、足を運んだ。なんだか長いイントロが終わり、本田雅人がＥＷＩを演奏し始めた瞬間、私は唖然とした。なにか強力なオーラが、全身から放出されているような感じを受けた。ＥＷＩだけじゃない。ＳＡＸの演奏もすごかった。もちろんスクエアじゃないから、「ＴＲＵＴＨ」を演奏するわけでない。知っている曲など一曲もなかった。それでも私は、本田雅人の演奏にくぎ付けであった。札幌で見た伊東たけしのライブの記憶は、どこかへ吹き飛んで行ってしまった。そうして、その興奮が冷めないうちに、shkくんにそのライブのことを伝えた。「本田さん、すごかったんだよ～」そして、私はメンバーチェンジした時のスクエアのライブアルバム「ＦＡＲＥＷＥＬＬ＆ＷＥＬＣＯＭＥ」をＣＤ店で見つけ購入。ライブでもらったチラシを見て、ファンクラブに即入会するほどの伊東たけしファンだった私が、本田ファンに鞍替えする瞬間でもあった。shkくんとこのアルバムの鑑賞会を開催。私も耳が肥えてきたということだったのだろうか。このアルバムを聴く限り、90年代のスクエアに伊東たけしはちょっとなじめないように思えた。それよりもなによりも本田雅人の加入で、進化していくＴ－ＳＱＵＡＲＥに私は身震いした。ということで、私の好みは80年代スクエアから90年代スクエアへと完全にシフトしたのであった。つづく

  January 28, 2011

• 某会編～第二章　フュージョン狂時代　覚醒～

  おことわり：某会編は、私と友人の間の楽しかった思い出を振り返るという趣旨のものです。他人の思い出なんぞ興味がないという方は、これより先はご覧にならないでください。なお、文中に登場するアーティストはすべて敬称略とさせていただきます。第一章　其の壱からのつづきshk君に貸してもらったＣＤを早速聴いてみた。当時は、ＳＡＮＹＯのダブルラジカセと、弁当箱のような旧式のポータブルＣＤプレーヤーが、私の音楽鑑賞の環境であった。「音楽、音楽」とこだわる割には、たいしたものは保有していなかった。ちゃんとしたコンポを買ったのは、これからずーっと後のことである。では、思い出のＣＤ、『Ｔ－ＳＱＵＡＲＥ　Ｆ－１ＧＲＡＮＤ　ＰＲＩＸ』を当時の記憶とともに振り返ってみようと思う。＃１　GRAND　PRIX　作曲：安藤まさひろＣＤをプレーヤーにセットし、この曲のイントロが始まった瞬間、私は「うおぁぁあ～」と声を上げた。これは中学校の給食時間、昼の校内放送のＢＧＭとしてよくかかっていた曲である。５,６年前の記憶が、ぶわぁぁぁ～～っと蘇ってきた。「これがスクエアかぁ～！」＃２　TRUTH　作曲：安藤まさひろ私とインスト音楽に覚醒するキッカケは、スカパラであった。本場ジャマイカのスカがジャズに影響を受けたとのことだったので、その流れでビッグバンドジャズを聴き始め、大学で吹奏学部に入部してからは、モダンジャズのＣＤを聴きあさっていた。ビバップやらハードバップやらモードやら、はっきり言ってよくわからなかった。しかし、どういうわけか、管楽器、鍵盤楽器、リズム楽器（ドラム、ベース）で演奏されるいわゆる４ビートの音楽と、バンド形態こそ似ているとはいえ、使用楽器もリズムもまるで違う、このバンドの曲を聴きながら、「これもジャズだ」と認識した記憶がある。なぜ、あの時、スクエアとモダンジャズを結び付けてしまったのか、いまだもって謎である。＃３　BREEZE　AND　YOU　作曲：和泉宏隆「この曲もかぁ！」これも聴いたことのある曲だった。爽やかなメロディー。「さわやか～！」という言葉が、このあとshk君と繰り広げられる音楽鑑賞会で頻繁に使われる言葉である。何でもかんでも気に入った曲は、「さわやか！！」で片付ける。ボキャブラリーはなくとも、熱意だけで盛り上がってしまうという某会精神の原型といえるだろう。我々には、根拠だとか、論理的な話など必要ないのだ。＃４　IN　THE　GRID　作曲：安藤まさひろ＃５　CELEBRAITION　作曲：安藤まさひろ＃６　CRISIS　作曲：安藤まさひろ＃７　PRIME　作曲：安藤まさひろ以上の４曲は、聴いたことがない曲だった。しかし、＃４はホーンアレンジがかっこよかったし、＃６の冒頭のバスドラの「ドッドドドッ」というのが、当時の私にはたまらなかった。バスドラ・・・当時私は、目をかけてもらっていた吹奏学部の先輩から、ヘビメタの洗礼を受けようとしていた。先輩の家で、ライブビデオを見せられた。そこにはバスドラムを２台置いて、ドコドコドコと演奏するガイジンが映っていた。「ホラホラ、ツーバスだよ！スゲーだろ！」「はぁ・・・」何のことだかよくわからなかったが、とにかくバスドラムをドコドコと速く鳴らすテクニックがあるということだけは理解した。「カシオペアみたいにシングルのバスドラでも、こうやってドコドコと鳴らす人もいるんだけど･･･（以下略）」先輩の口からこんな発言もあった。というわけで、このころ覚えたばかりの用語･･･”バスドラ”「おお！これは、あのドコドコってヤツではないかっ！」覚えたばかりのことを発見できたというだけで、私は興奮していた。＃５は当時、好きな曲ではなかったが今改めて聞いてみると、このアルバムの中で一番好きな曲かもしれない。＃７は、後にまったく違うバージョンでセルフカバーされる曲である。この曲については、次回触れることにしよう。知らない曲ばかりが続いた。こんな感じが最後まで続くようだったら、あのフュージョン狂時代は、やってこなかったことだろう。ところが、次の曲で私は再び叫び声ともため息ともなんともいえない声を発したのだった。＃８　GO　FOR　IT　作曲:安藤まさひろ「こ、これはぁ～っ！」この曲は、何のテレビ番組だっただろうか、まったく思い出せないがとにかく私が見ていたテレビでよく使われていたＢＧＭであった。＃４同様、ホーンアレンジがかっこよかった。「ぬぅ！Ｔ－ＳＱＵＡＲＥかぁ・・・」私の頭の中では、ある構想が動き始めていた。＃９　EL　MIRAGE　作曲：和泉宏隆ボサノバやサンバといったラテン系の音楽も好きだったので、この曲もたまらなかった。「これも確かどこかで聴いたことがあるぞ」頭の中の構想は、より鮮明なものとなってきた。＃１０　OMENS　OF　LOVE　作曲：和泉宏隆とても聴きやすい曲だった。のちにＥＷＩを買ってこの曲を真っ先に練習した。演奏もしやすかった。エレクトーン教室の課題曲として、使用されているらしい。中学時代の記憶、当時聞き始めていたモダンジャズとの共通点（テーマ→ソロ回し→テーマ）いろんな演奏技術、さまざまなジャンルの音楽が融合されている、などなど聴き所満載のこの音楽。私は一度聴いただけですっかり、Ｔ－ＳＱＵＡＲＥの虜となっていた。そして、Ｔ－ＳＱＵＡＲＥのＣＤに埋もれる自分の姿を想像し、身震いしていた。「全部　集めるどーーー！」毎日学校から帰宅したら、まずこのＣＤを聴いた。カセットにダビングしてさっさとshk君に返却するべきなのだったのだが、劣化した音で聞くのは、もったいない。クリアな音で隅々まで聞きたい・・・。そんな思いがあって、shk君には、「もうちょっと借りててもいい？」と、一週間で返却する予定が、２週間３週間と延長に次ぐ延長で、結局１ヶ月くらい借りていた。私は、興奮冷めやらないまま、このＣＤの感想・熱い想いをshk君に思い切りぶつけた。彼は黙って聞いていた。「なんなんだ？この男は？」と思っていたかもしれない。ついに返却の日、「いやぁ～長いこと借りちゃって申し訳ない」と私。shk君は笑いながら「こんなに長く借りた人は初めてだよ」と言った。「ももも申し訳ありません・・・」と私。そして、彼は次のように切り出してきた。「タカラジマといういい曲があるんだ」とshk君。「え～～！聴きたい、聴きたい！誰の曲（誰の作曲）？」と私。「作曲、和泉宏隆！」と彼。「聴きたい！聴きたい！」と私。「是非！！」と彼。さらに、shk：「ビッグシティという曲もすごくいいんだ」私：「聴きたい！聴きたい！誰のきょ･･･」shk：「作曲、安藤まさひろ！！」まるで、早押しクイズのような回答だった。彼は高校時代、クイズ研究会だったか同好会に在籍していたらしい。私:「いやぁ～いいねぇ、スクエアは」        shk：：「是非！！！」shk：「今度、（スクエアの曲）持ってくわぁ～。アパートどこだっけ？」数日後、彼は私のアパートにやってきた。こうして私とshk君の”フュージョン狂時代”が始まったのである。つづく

  October 15, 2010

• 某会編～第一章　めぐりあい　其の弐～

  おことわり：当ブログは、私と友人の間の楽しかった思い出を振り返り、意味もなく感傷的に浸るという趣旨のものです。他人の思い出なんぞ興味がないという方は、これより先はご覧にならないでください。～第一章　其の壱～私はほとんど酒が飲めない。昔は飲めるようになりたくて、ムリして飲んでいた。でも結局最後は、具合が悪くなってしまう。そんな私でも、よく冷えたビールの一口目が最高においしいということは知っている。しかし、結局二口目からは惰性で胃袋に流し込むことになる。ビールは特に私の身体に合わないらしく、体内に入れると即効具合が悪くなるのである。とにかくどんなアルコールでも、私の場合は長続きしないのである。”長続きしない”といえば、私の対人関係もそうである。仲良くなろうとして相手に近づきすぎて嫌気がさしたり、せっかく友達になれそうなのにメンドくさくて疎遠になってしまったり・・・こんなことが今まで何度もあったのだ。彼らとも、きっとそうなるはずだった。しかし、そうはならなかった。彼らに会うと、もう楽しくって楽しくって笑いが止まらない。「たまに会うからだって～」Ｎ君はそう言い放った。Ｎ君と最初に会ったのは、ｓｈｋ君のおかげで知り合ったＯ君（ＨＮ：たいつ大佐）のマンションの一室だった。私がＯ君宅のテレビゲームに興じていると「そこは、こうやって！」　「ちがう、ちがう。そこの〇〇を・・・」とアドバイスしてくる人物がいた。しかし、私はゲームがあまりに下手クソなものだから、最後には「う～～ん、もういいや。好きにやるといいよ。」と、彼から呆れられてしまった。「何もそんな言い方しなくても・・・なんて冷たい男だ・・・」これが、Ｎ君との最初の思い出である。ｓｈｋ君は私と違い、ゼミの仲間など友達がたくさんいて、交友関係が広かった。当時、私は吹奏楽部の人たちとしか付き合いがなく、必須科目だったゼミも部の先輩が教えてくれた単位取得が楽なクラスだった。私のゼミは、年老いた教授がやってきて、「元気か」「本は読んでるか」「困ってることはないか」「レポート出せ」それだけの授業だった。当然、ゼミの中での交流は皆無だったし、私は３年次に他の大学への編入を考えていたので、友達をつくったところで、すぐに疎遠になってしまうだろうと思い、友達づきあいで積極的になれなかった。そして、何よりも私は友達つくりがヘタである。。ｓｈｋ君との場合は、気さくに話しかけてくれたことと、音楽の話で意気投合したことで、親しくはなったが、彼とも３年次になったら、お別れする予定だった。そんな状況だったので、Ｎ君となんて仲がよくなるはずがない。彼とはあまりに生きている世界が違いすぎる、とその頃は思っていた。彼はギャンブルの才能があり、"超"が着くほどのゲーマー、私はギャンブルはダメ、ゲームもヘタ。彼との接点はまったくないものと思われていた。しかしこの”呆れられてしまった日”以降、ｓｈｋ君を介して彼との交流はなぜか続いた。まるで大きな氷の塊が解けていくように、彼のことがだんだんと明らかになっていった。～熱気球同好会に入ったが、つまらないのでまったく顔を出していないこと、ギャンブルは大學に入ってから覚えたこと、高校時代に柔道部で受身を取りそこね腰を痛めたこと、幼少の頃ピアノを習っていたこと、アニメが好きなこと～　などであった。彼の見た目は、マジメそうな普通の青年であった。しかし、ｓｈｋ君の彼への接し方は、どうも理解できなかった。彼に暴言を浴びせんとするほどなのである。ときおり「カニ！」という言葉が聞こえてくる。「”カニ”？なんでＮ君とカニなの？！」真相は次のとおりである。ゼミが一緒になったＮ君とｓｈｋ君。そのゼミでは、新年度早々親睦を深めるとの理由で一泊旅行に行ったそうである。その旅行の夕食の席で二人は偶然にも隣同士となった。出会って間もない人たちが、その場でまったく盛り上がることはなく、ｓｈｋ君も他の人たちと同じように席を立とうとしたとき、隣にいたＮ君の口からｓｈｋ君には信じられない言葉が発せられた。「カニ食べないの？・・・ちょっとそれ、（食べないのなら）もらっていい？」さらに次の言葉が彼を叩きのめした。「カニの食べ方を知らない人が多いなぁ。もったいない。全部集めて、食べないかい？」ｓｈｋ君は、苦笑しながらその場を立ち去ったそうだ。今で言うところの”ドン引き”というヤツである。ｓｈｋ君は、他人が残したカニをかき集めて食らうという彼のとんでもない豪快な一面を目の当たりにしていたので、彼に暴言を浴びせようが、ビクともしないことを知っていたのである。私が聞いたＮ君の好きなエピソードがもうひとつある。「某会を札幌でやろう！」ということになり、ｓｈｋ君は留萌でＮ君と合流し、Ｎ君の車で札幌へ向かっていたときのことである。突如車を止めたＮ君が、「ここに山菜があるんだ！」と言い残し、車にｓｈｋ君を置き去りにし、スルスルと道路脇の斜面を駆け上がり、山菜を採取。ホクホク顔で車に戻ってきたそうだ。Ｎ君がパチスロや、ゲームに興じている姿しか知らない私には、このエピソードは衝撃的だった。また彼の肉体の強靭さという点も触れなければならない。カラオケで数時間歌っても、彼の声は何一つ変わらない。彼の歌唱法にどんな秘密が隠されているのか、はたまた彼の声帯にどんな秘密が隠されているのか、それは本人でもわかるまい。２００９年、彼は椎間板ヘルニアのため入院・手術した。私は高校時代の柔道部での怪我が原因だとばかり思っていたのだが、実は小学生・中学生でも腰を強打するアクシデントに見舞われており、それでも彼の腰は壊れることはなく、最後の怪我から約２０年経ってついに腰の爆弾が破裂してしまったそうなのである。よくぞそこまで持ちこたえたものだ、と私は彼の肉体の強靭さに恐れおののいた。そして、彼の最大の魅力は、いわゆる”天然さ”である。私も結構間が抜けているほうだと思うが、Ｎ君は私のはるか上をいっている。特に彼の登場シーンは、私の心に深く刻み込まれている。某会幻のメンバー・Ｎ先生の結婚式に出席した際は、「靴、忘れちゃったぁ～」とスーツ姿に、スニーカーといういでたちで登場。またあるときは、分厚いジャンバーに防寒長靴というまるで自宅の前の雪かきでもするような格好で現れ、極めつけは、ある年のゴールデンウイーク（ＧＷ）に集まったときには、背中に大きな文字で「ＧＯＬＤ　ＷＩＮ」（略してＧＷ）と書いてあるジャンバーを着て登場したので、「これは（ＧＷを意識して）狙ったのか？！」と聞くと、「え？！全然気付かなかったぁ～」２００８年三年ぶりに集まったときは、１時間半待っても来ないので自宅に電話を掛けてみると、「えっ！明日だと思ってたぁ～～～！」そして、散々を待たせたのにもかかわらず、集合場所のカラオケ店に我々の姿がないと「誰もいないんだけど！」と逆ギレ切れして電話をかけてくる始末。「だ、だからＮ君が着いたら、そっちに行こうと思ってさぁ～。」と私。大遅刻者に対して、何でフォローしなきゃいけないんだ・・・。ここまでくると、彼の登場に際しては、敬意を払わざるを得ない。私は、このように豪快かつ山菜取り名人かつ天然キャラの彼に対して、ある種の憧れのようなものを抱いているのかもしれない。彼の言動のひとつひとつが、前述したとおり私の心に深く深く刻み込まれているのである。次の章で述べるが、ｓｈｋ君とは「フュージョン」という音楽をキーワードに、ちょっと恥ずかしくなるくらいアツい時間を過ごした。あの熱い（暑苦しい）時間はもう二度と帰ってはこない。もちろん何かふとしたキッカケで、あの頃に戻ったような感覚にはなるのだが、私はもう３０代後半であり、２０代前半の頃のものとは、熱の質がやはり違うように思う。それに対しＮ君の言動は、私の心に刻まれたいわば”傷”のようなものなので、決して消えることはないのである。というわけで、第一章のはやはりこの曲でシメたいと思う。　めぐりあい　井上大輔　～機動戦士ガンダム３　めぐりあい宇宙より～

  July 18, 2010

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  某会編～第一章　めぐりあい　其の壱～

  おことわり：当ブログは、私と友人の間の楽しかった思い出を振り返り、意味もなく感傷的に浸るという趣旨のものです。他人の思い出なんぞ興味がないという方は、これより先はご覧にならないでください。１９９３年の春のことである。私は高校を卒業後、一浪するも受験した大学にことごとく不合格。「憧れの東京暮らし」という夢を叶えることはできず、ただ親元から離れるという目的を果たすために、３月中旬まで生徒を募集していた旭川大学に入学した。受験勉強から解放された私が、新たな挑戦として選んだ道は、何を思ったか、”音楽”だった。子供の頃から貯めていた預金と合格祝いを、ヤマハのテナーサックスの購入費に投入。大学では、演奏の基礎を習得するべく吹奏学部に入部した。ひとつのことにとらわれると、他は何も見えなくなる私のこの性分。大学の授業なんてそっちのけで、毎日買ったばかりの楽器のことばかり考えていた。大学でも体育の授業が必須科目としてあった。最初はストレッチングだとかやらされていた。「つまらない・・・早く部室で練習したい・・・」さらに私にとって災難とも言うべき事態が起きた。「二人一組になってください」・・・ちょ、ちょっと待ってくれ。オレはやる気がないんだ。早く部室に戻りたいんだ。見ず知らずの人と組んで、何をやろうというんだ・・・でも、仮病を使ってサボるほどのことでもないし、その場を立ち去り授業を放棄する度胸もない。「あぁ、メンドくせ～～。仕方ないか、誰かいないかなぁ～」と、腰を上げようとしたそのとき、声をかけてきた人がいた。眼鏡をかけ、鼻が高く、私と背格好が同じくらいのその人は、とても明るいカンジで声をかけてきてくれた。私は、相手を探す手間が省けたので、その人の呼びかけに快く応じた。それにしても、明らかに不機嫌そうにしていた私に声をかけてくるなんてちょっと変わった人だなぁとも思った。体育の時間が終了し、更衣室で彼と少し会話をした。改めてお互いに自己紹介をしたとき、私の姓が、「ヤマガタ」だったので、彼は冗談交じりに「じゃぁ、名前は”ケン”？」と言ってきた、らしい。（「らしい」というのは、私はまったくそのときの記憶がなく、ずいぶん後になって、彼がそのときのことをブログで告白したことで、私もそのときのことをなんとなく思い出してきたのである。）彼の”ケン”発言は、私の思考を停止させた。完全にフリーズしていたと思われる。「姓が”ヤマガタ”だから、名は”ケン”ですか？」なんて言われたのは小学校のとき以来だったからである。しかも彼は早口で言ったものだから、最初何を言っていたのかよく聞き取れなかったことも私の顔が凍りついていたであろう要因である。そのときの私の態度を、彼は”怪訝そう””迷惑そう”だったと述べている。「迷惑」に感じたかどうかは、まったく記憶にないのだが、この一言で、「やっぱりちょっと変わった人だなぁ・・・」と思ったような気がする。そして、次の授業に出るため更衣室を後にした。このときの「彼」こそ、終生の友、またあるときはライバルとも言うべきｓｈｋ君、その人であった。彼のおかげで、つまらない体育の授業は何とかこなすことができた。授業が終わったあとは、売店で紙パックのジュースをチューチューと飲むというのが、お決まりコースだった。ジュースを飲む前の合言葉は「飲みますかっ！」私は彼の話し方に特徴があり、その口調がなんだかとても心地よく、なんだかおかしかったので、いつしかの彼の口調を真似るようになっていた。彼といるとテンションがあがるというのだろうか、なんだか気分が高揚していくような感触を覚えた。それが、まるで酒を飲みに行くようなノリで「飲みますかっ！」になった訳である。後で聞いてみると、彼は彼で私の口調を真似ていたらしい。つまり、お互いに影響されていたということである。ある日、ジュースを飲みながら、ｓｈｋ君がこんなことを言ってきた。「キミはどんな音楽をきいているのかな。」”キミ”・・・これがたまらなかった。相手のことを”キミ”という人は、今まで会ったことがない。予備校の衛星中継の授業で、ある講師が全国の受験生に対して、「キミは…、キミも…」と言っていたが、それとは質が違う。あくまでも私１人に対して、”キミ”なのである。「間違いなく変わってるなこの人・・・。」そう確信した。さて彼の質問の話に戻るが、自尊心の塊である私は、「”音楽”の話を、音楽系サークルに在籍している私に振るなんて、野暮ってモンだよ」とばかりに、高校時代から聞き始めた「スカ」「ボサノバ」「ビッグバンドジャズ」「ゴンチチ」などのインスト音楽について、愚かな頭脳に蓄積されていたありったけのクソ知識を、彼に思いっきりぶつけた。彼は黙って聞いていた。「どんな音楽を聴くの？」という私の逆質問に、彼はただ一言、「フュージョン」と回答した。？？？・・・フュージョンって・・・？？？ＣＤ店では、「ジャズ／フュージョン」と分類されているコーナーがあることは知っていたので、フュージョンと言う言葉自体は知っていた。しかし、どんなものかはよくわからなかった。彼の説明を聞いていると、要するに私が好きなインスト音楽のことを言っているように思えたので、彼の口から「フュージョン」という言葉が発せられるたびに、私は頭の中でその言葉を「インスト音楽」と、変換しながら聞いていた。彼は幼い頃から、エレクトーンを習っており、彼が音楽に触れていた時間は、楽器を手にして数ヶ月の私とは、比べ物にならなかった。私は彼の話を聞きながら、自分がとても恥ずかしくなってきた。私の話を黙って聞いていた彼。そして、私の問いに対して力強く「フュージョン！」と発言した彼。「歌（ボーカル）のない音楽ってインスト音楽のこと？」と聞いても、彼は「フュージョン！」としか答えない。なんだか彼の不思議なワールドにズルズルと引きずりこまれていくような感覚に陥った。彼との話の中で「Ｔ－スクエア」という名前がでてきたので、「あぁ、それＣＤ店で見たことあるよ、Ｆ－１とかのヤツでしょ・・・」とりとめのない話で、その場は終わった。我々は次の授業でも一緒だったので、教室に向かった。そうして、次にｓｈｋ君に会ったとき、彼は一枚のＣＤを私に貸してくれた。Village　Records T-SQUARE／F-1　GRAND　PRIX彼が私にこのＣＤを差し出したときのことは、おそらく死ぬまで忘れることはないだろう。大袈裟な言い方をすれば、私の人生の方向性を決定つける出来事だったのだから・・・。つづく

  July 15, 2010

• 某会編～序章～

  おことわり：当ブログは、私と友人の間の楽しかった思い出を振り返り、意味もなく感傷的になるという趣旨のものです。他人の思い出なんぞ興味がないという方は、これより先はご覧にならないでください。その壱　某会の概要その弐　メンバー紹介Ｎ君（３５）　自営業　某会における最強（ｏｒ最凶ｏｒ最狂）のエンターテイナー。昨年夏、椎間板ヘルニアで入院・手術するも、年末には見事復帰。身長１７６ｃｍ、体重８２ｋｇのガッシリした身体に似合わない、研ぎ澄まされた歌声で、他の会員を圧倒する。学生時代は、格闘技ゲームで無敵を誇り、北海道北部地区の大会で４位にランクインする。その超人的強さから「留萌の虎」と評される。その他、リアルタイガー、サーベルタイガー等”虎”にちなんだ数々の異名を持つ。寅年生まれ。ｓｈｋ君（３５）　会社員幼少の頃からエレクトーンを習い、ゲームミュージックに始まり、フュージョンというジャンルの音楽に触れ、音楽的才能が開花。現在はアマチュアフュージョンバンドでキーボードを担当。８０年代最後のキーボーディストと評されているそうである。某会においては、書記長（記録係）を担当。近年では半ば強制的に幹事としての重責を担う（ヤラされている）。某会発足当初は、カラオケに慣れていなかったため、Ｎ君と私に遅れをとっていたが、血のにじむような努力（？）の末、レパートリーの多さで某会随一となる。しかし、近年においては、壮絶な自爆（ｏｒ自滅）が、彼のトレードマークとなりつつある。私（３６）　地方公務員ｓｈｋ君と出逢い、フュージョンにハマる。楽器を手にしたが、２年で挫折。音楽は”聴くもの”として、自己の殻に閉じこもる。某会においては、常に”言いだしっぺ”。昨年は、忘年会を勝手に企画したものの、開幕直前にインフルエンザで欠席。考えてみりゃ、３６年生きてきて、友達が少ないどころか彼らしかいないことに最近気づいた。家族構成：妻、長男、二男影響を受けたミュージシャン：ジャコパストリアス、ジョンコルトレーン、ビルエバンス、本田雅人、野呂一生、安藤正容、神保彰、山下洋輔、スティービーワンダー、トムジョーンズ、ワム！、水木一郎、ささきいさお、串田アキラ以上が、１９９８年５月３日、発足時のオリジナルメンバーである。Ｉ君（３５）　会社員２００３年８月、初参戦。上記３人による密室（カラオケボックス）での異常な雰囲気をものともせず、ニコニコしながらひたすら酒を飲み続けるツワモノ。アニソンだけでなく、フォークソングも泥酔しながら熱唱する。某会に新しい風をもたらした人物の一人。Ｓ君（３５）　会社員２００９年９月、初参戦。某大学の卒業式から実に１２年ぶりの再会にもかかわらず、何の違和感もなく、学生時代とまったく同じノリで我々の活動に賛同してくれる。昨年の忘年会では大遅刻。それまでの遅刻大王・Ｎ君に「死刑宣告」を受ける。その後のカラオケにおいては短時間ながら大健闘。Ｉ君同様、某会に新しい旋風を巻き起こす。幻のメンバーＮ先生（３６）　中学校教諭？１９９８年頃、偶然にも私と勤務地が同じだったことから、某会に勧誘。そのときは快諾し、某会に参戦。しかし我々のノリについてこれなかったらしく、カノジョ（後に結婚）に会うとの理由で途中退散。２００３年、ｓｈｋ君の結婚式に出席、３次会として某会を企画していたが、２次会の途中で帰る。某会の歴史を語る上で、まずはｓｈｋ君そしてＮ君との出逢いから話を始めようと思う。時計は約１７年前にさかのぼることとなる。

  June 30, 2010

• 某会編～序章～

  その一　某会の概要１９９３年某大学の同期として知り合った、ＳＨＫ君、私、Ｎ君。卒業後の１９９７年秋、公務員試験に合格した私は、当時パチンコで生活していたＮ君宅を訪問。学生時代となんら変わらないＳＨＫ君、そしてすさんだ生活を送っているＮ君がそこにいた。学生時代に比べ、明らかに元気のないＮ君のことがちょっと心配になり、「こんな生活から早く抜け出すべきだ」と内心思うと同時に、雑然としたＮ君宅で雑魚寝しながら、この３人が同じ時間・同じ空間を共有することに、私は何か居心地の良さを感じていた。この日から２ヵ月後の１９９７年１１月、晴れて地方公務員の一員として私の社会人生活がスタート。しかし私は、いわゆる"学生気分"が抜けないというか、なんとなく周りの人たちと打ち解けずに毎日を過ごしていた。「働く」ということの価値がまったく見出せなかったのだ。「彼らはどうしているだろう・・・｣まずＳＨＫ君に声を掛けてみた。ＳＨＫ君はすぐさまＮ君へ連絡。そうして１９９８年５月３日、北海道旭川市にこの３人が集結した。就職したものの毎日がつまらなかった私、現在勤務する会社にアルバイトとして働いていたＳＨＫ君、そして、家業の不動産業を継ぐと決まったわけではなく、当時、そんな言葉は存在していなかったが、いわゆる”ニート化”しつつあったＮ君。３人の中で一番不遇だったＮ君を”励ます会”のようなカタチで、某会はスタートする。一年後の１９９９年５月３日、今度は私の実家がある札幌市にて集結。大卒とはいえ、地方の三流大学出身の我々は、学歴社会においては、最下層に位置する部類であろうことから、『自らを「社会のゴミ｣と自覚（超自虐的）し、そして２年連続で「５月３日」に集まったことを記念してこの会の名称を「ゴミの会」とする！』と高らかに宣言。私はとにかく、この二人と一緒にいることが楽しくてたまらなかった。「ゴミの会｣と名づけたのもこの私。一人で勝手に盛り上がり、興奮していた。別に互いの生き方について語り合うわけでもなく、くだらないことことで盛り上がり、ケラケラと笑ってるだけ。それだけの仲間なのだが、彼らと同じ時間を過ごすだけで、何より幸せだったのだ。発足当初は、食事～ビリヤード～ボーリング～カラオケ～買物～ゲーセンといった学生時代そのままの、ダラダラと時間を過ごすだけだったのだが、だんだんとカラオケがメインイベントとなり、２１世紀からは、カラオケの選曲もアニメ・特撮ヒーローモノに限定され、某会の方向性がハッキリと定められた。２００２年、私が結婚。某大同期生であるＩ君が新メンバーとして加入。翌２００３年はＳＨＫ君が結婚。某会は円熟期を迎える。しかし２００４年、私に子供が誕生。「この会をゴミの会と命名する！」とか「次回大会は、〇月〇日、場所は〇〇だ！」など、いつも言いだしっぺの私は、ここでも自分勝手ながら活動休止を申し出る。「これで最後だろう」と、ＳＨＫ君、そして私もそう思っていた。２００４年１１月、「最後の某会」ラストは、Ｎ君が「キングゲイナー」のオープニングテーマを、立ち上がって熱唱し、下からＳＨＫ君が、困ったような顔でＮ君を見上げていた。私はトイレから帰ってきて、部屋のドアを開けた瞬間の光景がいまだ脳裏に焼きついている。腰をくねらせ、声を振り絞りシャウトするＮ君。ボー然と彼を見上げるＳＨＫ君。”最後”にふさわしい映像であった。しかし、今日現在某会の歴史を振り返ると、２００４年１１月は、「第一幕」が終わったに過ぎないのだった。　　　　　　　　　　これ、”概要”じゃないなつづく

  June 18, 2010

• 【本田雅人編　Vol.3・・・？】

  ※文中のアーティスト名はすべて敬称略とさせていただきます。～おことわり～今回のブログは、タイトルとはほとんど関係のない話題です。音楽に対して人間がとる行動をごく簡単に分類すると、「みる」「きく」といった『鑑賞』と、「うたう」「ひく(演奏)」「おどる」という『表現』に分けられる。中学３年生の頃、当時ハマっていた深夜ラジオに毎月ゲストとして出演する女性アイドルのＣＤから始まった私の『音楽鑑賞』の趣味は、現在ジャズ／フュージョンというジャンルに行き着いた。現在保有している音楽ソフトの９０％以上が、このジャンルのものである。音楽に関する『表現』行動となると、高校生のとき、学校祭の打ち上げの時に初めてカラオケで歌ったというのが、その始まりということになるだろう。カラオケに行って人前で歌うという行為は、恥ずかしいどころかむしろ楽しかったが、趣味といえるほどのものではなかった。大学に入学し、「ひく」（＝演奏家になる）ということに野望を抱いたものの、一年ちょっとで挫折。体を動かすこと自体、億劫な私が「おどる」ことに手を出すわけがなく、私の音楽趣味は『鑑賞』一辺倒になるかと思われた。しかし、１３年前のあの日に歌った"あの曲"をキッカケに、カラオケボックスという密室が、現在の私にとって唯一の『自己表現』の場となっている。ただし、これは決して口外できる趣味ではない。体面的に私の音楽の趣味は、『音楽鑑賞』のみなのである。２００４年秋、長男が誕生し、音楽をゆっくり鑑賞するヒマもカラオケに行く余裕もなくなり、職場で毎年提出する自己申告書の趣味の欄には必ず「音楽鑑賞｣としていたが、いつのまにかその４文字は消えていた。１９９８年の秋から習い始めた少林寺拳法も、所属道場から遠くはなれた場所に転勤したことで、週２回の練習が、月に１～２回になっていた。長男が１歳になったころ、我が家の２０型ブラウン管テレビが突然映らなくなった。当時まだ価格が下がってはいなかったのだが、タイミング悪く壊れてしまい、テレビなしの生活には耐えられないことから、すぐさま家電量販店で３２型液晶テレビを購入。ついでにＤＶＤレコーダーも買った。たしか、ＤＶＤレコーダーを買って間もなく、ディズニー映画の「ロビンフッド｣のＤＶＤを妻がプレゼントしてくれた。この映画は、まだ子供が生まれていない頃のこと、妻と二人でディズニーリゾートに行った際、ホテルのテレビで深夜に放送されていた映画である。私が生まれた年と同じ１９７３年に製作されたこの映画は、いかにもディズニー映画らしい「愛と勇気」を全面的に描いた、勧善懲悪モノのごくフツーのアニメ映画である。映像がものすごくすばらしいとかいうわけでもなかったのだが、挿入歌がとても印象に残り、旅先で見たということとあいまって、心に残る映画のひとつとなったのである。「ＤＶＤはレンタルで十分」と思っていたのだが、このＤＶＤを買ってもらって、すっかり気を良くした私は、なにか自分ひとりで楽しむためのＤＶＤソフトはないか探した。あった。長男が生まれる少し前に同名タイトルのＣＤを購入したのだが、数回聞いただけで、子供の相手で忙しくなり、ダンボールの中にしまいこんでいたままだった。この作品は、私にとって本田雅人関連の映像作品の中で最高傑作である。収録曲の多さ、特典映像など内容が非常に充実しており、後に購入した「ＷＨＡＴ　ＩＳＦＵＳＩＯＮ　visual　edition」や「ＬＩＶＥ！Ｃｒｏｓｓ　Ｈｅａｒｔｓ」と比べても比較にならないほど好きな作品なのだ。また、梶原～松本～青木～則竹というメンバーによる本田バンドの最後の映像作品でもある。このＤＶＤのおかげで、私の音楽熱は再び燃え上がり、買いそびれていた４ｔｈアルバム「Ｒｅａｌ　Ｆｕｓｉｏｎ」　６ｔｈアルバム「Ｃｒｏｗｄｅｄ　Ｃｏｌｏｒｓ」をAmazonで買い集め、その他本田雅人関連作品だけでなく、興味のあるものは次から次へと買いあさるという大学時代を彷彿とさせるような、おバカな日々を送るようになった。・・・大学時代を彷彿と・・・急に彼らに会いたくなってきた。”彼ら”とは、大学時代、自堕落な学生生活をともに過ごし、卒業後も年に１回くらい集まってはバカ騒ぎする仲間のことである。自分たちのことを「社会のゴミ」になぞらえて『ゴミの会』と超自虐的な名前をつけた。私のもうひとつの音楽趣味『自己表現』の場が、何を隠そうこのゴミの会なのである。どうしようもないくらい仲間たちに会いたくなった。当時、この会は長男が生まれた２００４年を最後に、活動を休止していた。私は再集結に向けて動き始めた。この想いはどうやっても抑えきれないものだった。ただでも仕事に対してやる気がないのに、趣味がこのように充実してくると、仕事なんて、ますますどうでもよくなってくる。そんな姿を見抜かれたか、上司から怒られる日が毎日のように続いていた。「こんなヤツと毎日顔を合わせ、つまらん毎日を過ごさなければならない。今すぐにでも逃げ出したい・・・」そんな衝動にかられる日もあったが、どんなにいやな仕事だろうと、どんなにいやなヤツが職場にいようと、家族のためには働きつづけなければならない。現実から逃げ出したい自分と、現実の世界で毎日上司に怒られている自分が複雑にカラみあいながら存在していた。ある日、全身のだるさ、断続的なめまい、そして心臓が飛び出るくらいの激しい動悸に襲われ、病院に行った。内科で受診したところ異常なし。医師曰く、「おそらく精神的なものだねぇ」すぐさま近くの精神科へ。病名は「不安神経症」。うつ病の一歩手前だったようだ。診断から２ヵ月後、運よく天敵のハゲ上司は転勤。病状は見る見るうちに改善していった。本当は、この年の５月３日（「ゴミ」の日）に、彼らと集まりたかったのだが、病み上がりだったので、大事をとって集合を呼びかけるのは控えた。そして２００８年を迎える。この年から起きた出来事を列挙すると、１月、我が家の恒例行事となっていた東京ディズニーリゾート巡礼。このときは子供が、旅先で発熱。天候も最悪で、悲惨な旅行であった。３月、私に異動の内示が出る。北海道の網走市から紋別市へ。まさかの展開に私は叫びたくなった。ゴミの会会員である彼らとの距離がグーンと近くなったのだ。そうして、２００８年５月３日、実に３年半ぶりとなるゴミの会(某会)が実現。しかし、妻の祖母が危篤に陥り、直前まで開催が危ぶまれていた。本当は自粛すべきだったかもしれない。しかし奇跡は起きた。義理の父から直々にお許しが出たのだ。７時間半にわたるアニソンカラオケ大会。まさに大復活祭だった。帰宅した翌日、妻の祖母は死去。６月、家族全員、マイコプラズマ菌感染症にかかる。７月、マイコプラズマの悪夢から解放され、ディズニーオンアイスを札幌市に見に行くが、帰宅後、家族全員、今度は４０度の熱で次々と倒れる。９月、本田雅人８ｔｈアルバム「ＡＣＲＯＳＳ　ＴＨＥ　ＧＲＯＯＶＥ」購入。私は、これが一番好きなアルバムである。１１月、勤務時間中に交通事故を起こす。紋別市に転勤したことにより、少林寺拳法の道場には、以前のように週２回通っていた。まさに「文武両道」といった悠々自適の生活。そうして、事故の直前まで翌日の少林寺拳法の練習のことを考えていた私に、ついに天罰が下されたのだった。交通事故により２週間後に控えていた家族旅行は、すべてキャンセル。私は背中に重たい十字架を背負った気分のまま年を越す。２００９年、正月。年末年始、ひたすら家の中でじーーっとしていたことが心身にとっては良い休養だったようで、３月、山梨～千葉・関東横断４泊５日テーマパークめぐりの旅で大成功を収める。４月、骨髄ドナーに選ばれる。しかし、患者の都合により骨髄提供ならず。７月、膝に水がたまり整骨院通いが始まる。加えて某会のリーダー格であるＮ君が椎間板ヘルニアで入院。妻、２人目懐妊。８月、Ｎ君の見舞いに行く。９月、Ｎ君欠場ながら某会開催。新メンバーとしてＳ君が加入。１２月に再び某会開催を企画するが、発案者（言いだしっぺ）の私が、インフルエンザで欠場。失意のどん底のまま、９ｔｈアルバム「ＳＯＬＩＤ　ＳＴＡＴＥ　ＦＵＮＫ」を聴く。そして、今年３月、次男が誕生。パソコンの周りはＣＤだらけ。ＹＯＵ　ＴＵＢＥでアニソン研究が日々の楽しみである。今の私に迷いはない。すべては、このブログのタイトルどおり。　　　　　　ア　ニ　ソ　ン　と　ジャズ／フュージョンこれだけあれば、「なんぼでもイケる」のである。では、股。

  June 2, 2010

• 【秀景満ライブ編】

  ※文中のアーティスト名は敬称略とさせていただきます。私が現在住んでいる北海道紋別市に「秀景満」がやってきた。T-SQUARE後期における須藤満の曲がとても好きだったので、前からこのトリオに興味はあったのだが、まさか、こんな片田舎でお目にかかることができるとは思っても見なかった。昨年の１１月にも来ていたらしく、私はまったく知らなかったので、ちょっと残念だった。〇ＳＥＴ　ＬＩＳＴ１　サニー　アフターヌーン２　だいじょうぶ３　ディス　ワン～ＭＣ～４　ブルージュにて５　ホエン　アイ　レフト　ホーム６　スプリング　ウオーター～休憩～７　アワ　カントリー８　スーパーカー？～ＭＣ～９　ザ　ボックス10　ザ　タッグ11　エイプリルen　レミニセンス※曲名は一応メモってきましたが、間違っているところがあるかもしれません。ものすごく狭いスペースに３０人くらいの客が入り、ステージはなく、演奏者と客が同じ目線でライブが行われた。終始和やかな雰囲気で2時間半のライブは終了。こんな間近でライブを見たのは生まれて初めてだった。・・・あぁ、そうだ。会場の広さも音響効果も全然違うのだが、六本木ピットインの雰囲気に似ていたかもしれない・・・。手を伸ばせば届くような距離に、ドラムの平井景がいた。ドラムセットを真横から鑑賞するというのは、初めての体験だった。あの角度からドラムを見るというのは、ちょっとクセになりそうである。ワンドリンク付きだったのだが、ビールを飲む客は飲み放題だったらしく、ほろ酔い加減で、アーティストと大声で会話しようとする者、それとは逆に演奏やＭＣをまったく聞かず、べちゃくちゃしゃべっている者がいた。「私語は慎みたまえ」と言える度胸はもちろんなかった。流石に秀景満の３人もプロとはいえやりづらかっただろうなぁ。驚いたのは、須藤満のマイカーにドラムセットをはじめ、自分たちの楽器を積んではるばる北海道までやってきたとのことで、須藤満は、ドライバー兼ベース担当兼ＭＣ担当と紹介されていた。これといって、放心状態になってしまうほどの強烈なインパクトを受けたわけではなかったし、「あの曲が・・・！」というのもないのだが、また見に行きたくなった。このトリオ、クセになります、マジで。給料日前で金がなく、今回ＣＤは買えなかったが、このバンドのＣＤなら買っても損はない。これは買うしかないな。また欲しいものが増えた。ＵＳＴＲＥＡＭで見た「向谷実メロディーズ」、いまさらながら「角松敏生」、「松原正樹」、「フォープレイ」、「チックコリア」、そしてこの「秀景満」と、今年に入ってから聴きたくなるアーティストやバンドが急に増えてきた。お金が欲しい・・・【本田雅人編～VOL3～】は次回公開します。あ、そうそう、ブログタイトルを変えました。私にはこっちの方がしっくりいくことに気づきました。では、股。気が向いたら更新します。　

  May 20, 2010

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  【本田雅人編　Vol.2】

  ※文中のアーティスト名はすべて敬称略とさせていただきます。【本田雅人編　vol.1】を作成してみたが、別に音楽的解説をするわけでもなく、作品のレビューを書くわけでもなく、「伊東たけしにハマりかけたが、ライブを見て本田ファンになりました。あのＣＤ買いました。このＣＤ買いました・・・」という、とても恥ずかしいミーハーな一面を暴露し、そして、単なるお買物の歴史を書いているに過ぎないということに気づいた。これでは、とてもじゃないが音楽ブログとはいえないだろう。とはいえ、このスタイルを変えるつもりは毛頭ございません。 2004年夏、秋に誕生する第一子のために、ベビー用品をそろえようと旭川に訪れたときのことだった。当時は、北海道紋別郡遠軽（えんがる）町に住んでおり、旭川までは車でゆっくり走って2時間弱ほどだった。旭川市永山の「アカチャンホンポ」で買物した後、大型店舗の「イオン旭川西ショッピングセンター」に向かった。この店で私は、不思議な体験をした。イオンの中にあるレコード店を見つけた途端、足がすくんでその店に吸い込まれそうな感覚にとらわれたのである。その店は、後で調べてみたら「タワーレコード」だったようだ。 その昔、旭川で暮らしていた3年間、ＣＤといえば「玉光堂」か「国原」だった。後者は廃業してしまったそうだ。買物公園沿いにある中古レコードショップにも足繁く通った。しかし、旭川での私の行動範囲内に「タワーレコード」はなかった。私にとっての”タワーレコード”といえば、札幌店。浪人時代、就職活動で札幌に住んでいた間は、よく通っていたものだった。スカの輸入盤、ジャコパストリアスの輸入盤等を買いあさった。ジャズ／フュージョンコーナーが充実しており、その空間にいるだけで幸せな気分になれた。 というわけで、札幌店とは違ってかなり狭いイオン旭川店内のタワーレコードではあったが、気がつくと私はジャズ／フュージョンコーナーの前に立ち尽くしていた。本田雅人のアルバムがあった。発売されたばかりの７ｔｈアルバム「Ａｓｓｅｍｂｌｅ　Ａ　Ｃｒｅｗ」だった。【送料無料】Bungee Price CD20％ OFF 音楽本田雅人　ホンダマサト / Assemble A Crew 【CD】本田雅人のＣＤを買うのは、実年に3年ぶりだった。 帰宅して早速聞いてみたが、しばらく聞いていなかったせいか、ピンと来なかった。独身時代のように、じっくり腰をすえて音楽鑑賞に浸ることができない。それでも何度か聴いていると、だんだんとあのころの感覚が蘇ってくるような気がした。聴けば聴くほどこのＣＤはいい。アルバム収録曲のＥＷＩの曲とそうでない曲の配分が私好みで（2：8）、多数のミュージシャンが参加するといった他の作品と違い、全曲、本田バンドのみ（本田、梶原、松本、青木、則竹）によるものだった。※数曲ホーンセクション、パーカッションのサポートあり まもなくして、第一子が生まれた。子供が生まれて一ヵ月後、私は再び旭川にいた。音楽鑑賞という趣味は、２１世紀になってからかなり下火になっていたが、それに変わって新たな音楽の趣味が大きなウエイトを占めていた。しかしこれは他人に決して口外できるものではなかった。それは、「年に１、２度、３～４人で数時間にわたり、カラオケ（アニメソングのみ）を歌い続ける」というものだった。2004年11月、この集まり（以下、某会）の主要構成員である、ｓｈｋ君、Ｎ君に「子供が生まれたから」という理由で、私は活動の休止を申し出た。無期限の活動休止。おそらくこれが最後だろうと私は思った。ｓｈｋ君も「最後の某会」と題してブログに記している。こうして、ゆっくり音楽を聴いている暇はなく、人には言えないカラオケ趣味もしばらくは封印しなければならなくなった。  2005年春、網走市に転勤。転勤したことにより、紋別の少林寺拳法の道場に通うことは月に1,2回となってしまった。職場に毎年提出する自己申告書の趣味の欄には、かならず「音楽鑑賞」と書いていたものだったが、この頃にはその4文字も消えていていた。私は、これといった趣味がない、フツーのお父さんになっていた。しかしその年の秋、我が家のテレビが壊れるということがきっかけで、再び私の音楽に対する熱は手がつけられないほど再燃するのだった。 つづく 

  March 12, 2010

• 【ペガサス編】

  ※文中のアーテイスト名はすべて敬称略とさせていただきます。神保彰の新譜・「ジンボガンボ」と野呂一生＆櫻井哲夫によるペガサスのＤＶＤのどっちにしようか迷った挙句、結局ペガサスの「アコースティックショー｣を購入した。カシオペア結成３０周年を記念して組まれたアコースティックデュオ・ＰＥＧＡＳＵＳ。カシオペアの楽曲をアコースティックギターとアコースティックベースだけで再現するなんて物理的に可能なのだろうか？ 可能だった。 「そこまでやらなくても・・・」というくらいギターは忙しそうだった。カシオペア時代・ＪＩＭＳＡＫＵ時代の櫻井哲夫の曲は、特に好きなものはなかった。だから櫻井哲夫は別に好きなアーティストではなかった。とはいえ、先日発売された、櫻井哲夫プロデビュー３０周年記念アルバム「マイディアミュージックライフ｣には、カシオペアの名曲・ドミノラインが収録されていたり、ジャコパストリアスのカバーがあったり、本田雅人が参加していたりと、ちょっと期待していた。しかし聴いてみたら、ジャコのカバー以外は 「あら？」というカンジだったので、ペガサスにおける櫻井哲夫もいかがなものなのか、あまり期待していなかった。しかし、これがとてもよかった。違った意味で、期待を大いに裏切ってくれた。１曲目の「ＮＥＳＳＡ」をはじめとして野呂一生の楽曲は、アコースティックでも十分楽しめた。櫻井哲夫の曲はそんなに好きではないものの、野呂一生が「４５℃」を演奏している姿はなんだか感慨深かった。カバー曲は、チックコリアの「ＳＰＡＩＮ」だった。”あの時代”を彷彿とさせる驚愕ユニゾンプレイを堪能した。ＤＶＤでのカバー曲は１曲だけで、ＣＤではもっと聴くことができる。ＣＤは買うつもりはなかったのだが、試聴してみたら、これは買わずにはいられなくなった。 プロデビュー３０周年を記念して、神保彰は「ジンベスト」や大学時代の音源が発売されたり、櫻井哲夫は「マイディアミュージックライフ」を発表し、野呂一生とペガサスというユニットを組んだ。向谷実はどうしているのだろう。昨年は、タモリ倶楽部や、ブラタモリでその姿を見かけたが、音楽活動の情報を得ることはなかった。４０周年記念に期待することにしよう。 カシオペアの黄金期（野呂・向谷・櫻井・神保）の復活・・・。 もし実現したら見てみたい。しかし、結成２０周年のときの「２０ｔｈ｣は観客の叫び声がとても耳障りで、せっかくの再集結だったのに、あの怪鳥音ですべてが台無しだった。ライブＤＶＤにしたら、きっとまたあの声が入っているかもしれない。再集結するとしたら、ライブは海外でやってもらいたい。ムリか・・・。   

  February 26, 2010

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  【本田雅人編　vol１】

  ※文中のアーティスト名は、すべて敬称略とさせていただきます. 今回【本田雅人編】を作成するにあたって、当初は「Ｔ－ＳＱＵＡＲＥ退団以降のソロ作品についてその歴史を私の保有しているＣＤ、ＤＶＤで振り返る」というカタチにしようと思っていたのだが、本田雅人について語る上で、どうしても避けて通れない一人のアーティストがいることに気づいた。Ｔ－ＳＱＵＡＲＥ・初代サックス奏者（1978～1990）であり、2000年から再びメンバーとして復帰した 伊東たけし（以下、ＴＫ）、その人である。 私が本格的にＴ－ＳＱＵＡＲＥを聞き始めた1993年の春頃、すでにＴＫはＴ－ＳＱＵＡＲＥを退団し、ソロアーティストとなっていた。メンバーチェンジ前のＴ－ＳＱＵＡＲＥ（ＴＨＥ　ＳＱＵＡＲＥ時代も含む）に夢中だった私は、1991年発表の「ＴＲＵＴＨ1991」を聞いて、「何だよこれは。昔の方が断然いい！」と、たったこの一曲を聞いただけなのに、頭の中で、【メンバーチェンジ前　＞　メンバーチェンジ後】という固定概念をつくり上げてしまった。愚かな頭脳である。そして、私はリードアルトサックスの伊東たけしに傾倒していき、１ｓｔソロアルバム「ＤＥＡＲ　ＨＥＡＲＴＳ」を購入。これは、Ｔ－ＳＱＵＡＲＥのアルバムほどではなかったが、結構好きだった。特に一曲目の「ゴジラ」という曲がお気に入りだった。「それじゃぁ、次いってみよう！」と次に手を出した「ＥＬ　ＳＥＶＥＮ」という２ｎｄアルバムは、全曲サックス・ＥＷＩと打ち込みによるもので、何か物足りなさを感じた。「これはちょっと・・・」それでも深夜に放送されていたジャズフェスティバルでの演奏を見て、気に入った曲が収録されていた「Ｔ．Ｋ．ＬＡ」も迷わず購入。ところが、ライブバージョンとアルバムバージョンはまったく違った。完全に期待はずれだった。札幌でのライブにも足を運んだ。ものすごく体の大きな人だった。演奏にいたっては、大きな体のわりに控えめというか地味な感じを受けた。知らない曲がたくさんあって、バラードなんかはちょっと眠たくなった。結局のところ私の好みは"Ｔ－ＳＱＵＡＲＥで安藤まさひろの曲を演奏する伊東たけし"だったようだ。生まれて初めて見たフュージョンのライブは、一応楽しめたものの、「フュージョンってこんなものなのか・・・？」という疑念が残った。 年賀状配達のバイトで貯めた資金で、春休みに東京の兄の家に遊びに行った。1994年3月のことである。雑誌「ぴあ」のライブ情報に「和田アキラセッション」とあり、ゲストとして、Ｔ－ＳＱＵＡＲＥの２代目サックス奏者・本田雅人の名前があった。場所は六本木ピットイン。「よし、行ってみよう。ｓｈｋくんの土産話にもなるだろう。」と六本木まで足を運んだ。たしか静かな感じでライブは始まったと思うが、本田雅人が出てくるなり空気は一変した。（そういう曲だったのかもしれないが・・・）その演奏を聴いてとにかくビックリした。聞いたことがある曲は一曲もない。ところが、小柄な体からは想像もつかない野太いアルトサックスの音、スピーディかつ隙間を埋め尽くすようなアドリブソロに最後まで圧倒されつづけた。私が求めていたモノは、まさしくこれだった。 この出来事をキッカケに、ＴＫのソロ作品はすべて売却。せっかく買い集めた1978～1990年までのＴ－ＳＱＵＡＲＥのアルバムは、処分こそしなかったが、ただのコレクションとして箱の中に閉じ込められることとなるのであった。 ・・・さようなら、伊東たけし・・・ こうして私の「本田狂」時代がスタートする。この頃の経緯については、また後日触れることとしよう。たっぷりと。 話は一気に４年ほどワープして、Ｔ－ＳＱＵＡＲＥを退団しソロとなった本田雅人について述べたいと思う。正直なところ、ソロ作品についてはほんのちょっとだけ気になることがあった。ＴＫ同様、本田雅人のソロアルバムもＴ－ＳＱＵＡＲＥ時代の作品に及ばないのでは・・・そんなちょっとした心配はあったものの、退団後初となる本田名義のアルバム、ビッグバンド編成の「B.B.STATION　LIVE」は、私の好みのど真ん中だった。Bungee Price CD20％ OFF 音楽本田雅人　ホンダマサト / Bb Station Live At Roppongi Pit Inn 【CD】そして、ソロデビューとなる１ｓｔアルバム「Ｇｒｏｗｉｎ’」を購入した。【ポイント10倍】クレカで全国送料無料!!GROWIN本田雅人このアルバムの一曲目のイントロで、私が気にしていたことは、どこかへ吹き飛んでいった。「元Ｔ－ＳＱＵＡＲＥ」という肩書きは、ソロデビューアルバムの１曲目で完全に払拭されたといってもいいだろう。この一枚に私は完全にＫ．Ｏ．された。1998年の11月のことだった。ちなみにこのアルバムの２曲目以外はすべてライブＤＶＤに収録されている。ローカルなどうでもいいミニ情報としては、２曲目の「Farmscape」は、北海道テレビ（ＨＴＢ）の毎週日曜日朝７時４４分頃に「札幌後楽園ホテル　ホリデーランチバイキング」のＣＭのＢＧＭとして、１０年以上使用されている。（ホントにどうでもいい情報でした）続く２ｎｄアルバム「Ｃａｒｒｙ　Ｏｕｔ」は、全曲すべての楽器が本田雅人による演奏であり、その演奏楽器は、 各種サックス（ソプラノ、アルト、テナー、バリトン）、フルート、クラリネット、トランペット、トロンボーン、ギター（アコーステック＆エレキ）、エレキベース、電子ピアノ、ＥＷＩ、、シンセプログラミング、ドラムスとなっている。さらにコーラスまで担当しており、まさに”職人芸”という感じであった。他にもこういうアルバムを作ったミュージシャンは数多くいるだろうが、管楽器、弦楽器、鍵盤楽器、打楽器、そしてコーラスまでこなしてしまうアーティストはそうはいないだろう。楽曲はもちろん最高だった。しかし、やはり違うアーティストが参加しているアルバムが聞きたい・・・と思っていたら、３ｒｄアルバム「Ｉｌｌｕｓｉｏｎ」が発売された。この作品は、村上"ポンタ"秀一率いる　ＰＯＮＴＡ　ＢＯＸ　とのコラボ作である。演奏されている楽器は、アルトサックス（本田）、ドラムス（村上）、ピアノ（佐山雅弘）、ベース（バカボン鈴木）のみ。電子楽器は一切使われていない。いわゆるワンホーンカルテットというヤツである。Ｔ－ＳＱＵＡＲＥ時代の曲や、１ｓｔアルバムの曲のセルフカバー、「Ｂ．Ｂ．ＳＴＡＴＩＯＮ　ＬＩＶＥ」に収録されていた「Ｐｏｒｋ」（ジャコパストリアス・ワードオブマウスのライブでおなじみの「ＴＨＥ　ＣＨＩＣＫＥＮ」のパロディー）が、「Ｐｏｒｋ　Ｄａｎｃｅ」としてリメイクされていたりと、どの曲をとっても聴き応えのある作品だった。 ビッグバンド編成の「Ｂ．Ｂ．ＳＴＡＴＩＯＮ」、フュージョン全開の１ｓｔアルバム、１００％本田雅人の２ｎｄアルバム、そして100％アコースティックサウンドの３ｒｄアルバムと、ジャズ／フュージョンアーティストとしてのひととおりのスタイルを十二分に堪能したことで、なんだか一区切りついたような気がしてきたのか、私の中では、徐々に"本田熱”が冷めてきはじめた。４ｔｈアルバム「Ｒｅａｌ－Ｆｕｓｉｏｎ」を買いそびれていたら、「Ｗｈａｔ　ｉｓ　Ｆｕｓｉｏｎ」という似たようなタイトルのライブアルバムとライブビデオ（ＶＨＳ＆ＤＶＤ）が発売された。少し前なら「ｏｈ！買い忘れてたぁ。全部買うどー！」と、一気に買い集めていたところだが、このときは「ライブ盤のＣＤだけでいいや」と、消極的になっていた。買っては見たものの、後になって買ったことを忘れていたくらいほとんど聴かなかった。５ｔｈアルバム「Ｃｒｏｓｓ　Ｈｅａｒｔｓ」。アルバムの一曲目はとても印象深かったが、この頃、妻との交際がスタートしていたこともあり、”恋愛"というものにウツツを抜かしている時期であった。正直なところ、もう本田雅人どころではなくなっていた。ロクにもてたことのない私には、ようやくめぐりめぐってきたチャンスに、自分の趣味なんて楽しんでいる余裕がなかったのである。 ２００２年４月に無事結婚。その２年半後の２００４年１０月に第一子が誕生した。次回は、子供が生まれる少し前から話を始めようと思う。

  February 9, 2010

• 【Ｊ－ＭＥＬＯ】

  ※文中のアーティスト名は敬称略とさせていただきます。 １月２３日深夜にＮＨＫでＯＡの「Ｊ－ＭＥＬＯ」に、野呂一生　ＩＮＳＰＲＩＴＳ　が出演していた。ｓｈｋくんが所属するアマチュアバンドのＨＰから情報を得た。（ｓｈｋくんありがとう！）「また見るのぉ～」という子供の声、冷ややかな妻の視線を尻目に、録画した番組を連日繰り返し鑑賞。すばらしい。こんな番組を求めていた。もっとやってくれ！ＮＨＫ！ 昔だったら、このたった３０分の番組をネタにｓｈｋくんと一週間くらい、盛り上がっていることだろう。その頃のお話は、また別の機会に。 

  January 28, 2010

• 平成５年４月～平成６年７月　【挫折編　其の２】

  ※文中のアーティスト名等はすべて敬称略とさせていただきます。 平成５年４月　旭川大学に入学。初めての一人暮らしが始まった。経済的には完全に親に依存していた。買ったばかりのテナーサックスと、収集したＣＤが私の財産だった。 大学に”ジャズ研究会”といったサークルが無いのは知っていた。かといって、サークル紹介での軽音楽部はロック一辺倒で、見た目もちょっと怖かった。そこで、楽器の練習場所として吹奏楽部を選んだ。大学受験では、志望校すべて不合格。上京して青春を謳歌するという夢は実現しなかったが、旭川大学から３年次に東京都内の大学に編入できるという制度があることを知り、まず２年間旭川で過ごし、演奏の基礎を身につけ、編入先の大学でジャズ研へ･･･というプランを想定していた。 楽器を手にしたことで、聴いている音楽にも変化がでてきた。とりあえずサックスがリードを取るジャズのＣＤを買い始めた。購入する基準は、ＣＤを買うとついてくるチラシ。”名盤”と呼ばれるＣＤのジャケットを見つけては、買いあさっていた。”とりあえず・・・”なので、保有するＣＤの枚数は増えていくのだが、ハッキリいってよくわからなかった。それでも、「楽器の演奏がうまくなるためには、一流の音楽を聴かねばならぬ」という自分で勝手なルールをつくり、あれこれと買いあさっていた。 部活動も一生懸命やった。しかし、力の入れ方を間違えた。まず、部員として周りの人と仲良くなろうと、愛想を振りまきすぎた結果、早々に次期役員候補になってしまった。直接指導を受けた先輩は、ハードロック、ヘビメタ系の音楽が好きで、私は、さほど興味も無いヘビメタをその先輩の解説付きで聞かされることとなった。「吹奏楽なんて面白くない。オレは楽譜が読めるようになりたくて、高校のときから吹奏楽を始めた」その先輩はそう言っていた。入部してから２ヶ月くらいたったころだろうか、部員同士のいざこざが勃発した。原因は、「〇〇が××の悪口を言っていた」「△△が派閥を作って反対勢力を煽っている」などといった非常にバカげた、かつ子供じみたくだらないものだった。誰にでも愛想良く振舞っていた私は、気がついたらこのくだらない部内の抗争に巻き込まれていた。結局この騒動は、当事者の一人の４年生を排除することで収束した。この部では、私が入部する一年前にも、やはり部員同士のゴタゴタで１人退部させているとのことだった。周りに尻尾を振って、八方美人に振舞っていた私だったが、この騒動のときはひそかに「なんて頭の悪い集団だ･･･」と思った。周りの人間、そしてこんなところにいる自分に腹が立った。音楽系のサークルにいながら、音楽の話で盛り上がることは無かった。ヘビメタ好きの先輩も、「つまらない」といいながらも”部長”という立場上、やはり吹奏楽部を運営していかなければならない。いい人だったのだが、音楽の趣味は合わなかった。 夏のコンクールでは３０人以下編成の部で、最優秀賞を受賞。歓喜の涙を流す者が大勢いる中、冷めている者もいた。私は一応歓喜の渦の中に入ってはみたが、なんとなく心から「バンザーイ！」とはなれなかった。入部後のゴタゴタ、つまらない合奏練習、次期役員候補・・・。まず吹奏楽というものになじめなかった。クラシックは別に好きでもない。興味があるないにかかわらずみんなで演奏しなければいけないのが吹奏学部。興味がわかない音楽だから、練習も楽しくない。マーチは、金管（トランペット、トロンボーン）の方が迫力があってかっこ良かった。演奏するより聞く側に回りたかった。野球応援にも吹奏楽部で参加したが、これも演奏できるのは大音量がでる金管楽器で、サックス等の木管楽器はお呼びでなかった。その他の合奏では、ドラえもんのテーマ、ルパン三世のテーマ、サンダーバードのテーマなど吹奏楽にアレンジされたものを練習するのだが、これもつまらない。そもそもアレンジがダサい。 秋には学園祭で、吹奏学部はどういうわけかドーナツ屋の出店を出すこととなった。学園祭の最終日、後夜祭とかで他の音楽系サークルが演奏している最中、体育会系のサークルが悪乗りしてビールかけが始まった。吹奏楽部もそのなかに”いた”というだけで後日、次期役員候補３人がそのとき演奏していたサークルに謝罪に行くことになり、私も頭を下げに行った。ちょうど同じ頃、高校時代の同級生の大学でも学園祭が行われており、その大学は札幌だったので、実家に帰るついでにちょっとのぞきに行ってみた。その同級生は「漫画・アニメ研究会」に所属していたが、私の興味はその大学のジャズ研だった。音楽室のような部屋の扉を開けた途端、愕然とした。そこでは、いわゆるジャムセッションが行われていた。当然、吹奏楽部には無い雰囲気である。自分がやってみたいのは、こういう音楽である。「オレはいったいなにやってるんだろう・・・」それでも、１年半後に控えた大学編入に向け、ひと気のない部室で黙々と練習していた。 冬、養護学校で演奏会を行った。私はＭＣを務めることになった。演奏会が終わって帰り際に、車椅子の男の子から「また来年、絶対に来てね。ぜっっっったいね！」と言われた。「わかったよ、元気でね」と答えた。この学校に訪れたのは、これが最初で最後だった。あんなつまらない気分でやっていたのに、見る側には思いもよらない伝わり方をするものなんだなぁ・・・。 冬休みに郵便局での短期アルバイトで貯めた資金で、春休みに東京へ遊びに行った。神奈川県から都内に引っ越した兄の家に入り浸り、雑誌の「ぴあ」に掲載されているライブ情報を元に六本木や新宿などのライブハウスに足を運んだ。和田アキラセッションにゲスト出演していた本田雅人と、坂田明のライブに衝撃を受けた。再び心の中の「オラァ東京さ出てぇ・・・」という田舎モノ根性に火がつき、どうしても抑えきれないほどメラメラと燃え上がり始めた。東京から帰ってきて、またヤマハの音楽教室を見学。講師の演奏は、本田雅人や坂田明に比べたら、屁みたいなものだった。平成６年４月・・・大学編入までにはあと１年ある。「あと１年待ってられるか。東京に行くしかない！」思いつめていたものが一気に噴出し、親に「前期分の学費はまだ収めないでくれ」とだけ伝え、私は退学しようと考えた。まず大学の教授に相談。まったく相手にされなかった。もう頭がおかしくなっていたので、今思い出しても同時の行動心理については理解不能である。緊急帰省。親に「大学辞めて、音楽について勉強したい」と告白。音楽の専門的な知識はないが、ライブハウスのバイトとかしながら、少しでも自分の好きな音楽のある環境に身を投じたい、その一心だった。親から帰ってきた言葉は 「お前に音楽の才能はない」 経済的な話は別として、親元を離れた普段の私の姿を親は知らない。それでも私の可能性を見抜いていたのか。それとも、訳の分からないことを言い出した息子に対する非難か。どっちにしても、頭から思いっきり冷水を掛けられたようなカンジだった。 もし私が、音楽を始めてから順調に技術を身につけ、心身ともに充実し人間としても成長を遂げていたら、誰に相談することもなく、黙って自分の進むべき道に進んで行っただろう。しかし、このときはまだ技術どころか身についたものは何もなく、人間としてもあまりに未熟すぎた。だから自分に自信もなく、”相談”という甘えた行動に走ったのではないか、そんな気がする。「才能がない」の一言に、言い返すあるいは見返してやろうという力も気迫も度胸も私にはなかった。 私が旭川のアパートに帰宅して間もなく、親からは「お前の好きなようにやりなさい。がんばれ」との連絡が来たが、私は、もう”がんばる”とかそういう気にはなれなかった。  「とりあえず”今”を楽しもう。」　 もう先のことを考えるのはやめた。大学編入のこともやめた。吹奏学部もやめることにした。（しかしこのときから退部するまで３ヶ月もかかってしまった） 部活には新入生が入ってきて、年齢と名前のイニシャルが一緒だったある新入部員は、デイブ･ブルーベックの「ＴＡＫＥ５」を聞いてジャズに魅了され、自分のチャーリーパーカーやマイルスデイビスのＢＯＸ　ＣＤを片手に熱く語る男だった。きっと彼とは仲良くなれたと思うが、残念ながらもうそのときすでに私は、吹奏学部から心が離れており、”吹奏楽部”に関するものをすべて排除したかったので、私が退部してその彼とは徐々に疎遠となっていった。吹奏楽部から早く足を洗いたい強い気持ちとは裏腹に、吹奏学部で一緒だった後輩に突然告白され、交際がスタートした。モテたことがなかったので舞い上がってしまったのだった。結局何の進展もないまま、その年のクリスマス直前に破局。これだけイヤな思い出のつまった吹奏学部・・・。 私は、いまだに”吹奏楽”と聞いただけでムシズが走る。 部活をやめたことにより、楽器を練習する場を失ってしまった。天気の良い日に、近くの河原で練習しようとしたが、長続きはしなかった。室内でも演奏できるエレクトリック・ウインド・インストゥルメント（ＥＷＩ）というシンセサイザーを買ってみたのだが、シンセサイザーというものがよくわからず、ラジカセをアンプ代わりにＣＤにあわせて吹いてみたりもしたが、これも結局使いこなすことができず、現在は実家の物置に眠っている。 こうして”挫折”とはいささか大袈裟な表現だが、若い頃に経験した”思い通りにいかなかったこと”を２回にわたり振り返ってみた。おそらく当時は挫折などとは思っていなかったはずだ。  なぜなら私には、そのとき思い通りにいかなかったことなんて、忘れてしまうくらいの”今”があったからである。      

  January 23, 2010

• 平成４年４月～平成５年３月　【挫折編　其の１】

  ※文中に登場するアーティスト、タレント等については、すべて敬称略とさせていただきます。 浪人生活がスタートした。代々木ゼミナール札幌校に入校。まったく同じ時期にＴＢＳアナウンサーの安住伸一郎や俳優の大泉洋も同じ予備校に通っていたそうだ。私の志望校は、早稲田大学を始めとして東京都内の私立大学だったので、予備校の最上階にある代ゼミ本校の授業を衛星中継で受けられるというクラスを選択した。一年間の学費が確か７２万円。親から当たり前のように出してもらったが、今の私の月給の３か月分でもまだ足りない。よく出してくれたもんだ。当時の私の生活パターンは、月～金を予備校で過ごし、土日は家庭学習といった具合だった。金曜日は翌日休みなので、授業が終わったら映画を見に行ったり、ＣＤ屋（中古屋含む）に足を運んでいた。ジャマイカ発祥のスカという音楽に対する熱は冷めることなく、本場ジャマイカの「スカタライツ」や「プリンスバスター｣、「デスモントデッカー｣、そして８０年代のイギリスのスカバンド、「スペシャルズ」や「マッドネス」、さらに９０年代の「トロージャンズ」、「バッドマナーズ」、「スカフレイムス｣といったＣＤを買いあさっていた。”スカ”というメジャーではないジャンルの音楽を探求し、「他の人が知らないものをオレは知っているんだぞ」という妙な満足感・優越感に浸り、雑誌の隅や購入したＣＤのライナーノーツに書いてあるバンドのＣＤを発掘しては、ひとり悦に浸っていた。 当時１９歳。もしタイムマシンがあったら、迷わず当時に戻って、愚かなこのバカな若者の首を思いっきり絞めてやりたい。 久保田利伸を聞き始めたときと同じように、テレビ番組のオープニング・エンディングで気に入った楽曲が見つかったら、その曲が収録されているＣＤを探すという行為は相変わらずだった。前述の「バッドマナーズ｣の曲は、日本テレビ・ＴＶジョッキーの番組内で使用されていた。ある番組のエンディングで、”小野リサ”がうたっている曲がとても好きになった。まず近所のＴＵＴＡＹＡへ。「この手の音楽は”ボサノバ”っていうのか・・・」代ゼミの売店で、小野リサのニューアルバムを購入。聞きたい曲が入っていた。ビンゴ！である。その後、「サンバ／ボサノバ」という廉価版ＣＤを購入。もう手元にはないが、おそらくジョアンジルベルトとスタンンゲッツのアルバムから数曲、そのほか「イパネマの娘」、「マシュケナダ」といったサンバ・ボサノバのスタンダードがオムニバスで入っているアルバムだった。このＣＤはよーく聞いていた。ボサノバという音楽を世に知らしめたアントニオ・カルロス・ジョビンという名前も知った。日曜日の家庭学習の合間には、山下達郎の「サンデーソングブック｣というラジオ番組を聞いていた。詩の内容が・・・というわけではなく、曲の感じがとても私好みだったので、数枚のアルバムを中古で購入した。手元には現在１枚しか残っていない。 予備校での授業は、とても楽しかった。代ゼミ本校に在籍している講師陣の授業を衛星中継で直接を受けることができるという、最良の学習環境に置かれていたことで、なんだか自分がとても勉強をしているような錯覚に陥っていた。模擬試験では、たいした点数は取れていないのに、「いや、私の真の実力はこんなモンではないのだ」と自分の学力を過信していた。こうした過信から生まれる”うぬぼれ”は、徐々に崩壊へと向かっていった。受験本番前、最後の模擬試験。第一志望校の合格判定は４０％、第二志望校が５０％、第３志望校で７０％であった。結果がでないことに対して不安になる一方で、深夜ラジオは欠かさず、音楽鑑賞の趣味もどんどん加熱していった。いくら浪人生活が楽しいとはいっても、もう一年受験勉強をする気にはなれなかった。「早く受験勉強から解放されたい・・・」という一心だった。「合格したい」という強い意志がいつの間にか「解放されたい｣という逃避願望に変化してきていた。試験は年が明けて２月に行われる。しかし、「いよいよ追い込み」という時期になって、だんだん勉強に身が入らなくなってきた。  そんな状況で臨んだ大学受験。当時神奈川県に住んでいた兄の家に泊まり、都内の大学で受験する。万全とはいえない受験対策に加え、試験に立ち向かおうとする気力が沸いてこない。焦りばかりがつのり、試験当日の朝には、その焦りからくる緊張が臨界に達し嘔吐。結局本番はボロボロ。大学受験２年目も志望校はすべて不合格だった。 こうして、「進学のため上京する」という２年越しの夢は、果たせなかった。 もう一年、浪人する気力はない。「専門学校にでも行くか･･･」なんてことを考えながら帰省。心中を父親に話すと、「お前の考えは甘い｣と言われた。私も親になってみて、今分かることだが、７２万円もの学費を出させた息子に「受験失敗したけど、もう浪人したくないから専門学校にする。好きにさせてくれ」なんて言われりゃ、そりゃ頭にもくるだろう。しかし、当時の私は親からのこの一言に憤慨し、「一刻も早くこの家から離れたい」と思い、３月中に試験を行う大学を探した。 「旭川大学・・・経済学部か。函館大学・・・商学部か。」どっちでもよかったのだが、旭川市には数年前ラジオの公開録音に参加するために訪れた土地だったため、記憶に新しい”旭川市”という土地を選んだ。この時期の試験は、私のようにとりあえず進学したいという人が集まったようで、倍率は高かったと記憶している。一年間東京の私立大学を目指して勉強していた私は、この大学の試験を難なく突破。これでとりあえず実家からは離れられる。高校の友人は、「何で東京の大学目指してたのに･･･もったいない。」と言ったが、私はもう進学先のことなど、どうでもよかった。 私の大学受験の戦績は以下のとおりである。【平成４年度】明治学院大学　→　×日本大学　→　×東洋大学　→　×立教大学　→　×早稲田大学　→　×【平成５年度】国学院大学（Ａ日程）　→　×中央大学　→　×国学院大学（Ｂ日程）　→　×早稲田大学（教育学部）　→　×早稲田大学（第一文学部）　→　×旭川大学　→　〇　結果　　　　１１戦　１勝１０敗 なぜ上京したかったのか・・・簡潔に言うと、深夜ラジオを聞き始めたころから、ラジオ番組やテレビ番組に関係した仕事に就きたいという野望を抱いていたからである。テレビ／ラジオ局に就職するならなら、ローカル局ではなく、キー局でなければいけなかった。だから地元のラジオ局の番組は聞いていなかった。愚の骨頂とは、このことである。こうした私の、「東京さ出で、ひと旗挙げてやんどぉ～」という、しょうもない田舎モノ根性は、この後もしばらく消えることはなかった。 いろいろと音楽を聞いているうちに、自分も楽器を演奏してみたいという強い欲求を持ち始めていたことも、２浪したくなかった理由の一つである。大学に合格して間もなく、ヤマハの体験レッスンを受け、それから間髪いれず楽器屋で、子供の頃から貯めていた預金と合格祝いをあわせて、ヤマハのテナーサックス（１８万円）を購入した。中学２年生までは、父親と同じ教員になることが当然の道と思っていたが、だんだんとズレが生じ、上京を夢見て大学受験するも失敗。そして今度はまったく未知の領域への挑戦と、これから何が起こるか見当もつかない新しい世界に身震いを覚えた。 しかし、このときすでに次の「挫折」への序章は始まっていた。

  January 9, 2010

• 【反省編】

  ※文中のアーティスト名はすべて敬称略とさせていただきます。 先日、「東京事変」というバンドが存在することを知った。驚いた。最初にこの名前を目にしたとき、東京で何か事件でも起こったのかと思った。 このバンドでボーカルを務める椎名林檎という名前は知っていた。実は１０年位前、椎名林檎の「本能｣というシングルＣＤを、大学時代の友達であり、当時私と勤務地が一緒だったＮ君に、貸してもらった。その後、彼は結婚。私は転勤。借りたＣＤを返すタイミングを逃してしまった。 「このＣＤどうしよう・・・」 別に仲たがいしたわけではないが、彼の結婚式に出席したとき、「これで彼と会うのは最後だな・・・」と何か直感めいたものが頭の中をよぎった。実際、現在彼とは年賀状のやり取りしかしていない。 「まぁ、いいや・・・」 私は人様から借りたＣＤを、中古屋に売ってしまった。 Ｎ君すまない。本当に申し訳ない。ところでキミはどこで何をしてるの？

  December 20, 2009

• 平成元年４月～平成４年３月　【一人音楽鑑賞の旅　編】

  ※文中のアーティスト・タレント名は、敬称略とさせていただきます。 高校に入学。私が高校を選んだ理由は、上京して大学進学するためである。そのためには３年後の受験に向けて”お勉強”に専念しなければならない。覚悟はしていたつもりだった。ところが、周りは頭のよさそうな人ばかり。中学での成績が常に上位だったことで、すっかりうぬぼれていた私の鼻は、高校に入ると同時に思いっきりヘシ折られた。クラスの雰囲気にもなじめない。３年後の目標どころではない。最悪の精神状態であった。精神科を受診したこともあった。気晴らしは、深夜のラジオだった。月、火、木、金はオールナイトニッポンを録音し、帰宅後にチェック。水、土はコサキンをリアルタイムで聞き、日曜深夜は、ニッポン放送にダイヤルを合わせ放送終了の１:３０まで聞いていた。ＦＭの「ジェットストリーム」もたまに聞いていた。城達也のナレーションが数回流れ、あとは今で言う「癒し系」の音楽がずーっと流れるという大変心地よい番組だった。もう一つの楽しみは、近くにあったＴＳＵＴＡＹＡに通うことだった。当時、「噂的達人」という番組のオープニングとエンディングに使われていた久保田利伸の曲が気に入ったので、ＣＤをレンタルして、ダビングしたカセットを保有していた。ある日、レコード店で久保田利伸のベスト盤が発売されるのを知った。予約して購入した。「ＢＡＤＤＥＳＴ」というタイトルのベスト盤だった。私がこのＣＤを買ったという情報はいつの間にかクラスで知れ渡ってしまい、次から次へ「貸してくれ」と数人の同級生の手に渡ることとなった。久保田利伸は当時それほど人気があったのだ。つまらない毎日を、深夜ラジオとＴＳＵＴＡＹＡで紛らわしているうちに、平成元年が終わった。年末に東京から帰ってきた兄と姉と３人で、正月特番の「輝く！日本イカ天大賞」という番組を見た。「イカ天」というアマチュアバンドが出場する番組の名前は知っていたが、見たことはなかったので、まったくの予備知識というものがなかった。兄が、「『たま』ってバンドが面白い」と言っていたので、どんなバンドだろうと思って期待していたら、期待をはるかに超えるインパクトだった。言葉ではなんとも形容しがたい音楽。奇妙な風貌。途端にファンになってしまった。しかしすでに５週連続勝ち抜けによりグランドチャンピオンとなっていた「たま」は、イカ天には出場しておらず、放送中の番組の中では「今日のたま」というようなコーナーで紹介されている程度であった。冬休み明け、クラスの中に、イカ天を毎週録画して保存しているという同級生がいたので、「たまが出ていた週だけ貸して」と５本のビデオを貸してもらった。後で調べてみると、たまが出場していた時期は、番組史上、出場バンドの質が高かったそうだ。そのあとリアルタイムでイカ天を見たが、とてもつまらくて数回見ただけで止めた。辛かった１年目が終わった。クラス替えがあった。イカ天のビデオを貸してくれた人とは、別のクラスになった。しかし、今度のクラスでは、顔見知りが一人もいないにもかかわらずなぜかすぐに周りの人と仲良くなることができた。「たま」はデビュー直前に、札幌の本多小劇場（当時)でライブを行った。チケット購入時はものすごい行列だった。姉と二人で何とかチケットを二枚ゲットし、このライブを見ることができた。このライブはとてもよかった。芝居小屋とたまの音楽という取り合わせが、よかったのだろうか。狭い会場に「たま」の４人は、ピッタリというカンジだった。姉がインディーズ盤を２枚購入した。どちらもレコード。これもよかった。期待はどんどん高まった。ところが、メジャーデビューした途端、なんだか私が好む「たま」とは違う、ビックな存在としての「たま」が音楽界に現れたカンジだった。デビューシングルはホーンアレンジが施されていた。姉はとても不満だったようだ。私の感想としては、「とにかく音がクリアすぎる｣。たまの音楽はＣＤよりレコードのほうがいい。札幌市民会館（当時）で行われたデビュー後のライブにも行った。・・・最初に見たときのほうがいい、そう思った。たまの音楽に合わせて立ち上がって踊っていたファンもいるらしい。そんな話を聞いたら、ライブを見に行く気にもならなくなった。その後アルバムを２、３枚買ったが、ライブには足を運ぶことなく、興味は次第に薄れていった。 当時は空前のバンドブーム。私もその波に乗りかけたが、事態は思いも寄らぬ方向に転がり始める。ある日、イカ天出身ではないが人気バンドのユニコーンの３ｒｄアルバム・「服部｣をＴＳＵＴＡＹＡでレンタルしようとした際に、変なジャケットのＣＤを見つけた。「東京スカパラダイスオーケストラ　スカパラ登場」ショッキングピンク地に緑色のおかしな字体でそう書かれていた。そのジャケットになんとなく惹かれ、ユニコーンと一緒にそのＣＤも借りてみた。天気がいい日だったので、帰り道に土手に座って、歌詞カードを見ようとした。すると、歌詞のついている曲が１曲しかない。それも昭和歌謡曲のカバー。メンバーが１２人。格好も平成っぽくない。「なんだこれは？」期待が高まってきた。帰宅し早速聞いてみる。１曲目は「さんまのまんま」のオープニングに使われている曲だった。「あぁ！この人たちの曲だったのかぁ！」ズンチャ、ズンチャ、ズンチャ・・・というモッタリとした２拍子のリズム。今までに聞いたことのない音楽だった。 ・・・インストゥルメンタル・・・歌詞がない曲はそう呼ばれていることは知っていた。映画のサントラで経験済みだったからである。略してインスト音楽というそうだ。スカパラのおかげで、今まで聴いたことのある、インスト音楽の記憶が一気に蘇ってきた。・・・中学の給食時間の校内放送やテレビ番組のＢＧＭ、デパートなどの店内で流れていた曲、ジェットストームで流れていた曲・・・佐野量子～久保田利伸～たま　と一貫性がなかった音楽の趣味だったが、スカパラのアルバムをキッカケに、ひとつの方向性が定まった。 音楽雑誌を見つけては、当時デビューして間もないスカパラの記事を探し、見つけたら熟読。ある雑誌では、スカパラの特集とベースになっているジャマイカ発祥の音楽「スカ｣について紹介されているページがあった。「Ｃｌｕｂ　Ｓｋａ　’６７」というアルバムについて述べられていた。レンタルだけに飽き足らず私はスカパラのＣＤとこのＣＤを購入し、スカという音楽に傾倒していった。またこのスカパラの特集では、他のアーティストからの応援コメントも掲載されており、その中に「ゴンチチ｣という名前のアーティストからのコメントがあった。ある夜、音楽番組を見ていたらアコースティックギターの２人組がバンドを従えて演奏していた。ゴンチチだった。「これが、ゴンチチかぁ」まずＴＳＵＴＡＹＡでレンタル。私がゴンチチを知った時点ですでにデビューしてから、７年が経過していることを知った。 スカパラのライブに行った、ひとりで・・・。音楽の趣味が合う友達は誰一人としていなかったし、自分から「俺こんな音楽聞いてるんだ」なんてことを話しかけたところで、相手にもされないだろうことは、目に見えていた。スカパラは、デビューアルバムとその次に発売されたミニアルバム、そして一番最初に発売されたライブアルバムまではよかったのだが、２ｎｄアルバムがちょっと期待はずれだった。本場ジャマイカのスカを聞き始めていたこともあり、 スカパラにもこちらのスタイルの継承して欲しかったのだが、２ｎｄアルバムでは速いテンポのロック系のスカが多くなってしまっていた。それに対しゴンチチは、デビュー以来スタイルが変わることがない。いつの間にかゴンチチのＣＤの数が、スカパラのそれを上回っていた。 一人音楽鑑賞の旅は、とどまることがなかった。スカがジャズの影響を受けていたこと、ゴンチチの”チチ”はチャーリーパーカーというジャズ界の巨人と呼ばれる人の曲から名づけたということを知り、ジャズというジャンルにも興味がわいてきた。当時、音楽に詳しそうな合唱部所属の同級生のＳに「ジャズといえば、どんな人がいるの？」と難しい質問をぶつけてみたところ、「グレンミラーとか･･･？」と彼は自信なさげに答えた。彼はジャズに詳しくなかったようだ。私はＳから聞いた”グレンミラー”という名前を頼りに、ＣＤを探した。札幌・ＢＩＧ　ＯＦＦ（当時)の一階で、グレンミラーの廉価版ＣＤを購入。ついにジャズの世界にも足を踏み入れることとなった。深夜に「ベニーグッドマン物語」という映画が放送されていた。これを見てベニーグッドマンの廉価版のＣＤを購入。スカ、ゴンチチ、ビッグバンドジャズ・・・もう止まらない。 高校入学直後のあの地獄のような毎日は、遠い遠い過去の話となった。そうして平成４年２月、大学受験を迎えた。５つの大学を受験したが、すべて不合格。 そりゃそうだ、試験のない日に中野サンプラザでスカパラのライブ見てたんだから・・・　

  December 12, 2009

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  現在　【ISSEI　NORO　INSPRITS　編】

  ※文中のアーティスト名はすべて敬称略とさせていただきます。１２月２日、INSPRITSの新譜が発売された。【送料無料】Issei Noro Inspirits (野呂一生) / MOMENTS 【CD】音楽限定のブログをやるなら全曲レビューを書くべきなのだろうが、そこまでやる根性がない。というわけで、INSPRITSにまつわる思い出などをダラダラ綴ってみようと思う。 野呂一生がリーダーを務めていたカシオペアについては、後日詳しく述べる予定だが、平成５年にＳＨＫくんという１６年来の付き合いとなる友人に、半ば強引に聞かされたことがキッカケで大ファンとなった。最初は鳴瀬喜博のパフォーマンスに魅了され、「カシオペアはいい！」となったのだが、私の興味は、次第に平成２年以前の旧カシオペア（野呂、向谷、櫻井、神保）に移っていった。 やがて２代目ドラマーの熊谷徳明が脱退。初代ドラマーの神保彰が復帰し、旧カシオペアとほぼ同じメンバーとなったにもかかわらず、なぜか違和感を覚えた。なんか違う･･･。カシオペア結成２０周年ライブでは、旧メンバーだけによる曲もあったのだが、その頃には私の音楽に対する熱自体が冷めてきており、この演奏を見ても感動は薄かった。最後のライブＤＶＤとなった「５ＳＴＲＡＳ」（カシオペア＋シンクロナイズドＤＮＡ）でも、見る映像といったら、決まって昔の楽曲ばかり。私の好みは、「１９８０年～８８年の旧メンバーによるカシオペア」に限られるといってもいいかもしれない。 平成１８年、カシオペアは３０周年を目前に活動休止。それから２年後の昨年、リーダーの野呂一生が新バンドを結成するとの情報を得る。ただ、私は野呂一生のソロ活動には、あまり興味がなかった。野呂信者である前述のＳＨＫくんから、過去にソロアルバムを聞かせてもらったかもしれないが、あまり印象に残っていない。「新バンド結成といっても、まさかあの時代のカシオペアが復活するわけでもないだろう。あの時以上のものが、 また生まれることはないだろう」と思っていた。そんなカンジだったので、新バンド・INSPRITSのデビューアルバムも聞きそびれていた。ところが、ＣＤが出て間もなくして、今度はライブＤＶＤが発売されるとのこと。野呂一生と神保彰が在籍するバンドの映像である以上、これは買っても損はないだろうと思い、amazonで購入して見てみたら、これが驚いた。真ん中でギターを弾いているおじさんは、私の記憶では５０歳半ば。後ろでドラムたたいている人も確かもうすぐ５０歳。それなのに、「なんて若々しいんだ！なんて新鮮な音なんだ！」と私は半ば放心状態であった。ベース、ピアノ、シンセの３人は、カシオペアを聞いて育ったという私と同世代の人たちだった。　　　　　　　（野呂氏曰く「マジメ世代｣）またその人たちがいい。特にベースのヤジマユウジは、櫻井スタイルだけでなく、おそらくいろんなプレイヤーのスタイルを、うまい具合に融合させていると思われ、そのブレンド具合というかなんというか、私の好みのど真ん中なのである。ツインキーボードというのがまた、二つの違った味を楽しめる鍋料理みたいな具合でとてもいい。ジンサクがバンド形態だった頃もたしかキーボードが二人だったような･･･。 このライブ映像に驚いていたが、今回のＣＤにもこれまた驚かされた。ライブ版を聞いているような錯覚に陥った。バンド名には「ISSEI　NORO」とついているが、５人５様、とにかくスゲーの一言に尽きる。 ＩＮＳＰＲＩＴＳは、私の中で絶対に超えることがないであろうと思っていたあの時代のカシオペアを超えた。

  December 5, 2009

• 昭和６３年～平成元年　【黎明期編】

  ※文中のタレント名はすべて敬称略とさせていただきます。 中学２年も間もなく終わる昭和６３年の３月のことだった。その夜は全然眠れなかったので、ラジカセのスイッチをつけてみるとラジオから聞こえてきた声の主は、小堺一機＆関根勤だった。いわゆる「コサキン」である。それまではテレビっ子の私だったが、「コサキン」は今まで見てきたどのお笑い番組よりも面白かった。この日を境にして、深夜ラジオに傾倒していく。北海道でこの番組は、ＨＢＣラジオという地方局で放送されていた。ＨＢＣラジオでは、どういうわけか深夜２:００以降はＣＭの代わりに音楽が流れていた。ロックやポップスでもない、ＢＧＭのような音楽だった。番組終了の３:００まで、このＢＧＭのような曲が数曲、毎週毎週流れるのだが、不思議と飽きることなく、耳を傾けていた。それまで聴いていた音楽といえば、年の離れた姉と兄のマネをしてサザン、ユーミン、山下達郎などを聞いていた。そのほかには、初めてラジカセを買ってもらった頃に、姉からプレゼントしてもらった映画･「スタンドバイミー｣のサントラ（カセット）をよく聞いていた。それと入手経路は忘れたが、「バックトゥザフューチャー」のサントラもダビングして保有しており、この二つのカセットテープはホントによく聞いていた。いまでもオールディーズがなんとなく好きなのは、この頃の体験が元になっているのだろう。さて、「コサキン｣には当時２０歳の佐野量子（現･武豊夫人）が、月一でゲスト出演しており、私は、恥ずかしながらこの５歳年上の女性アイドルの虜となってしまった。中学３年の夏、佐野量子が札幌駅前のそごう（現・エスタ）の屋上にファンの集いでやってきた。私は中一のときの同級生であり、３年間部活動が一緒だったＹ君と二人でこのファンの集いに参加した。佐野量子が新曲を歌っている途中、デパートの屋上に突風が吹いたことで、スカートが思いっきりめくれあがってしまい、パンツが丸見えとなり、佐野量子はショックのあまり歌えなくなってしまうというハプニングに遭遇した。そのファンの集いで私は、サイン欲しさと握手したさにシングルカセットを購入。これが生まれて初めて自分で購入した音楽ソフトである。その数ヵ月後は、ベストアルバムが出るということで、予約までして購入。これが生まれて初めて買ったＣＤである。 中学最後の年ということで、受験勉強が始まった。姉と兄が上京して青春を謳歌しているのを見ていたので、私もそれに倣って、上京したいと思っていた。しかし上の二人は演劇やアニメーション製作といった一芸を持っていたのに対し私にはそんな技が一つもない。上京する道は「大学進学｣しかないと考えた。そこで、高校は少しでもランクが上の学校を…と思い受験勉強に力を入れた。模擬試験は、札幌の中心街に近い高校で行われた。試験の後はＣＤ屋に直行し、佐野量子のアルバムを購入。本屋で写真集を買うこともあった。勉強の合間にＣＤを聞いてリラックス。あるいは、写真集を見て目を癒す。楽しい受験勉強だった。東京都内にある某大学の付属高校が札幌市内にあったので、本当はそこからエスカレータ式に大学に入学というコースを希望していたのだが、学費が高かったこともあり、親からは遠まわしに反対され、結局、札幌市内では進学校の部類に入る公立高校を受験し、無事合格。進学が決まった。平成元年４月のことである。    

  November 27, 2009

• はじめまして

  ４年ほど前から某社のブログで、家族のことなんかをネタに書いてきましたが自分の音楽鑑賞ネタについて書き始めると、これがどんだけ書いても止まらない。「それじゃぁ、私的音楽趣味のブログでもやってみるか」と思い立ち、音楽ネタ限定のブログを始動いたします。不定期更新です。楽しんでるのは私と、ごく少数の友人だけです。でもいいんです。それでは、はじまりはじまり。

  November 23, 2009

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