「伊勢志摩殺人迷路~円空の謎~幻の絵をめぐる誘拐!復讐!爆死証拠なき身代わり殺人完璧なアリバイの謎」
29日に、TBS系列の月曜ゴールデンで放映していたサスペンスドラマ、「伊勢志摩殺人迷路~円空の謎~幻の絵をめぐる誘拐!復讐!爆死証拠なき身代わり殺人完璧なアリバイの謎」。西村京太郎原作の十津川警部シリーズのひとつである。浅見光彦シリーズなら必ず見ているのだが、十津川警部シリーズは、普段はそれほど視てはいない。しかし、ドラマのモチーフが「円空」だったので、興味が湧いた訳である。○原作「近鉄特急 伊勢志摩ライナーの罠」 円空とはもちろん、江戸時代前期に、全国を巡って、生涯に12万体もの仏像を造ったと言われている旅の聖のことである。彼の作る仏像は、優しげな笑みをたたえた何とも魅力ある表情を持ち、多くのファンを持っている。また彼は絵も残しており、ドラマの中の説明によると、仏像は全国で5342体だが、絵の方は志摩半島に148枚しか残っていないらしい。いずれも墨絵であり、もし彩色画が発見されれば、その価値は計り知れないと言われる。 さて、ドラマの内容だが、十津川警部が休暇で訪れた伊勢志摩の大王崎で、男女2人の刺殺体が見つかった。彼らは、東京に住んでいる実在の夫婦を装っていたが、まったくの別人だった。そのうえ、彼らが装っていた夫婦も行方不明となっていたのだ。そして、この事件には、円空が描いたという色彩画が絡んでいたのである。一言で言えば、円空をモチーフに、人間の欲望と復讐を描いたドラマだ。○十津川たちの泊った「賢島ビューホテル」 しかし、色々とツッコミどころが多かったのも事実だ。まず、十津川は、地元警察の女性刑事に、事件の解決の目途がつくまで、捜査の指揮をとってくれと頼まれるが、警視庁の警部が、頼まれて三重県の所轄で指揮をとるなんて、まずありえないだろう。おまけに、後から続々と十津川の部下がやってきている。 また、志摩スペイン村で、落とした鞄が爆発したとき、近くにいたそのかばんの持ち主が空中を飛ばされたが、あの程度の爆発で、あれだけ人間が吹っ飛んでいくのは、いかにも不自然だ。 さらに円空の彩色画、行方不明になっていた夫婦が、ある寺で発見したということだが、いかにも自分の物のように扱っている。それって、その寺の所有物だろう。 ともあれ、全国を行脚し、人々の幸せのために仏像を造り続けた円空さんだ。欲望の対象にされて、苦笑いをしているかもしれない。 もうひとつ、せっかく円空を扱ったのだから、もっとたくさんの円空仏を登場させてほしかった。円空の墨絵が画面で見られたのはうれしかったが。(原作)・西村京太郎 :「近鉄特急 伊勢志摩ライナーの罠」(監督)・池澤辰也(出演)・渡瀬恒彦(十津川警部)・伊東四朗 (亀井刑事) ほか○関連ブログ記事・歓喜する円空○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」