ごんどうごんぞうじゃ。

おじさんといっても「カールおじさん」ではありません。
実在していたボクの叔父さんです。
おふくろの弟で、家も実家から車で30分くらいの
おふくろの兄弟の中では、一番近いところに住んでいました。

高校受験の時には越境入学なので
その叔父さんがいろいろ段取りをしてくれました。
合格したら、喜んでコートを買ってくれました。
ボクはそのコートを高校の3年間、
そして京都にいってからもしばらく着ていました。
ただ京都にいってから3～40kg痩せたもので
そのコートは当然バカでかいものになり
着なくなってしまいましたが・・・。

京都にもボクの両親を連れて、遊びに来てくれました。
おやじの足がちょっと不自由だった事、
それよりも二人だけでは絶対に上野駅で迷うだろうからという理由で
一緒について来てくれました。

ボクが田舎に帰ると、それに合わせて顔を出してくれました。
昼間からビールをたくさん飲み、大声で笑って、酔いつぶれて寝る。。。
そんなパターンの叔父さんでしたが、晩年はそんなパターンも少なく
定年を迎え、近所のおばさんたちと
ゲートボールやグランドゴルフ三昧だったらしく
会場からおばさん達を家まで送るアッシー君もやっていたようで
「まんじゅうひとつでそんな事やってるのよ」と
叔母さんは嘆いていましたが・・・。
え？まんじゅうって？隠語の方じゃないですかって！
食べる方のまんじゅうですたい！！

叔父さんが病気だって聞いたのは3年前。
姉の旦那が医療関係に勤めていた関係で
叔父さんはよく姉にいろいろな事を尋ねていたらしく
そんな姉も最初は叔父さんに口止めされていましたので
誰にも話さなかったのですが、いよいよって事になり
ボクに電話をかけてきました。

「実は叔父さん、あんまり良くないんだ」

数ヶ月後、叔父さんは入院してしまいました。
たまたまその夏に、高校の同窓会が田舎であり、
叔父さんの見舞いに病院にも立ち寄りました。

ベッドの上の叔父さんは「え？誰？」て思うくらい
変わり果てていました。
ちょうどお昼時で、娘におかゆをスプーンで食べさせてもらっていました。
「あー」とか「うー」しか言わずに、ごはんを食べています。
ビールを豪快に飲んで、大声で笑っていた叔父さんが
とっても小さくなったように感じます。
ボクの事が誰なのか、わからないのかも知れません。

ボクは細くなった叔父さんの足を静かにさすりました。
すると突然叔父さんは、はっきりいいました。

「ひとりか？彼女は来なかったのか？」

前年の夏、叔父さんの家に彼女を連れてあいさつにいきました。
親戚では、叔父さんだけに彼女を紹介しました。

「うん。同窓会だったから。今回は一人だぁ」

叔父さんはヤクルトジョアにストローを刺してもらって飲み出しました。
うまく飲めないらしく、口元を娘に何回も拭いてもらいながら。
「じゃあまた来るから」とおふくろが突然席をたちました。
叔父さんにあいさつをして、あわてて後を追いました。

「腹減ったな。とんかつでも食うべ」とおふくろがいいました。
とんかつ屋に着いて、ヒレカツを頬張りながら
「あんな風になったらもうダメだな・・・」
とおふくろがつぶやきました。
自分はまだまだ元気だとボクに見せようとしているのか
でもやっぱりヒレカツ定食を平らげる程の食欲はないらしく
3つのうちの2つのカツは「食べろ」といって
ボクの皿に移しました。

それが8/11。4日後、もう家に戻っていたボクに姉からメールが入りました。

（叔父さんが今朝、亡くなりました。）

うそやろ？こないだだよ。ついこないだ会ったばっかりだよ！
姉貴は会ってないやん！とっても逢いたがってたよ。叔父さん。

電話だと泣き声になってしまうのがイヤでボクもメールにしました。
8/15。叔父さんの終戦記念日になりました。

前の年の秋、紅葉を観に行こうといって、叔父さん家族とドライブにいきました。
まだまだ元気だった叔父さんにボクはおそばをごちそうしました。
いろいろ世話になりながら、叔父さんにしてあげれたのは
結局そば一杯だけになってしまいました。
ごめんね。叔父さん。

お通夜の日に、気丈に振る舞っていた叔母さんと娘は
その時に撮った写真を見て、堰を切ったように泣きました。
とてもいい写真で、叔父さんの性格までも映っているような写真で。
何故か片方の靴下はズボンの上にきていて・・・。

今年は命日に帰れませんでした。すいません。
高速を1000円にされたもんで、いっぱいだし（笑）
なんとなく、お盆のあたりからイライラしていたのはそのせいかもしれません。
また帰ったら寄るね。

「誕生日」の次は「命日」の話かい！！とつっこんでいるあなた。
人は生まれて、そして死んでいくものなのです。

グッドラック。