戦争と平和
208分とはいえ原作のダイジェスト感は否めなかった。しかし、要所要所を押さえてあったので十分楽しめた。ロシアの老練な軍司令官クトゥーゾフが思ったより若かったがイメージしていた通りの風貌だったので笑ってしまった。ヘンリー・フォンダ演じるピエールやアンドレイを演じたメル・ファーラーに少しおっさん感もあったが役にはハマッていた。観る前から、ナターシャがオードリー・ヘプバーンであるのは明らかだったが、こちらはドンピシャだった。戦闘シーンや絢爛な舞踏会のシーンに迫力があったのは映画ならではだった。しかし、貴族の一家が急に思い立ち、月夜の雪原を二台の馬車で田舎の別荘へ楽し気に向かうシーンに、何故か、ぐっと来た。映画は、飛び切りの美人でやんちゃかつ無垢なナターシャを巡る男たちと、誇大妄想的なナポレオンとクトゥーゾフとの闘いが主な筋だった。ナターシャは、貴族の非嫡子で内向的なピエールと有能な軍人アンドレイ、遊び人の男たちの中で揺れ動く。ナポレオンはモスクワを占領するが市民や農民の反抗、軍の規律の崩壊、厳しいロシアの冬によって自壊する。それは、クトゥーゾフの思う壺だった。あさはかな民衆が生み出したあさはかな英雄はいずれ滅びるのだ。