基礎編
らんちうの育て方(その1) 1. らんちうの上手な育て方 (1) 大切な育て方のマスター 1) らんちうの美しい姿形、色彩の鮮やかさ、泳ぎの良さなどは 個々の飼育者によって全く変わったものになりますし、同じ姿形 のものは1尾として出来上がらないものなのです。そこに多くの らんちう愛好家を虜にする魅力があるのだと思います。それだけ に多くの愛好家が飼育方法の研究に熱心に取り組んでいるのです。 2) らんちう飼育を始められた方々にとっては、上級者が努力する 飼育ノウハウの向上どころではなく、普通に飼育することすら難しく 感じておられる方も沢山おられるとお思います。そこで先ずは上手 に育てるために必要と思われる基本的な事柄から述べてみます。 (2) 飼育水の作り方 1) らんちう飼育で最初にマスターしなくてはならないのは水作りと 水替えです。「らんちう作りは水作り」と昔から言われているように 大切な事柄なのです。 2) 水源 一般的に、入手出来るものを中心にその特徴と使用上の留意点を 纏めます。 (水道水) 特徴は、1番入手しやすく安心して使える水質であるということ です。難点は量にもよりますが使用料が高くつくことです。それと 塩素を含んでいるのでそのまま直ぐには使えません。塩素は通常 1日(夏場では約半日)汲み置きすれば消えます。 (地下水・井戸水) 多量に使う場合は水道水に比べて安くなります。但し、水質は 水源により異なるので、飼育水として適しているかどうかの検査を 事前に行っておくことが必要です。通常汲み上げた直後は水温が 低いので日射などによる加温が必要となります。通常は1日汲み 置けば使用できます。 (河川の水) 水質の良い河川の近くに住んでいる方が使用していますが、 普通はなかなか入手し難いと思われます。 3) 水作り 水道水も地下水も通常1日汲み置きすれば、そのまま使用できる 状態になります。1日汲み置けば池の水温とほぼ同じになり水道水 の塩素も抜けます。汲み置き中に、水中に含まれる溶解酸素量が 不足しないようエアーを入れて置きます。 尚、成魚や秋以降の当歳魚等に使用する青水の作り方については 別項で述べます。 (3) 飼育水の替え方 1) らんちうの排泄物などにより水質が悪化したり、青水が濃くなり 過ぎたりするとらんちうに害を与えますので、そうなる前に水替えを 行います。池で飼育する場合には、通常、浄化設備は基本的に 使わずに古くなった水を新しい水に替える方法を取ります。 2) 飼育数や餌の与える量にもよりますが、春秋は3日に1度、夏場 は2~3日に1度の割合で水替え(全替え:池の水を全て入れ替える こと)するのが一般的です。 3) 水替え時の留意点 ・ 原則として、水替え前の約1時間は餌を与えず、水替え後の約30分 間は餌を与えないと魚のコンディションは良いようです。 ・ 池の古水から掬い上げた魚を新水に入れ替えた池に戻すときは、 水温を同じにして戻すことが大切です。あまりに水温差が大きいと 魚がショックを受け危険な状態になることがあるからです。 (4) 青水の作り方 1) らんちうは黒仔の期間はともかく、一人前の成魚になると澄んだ水 よりも青水を好みます。青水とは白いコップに入れた緑茶のように 緑色をした水のことです。 2) 青水がらんちう飼育に適している理由は次の点です。 ・ 良い状態の青水には天然の植物性プランクトンが沢山繁殖している ということです。これらの植物性プランクトンは蛋白質、ビタミン、 ミネラルなどを豊富に含んでいます。 ・ プランクトンが光合成することにより溶解酸素量を増やしてくれます。 ・ 青水は気温が急激に変化しても水温の急激な変化を防ぐ作用も 持っています。 3) 青水の水替え 水温の上昇、らんちうの排泄物の発酵などにより、青水の色が だんだん濃くなり、池にいるらんちうの姿が見えなくなります。その 状態がさらに進むとガスを発酵し水質が悪化してきます。こうなると らんちうの飼育水としては適さないばかりか害すら与えてしまいます ので、そうなる前に水替えが必要です。 水替えのタイミングは底にいるらんちうの姿が見えなくなる前に行う のが適当と思います。全く見えなくなったときには水質が悪化して いますので急いで水替えを行わなければなりません。 青水の水替え時には、新水に古水(青水)を加えて、青水状態が 継続するようにしますが、この戻す量(割合)は季節・気温により 大きく異なります。夏場ですと洗面器一杯でも多いくらいですし、晩秋 には池の水半分くらいは戻します。これは繰り返し行い経験を積めば 自然と覚えます。言い換えると、これが出来ると水替えについては 1人前になったと言うことです。 良い状態の青水でらんちうを飼育できるようになると、前述した青水 の効果のほかにも大きな効果があります。それはらんちうの色彩を 鮮やかにし、肉瘤を発達させ、体型を引き締まったもにすると言うこと です。これは非常に大きな効果で、当歳魚の仕上げ時期や2歳・親魚 の飼育においてその効果を実感出来ると思います。 4) 青水の最初の作り方 通常は、水替え時に古水を少し多めに戻してやれば出来ますし、 一回で出来なくても、2~3回の水替え時の間、これを繰り返せば出来 ます。他の方法としては青水になっている池の青水を少し混ぜても 出来ますが病気や免疫の違いなどをチェックし行うことが大切です。 (5) 飼育尾数 1) 飼育数が多すぎると、水質の悪化が早まります。又、溶解酸素の量 が不足し、らんちうが酸欠で危険な状態になることがあります。 2) 最近ははエアー装置を使いますので、使わない時期に比べて飼育数 を増やせますが、あまり多すぎると水質悪化を招きますし、魚も一般的 にはあまり大きくなりません。 3) 我が家では、餌付け後50日ほど経った黒仔で約50から60尾、成長 した秋の当歳魚で12尾ぐらいを1池で飼育しています。大きくなるに つれ飼育数を減らしていくのです。(池の水:約400リットル当たり) (6) 餌の与え方 1) 餌はらんちうを健康に育てるため、又、成長させ、成魚の大きさに まで育て上げるには不可欠なものですが、多く与えすぎると水質を悪化 させ、らんちうを病気にさせてしまうことがあります。 2) 餌を一度に多く与えてしまい食べ残しが長時間残るようではまずい のです。この与え方では餌が腐敗し水質の悪化を招きます。通常は10 ~15分ぐらいで食べきる量を与えます。その後、1~2時間たつと又餌 を求め泳ぎますので、再び与えるという方法を繰り返します。水温の 高い時期にはこの方法で日に5~7回与えます。 3) 餌やりで良く失敗するのが、秋に入り水温が下がり始める頃、夏と 同じ量・回数で与え、消化不良を起こさせてしまうことです。特に夜は 水温が下がりますので遅い時間には与えないようにします。晩秋になる と、日が昇り水温が少し上がってから餌を与えるぐらいにします。 4) 冬場は基本的には池の水を青水にして餌は与えません。良い状態 の青水を維持できれば3ヶ月間ぐらい餌を全く与えなくても餓死したり しません。 次回はらんちう飼育上達のコツ