プロジェクトC失敗
引越しすることが決まって、早半年。引越し先のリフォームも終わり、いよいよ日曜日に移転である。問題がひとつあった。それはもう一年以上我が家の納屋を寝床としている野良猫のことである。私たちはこの猫を「バコ」と呼んでいた。半年前から、勝手口から招き入れ、最初の2ヶ月は上がり口のたたき、そして、入り口近くの床と、餌場を移動して、私が見ていてもエサを食べるまでにはなっていた。特に今年の冬は寒く、餌場のそばに置いたヒーターで1~2時間位、寛いで行くようになっていた。「いっしょに、行こう。寒い想いも、ひもじい想いもさせないから。」と何度も話かけて来た。・・・・・引越し先に連れて行きたかったのだ・・・バコを捕獲するために、網も用意した、ゲージも買った。エサに睡眠薬も入れた。今夜決行!!しかし、家に閉じ込められたバコは、暴れまくり机の下でじっとして切なそうに鳴いていた。それでも、しばし我慢をしてもらおうとそのままにしておいたのだが、居間の窓の上方、換気のための小窓がわずかに開いていた。高さ2メートルほどある窓に、バコは何度も体当たりした。何度も、何度も・・・2階にまで響くような音を立てて、何度も・・。結局、バコを解放した。切なかった・・・。バコは自由を選んだんだ。野良の誇りにかけて・・・。そう思っても、その晩は泣きながら私は眠った。