野の花も日々あれこれ考える

恋しけば形見にせむとわがやどに植ゑし藤波いま咲きにけり
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　山部赤人

ほととぎすが恋しくなったらたよりにして偲ぼうと私の家に植えておいた藤が、今、波打って咲いたところだ


やっと我が家の藤が咲いた。
この藤は、殿が昨年、表の庭の茂みの中に（またまた）こっそり植えていたもので、葉のない冬の間はちっとも目立たず、私は「またクズのつるが延びてきたな」と思っていた。
それが先日、大きな、そしてかなり濃い紫のつぼみをつけていて、驚かされた。

近くの、藤で有名なお寺の藤祭りはもう終わったようだし、山を見ると、野生の藤はもうすっかり盛りを迎えているので、うちの藤の開花は遅いほうなのだろう。

しかし、見れば見るほど日本人好みのする花だと思う。
万葉集には藤を扱った歌が27首もあるらしい。

この歌はホトトギスを偲ぶ歌。
そういえばこの数日、山でホトトギスが盛んに鳴いているのを聞く。
花子が「ヘタクソなウグイス」と言ってあきれていたが、このホトトギスの声もまた、非常に日本人の心に響く声だとしみじみ思った。