しあわせのかたち

　先日、１年ぶりくらいにえらいこと一流な企業で秘書やってる女友達と飲みにいった。
　ここんとこしばらく独り身だったが、最近彼氏を見つけたという。

　ああそー、よかったねえ。で、どんな人？
　妻子持ち。

　……。
　不覚にも言葉に詰まってしまった。


　こういう時に、咄嗟に気の利いたことが言えない自分の頭の悪さがいやになる。
　そやつは私の女友達の多くがそうであるように、大変頭がいい。
　理知的で聡明でスマートだ。

　賢明で優秀で美人で、で、莫迦だ。

　ようやくなんとか莫迦だなあ。と言ったら、
　莫迦だよねえ、と頷かれた。

　あー、救われねえなあ。せめて本当に莫迦だったらなあ。
　仕方がないので２人してしこたま飲んだ。

　たまに聞く、「好きになった人にたまたま妻子がいただけなの」ってあれ、せこい嘘だよなあ。
　あったりまえじゃん。

　そういう話をして、ケラケラ笑って終電で帰った。


　探しものは見つかっていない。

　話しを聞くのは全然構わない。また行こうな。
　そこそこうまいパスタを食わせる店が目白にある。
　けどな。
　二度とそういう顔をするんぢゃない。うっかり惚れたらどうすんだコラ。