カテゴリ:半導体
昔、仕事をしていると、色々なよく意味が分からない言葉を耳にしていたが、忙しかったりすると細かい意味とかどうでもよくなってくる。ものを考えないことによって話が進展するのなら、それ以上余計なことをしないということはよくあった。でも、やっぱりものは考えた方がいいね。せっかく頭が体に付いているんだから。そっちのほうが楽しいし。でもお金を稼ぐときはそうじゃなくなるときがあるのが不思議。
せっかくだから、これまでほったらかしにしてきたよく理解していない言葉を見直してみましょうかね。 頭に“縮退”という言葉が思い浮かんだので、まずこれについて考えてみる。 1. 不純物濃度が高いことなの? 縮退という言葉は学生時代は聞いたことがなかった(たぶん)。最初に聞いたのは会社に入ってからか。そのときは、シリコンにリンが大量にドーピングされた状態を縮退というのかと思った。なにが“縮んだり”、“退いたり”するのかは、一瞬思ったかもしれないが、深く考えることはなかった。 縮退に関しては、グローブの本には、 「不純物濃度がおよそ10E19/cm3に達すると…、このような条件のもとでは、その半導体を縮退したもの(縮退した半導体)と呼んでいる。」(p109) と、チラッとだけ述べられている。やっぱり濃度が高いことなのかもしれないが、これだけではなにが“縮んだり”、“退いたり”するのかは分からない。 ちょっと前に買った、『タウア・ニン 最新VLSIの基礎』には、 「…不純物密度が10E18~10E19/cm3を越えると、ドナー(あるいは、アクセプタ)準位が広がり、バンドを形成する。これにより、実効的なイオン化エネルギーの減少が起き、最終的には、不純物バンドが伝導帯(あるいは、価電子帯)と合体し、イオン化エネルギーが0になる。」 このような、状況において、シリコンは縮退したといわれる。…」(p43,p44) グローブよりはちょっと分かりやすかな。イオン化エネルギーが0になることが縮退なのね。前よりは少し前進したかな。 ドナー準位がバンドを形成するのは、例のパウリの排他原理だよね。これを定量的に理解するのは数学が面倒くさそうだ。 2. 量子力学で出てきた 量子力学では、異なる波動関数が同じ固有値を持つときに“縮退する”といっていたと思う。固有値の差が無くなったってことか。こっちが先なのか。時間的にはそうだろうな。 3. 誰がこんな言葉を作ったんだろう? 縮退は英語では、“degenerate”とあるが、これを辞書で調べると、 degenerate vi. 堕落する;退歩する;〔生物〕退化する;〔病理〕変質する a.,n. 堕落した(者);退化した(物・動物);変質した(物)、変質者. と、あまりいい意味は書いていない。状態が変わったことはわかるが、異なる複数の何かの差がなくなって同じ値を持つような雰囲気の意味は書いてなかった。もっとデカい辞書で調べたほうがいいかも。変質者っていうのはすごいね。 物理の言葉は明治の学者が苦心して作ったと思うが、縮退という言葉は誰が作ったのだろうか。 もし量子力学を翻訳したときに作られたとすれば、量子力学が完成したのは、たしか1930年あたりだから、単純に考えると昭和初期になるなあ。 もうちょっと聞いた瞬間にイメージが頭に浮かぶような言葉にならなかったのかな。それでも苦心して作り出したんだとは思うけど。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年03月23日 07時21分54秒
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