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ただ焼跡を見たかったもんで ひきとめるお花を振りきって 長次は”に組”へ急ぎます。 火事は山崎屋の油倉庫です。火事場へ向かう”に組”の仲間に長次が途中で落ち合えました。纒持ちの清三が火口をとるため屋根に上ろうとしていますが火が強くなかなか登れません。 長次が目をつけたところは、倉庫の中でした。いきなり用水桶の水を頭からかぶり、燃えさかる倉庫の中へ入っていきます。 “に組”の若い衆がそれを見て、「あぶねえ、兄貴」と近寄り見守るだけの状態の中、長次は何回も体当たりで扉を開け、中にある油樽を割ってみると中は空でした。 長次「畜生、空き樽だ」 長次が倉庫から出てきます。政五郎や若い衆が心配していました。 長次「頭、心配かけてすまねえ。別に抜け駆けしようと思ったんじゃねえ」 その時、清三があがっているところの屋根が崩れ落ち、清三が負傷してしまいます。他の組が火口をとろうとしているのを見て、政五郎の「火口をとられるな」の声に、長次が動きます。 長次 「おいらが預かるぜ」 清三 「やってくれるか」 長次 「へっ、梯子だ」 長次が纒を持ちます。 長次 「頭、さっきの埋め合わせをしますぜ」 梯子を上っていき、纒を振る長次がいました。 長次 「一番火口は、に組がもらったぁ」 (この火事場撮影は大変なものでした。別口であとがきでご説明しようかな) 翌朝、山崎屋の油倉庫の焼け跡の始末がなされています。同心の河津源之介が現場の取調べに来ています。「浮浪者たちの焚火の不始末のようだ。焼けた油は二百樽と間違いないな」との河津に、「間違いない」と山崎屋が返事をした時、「ほおぅ、」と声が飛んできた方に目をやりますと長次です。 長次 「そんなに沢山あったのかね」 山崎屋「こりゃどうも、組のかたで、夕べはすっかりお骨折を」 長次 「なあに、こっちっとら、ジャンとくるたんびに命を張る火消家業、お礼に は及びませんや」 山崎屋が同心河津の方に目をやります。 河津 「その方、今妙なことを申したな」 (この時の長次の表情は厳しいですね) 長次 「いゃ、これは御用の旦那で、へっ、何のことで・・」 焼跡を取調べ、山崎屋より油二百樽焼けたことを確かめているのに、多いとはどういう訳だ、と河津が言います。(長次の声の調子が変わります)長次は長崎屋にこう投げかけます。 長次 「へえ~・・じゃ、旦那もやっぱり、二百樽とお思いで」 長崎屋「ええ、そりゃもう、持ち主の私が申し上げているだから、間違えっこあり ませんよ。どうも飛んださいなんでした」 長次 「そうですかねえ・・」 河津になんの用事でここへ入ってきたのかと聞かれた長次は、「別に用ってほどの事じゃねえんで・・ただ焼跡を見たかったもんですからね」と言います。 河津 「それも火消の仕事か」 長次 「こいつはどうも。あっしは自分が火の粉を浴びた火事場は、何としてで も、もういっぺん見とかねえと気がすまねえ、悪い癖がありましてね・ ・・いや、どうも、とんだお邪魔を」 と長次が帰ろうとすると、長崎屋が引きとめ、「御上に届けた油樽の数が二百樽では多いというのは、どういう訳だ」と聞いてきました。(その時の長次の表情です) 長次 「こう見回したところ、焼けたまんまで灰まではかたずけちゃいねえ、二百 本からの樽が焼けた灰にしちゃ、ちい~っとばかり少なすぎると思っただ けでね・・(空を見上げて)・・それとも、夜中に風でも吹いて飛びやがっ たかな。へっ、はっはっは、じゃ、ご免なすって」 と言うと、颯爽と行ってしまう長次です。 河津が山崎屋に「大事の前の小事だ、あいつに手を打ちましょう」と言ってきます。 続きます。
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