科学はイタズラだっちゃ! 受験も科学!      科学実験教室&家庭教師  宮城県大崎市

2009/07/18(土)13:13

PISAの「学力」と、日本の学校の「学力」

理想の学校に向かって(81)

今、日本の学校は、猫も杓子も、「学力向上」です。国がうたっているのですから、学校が錦の御旗として使うのは当然です。そのお陰でしょうか、私にお声がかかることも、多くなりました。でも、私は疑問をもっています。 日本のゆとり教育を見直そうという、その発端となったのは、PISAのテストにおける日本の子どもの成績不振です。 そこから、「学力向上」派が鼻息を荒くしてきたわけです。 でも、ちょっと待ってください。 私たちが、学校で一般的に使われている「学力」、とか、「学力低下」問題と言う場合の「学力」とは、「各教科で習った知識の定着度合いのこと」、または、「正解が一つのペーパーテストによって測られる力、いわゆる受験学力のこと」を示していますね。これが、親も教師も、塾も共通理解で言っている一般的な「学力」ですよね。  しかし、OECD(経済協力開発機構)が求める「学力」は、日本のものとは全く中身が異なっています。 以下参考 ******************************* <OECD公式ページ> The OECD Programme for International Student Assessment (PISA) What PISA Assesses PISA assesses how far students near the end of compulsory education have acquired some of the knowledge and skills that are essential for full participation in society. In all cycles, the domains of reading, mathematical and scientific literacy are covered not merely in terms of mastery of the school curriculum, but in terms of important knowledge and skills needed in adult life. http://www.pisa.oecd.org/pages/0,2987,en_32252351_32235731_1_1_1_1_1,00.html <文科省公式ページ> [PISA調査内容] ● PISA調査では、義務教育修了段階の15歳児が持っている知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうかを評価。 (特定の学校カリキュラムがどれだけ習得されているかをみるものではない。) ● PISA調査では、思考プロセスの習得、概念の理解、及び様々な状況でそれらを生かす力を重視。 http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/04120101.htm ******************************* つまり、教育の目的を、OECDでは、社会に出て、いろいろな問題を解決し、元気に社会生活ができる力を育むことだと、考えています。 だから、PISAで求める「学力」は、「社会人として元気に生き抜く力(=人間力)」です。 今、日本の学校が追い求めている「学力」と定義が全く異なっています! これじゃ、さらに、PISAテストの成績は下がっていくのではないでしょうか?ベクトルがズレているのです。 これまで日本が求めて来た「学力」では、もはや成熟社会では適応しなくなって来ているという判断を以前、臨教審答申、中教審第二次答申などで、したはずです。 悪名高い、「ゆとり教育」の柱は「生きる力」であり、PISA型の学力に方向転換しようとし、「総合的な学習の時間」が設置されたのです。 しかし、いつの間にか、問題は完全にすり替えられています。そして、マスコミも、このすり替えをほとんど指摘していません。これは、マスコミの編集者も、旧態依然とした、過去の「学力」に固執しているからでしょう。 世界標準と言われるPISA型学力で、日本が世界のトップになりたいのであれば、まず、「学力」の定義を国民皆が認識し、共有しなければなりません。そのためにこそ、マスコミはキャンペーンを張るべきです。 トップ成績で有名なのフィンランドは「総合的な学習」が主体です。 日本のこの揺れ戻しは、教育界の指導層が、従来の学力観から抜け出ないから、いや、それしか持ち合わせていないから、その尺度でしか、ものごとを判断できないから起きた悲劇です。いや、喜劇です。 現在、社会のトップで活躍されている人なら、小中学校で追い求められている「成績」が人生では、ほんのつまらないものであることは、百も承知のはずです。 でも、それでしか、生きていけない人たちがその狭い学力を唯一の土俵として生きています。当然、総合学習の進め方など、わかるはずがありません。 私たち、大人は、日本の子ども達をこのバカげた檻の中から、解放してやる責務をもっています。 これこそ、日本への貢献であり、愛国心だと思うのです。

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