音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

2011/11/22(火)21:26

どちらとも言えません

本(130)

 雑誌「Number」で好評連載中の奥田英郎のエッセイ「どちらとも言えません」が書籍になりました。   殆ど読んでいるはずですが、図書館の新刊棚に置かれているのを見つけ早速借りてきました。 何度読んでも、そのコミカルな語り口は抜群です。 エッセイの中で、趣味のランニングについて書かれているところを見つけまし た。 氏は、若い頃走るのが速かった(短距離)だったようですが、4年ぐらい前から神宮の周回コースでランニングを始めたそうです。 私より4歳若いだけですので、速く走ることができなくなっていて、それに比べて大学生の奴らなんて楽しそうに談笑しながらさっさと抜いていくのが忌々しいみたいなことをあきらめと共に書いています。 個人的にも氏の気持ちがよくわかります。 最近トレッドミルで走るのもつらくなってきて、筋トレに重点を置いている我が身としては、外を走っていると、自分が遅いことを棚に上げて、他のランナーをライバル視して走ろうとしていることに気が付きます。 少し前に、大学生のハンドボールの大会が開催され、開催された体育館の周りを走っている女子のチームと一緒になりました。 そんなに速く走っているのではないのですが、徐々に離されてしまって、何か寂しい気持ちになりました。 それほど過去のことではないのに、楽に走れた日々を懐かしく思ってしまいました。 話が横道にそれましたが、この本はスポーツに関するエッセイで色々なことが書かれています。 その中で面白かったのは、昔の野球選手は勉強をしないので馬鹿だという話でした。 例に挙げられていたのが、長嶋元巨人軍監督と、現在の原監督。 「ジャイアント馬場と柴田錬三郎」というタイトルの回でのことです。 ジャイアント馬場がホテルのラウンジで文庫本を読んでいて、馬場は柴田錬三郎を愛読しているということから始まり、スポーツ選手と読書ということで話が発展していきました。 そのなかで、スポーツ選手は勉強が嫌いなので、本とは縁がないというのが多少ステレオタイプであるにしても、昔の巷の人たちの認識でした。 スポーツ選手は彼らが担うべき役割があり、それは大衆が思い描く「らしさ」に答えることだと言います。 ここで、件の二人が登場。 長嶋は「野良犬」をノヨシケンと呼び、原は大学の英語の授業で「THE」をテヘと呼んだという都市伝説があり、そういう脳みそまでが筋肉かと思える話が流布することが大衆に娯楽を提供するという意味においても、スポーツ選手の王道だという独自の説を開陳しています。 ちなみに、「野良犬」は黒沢明の名作のことで、大学の後輩たちをこの映画に連れて行くことになった折の会話だそうです。。。 最近のスポーツ選手はどうかわかりませんが、彼らのように実績のある選手だったら笑い話ですませられますが、並みに選手だったらお前こんなのも分からないのかと笑われてお終いです。 まあ、それだけスポーツ選手の場合は一芸に秀でていれば許されるというか、何の分野でもそうですが、その秀でている度合いが突き抜けていないと非難の的になってしまいます。 現代ではスポーツでも頭がものを言うのは常識になっていて、彼らみたいな選手は現代では通用しなくなってきているのかもしれません。 そういえば、最近のスポーツ選手は天然ボケの人はあまりいなくなったように思います。 他にも面白いエッセイが満載ですが、未読だったエッセイの中に、日本初のボールパークと呼んでもいいマツダスタジアムのことが書かれています。 機会があったらぜひ訪れてみたいものです。 それから、最後のエッセイには「江川の全盛期」と入れて検索するとyoutubeにアプされている動画が見られると書かれています。 早速見てみました。 球速は150kmに達していませんが、球の伸びとズドーンとくるような重さが感じられます。 多分、昔のスピードガンは現在より精度が悪いので、もしかしたら、150kmは超えていたかもしれません。 中に、初速と終速を表示したシーンがあり、それは初速が145kmで終速が140kmというものでした。 並みの投手だとそのさは10kmくらい、松坂大輔が7、8kmです。 またホークスの和田はなんと4、5kmで、それと比較すると和田なみの差しかないということになります。 だから、江川の場合は和田とは違って球は速いが、三振をとれるのは初速と終速の差が小さいからだと言えます。 http://plaza.rakuten.co.jp/hauhau/diary/200509300002/ また、江川卓(146km?) vs ストラスバーグ(163km)という比較映像もあります。 リリースのタイミングが微妙にずれているので、判定が難しいのですが、ストラスバーグの方が僅かに速い感じです。 精密な映像解析をすれば分かると思いますが、江川も結構速い感じはしました。 ということで、連載を読んでいない方も、読んだ方も是非お読みください。 大変面白く、トリビア的な知識も得られます。 しかし、この方、以前読んで大変面白かった「オリンピックの身代金」の作者とは存じませんでした。 あれも映画化を切望しているのですが、まだ映画化されていません。 他にも色々な作品があるようですので、フォローしていきたいと思います。 奥田英朗著 「どちらとも言えません」文藝春秋2011年10月30日 第1刷発行  

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