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カテゴリ:クラシック音楽
イギリスの作曲家トーマス・アデス(1971-)のバレエ音楽「ダンテ」を聴く。 ダンテの『神曲』に基づくバレエで「地獄」、「煉獄」、「天国」の三部からなる。 演奏はグスターヴォ・ドゥダメルと手兵のロスアンジェルス・フィルハーモニックおよび合唱団。 トーマス・アデスはイギリスでは「ブリテンの再来」と言われているそうだ。 ブリテンと同じく、作曲だけでなく指揮やピアノまでやっている。 器用な人なのだろう。 個人的にはCDを何枚か聞いたことがあるが、ブログでアップしたことはない。 彼の音楽は分かりやすい音楽で、とっつきやすいことは確か。 今回のダンテはロイヤルバレエの映像が既にリリースされている。 ディストリビューターによると『2021年イタリア最大の詩人ダンテ・アリギエーリ没700 周年記念の一環として発表された、ダンテの死後の世界をめぐる壮大な旅として、壮大な叙事詩『神曲』をテーマに現代アートシーンの先駆的な芸術的コラボレーションによって実現されている』とのこと。 とにかく巨大な音響に圧倒される。 ロマンティックで、映画音楽のような描写的で、激しくも劇的な音楽が続く。 イギリス人作曲家の作品とは思えないような味の濃さだ。 第1部「地獄」はダークで激しい表現の中に夢見るような楽想が頻出し、チャイコフスキーやプロコフィエフを連想させるような、ファンタジーの要素が感じられる。 第12曲「爬虫類に食われる盗賊団」は他の曲とはかなり毛色が違う。 サーカスのような破天荒などんちゃん騒ぎが繰り広げられ、アンコールで取り上げられたら、受けること間違いないだろう。 第一部最後の「氷の湖に浮かぶサタン」は大音響の楽章でサタンの恐ろしさがリアルに伝わってくる。 第2部「煉獄」は20分ほどで全体の5分の1の規模。 煉獄とはローマカトリックの教義で天国と地獄の間にある小罪を犯した死者の霊魂が天国に入る前に火によって浄化される天国と地獄の間にあると言われる場所。 第2部の民族的な歌はイェルサレムでの別どりで、第2部の重要なウエイトを占めている。 中近東の雰囲気が横溢していて、個人的には少し抹香臭さが感じられ抵抗がある。 オーケストラが先導するⅤから、はだいぶ聞きやすくなるのが助かる。 第2部第7曲の「ascend」は天国に昇っていく情景を描いたものだろうか。 かなり豪華絢爛な装いで、天国に昇っていくにしては、あまりにも賑やかすぎるように感じるのは、管理人がクリスチャンでもなくイギリス人でもないからだろうか。 ただ、この金色に輝く煌びやかなサウンドはかなりインパクトがある。 第3部「天国」は26分ほどで、天国の情景が分厚いハーモニーの音楽とともに描かれる。 曲は覚醒-月-水星-金星-太陽-火星-木星(鷲)-土星(金のはしご)-固定星-エンピリアンと続いている。 ジョン・アダムズの世界を思わせるようなサウンド。 宇宙を描くのに相応しい、持続的で巨大なサウンド空間に圧倒される。 管弦楽のテュッティが終わった後でコーラスが出てくる(おそらく「エンピリアン」)が、これがこの世の物とも思えないような美しさで、テュッティで感動的なエンディングを迎える。 エンピリアン:最高天=古代には火や光のある所、中世では神や天使の住む最上の場所を意味していた言葉 演奏時間は90分ほどだが、第1部は文句なしに面白い。 第2部は歌が違和感バリバリで、個人的には馴染むのに時間がかかりそうだ。 第3部は煌びやかでうるさいが、驚異的な持続力には冷や汗が出てきそうだ。 オルガンのような大音響がクライマックスに達したところで突然静かになり、心地よい空間の中に合唱が入り、感動的なクライマックスを迎える。 壮大で大変なスタミナを要する曲だが、オーケストラは最後まで安定している。 さすがに馬力があるアメリカのオーケストラだと感心してしまった。 録音は立体的で音に厚みがあり、ライブのハンデが感じられないすぐれたもの。 ということで、これは巨大なスケールの破天荒な音楽だ。 来年のグラミー賞にノミネートされることは確実と思われる。 現代音楽ではあるが、調性音楽であり、美しい旋律も豊富だ。 ご興味のある方は、是非お聴きいただきたい。 Thomas Ades: Dante(Nonesuch 7559790616)24bit 96kHz Flac Thomas Adès: Dante, Pt. I "Inferno" Dante, Pt. II "Purgatorio" Dante, Pt. III "Paradiso" Los Angeles Master Chorale Los Angeles Philharmonic, Gustavo Dudamel Recorded April 28-30, 2022 at Walt Disney Concert Hall, Los Angeles, CA お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023年05月10日 10時12分06秒
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