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カテゴリ:詩集小説
今日は自己紹介しますね。名前は寺下香葉子(かやこ)といいます。歳は9歳です。「天使寮」に入るきっかけは前回話した通り。私が生まれた時、家は小さな印刷会社を経営していたわ。父も母もとっても働き者で毎日遅くまで汗水流して輪転機の前にいた。私が生まれて1年も経たない内に父が突然行方不明になったの。お得意さんに仕上がった名刺を届けに行ったまま、何の連絡もなく帰って来なかった。風の噂に聞いた話によると得意先の女性と随分前から付き合っていたみたいで、二人とも同じ日にいなくなった事が分かったわ。でも母は一言も話してくれなかった。何故私には父がいないのか不思議だったけれど、私も何となく父の事を母に聞くのは遠慮していたのかも知れない。父のことを教えてくれたのは祖母。祖母はとても優しい人だった。母に似てたから綺麗なおばあちゃんだった。私ね、ピアニストになるのが夢だけれど私の左手にちょっと問題があるの。左手の薬指なんだけど、第二関節から先がないのね、ピアノ弾くのに支障があるのかしら?あるわよね。でもそれより結婚指輪がつけられないかもしれないわ。なんてまだずっと先の事心配してもしょうがないわね。
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