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Her's(ハーズ)奮闘記!

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2013年03月21日
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カテゴリ:主にオシゴト

最近、機会があって【仕事】について、よく考えています。

・個人として

・職種として

・業界として

…など、その視点は色々なのですが

同業の方と個々にお話をさせて頂くことはあっても

公に向けての発信は、これまであまり無かった気がするので

この際、Her’sが現在に至った経緯と、私のポリシーをお話してみたいと思います。



Her’sは、医療機関ではありません。

リンパ浮腫に特化して、対象となる患者さまにトータルなケアを提供する『サロン』

突き詰めれば、個人事業主が経営する、自営業です。

ですから、当然保険適用下にはなく、完全自費対応です。


Her’s代表を務める私・井ノ原は、理学療法士です。

理学療法士には、開業権はありません。

【開業】という言葉は、一般的には“会社を立ち上げる”とか“お店を開く”

といったイメージが強いかと思われますが

殊、医療業界においては、この【開業】という言葉は特別です。

法律的に非常にデリケートな意味を持ち、おいそれと使っていいものではありません。


その理由(意味)は、これからお話することにも含まれますし

最後には、非常に参考になるブログ記事をご紹介させて頂きますので、是非ご覧下さい。



私は、もともと起業願望があった訳ではありません。

紆余曲折を経て、リンパ浮腫と出会い、悩める患者さまのお役に立ちたいと心に決めた時

保険適用下でそれを叶える制度(法整備)が整っていなかったのです。


リンパ浮腫は【疾患】ではなく【後遺症】という理解です。

中には、原発性(先天性)と言って、生まれながらに症状を呈する症例

或いはその素養を元々備えていて、何らかのきっかけによって発症する症例

つまり、【後遺症】ではなく【疾患】と捉えるべきケースもあるのですが

少なくとも国内においての発症は、その殆どが『がん等の術後』に起因している為

【後遺症】という理解が主流とされているのだと思われます。


また、保険適用を実現する為には、様々な条件を要します。

例えば《 起算日 》。

骨折を例に挙げると、いつ受傷して、いつ入院し、

いつ手術をして、いつから理学療法の介入開始、といった期日が明確ですが

リンパ浮腫の場合は、発症が患者さまの自覚によるところが大きく

その感じ方の個人差も大きい為、客観的な根拠が得にくい事情があります。

そして《 治癒 》。

【疾患】の場合は、治癒の基準があり、特に命に関わるリスクの高い疾患の場合は

標準治療など、治療の必要な判断基準などもありますが

【後遺症】の場合は《 治癒 》の基準が明確でなく(一生付き合っていかなければならない)

治癒の見込みの薄い症例には、限りある財源を優先されにくい事情もあります。


こういった、保険適用の実現についてのハードルは

何年も前から打開する為の活動が展開され、現在も努力が続けられていますが

法を動かすといった大仕事は、一朝一夕に遂げられるものではなく

今もまだ明るい見通しは見えてきていません。

わずかに、2008年から“一部保険適用”がなされ

それによって、入院中の患者教育に100点の指導管理料が算定できるようになり

(改正後、通院時にも1回算定可能に)

療養費の支給として、弾性装具の購入にかかる費用の一部還付が実現しましたが

その療養費の支給も、条件に

『~リンパ節郭清術を伴う悪性腫瘍の術後~』と記述されており

(参照:厚生労働省保険局長通知)

郭清を伴わない(放射線療法のみ、など)、或いは原発性に対しては

原則、支給は認められないことになっていますし

患者さまが最も求められている、医療リンパドレナージの施術やトータルなケアは

保険適用が実現するのかどうかも不確かな現状です。



このような事情があり、お役に立ちたい思いと、確かなニーズがあるにもかかわらず

制度の問題でそれが出来ないもどかしさ・・・

しかし、指をくわえて待っていたって、法の整備がなされる訳ではありません。

その間、悩める患者さまは途方に暮れる一方です。


私がHer’sを起業したのは

『 待っていらっしゃる患者さまに、一刻も早く、適切なケアを提供したい 』

その一心からであり

その為には、制度に頼らない“自費対応での起業”という選択が最適だった、

ただそれだけです。



けれど、制度も無い中での、前例もない試みは

俗に言う『大海に投げ出された』も同然で、何からどう始めていけばいいのか

文字通り、手探りの繰り返しでした。

もし、私が一般人として、何らかの事業を立ち上げるのであったならば

それ程までに迷い悩む必要もなかったかも知れません。

しかし、私は、理学療法士です。

然るべき養成校を経て、国家試験に合格し、

国の制度によって免許された、理学療法士なのです。

この免許された名称を背負っている限り

そこに定められたルールに従う義務を有します。

一個人の無責任な身勝手で、【理学療法士】に迷惑をかける訳にはいきません。

法律が無いならば、せめて現行の制度の中で従えるものに、出来る限り従うこと。

これが、最低限のモラルであり、責任だと考えました。



理学療法士に関する法律は

理学療法士及び作業療法士法 に定められています。

法律によると、理学療法士は【医師の指示のもと】その業務を行うことができます。

それは言い換えると【医師の指示無くして業務を行ってはいけない】ということです。

ありがたいことに、私には支援して下さるDrがいらっしゃいました。

当初から、今もずっと

協力医として、私はそのDrから【処方箋】を頂いて、業務にあたっています。

適宜、そのフィードバックもさせて頂いています。



スタイルとしては、主治医の診療情報提供書を持参のうえ、協力医を受診して頂き

その後、協力医からHer’sに処方箋を頂いて、ケアを開始させて頂く、という形です。

時には、そこに負担を訴えられる患者さまもいらっしゃいました。

しかし、リンパ浮腫は、その殆どが“がん”を背景に持っている為

ケアをさせて頂くうえで、原疾患のリスク管理も極めて重要です。


私はDrではありません。

疾患やその関連事項の診断は、私にはできません。

法律上も、知識・技術的にもそんな大それたことはできないし、してはいけないのです。

仮に、何もリスクが無いように見えても

患者さまご自身が、ご自分のリスクをご存じないか

或いはご存知でも、それがリスクだという認識がなく、申告されなくて

万が一、命にかかわる状況に陥った時

私にはその責任を負うことはできません。



【医師の指示を仰ぐ】また【指示を仰げる医師との関係を持っておく】ことは

その免許をあずかる者の責任であり、法に定められた義務であり

免許されている同志の仕事を、ひいては人生を尊重することにも繋がり

そして何より、関わらせて頂く患者さまの命を守る為の責任でもあるのです。





理学療法士が激増した昨今、職域拡大が叫ばれ

協会を中心とした組織的な活動も急務が迫られる中

自ら活路を見出すべく、外へと飛び出す仲間も増えてきました。

組織に依存せず、自立して未来を切り拓こうとする行動そのものは

実に敬意を表するに値するものであり

組織側からも、感謝状を贈呈して然るべき、くらいに、私は感じています。


但し。

その【本質】【責任】【法の遵守】を見失ってはいけません。

理学療法士の名称を拝し、その名称を名乗れるに値する教育を受け

その成果を以て、己の生業とする(生業に活かす)のであれば

己の現在に端を発する基盤を尊重する責務は、自ずと明快な筈です。


陳腐な喩えですが

旅行先で、深く考えずに、世界遺産に落書きをしたたった1人の日本人の為に

世界中から『日本人は!!』と非難されますよね。

たった1人の軽率な行動が、全く無関係な日本人全てに悪影響を及ぼしてしまいます。


業界とて、同じです。

私1人が、自己満足の正義感に燃え、法の定めも顧みずに無責任な起業をし

もし、法的に追及されるようなことにでもなれば

今在る己の基礎を築いてくれた業界全体に、多大なる迷惑をかけ

取り返しのつかない事態を招いてしまうことになります。


どうしても、業界(と、その在り方)に納得できず

その中での自己実現が出来ないと判断し、それでも実現したいと望むなら

業界とスッパリ縁を切ればいい。

そう、免許を返上すれば良い、否、するべきです。



私は実際、免許の返上を現実に考えたことがあります。



私の業務形態は、いわゆる“法の解釈”に委ねられるようなレベルなので

私としては『出来る限り法に則っている』自信を持っていますが

見解によっては『違法なのでは?』と捉えられることもあります。

おかしな話だ、と首を傾げざるを得ない解釈があるのですが

それは『理学療法士であることがいけないのだ』と。

つまり、何の資格も持たない民間人が、リンパマッサージをうたって開業しても

そのことに関しては、法には触れない(それを取り締まる法律が無いから)。

しかし、免許された理学療法士が行う行為は“医療行為”とみなされ

その基づく法律によって裁かれることになる、と。

それを聞いて、己の目指すところが、それを活かせる筈の免許によって縛られるなら

そんな免許は返してしまおう!と、本気で思いました。


けれど、最終的に、それはしませんでした。

何故なら、医療機関でもなく、海のものとも山のものともつかない見ず知らずの人間に

大事なご自分の身体を預ける患者さまにとって

【理学療法士である】ことは、信頼に足る大きな根拠であることがわかったからです。

もちろん、一度ケアを受けて頂いたら、殆どの方が納得して下さいました。

でも、患者さまの、理学療法士という医療国家免許に対する信頼感は

特に、がんという深刻な背景をお持ちで、医療の支えを必要不可欠とする方々にとっては

私の想像以上に大きなものだったのです。

即ち、我々は、それ程までの信頼に足るだけの肩書を背負っているのです。

これが、襟を正さずにいられるでしょうか?

その恩恵を被っていることを真摯に自覚し、感謝し

その信頼に応え得るだけの取り組みをするのは、当たり前のことなのではないでしょうか。





私は、遠回りしてこの世界に帰ってきた(原点回帰)ので

一般社会の感覚も備えているつもりで、それは接遇という形でも活かされていると思いますし

ずっと内にいらっしゃる方々よりも、業界を尊ぶ気持ちが強いのではないかと思います。


己を活かすには、己の足場・基盤を大切にすること。

そうすることで、最終目的である『患者さまの為に己を活かす』ことが達成される。

足元がグラグラで、どうしてしっかりと立っていられるでしょうか。


『患者さまの心に寄り添う』

これを実現する為には、あらゆる配慮と注意を払って

真摯に、謙虚に、かつ慎重に立ち回る必要があるのです。

Her’sは、たった1人で運営してきた、ちっぽけな事業所です。

でも、一所懸命やってきましたし、これからも一所懸命やっていきます。

誠実であること、これだけは、自信を持って言えます。

人と人との関わりには【 心 】を込めて。

出来るだけ多くのセラピストに、自分を見つめ直す機会となることを願って。





『理学療法士・一色史章の感謝ブログ』より~理学療法士の開業権









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最終更新日  2013年03月22日 22時11分26秒
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