2009/01/30(金)06:08
●文字と思考(1)
● 文字と思考
(The invention of letters has changed the world a lot and so did in Japan, too.)
+++++++++++++++++++
文字は、論理を組み立てる上において、
必要不可欠なものである。
言うなれば、子どもが遊ぶ、ブロックのようなもの。
そのブロックを組み合わせて、人は、論理の世界をつくる。
つまり(言葉)という抽象的概念を、(文字)化することによって、
人はそれを、(思考)(思想)にまとめることができる。
たとえば「怒り」。
カーッとなって不愉快な状態になったことを、(怒り)という。
それを「怒り」という言葉を使って、表現する。
「私は怒っている」と。
が、そのままでは、怒りを分析したり、論理的に
解明したりすることはできない。
「なぜ私は怒っているのか」「怒りを静めるためには、
どうすればいいのか」と。
そこで「怒っている」という言葉を、「怒り」という
文字に置き換える。
文字にすれば、遠く離れた人に、自分の感情を伝える
ことができる。
「私はあなたを怒っています」と。
が、それだけではない。
理由も、書くことができる。
「あなたは、私をだましました。それで怒っているのです」と。
こうして人は文字を使って、情報の伝達を行い、感情を
共有することができる。
++++++++++++++++++++++
● 万葉仮名
あなたは、つぎの漢字をどう読むだろうか。
『皮留久佐乃皮斯米之刀斯』
ウ~~ン!
謎解きのような文章である。
しかしこれは、「はるくさのはじめのとし」(春草の始めの年)と読むのだそうだ
(「日本古代史・謎とミステリー」・リイド社)。
2006年10月、大阪中央区の難波宮(なにわのみや)跡で見つかった、
木簡に、そう記されていたという(同)。
文字は漢字を使い、読みと文法は、日本語に従った。
こういうのを、万葉仮名という。
そこで私も考えてみた。
亜
伊
宇
江
尾
上から、「あいうえお」と読む。
その万葉仮名から、平仮名やカタカナが生まれた。
今さら説明するまでもないことである。
「は」は、「波」から生まれた?
「や」は、「矢」から生まれた?
「し」は、「氏」から生まれた?
よく平仮名やカタカナは、日本人の発明したすばらしい文字であると
説く人がいる。
しかし本(もと)を正せば、中国語。
それを簡略化したにすぎない。
いちいち漢字で書いていたら、それこそたいへん。
時間の無駄。
だれだって、簡略化することを考えただろう。
「日本人の発明」というような、おおげさなものではない。
……で、今、改めてしげしげと、自分の書いた文章を見つめなおす。
そこには平仮名と漢字が入り交ざった文章が、並んでいる。
当たり前のようにして使っている(文字)だが、それにもいろいろな歴史があるらしい。
たまたま横で別の本(「日本史」・河出書房新社)を読んでいたワイフが、こんな
おもしろい事実を話してくれた。
あの紀貫之(きのつらゆき)の幼名は、「阿古久曽麻呂(あこのくそまろ)」と
言ったそうだ。
「くそ」は、そのままズバリ、「ウンチ」のこと。
そんな名前をつける親も親だが、まだ名前があっただけ、よかったほうなのかもしれない。
これも万葉仮名ということになるが、「阿」が、「あ」になり、一部を取って、「ア」
になった。
「久」は、わかりやすい。
「久」が、「く」になり、「ク」になった。
難波宮跡で見つかった木簡でも、「久」が、「く」と読まれていた。
……しかしこういう話は、あまり深入りしないほうがよい。
へたなことを書くと、その道の専門家たちの袋叩きにあう。
こういうことを一生懸命調べている人もいるわけだから、ここは謙虚になったほうがよい。
で、話を戻す。
(戻すといっても、どこへ戻したらよいか、わからないが……。)