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むか~しむかしの話しじゃ。
丹生川村に貧しいじじさとばばさがひっそりと住んでおったと。 この夫婦には子供がなくてな、働くばかりでもう何年も声をたてて笑ったことがない様な毎日じゃった。 ある日ばばさが雨に濡れそぼってミーミーないておる古ネコを見つけてな、かわいそうに思って府t頃に入れて帰ってきたんじゃ。 二人は食うものも食わずに猫に与えるほど大事に育ててやってな、それからこの家にもすこしずつ笑いが戻ってきたんだと。 そうしてネコはスクスクと育ち、あるときばばさがネコをひざに乗せて、 「ああ、この子が本当の娘ならええのになぁ。」 と言うとネコはひざからするりと抜けとなりの部屋にかくれると、ふすま越しに、 「おりを女郎に売ってくりよ。」 と言って美しい娘になって出てきたんだと。 じじさとばばさはもうびっくりして返事も出来んかった。 気を取り直して、 「ばか言うでねぇ。いくら貧しゅうてもそんなむごいことまでしとうない。」 とじじさとばばさが怒鳴りつけたが、ネコ娘はガンとして言うことをきかん。 ふたりは泣く泣く娘をくるわへやり、代わりに六俵の米を持って帰ったんじゃ。 暮らしは楽になったが、ふたりは心配で心配でまた灯の消えたような毎日になってしまったんだと。 やがて年季も明けて、ネコ娘は我が家へと帰ってきた。 じじさもばばさも目ぇうるませて喜んでな、ごちすの前に座らせたがいっこうに手をつけん。 ネコ娘は、 「すまんがちょっと休ませてくれんか。」 といって横になったじゃと。 するとどうじゃ、顔の方からだんだんネコに戻っていったが、見るかげもない骨と皮だけのあわれなすがたになると、静かに息をひきとっていったんだと。 貧しいとちのはなしじゃ。 くるわで死んでいった娘もおるじゃろう。 村人の苦しみをネコにたくして語った話しかもしれんなぁ。 おしまい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.07.18 14:28:36
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