カテゴリ:とにかく印象が鮮烈☆
人が怖くなる小説です。 人が人を憎むことには、どこまでもどこまでも果てがないのだな、と。 怖い…と思っていた気持がだんだん「寂しい」という気持ちにすり変わっていきます。 教師と生徒、同級生、親子、夫婦、いろんな人間関係が描かれていても 心が通い合う場面が一つも出てこないことに呆然としてしまいます。 逆にそれが“リアル”だと感じてしまうなら、こんな寂しいことってないじゃないですか。 わが子を亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。 ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、 それぞれ語らせ真相に迫る。第29回小説推理新人賞受賞作。 【内容情報】(「BOOK」データベースより) そもそも事件の発端はどこだったんだろう…。 どこかで「ああしていたら」「こうしていたら」事態は変わっていたかもしれない、と想像することが既に虚しい。 様々な視点から事件の過程が描かれていきますが、誰一人同情出来ないところが徹底してます。 読み手はずっと「傍観者」でしかない。 著者ですら、登場人物たちをうんと突き放して見て、語らせているように感じられ、 その冷徹と思える視線が最後の最後まで怖い。 4章あたりから「もういいよ。やめて。」という気持ちになってきました。 事件の波紋がどんどんとんでもない方向へ転がっていくのが予想されて。 だけどページを繰る手はむしろ加速していく。 そして最終章、最後の一行でどん底へ。ううっ…。 読後感は暗澹としていて、無力感に囚われちゃうけど、 “語り”だけでここまで描き切っちゃう著者の力量には感心させられます。 デビュー作だなんて全然思えない。 柊の読書メーターは→こちら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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