テーマ:“世界人権宣言”(18)
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金 纓(キムヨン)さん(父は韓国の詩人・文学者、金素雲。子は歌手、沢知恵)
『それでも私は旅に出る ―― チマ・チョゴリの日本人,世界へ ―― 』(岩波書店) より 「なぜ旅をするのか」と訊かれるたびに、父・金素雲が日本語に訳した「南に窓を」という朝鮮の詩の最後の部分を思い出す。 田舎で質素な生活をしている人が、「なぜ生きるのか」と訊かれて、なにも答えられず「ただ笑う」という内容のものだ。 ここで「笑う」というのは、もちろん大声で笑うのではなく、微笑みとも違う。答えに困って、やや自嘲気味に浮かべる笑みのことだ。 それを父は、「なぜ生きるかって、さあねえ」と訳して、優れた訳文の例として評価されている。 私も正確には答えられないから、「なぜ旅をするかって、さあねえ」とごまかしの笑みを浮べるしかない。--- 「主人(金素雲)の良いところを全部受け継いだのが、娘の纓です」 あんなに父を嫌って、別れはしなかったが会うこともなかった母が、それでも父に良いところがあると認めていたとは。 ・・・私のどの点を良いと思っていたのか。 生きていれば訊いてみたいところだ。--- 金素雲(キムソウン)さん『朝鮮詩集』(岩波文庫)より 南に窓を 金尚(金+容)キムサンヨン 金素雲訳 南に窓を切りませう 畑が少し 鍬で掘り 手鍬(ホミ)で草を取りませう。 雲の誘いには乗りますまい 鳥のこゑは聴き法楽です 唐もろこしが熟れたら 食べにおいでなさい。 なぜ生きてるかつて、 さあね ------。 金 時 鐘(キムシジョン)さん(79)=奈良県生駒市= 『再訳 朝鮮詩集』(岩波書店)より 南に窓を 金尚(金+容)キムサンヨン 金時鐘訳 南に窓をしつらえるとします ひとりで耕せそうな畑を 鍬で掘り 手鍬(ホミ)では雑草を取ります。 雲が賺(すか)したとてその術(て)に乗りましょうゃ 鳥の歌は只で聴きとうございます。 唐もろこしが熟れたら 共にいらして召し上がっても結構です。 なぜ生きてるってですか? そういわれても笑うしかありませんね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 10, 2008 12:15:32 PM
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