カテゴリ:健康 家族
6月14日土曜日
この日を境に、家族全員で父にウソをつき続ける日が始まった。 たまに言う父の言葉…『今の医学だったら99%大丈夫だ』…この言葉が辛かった。非常にきつかった。僕の頭の中では…『一般的にあと半年』…この言葉がこだましていた。 父親…70歳。この歳で、いきなり脳腫瘍ができることはあまりないらしく、…おそらくどこからかの転移であろう…ということを病院でも疑ったみたい。案の定、肺に大きな癌が見つかり、腫瘍マーカーを見てみるとほぼ間違いなく肺からの転移とのこと。 腰の痛み、股関節の痛みは、脳にできた腫瘍が神経を圧迫して起こっているものでなく、がん細胞が骨に転移してのものであろうという説明を受けた。 この話を聞いていたとき、僕は全身から汗を流し続けていることに気がつかなかった。ただ全身がふるえ、目頭が熱くなっていくだけだったと思う。…あまりにも悲惨。まったく言葉が出てこなかった。これからの治療方針を聞いても、どんな話を聞いても、ありとあらゆることが最悪の選択肢、究極の選択肢でしかないような気がした。混乱し、動揺し、頭の中が錯乱していることがわかった。 痛い痛いと言い続ける父を見ていただけに、僕は先生に言った。この発言が正しいのか、間違っているのか、落ち着きかけている今もわかりません。 『僕は、もう父親がいつ死ぬか、いつ逝ってしまうかはどうでもいいことです。ここまで見せられて、素人の僕でも助かるなんて思いません。僕にとって、父がいつ死ぬかということより、どう死ぬかが大切です。とにかく痛くないようにしてください。そのためだったら、どんなに強烈な薬を使ってくれてもかまいません。麻酔を使ってくれてもかまいません。癌がとれないなら、せめて痛みだけはとってやってください。』 この日から、父親にはモルヒネが使われています。もちろん、戦争映画に出てくるような注射を打っているわけではありませんが、…それでも、モルヒネです。 痛くても、少しでもホンの一瞬でも長生きさせるべきなのか、短くても、痛みを少しでも和らげてあげるべきなのか。…わかりません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|