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記事を読んで、「私はこう思ったよ」とメッセージをくださったり、あるいは読んでみようかという気になったりしていただけると幸いです。
よろしくお願いします。
2021.04.10
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藤井美男/田北廣道編『ヨーロッパ中世世界の動態像―史料と理論の対話―(森本芳樹先生古稀記念論集)』
~九州大学出版会、2004年~

 20世紀末頃から、史料論は本書にも寄稿されている岡崎敦先生による紹介により知られるようになっていますが、本書はまさに史料論をテーマにした論文集です。大きく2部構成になっており、第1部「史料論の世界」は史料そのものの分析(位置づけ、何が読み取れるか、写本伝来の状況など)、第2部は史料を効果的に活用しいかなる研究が可能かを示す、本書副題と同様の見出し「史料と理論の対話」です。
 本書の構成は次のとおりです。

―――

第1部 史料論の世界
1.佐藤彰一「司教グレゴリウスの沈黙―歴史叙述とその作者―」
2.梅津教孝「カロリング期の聖者伝―『ボニファティウス伝』を中心に―」
3.丹下栄「confirmationaffectationの間―カロリング期の財産割当文書をめぐって―」
4.城戸照子「8-10世紀イタリア北部の裁判集会文書」
5.森貴子「アングロ・サクロン期文書における古英語の利用―ウスター司教区関連文書の検討から―」
6.足立孝「紀元千年頃の俗人の土地領有をめぐって―スペイン北東部リバゴルサ地方の場合―」
7.苑田亜矢「カンタベリ大司教トマス=ベケット関連書翰の収集と伝来」
8.直江眞一「13世紀後半イングランドの裁判実務書―『ルフィールド本』を中心として―」
9.斎藤絅子「慣習法文書としてのモンスの特権」
10
.藤井美男「工業規約の史料論―中世都市メヘレンとアトの事例―」
11
.中堀博司「領邦の記憶―ブルゴーニュ公国南部におけるオフィシエ(1386-1435年)―」
第2部 史料と理論の対話
12
.西村善矢「8・9世紀モンテ・アミアータ修道院の証人戦略と領民支配」
13
.加納修「「プラキタ」の復活とシャルル禿頭王の王権」
14
.市川宏一「外来と土着―考古学資料を基にしたバルト南岸地域史研究の課題―」
15
.鶴島博和「11世紀イングランドにおける「よき人の社会」と「地域」の誕生」
16
.岡崎敦「12世紀パリ司教座教会において「参事会員であること」」
17
.舟橋倫子「12世紀修道院領の積極経営とは何か?―アフリヘム修道院領をめぐって―」
18
.藤本太美子「11-13世紀ラ・トリニテ修道院海浜所領ウィストラムの展開」
19
.大嶋誠「ソルボンヌ学寮草創期の後援者たち」
20
.大宅明美「13世紀ポワトゥーにおける伯権力と都市民―ラ・ロシェルの都市内商業をめぐって―」
21
.山田雅彦「13世紀後半サン・トメールのバポーム通過税免除特権をめぐる一考察―ある例外の背景とその波紋―」
22
.田村理恵「キングストン・アポンハルの建設」
23
.花田洋一郎「中世後期フランス都市財政におけるぶどう酒税について」
24
.田北廣道「ドイツ中世都市「最古の悪臭防止文書」―15世紀後半のケルン経済社会―」
25
.高友希子「裁判史料を通じてみたユースの利用に関する一考察―Capell v. Scott(1493-4)を手がかりに―」
26
.関哲行「16世紀のカナリア諸島における奴隷現象―「奴隷包摂社会」論、「差別論的奴隷」論を中心に―」
森本研究室と研究会の思い出
―――

 26の論文が収録され、600頁以上に及ぶ大著ですので、私の力ではすべてを紹介することはできません。印象に残った点のみメモしていきます。
 第1論文は、トゥールのグレゴリウス『歴史十書』の中に語られるある事件について、グレゴリウスが沈黙している部分について、歴史的状況からその詳細を明らかにするとともに、グレゴリウスの沈黙の理由を明らかにするという、非常に興味深い論考です。
 第2論文は、『ボニファティウス伝』と『グレゴリウス伝』という二つの聖者伝を取り上げ、そこにみられる矛盾から、書かれたものの権威の位置づけを指摘する、こちらも興味深い論考でした。
 第7論文はトマス・ベケット関連書簡の写本やその系統、伝来状況を丹念に読み解き、トマスとその敵対者との関係を示します。
 第15論文は、いわゆる「ジェントリ」の誕生時期をめぐる議論です。先行研究を批判しつつ(その研究史の綿密な整理にはすさまじいものを感じます)、丹念な史料の分析から、ジェントリと呼ぶかどうかはともかく、「よき人々の社会」が「長期の11世紀」に存在していたことを

指摘します。
 第16論文は、聖堂参事会員についての分析。彼らは必ずしも当該聖堂に住むわけではなく、在外生活もあり得たこと、兼職もあったこと、収入の問題など、多面的に「参事会員であること」とはどういうことだったかを論じます。
 第17論文は、「積極経営」の多面的な在り方をめぐる考察です。所領経営には大きく「寄生経営モデル」と「積極経営モデル」があり、本論では、その二つのモデルをもつ所領と隣接していたアフリヘム修道院の所領経営を分析することで、所領経営の具体像を示します。
 第24論文は、都市における環境問題、衛生問題、経済問題などの関係を、市民や経営者による市への陳情や市の対応から分析していく、こちらも面白い論文。過去をそのまま現代に適用するわけにはいきませんが、現代社会を考える上でも興味深い論考と感じました。
 以上、すべてに言及することはできませんでしたが、刺激的な論文も多い論集です。

2020.11.22読了)

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Last updated  2021.04.10 23:17:13
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