ゆうべは友人とビア・レストランにてお酒を飲みながらの夕食。 無言の強迫観念のようなものが常に背後に迫っているような時間ではなくて、解放的で純粋に幸せなひとときです。 出かける前と後に目に見えるようで見えない強迫がのしかかるような環境にあれば、そこから生まれる憂鬱が楽しさをかき消して台無しにしてしまいます。 そんな環境を誰に対しても与えてはいけないと思うのです。 また、そのような環境にあっても憂鬱を自分自身で生み出さないような思慮を持ちたいものだとも思います。
私達に程近い席で、50~60歳代の一組の夫婦らしきお二人が静かにお酒と食事に興ぜられていました。 私が席をはずしている間、そのお二人の会話が自然に耳に入ってきて友人は心を動かされたと言っていました。 老紳士はご婦人に対して「何が楽しいか、が重要である」ということを熱く語っておられたそうです。
食事の後、近松門左衛門の浄瑠璃『曽根崎心中』で有名な「お初天神」を詣でました。 『曽根崎心中』の中で、遊女のおはつと醤油問屋の手代の徳兵衛が情死するのですが、その舞台となるのがこのお初天神です。 本当の社名は露天神社(つゆてんじんじゃ)といいますが、遊女のお初にちなんで一般に「お初天神」と呼ばれています。
お初天神に行くには、隣同士で歩く人との会話さえかき消されるほどの、喧騒とネオンに彩られた繁華街をぬけるのですが、そのあふれるほどの人波と繁栄は、一面では欲望と不道徳の横行する街というにふさわしいほどです。 その繁華街の一角にあるお初天神の境内は、静かで、人もほとんど見当たらないのでした。 夜の境内を照らすオレンジ色の灯篭の明かりが、背後の街並みとは対照的に、お初と徳兵衛のブロンズ像を優しく映していました。
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