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カフェ・ヒラカワ店主軽薄

カフェ・ヒラカワ店主軽薄

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2007.02.26
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カテゴリ:ヒラカワの日常
上野茂都に関して何度かこのブログで書いた。
俺は、この白皙の三味線師に関して、
ほとんど何の知識も持っていないが、
かれの奏でる音曲に関しては
誰よりも(とはいえないが)深くのめり込んでいる。
最初は、イシカワくんが回してくれた「炊事節」であった。
三味線の伴奏に続いて聞こえてきたのは
- キャベツの芯は捨てないで~
という不思議な哀切感を響かせた声であった。
そして「煮込みワルツ」を聴いて
この人が稀有の言葉を操る詩人でもあることを知ったのである。
- 湯気は立てても 具の中までは~
  暖められない そんな世の中
  転げて浮かべ 煮汁の中で~
  それぞれのワルツを 踊ろうよ
なんと、哀れでゴージャスな詩だろうと俺は思った。
それから、毎日毎日、バスに揺られていても、混み合う電車の中でも、
歩きながらもこの曲を聞き続けた。
いまもまだ、聞き続けて飽きることがない。
他にもいい曲がたくさんある。
つまらない曲もある。

先日、関係しているラジオカフェという会社のオープニングセレモニーに
かれが飛び入りで参加してくれた。
はじめてお会いして、
その歌詞にある、「流れてしらたき、風になれ」といった
風情でゆらゆらと立っているかれと
二つ三つの言葉を交わした。
「三代目小さんと同じ時代に生きているわれわれは幸せである」
とは、夏目漱石の言葉であるが、
上野茂都の音曲と出会えたことは
実に幸福なことであると実感したのである。

いったい何がこんなに俺を惹きつけたのだろうか。
それをうまく言葉にすることが出来ない。
ただ、細棹の音色と、上野の懐かしい声と、
どこにでも転がってはいない不思議な言葉の質感が
大変心地の良い空気を作り出している。

先日、白髭橋の会社の年若い女性を車に乗せたとき、
俺はこの音曲を自慢げに彼女に聞かせた。
「どうだ」
「どうだって、まったく」
「えっ、だめか」
「おっちゃんたちは何きいているかわかったもんじゃ
ありませんね」
おれは絶句して煙草をくゆらせてウインドウを空ける。
「だめですよぅ。外に聞かれちゃうじゃないですか」
彼女は、禁忌にでも出会ったように耳をふさいだ。

この音曲が、大変強い指向性を持っていることを
このときに俺は知ったのである。
そして、若い今風の女性にまったく受け入れられないという
そのことが、また俺をこの音曲に向かわせたのである。

さて、その上野茂都の独演会が石川くんのアゲインで
三月三十一日(土曜日)に行われる。
http://www.alongvacation.com/again/sche.html
独演会なので、たぶん「煮込みワルツ」はやらないだろう。
それでも、上野の音曲と出会えたことを幸せだと思えるはずである。
俺の言うことが嘘だと思うのなら、
騙されたと思って
(すごいロジックだね)
アゲインに行ってみたらいい。






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最終更新日  2007.02.27 14:44:40
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