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カフェ・ヒラカワ店主軽薄

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2008.11.09
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カテゴリ:ヒラカワの日常
ラジオデイズコラム『床屋の金融論』掲載。

「これをカタストロフィーというのだろう。一夜にしてアメリカの大手証券上位五社が業務ごと吹き飛ぶという事態になったのだから」
「そうだねぇ。ここ数十年、アメリカがこれほどあたふたとしている姿を見たことがない。しかも悪いことに大統領選挙がこれに重なった。この間の、金持ち重視の市場万能主義を国策として先導してきたブッシュとその取り巻き、さらにはウォールストリートの高給取りに対しては、ざま見ろといった人たちも多いだろうからね」
「でもさ、ついこの間まで、アメリカ経済に死角なしとか、景気循環は終わったなんて言って息巻いていたんだぜ。それがこんなにあっさりと危機に陥るってのは何かおかしくはないか」
「そこが、金融ビジネスの怖いところなわけよ」
「いや、だからさ、何で金融ビジネスだとそうなるわけ。普通、会社が危機に陥るってことになるような場合には、それなりの兆候があって、それに対する防衛策のようなものがあって、さらにはコストダウンとか人員削減とかあって、ついにそういった対策が尽きてこりゃもうだめだってことになるだろう。そのプロセスはないっていうことなのか」
「だからさ、それが金融ビジネスの怖いところって言ったじゃないの」
「てことは何か、博打と同じってことか。有り金つぎ込んで裏目に出ちゃうみたいなことか」
「ちょっと違うけど、まあ同じといえば同じだと俺は思っている。プロセスを踏まないでお金儲けをしようとすれば、プロセスなしでお金を失うことも覚悟しないといけない」
「でも、市場経済ってものは賭場とは違うんじゃないの。今回の問題になったサブプライム証券化商品ってやつも、市場で取引されていたわけだろ。アダム・スミスさんだって、市場が矛盾を調整して、経済を均衡させるって言っているじゃない。直接聞いたわけじゃないけど」
「いや、俺は金融取引の場を市場って言うこと自体おかしいと思っていたんだ。債権市場、先物市場、株式市場、こいつらはみな相場と呼ぶべきもので、市場と呼ぶべきじゃない」
「だって、日経新聞だって、ワールド・ビジネス・サテライトだって、古館さんだって市場って言っていたぜ。さて市場はどう判断するかとかさ」
「じゃあ、聞くが、お前さんは市場とはどんなものだとおもっているんだ」
「そりゃ、商品とお金が交換されるところだろ」
「そうだよな。だけど金融取引において、商品といえるものがあるか。債権も、証券も、外貨もみなお金の変種じゃないか。つまり、お金とお金が交換されているだけだ」
「なるほど。確かに商品らしい商品はないわな。でも、何でそんなことをするんだ」
「そりゃ、手っ取り早く儲かるからだよ。ここで重要なのは手っ取り早くというところだ。商品を迂回させて利益を確保するのは時間がかかるからね。だからさっきの話じゃないけれど、予兆はあったと俺は思っている。それはスピード経営とか、時価総額主義とか言い始めたことだ」
「でも、損するやつもいるんだろ」
「そりゃ勿論相場だからな。しかも、ルールを決めるのは胴元であって俺たちじゃない。遊ばせてはくれるが、結局むしられる。お金とお金を取引しているといったが、本当は欲望とリスクを交換しているということだ。今一万円の株は、数日後は2万円になるかもしれないし、五千円になるかもしれない。丁か半かは数秒間の勝負で、競馬は馬場一周分の時間で勝負が決まる。取引される場所は違うけど、共通しているのはどれも商品がないということだ。だから手っ取り早く決着が着く。こんどの金融破綻は、時間を見くびったつけが回ったと俺は思っている」
「なるほどね。じゃ、お前は株をやらないのか」
「いや、俺は生まれながらの博打好きだ。だから、競馬もやるし、競輪もやる。だけど、株はやらない」
「どうしてだ」
「だって、俺は宵越しの金は持たない主義だからな。覚悟はできているよ。株価が下がったからって、不平を言うような奴は競馬場にはいない。だいいち、俺が競馬をやらなくなったら、俺の代わりに走ってくれている馬が困るだろう。俺はいつでも、馬と一緒に走っているつもりだ」
「妙な理屈だな。だけど、確かに競馬も競輪も、誰かが努力をしているってのはその通りだな。株式市場ではいったいどこの誰が走っているんだろう」
「お前も分からない奴だな。走っているのは俺たちじゃないか。奴らは俺たちを走らせて一儲けしようと企んだってことだよ」






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最終更新日  2008.11.09 13:25:14
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