ブラスバンド・サマースクール
今年の夏は楽団がオフの間も何とか充実した音楽活動を送りたいと思い、夏前から色々画策しておりました。そのうちの1つが先月に行ったクインテットの合宿です。今回は1週間と長いブラスバンド・サマースクールに参加してきました。はじめ友人からこのサマースクールの日程を聞いたとき、即座にお断りしました。期間中の土曜日にケルンであるベルリン・フィルのコンサートのチケットを購入してしまっていたからです。スクールは月曜日から日曜日までで、日曜日は朝食後解散と言うので、1日早く帰宅すればコンサートは聴きに行かれるかも?と思ったのですが、土曜日の晩は終了コンサートがあるとのこと。思い切りバッティングしています。そのしばらく後、知り合いが指揮をしているブラスバンドが我が地元でコンサートをすると言うので、ショッピングがてら聴きに行ってみました。懐かしい「ジュビリー序曲」などを聴いて、思わず『またブラスバンドを始めるのもいいかも…』なんて思ったりしてしまい、コンサート後にさらに指揮者(サマースクールの主催者)にも口説かれて、考え直すことに。そして、結局最後には参加申し込みをしてしまったのでした。始めのうちは1週間ひたすら音楽漬けになれる事がただ楽しみでしたが、パート編成がメールで送られてきてびっくり!!コルネットで申し込みをしたのに、なぜかフリューゲルホルン担当になっているではないですか。ブラスバンドではフリューゲルは1名のみなので、いわば吹く箇所全てがソロであり、さらに純然たるソロも沢山あります。学生時代のトラウマからソロ恐怖症を患っている私としては、正直ちょっと不安でしたが、考えようによってはこれは絶好のチャンス。そんな問題を克服するためにわざわざお金を払ってワークショップに参加するのだから、がんばろう!と思い直しました。今回のサマースクールには、100名近い奏者が参加し、お試し、ユース、アカデミックという3つのバンドが編成されました。お試しはブラスバンド普及のために将来の奏者を発掘するバンドで、12歳以上の小さな子供が中心です。ユースはいわゆる州選抜バンドで、メンバーは27歳までの音大生や音楽の先生など、いわゆるセミプロ・プロが中心。そしてアカデミックは27歳以上の大人のためのバンドで、私はこちらに参加しました。アカデミックバンドの指導者・指揮者は知る人ぞ知るブラスバンド界のカリスマ、リチャード・エヴァンス氏。ブラスバンドに関わったことのある方ならきっと聞いたことのある名前だと思います。最終的にサマースクールへの参加を決めたのは、彼が指導者と言うことが決め手になったのですが、実は私、パンフレットに彼の名前を見つけた時、非常に驚きました。御歳75は言っているはずなので、まさかご本人だとは信じられなかったのです。が、もちろんご本人でした。氏の練習はいつも「Good morning, my children!」「Good morning, daddy!」という挨拶から始まります。見かけはもうおじいさんなのですが、ものすごいエネルギーで、そのパワフルなことと言ったら日本びいきで、冗談が大好きで、おまけにビールを飲むとちょっと下ねたも入ったりして、とっても愉快な方でした。しかも、数々の著名な奏者、作曲者、編曲者などとお知り合いのようで、たとえば合奏中に誰かが楽譜について質問したりすると「彼は僕の友達だからちょっと訊いててみよう」と本当に電話するのです。メンバー一同が一番驚いたのは、ブラームスの友人の知り合いがいたと言う話を聞いたとき。あのクラシック界の大御所のブラームスですよ長生きするのも捨てたもんじゃあないですねえ。そして、音楽に対する前向きな姿勢がものすごく印象的でした。常に「今、こうして生きていること、一緒に音楽をできることを思い切り楽しもう!」というスタンスで、とても共感できました。合奏中も上手く行くと「Good!」とか「Better!」とかほめてくれ、彼が要求した通りの演奏をすると「Thank you!」とお礼まで言ってくれます(笑)。それまでは3~4日間の合宿しか経験した事がなかったので、『1週間は長すぎるのでは?』と危惧していましたが、いざ始まってみたらあっという間でした。土曜日の終了コンサートまでたったの5日間でバンドとしての音を作り、コンサートで演奏するために選んだ数曲を完成に近づけなければいけないので、逆に時間が足りないくらい。ヴァンス氏が「土曜日に100%完璧な演奏をすることは無理だと思う。が、その時点でのベストの演奏をすることはできる」と言っていましたが、そのとおりだったと思います。実際、本番ではブラスバンド独特のサウンドや私達のパッションを客席に伝える事ができたことを実感しました。さすがに10年ほど前から演奏はしていない(氏は元々有名なトランペット・コルネット奏者)そうですが、77歳でもこんなにアクティブに音楽を楽しめるんですね。私も以前から一生音楽を続けたいと漠然と思ってはいましたが、実際にこのお歳で(失礼!)まだまだ活躍されている方を目にして、とても勇気付けられたのでした。来年もまたお互いに元気でお会いしたいものです。最後に、終了演奏会の演奏曲目を記録しておきます。Big Cup (メンバー全員参加)1. ヤン・ヴァン・デル・ロースト作曲「アーセナル」2. 「All Through the Night」 (ウェールズ民謡)3. 「Loch Lomond」(スコットランド民謡)アカデミックバンド1. ピーター・グレーアム作曲「ウィンドウズ・オブ・ザ・ワールド」1・2楽章2. ディーン・ゴフィン作曲「ラプソディ・イン・ブラス」3. ジョージ・ガーシュイン作曲「I got Rhythm」4. マーチ「チャンピオンズ」5. フィリップ・スパーク作曲「サンサーンス・バリエーション」