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早いものである。もう1年が経った。彼はバリバリの百貨店マンであった。学生時代から百貨店に興味を持ち、勉強をしていた。「俺が百貨店を変えるんだ!」と希望に燃えていた。
彼が愛する奥さんと知り合ったパーティにもいた。結婚式の司会も私がやった。卒業の時、今後20年間は会うのを止めよう。40過ぎてひとかどになってからまた遊ぼうよと彼の言った言葉が印象的である。そんな彼は一番出世であった。 1,2階フロアーを任された。売り場の改良ではなく、抜本的改革を推し進めた。旧態全とした勢力の猛反発にあった。かれは、めげなかった。土日も夜も出勤した。 そして夏に倒れた。医者の診断はあまりにも残酷だった。手術は無理。助かる可能性はゼロ。余命もう数ヶ月。突然の宣告だった。 彼には1歳になる子供がいたのである。そして病院を飛び出した。奥さんと家族に支えられ、自宅療養をした。一時を惜しむかのように四六時中子供と遊んだ。トイザラスにおもちゃを買いにいくのが彼の日課になった。そしてその気力が彼を支えた。 奇跡が起こった。翌年の花見が家族でできた。抗がん剤が効いたのかもしれない。希望の光がさした。そして今年の花見。入園式に出かける息子を笑顔で見送った。来年の花見も・・・。 神様はもう待ってくれなかった。花とともに散っていった。 彼の好きな書物「太く短く」を地でいってしまった。彼のただひとつの遺言は家の近くに埋めてくれであった。 いま奥さんは毎週彼の墓に話しに行く。彼の長男も4歳になった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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