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テーマ:お勧めの本(7220)
カテゴリ:★★★★★な本
箱根の山は蜃気楼ではない。襷をつないで上っていける、俺たちなら。才能に恵まれ、走ることを愛しながら走ることから見放されかけていた清瀬灰二と蔵原走。奇跡のような出会いから、二人は無謀にも陸上とかけ離れていた者と箱根駅伝に挑む。たった十人で。それぞれの「頂点」をめざして…。長距離を走る(=生きる)ために必要な真の「強さ」を謳いあげた書下ろし1200枚!超ストレートな青春小説。最強の直木賞受賞第一作。 <感想> ★★★★★ ファンタジィー系は別として、あまりにもリアリティに欠ける小説は苦手です。 強引な展開はしばしば破綻を来たすし、感情移入も難しいからです。 寄 せ集めのメンバーで箱根駅伝に挑むという本書の設定はまさしくそれです。 しかし、そこは信頼のブランド三浦しをん作品です。 文庫化を機に読んで みる事にしました。 さて、結果からいうなら本書はパーフェクトな仕上がりです。 しをんファンだとか、アンチしをんだとか。 小説が好きだとか、嫌いだとか。 駅伝って何? 鉄ちゃん系?だとか、駅伝なめんなよという陸 上競技経験者だとか。 それらすべてを魅了することの出来る作品といっても過言ではありません。 故障で陸上を諦めざるを得なかった大学生が、陸上の素人を集めて駅伝 チームを結成するという前半は、冬季五輪に参加したジャマイカのボブス レーチームを描いた「クールランニング」的な面白さがあります。 十人も のキャラクターを配していますが、それらすべてを使い切り、なおかつ読者 を混乱させない職人ワザもいかんなく発揮されています。 一方で、唯一 高校時代に全国レベルだったメインキャラクターを丁寧に描きながら陸上 競技の本質に迫ることも忘れてはいません。 彼らが箱根駅伝を走る後半。 216.4キロの行程に250頁が割かれています が、ここはまさにノンストップ。 コースをリアルに描写しながらランナーの内 面を描くさまは秀逸としか言いようがありません。 最終頁の謝辞をみると 駅伝関係者の名前が数多く記されています。 おそらく丁寧な取材がなされ たものと想像されます。 それを踏まえるなら、素人集団が箱根駅伝を・・ という設定のリアリティーは著者自身が充分に認識しているはずです。 だ からこそ、作家として持ち合わせている実力のすべてを注ぎ込んだようにも 思います。 何度も言いますが、申し分のない作品です、ただ惜しまれるのは箱根駅伝 の前に読まなかったことです。 年末に再読したいと思います(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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