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テーマ:お勧めの本(7220)
カテゴリ:★★★★★な本
レトロな下宿、真綿荘に集う人々の恋はどこかいびつで滑稽で切ない……。不器用な恋人達、不道徳な純愛など様々なかたちを描く。 <感想> ★★★★★ 本書は島本理生さんの最新刊です。 真綿荘という下宿を舞台にした 連作短編ですが、本書では連作短編の基本である人称の統一を意識 的に無視しています。 それを面白いと感じるか、煩わしいと感じるか によって評価が分かれるように思います。 さて、読み始めの第一章「青少年のための手引き」は上京する18歳の 大和君を主人公に据えて、読みやすいつくりになっています。 私の世 代で下宿の物語といえば『めぞん一刻』ですが、そんな雰囲気の作風だ と思っていると・・・・。 メインキャラクターは、18歳の男子大学生から30代半と思われる女性 で、章を重ねるたびに深みを増していきます。 中盤に用意されている 「シスター」「海へ向かう魚たち」の二編がもっともオーソドックスな恋愛 小説に仕上がっていますが、著者の真骨頂は最終章の「真綿荘の恋人 たち」であろうと思います。 ここで、展開する綿貫さんの恋愛模様はいびつです。 『あなたの呼吸が 止まるまで』『大きな熊が来る前に、おやすみ』と同じ底流をなしています が、島本作品で30代の女性をメインキャラクターに持ってくるのは初め てのことではないでしょうか?ここで語られる特殊な恋愛観や、無作為の 作為を客観的に描くさまは、島本理生という作家にとって重要な通過点に なるのではないかと思います。 通過点といえば、中年男性の一人称で語られる「押入れの傍観者」は、新 境地的な位置づけができると思います。 読書メーターの感想に「桜庭 一樹がややマイルドになった感じ。」とお書きになっている方がいらっ しゃいましたが、フムフムと肯いてしまいました。 島本理生公式ブログ ↑今度は期間限定ではないようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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