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テーマ:お勧めの本(7220)
カテゴリ:★★★★★な本
どんな恋にも、その時だけの特別な“カオリ”がある―ゆるくつけたお気に入りの香水、彼の汗やタバコの残り香、ふたりでつくった料理からあがる湯気―柔らかく心を浸す恋の匂いをテーマに、今、一番鮮烈な“恋の描き手”たちが集う。漂う6つのフレイバーが呼びおこすのは、過ぎ去ったあの日のこと?それとも ?6人のラブストーリーテラーが供する、せつなさのスペシャリテ。 <感想> ★★★★★ 本書は恋愛にまつわる香りをテーマにしたアンソロジーです。 あらすじを 読むとストレートな恋愛小説をイメージすると思いますが、どの作品もしっ かり抑制が効いています。 タイトルを・・・の匂いとせず、・・・のカオリ(香 り)としたのは大きな意味があると思います。 さて、執筆陣は角田光代/島本理生/栗田有起/生田紗代/宮下奈都/井上 荒野の各氏。 これだけの豪華メンバーだと、必要以上に期待してしまい ハズしてしまうというパターンも予想されるわけですが、このアンソロジーは その予想を裏切ってくれました。 栗田有起さんの描くキャラクターはおなじ みの不思議ちゃんだし、角田光代さんも毒がしっかり出ています。 そして 井上荒野さんはエロシーンがないにも関わらず最高にエロいです。 いっけ ん男の身勝手さを描いたような島本理生さんですが、男性的な読み方をす るなら、それは若さだけが持ち合わせている偏狭さを巧みに表現しているよ うに思います。 男は、そんな偏狭さに振り回されて後悔したり悩んだりす るわけです。 このアンソロジーの読者の九割は女性だと思いますが、そ のあたりを踏まえてお読みになってみてください。 ちなみに世の中の流 れは(ネタばれするので反転しときます→)熟女ブームっすよ。 本書は前段で申し上げたとおりクオリティーの高いアンソロジーですが、そ の中にあっても当時無名に近かった宮下奈都さんの『日をつなぐ』は別格 です。 結果的に言うなら、このアンソロジーは宮下奈都さんのために作 られたようなものです。 蛇足になるので感想は書きません。 興味のあ る方はまず、お読みになってみてください。 ちょいと長くなりますが、文字を媒体とする小説という表現手段は最も古典 的で、他の表現手段(絵・音楽・映像)と比較するなら不利と言わざるを得 ません。 ただ、このアンソロジーのテーマになっている匂い(香り)に関し ては、小説という表現手段がもっとも優れていることを改めて認識しました。 小説の良さをご存知の方も、そうでない方もご一読をおススメします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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