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カテゴリ

2011.08.07
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テーマ:お勧めの本(7220)
カテゴリ:★★★★★な本


肉体の開放こそ人間の解放であり、肉体が思考するとき真の人間性の確立もある。 肉体とは一つの強靭な意志であり、生命力なのだ。  戦場における精神や思想の無力さの痛感を基底に、敗戦後の混沌とした風俗を大胆に描写して、半ば自棄的になっていた当時の人々におおいに迎えられた作品群。


<感想> ★★★★★

通俗小説という言葉があります。 大衆文学を意図的に貶める際に

使われました。 大衆文学が主流である現代においてはほとんど使

われなくなしましたが、その言葉を聞いてパッと思い浮かぶ作家とい

えば田村泰次郎ではないかと思います。


代表作である『肉体の門』は幾度も映像化されていますが、その扱

いはR18。 タイトルもタイトルだしエロいに違いないと思って手を出

していませんでしたが、今回読んでみてびっくり。 たしかに映像化

すればR18になるだろうことは想像されますが、かなりクオリティー

の高い作品でした。 


さて、本書に収められている作品の大半は敗戦直後に発表された

ものです。 敗戦を近代文学と現代文学の境目と定義するなら、こ

の時期に活躍していた無頼派の作家は現代文学の祖ということに

なります。 ただ、彼らの作品を現代から眺めるなら、かなり古臭い

と感じてしまいます。 それと比較するなら本書に収められている

田村泰次郎の作品は、いずれも斬新で、現代の小説と比較しても、

まったく古臭さを感じさせません。 


現代を生きる私が古臭いと感じるのは、戦前の文学(価値観)に反

発しながらも、思想で文学(物事)を語ろうとする旧態依然とした姿

からです。 それでも当時としては革新的な潮流とされていたよう

です。 思想そのものが何の役割も果たさない軍隊生活から復員し

たばかりの田村は、その中途ハンパさに気がついたのではないでし

ょうか?


そこ(戦場)で田村が体験したり見聞きしたものは、混乱した敗戦後

の日本を描く上で最も適した素地になったのではないかと思います。 

思想で語る文学ではなく、生身の人間が肉体で語る文学。 おそらく

それは、平成に生きている私たちが日々読んでいる文芸作品とそれ

ほど異なりません。 


男たちを狩るように客としていたパンパン(売春婦)を描く『肉体の門』

は最も知られた作品ですが、もうひとつの表題作である『肉体の悪魔』

は秀作です。 リンク先の方がレビューのなかで埋もれてしまうには惜

しい
と評していますが私も同感です。 


ちなみに新潮文庫版の本書を初めとして、文庫版はどれも品切れに

なっています。 おそらく絶版まではカウントダウン状態だと思われます。

もちろん図書館には蔵書がありますが、新たに購入して読める田村泰

次郎はオン・デマンドで出ている作品集と個人全集のみです。 それを

踏まえるなら絶滅危惧作家と言っても過言ではありません。 

興味のある方は、今のうちにお読みになることをおススメします。






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最終更新日  2011.08.07 17:08:25
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