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昼ドラHolic ~美しい罠~

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March 10, 2007
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カテゴリ:昼ドラ
類子が不破夫人となって初めて迎える山荘の朝。
テラスで朝食の支度をしていると、レイさんがやって来た。
槐「おはようございます」
レイ「おはよう、槐。今日もいいお天気ね。
ねぇ、聞いて。面白いのよ、恒大さんと類子さん。
朝起きてベッドで何してると思う?」
槐「?」
レイ「新婦が新郎の血圧を測ってるのよ、新婚のベッドですることじゃあないわね」
苦笑する俺に、レイさんは声を潜めて言う。
「・・・あの調子だと、毒を盛って恒大さんを殺すことも簡単に出来そうね。
何せ、ナースですもの。健康的なメニューと見せかけて、
恒大さんの身体に良くないものを食べさせる事だって出来るわ」
槐「朝から物騒なお話ですね」
レイ「冗談よ、冗談。でもこれだけは本当よ。
世の中の夫は、死んで初めて理想の夫になる。沢山の財産を残せば残すほど、ね。
・・・あら、失礼。男性にする話じゃなかったわね」
レイさんはクスクスと笑いながら屋内へと入っていった。

入れ替わりに、類子の歩いてくる姿が見えた。
俺はテラスの出口に立ち、彼女を迎えた。
類子は涼しげな声で俺に挨拶をする。「おはよう」
槐「おはようございます」
令夫人としての類子の美しさに、俺は思わず息を飲んだ。
類子「何見てるの」
俺は何も言わずに、類子の為に椅子を引いた。
類子「ありがとう」
槐「・・・しかし見違えました。
この前までナースの制服を着ていた人とは思えない」
類子「それはどうも。でもその言い方、奥様に向かって少し失礼なんじゃないかしら」
わざとらしいほど無邪気な笑顔を見せる類子。

俺は困惑した。
しかし、今の言葉はどういう意味かと考える暇も無く、不破がテラスにやって来た。
類子は先ほどの棘は微塵も見せずに優雅に着席をした。

朝食後のお茶の用意をする為に屋内に入ると、丁度スープを持って来た千津さんとすれ違った。
皿に入っているのは、鮮やかな赤を誇るトマトの冷製スープ。
その色に血の赤を重ね合わせて思う。スープに毒を入れるのも悪くないと。

廊下に出ると、電話がけたたましく鳴った。
受話器を取ると川嶋さんの声。「社長は」
槐「お食事中です」
川嶋「急ぎの用事だ」

再びテラスに向かうと、千津さんが歩いてきた。
すれ違い様に彼女は、何処となく後ろめたいような表情を見せた。

テラスに出ると、類子がトマトのスープを口にしようとしていた。
槐「お食事中失礼します。東京から急ぎの電話が」
その時、類子が叫び声をあげた。
震える手で類子が持っているスプーンの上には、蜂の死骸・・・。
不破が怒り出して言う。「千津を呼べ!岩田もだ!」

俺は川嶋さんからの電話を事情を説明して切り、
厨房から岩田さんと千津さんをテラスへと連れてきた。
不破「一体誰だ犯人は!お前か、岩田!」
岩田「滅相もない。調理中はどんなに暑かろうが窓一つ開けません」
不破「じゃ、お前か、千津!」
千津「いえ、私は何も存じません」
不破「じゃあいい、二人ともクビだ!今すぐ出て行け!」
岩田・千津「ええっ!?」
類子「あなた、そこまでしなくても・・・」
不破「いや、主人をバカにする奴はクビだ!今すぐ出て行け!沢木、二人をここから追い出せ!」
槐「しかし・・・」

そこにレイさんが涼しい顔をしてやってきて言った。
「いいのかしら、そんな事して」
不破「あんたの出る幕じゃない!」
レイ「あら。私は類子さんの為を思って言ってるのよ。
今急に二人をクビになんかしたら、
お料理もお掃除も、お洗濯も一切が類子さんの肩にかかって来るわ。
可愛い奥様の手が水仕事で荒れたりしたら大変だもの」
不破「何?!」
レイ「第一、こんな山の中ですもの。虫などいつでも飛び込んで来るわ。
それが嫌だったら、外でお食事などしないことね」
「・・・以後、気をつけろ!」
不破は苛ついて吐き捨て、テラスから屋内に入っていった。
岩田さんと千津さんはほっとした様子で屋内へと入っていった。

レイさんが類子の手を握って言う。
「でも死んでいる蜂で良かったわね。本当に怖いのは、生きている人間。気をつけてね」
笑いながら立ち去るレイさんを類子は強い目で睨んだ。
そして類子は、蜂の乗った皿をバルコニーから投げ捨てた。皿の割れる音が響く。
槐「・・・心配するな。約束どおり、お前のことは俺が守る」
類子はすがるような目で俺を見た。「槐・・・」
しかしすぐに類子は目を反らし、「後はお願いするわ」と言い残してその場を去った。

何かが変わっているかもしれない。
しかし、今のすがる様なあの目は
今の類子の全存在が俺のゲームの上にある事を示している。
心配することはない。何も心配することはないんだ・・・。

食事の支度を終え、茶器を持って不破の部屋に向かう。
すると、楽しそうに話しながら歩いている類子と澪の姿が前方に見えた。
二人は類子の部屋に入る。

お茶を口にしながら不破が言う。「類子を呼べ。チェスがしたい」
槐「今、澪さんがいらしてお話をしているようですが」
不破「類子は俺の妻だ。誰に遠慮をすることがあるものか!」
そう言いながら、どこか気まずそうに不破は目を反らした。

俺は類子の部屋の前に立ち、扉の外から声を掛けた。
「失礼します」
類子の「どうぞ」という声を確認して扉を開けた。
槐「お話し中すみません。奥様、だんな様がお呼びです」
類子「今、手が離せないと申し上げて」
澪「・・・いえ、いいのよ類子さん、私なら」
類子「でも、せっかく来て下さったんだし。
・・・そうだわ!だったら沢木さん、あなたが澪さんのお相手をして差し上げて」
類子は立ち上がると、澪に何かを耳打ちした。
そして類子は俺に「じゃあ、お願いね」と言い、部屋を出て扉を閉めた。

また類子の勘違いが始まったか、そう思って俺は小さく舌打ちをした。
しかし、類子の言いつけなら不破の言いつけも同然。
思わぬ休み時間をもらったと思えばいい。
槐「ここでは何ですから、外でも歩きましょうか」
澪「いえ、いいの。お忙しいでしょうから、もう失礼するわ」
澪は部屋から出ようとしたが、扉の前で立ち止まった。
そして澪は振り返って言う。「・・・その前に、一つだけ聞きたいの」
槐「なんでしょう」
澪「貴方の部屋でお話したいわ」

地下の部屋に入ると、澪は俺に、
星座の図鑑に挟んであったはずの俺と敬吾の少年時代の写真を見せた。
槐「これは・・・」
澪「この間、そこの本の間から見つけたの。悪いとは思ったんだけど、気になることがあって」
俺は写真を受け取って言う。
「小学生の頃の、僕と敬吾さんですね。この写真が何か」
澪「丁度その頃よ。湖で絵を描いてて熱中症で倒れた私を助けてくれたのは。
私ずっと、それが敬吾だと信じてた。でも本当は、貴方だったんじゃないの?」
俺は少し黙った後に言った。
「・・・いいえ、違います。貴方を助けたのは敬吾です。僕じゃない」
澪「嘘!」
槐「嘘じゃありません。湖で女の子が倒れていると、
敬吾が息を切らせて駆け込んできた日の事は今でもよく覚えています。
貴女を助けたのは間違いなく敬吾です」
澪は呆然とする。「・・・そう。そうだったの」

その澪の悲しそうな表情を見たとき、昔抱いていた淡い感触が胸に蘇ってきた。
あの日・・・敬吾が澪を助けた日。
眩しい夏の日差しに照らされ、汗だくでこの部屋に飛び込んできた敬吾。
二人で倒れている少女のもとに駆けつけて、その青ざめた表情を見て思った。
何故、俺は敬吾の誘いを断ったのか。
湖で遊ぼうと言った敬吾の言葉に、首を縦に振るだけで・・・
たったそれだけの事で、今とは違った人生を歩んでいたのかもしれない。

その時、川嶋さんが部屋に入ってきた。
川嶋「ああ、こりゃ失礼」
澪は俺に言う。「お忙しいのにありがとう。さようなら」
川嶋さんに一礼をし、部屋を出る澪。
扉が閉まると川嶋さんは俺に尋ねた。「どうかしたの、澪さん」
槐「いえ・・・敬吾さんのことで、ちょっと」
川嶋「あ、そう。それより、あの飛田類子・・・・いや、今は不破類子だったな。
元々彼女を紹介したのは小谷教授だと言ったね。もしかして、教授の女じゃないだろうね」
槐「と、おっしゃいますと」
川嶋「どうもあの女、影に男がいるような気がしてならないんだ。
それも、かなり頭のいい奴だ。
そうじゃなきゃ、あの社長がこうも簡単に結婚なんかするはずがない。
君はいつも一番近くにいたんだ。何か気が付いたことは?」
槐「いえ。これと言って。私には、だんな様は
あの看護師は生意気だと言ってひどく嫌ってらっしゃるように見えましたから」
川嶋「とにかく、あの女の素性を徹底的に洗い直せ。外に出るときはもちろん、
手紙やメール、電話のやり取りについても何一つ見逃すな。
女だと甘く見ていると、社長の財産はおろか、
会社まで根こそぎごっそりやられるかも知れん。いいな」
川嶋さんが部屋を出ると、俺は思わず笑みを洩らした。

ダイニングルーム。
不破と類子がワイングラスを合わせ、楽しそうに歓談をしながら夕食をとる。
俺とは一度も目を合わさず、類子はその美しい舌で自分は幸せだなどと嘘を付いた。
あまりのその饒舌さに俺は何故だか腹を立てた。
それは昼間、類子が俺に澪をあてがうような真似をした事に起因していると俺は気付いていた。
食事を終えて不破が席を立つ。
その後に続こうと席を立った類子が椅子の端に爪先を取られ、バランスを失ってよろめいた。
思わず俺は類子に駆け寄り、その細い腕を取って体を支えた。
間近で目が合うと、類子は気まずそうに顔を反らした。
俺は唇を類子の耳に近付けて囁く。「今夜12時に、例の部屋で」

不破が床に入る。
俺は一日の仕事を終え、自分の部屋へと向かった。
ワイン蔵に入ると、中で物音がした。
槐「・・・またお前か」
草太は持っていたワインを隠しもせずに俺に近づいてきて言った。
「槐さん、お願い。この一本だけ見逃して!もうすぐ加奈子の誕生日なんだ。頼むよ」
俺は呆れて、溜息をついて言った。
「誕生日なら尚更、自分の働いた金で買ってやるのが男だろう」
草太は頬を膨らませて言う。
「これ一本買うのに何日バイトすりゃいいんだよ」
槐「だったらコンビニででも買って来い。今のお前にはそれが相応だ」
草太の持っていたワインを取り上げ、俺は元の場所へと戻した。
草太は両手をパンツのポケットに突っ込み、無邪気な笑顔で俺に尋ねた。
「ねえ、槐さん。一人の女に命を賭けたことある?」
一瞬、類子の横顔が脳裏に浮かぶ。
槐「いや」
草太「じゃあさ。命を賭けられる女がいるって事はすごく幸せな事だと思わない?
一緒に地の果てまででも行ける、そんな女に出会う確率なんてそうそうないと思うんだよね」
俺は草太が置き間違えたであろう、間違った場所に収まっているワインを
元の場所に戻しながら答えた。
「そんな思いはまやかしだ。愛だの恋だの、そんな不安定なものは俺は信じない。
そんな思いに惑わされて一生を左右するような行動をとるなんて、
愚かな人間のする事としか俺には思えない」
・・・振り返ると、既に草太の姿は消えていた。
勿論、ワインは数本無くなっていた。

(2/2に続く)





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Last updated  March 10, 2007 10:19:23 PM
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ボーボー侍@ 脇コキって言うねんな(爆笑) 前に言うてた奥さんな、オレのズボン脱が…
リナ@ 今日は苺ぱんちゅ http://kuri.backblack.net/-6jv9of/ 今…
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