秋山聰:『聖遺物崇敬の心性史』
【送料無料】聖遺物崇敬の心性史価格:1,680円(税込、送料別)■クリスチャンでもない日本人にとって、キリスト教の理解は文化の理解にとって高いハードルともなるが、その理解の手助けになってくれるのが本書。■そもそもキリスト教たちが何のために巡礼をしたのか、といえば、各地の教会にまつられている聖遺物に触れるため、といっていい。イエスやマリア、また聖人にまつわるものが祀られている。それが聖遺物である。彼らの骨、衣服に始まり、彼らが触ったもの、彼らが訪れた場所などなどがそれだ。■本書で紹介されていたエピソードで衝撃的だったのは、恩恵を授けてくれた聖人が亡くなったときに、その聖人にまつわるものを手に入れようとして、人々がその聖人の死体にむらがり、死体をばらばらにしてでも、自分の家に持って帰ろうとした、というもの。■あるいは、死体をばらばらにするにしても、生肉のままでは腐りやすいので、わざわざ煮たこともあったという。つまり、それほどまでに、聖人たちにすがりたい、という人々の思いがあり、それが西洋中世の信仰や文化の根底にあったことが大事である。言い換えれば、当時における貧富の差、弱者と強者の差、病気の人と健康な人の差などがいかに大きいものであり、前者がいかに神にすがりたかったのか、ということでもある。