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少し前の出来事。
意識不明で搬送されてきた大学生がいました。 体調不良を風邪だろう…と放置していたら、意外と…というかかなり大変な病気で。 搬送されてきたときには呼吸も止まりそうになり血圧も低下、治療の影響で全身から出血…で、フルコース・フルスタンバイでICUへ入室しました。 うちに入ってくる前にはもう意識は戻らないんじゃないかとの触れ込み。 モニターで救急処置室やOPE室、救急ICUの様子が見られるようになっているのですが、ピクリとも動かない患者さんに、我がICUに入ってきてから担当になる私も極度の緊張状態でした。 某有名国立大学(相棒・右京さんの出身大学)現役合格の自慢の一人息子。 久々に会った息子の変わり果てた姿に、地方から飛行機で駆けつけてきた医者のお父さんとお母さんは泣いて泣いて。 医療者だから治療や予後がわかるだけにショックはひとしおだったようです。 そこから約1ヵ月。 何回も何回も呼吸が止まりそうになり、血圧が低下し、大出血を繰り返しましたが、治療の甲斐あってか…そして本人の若さ&体力のおかげか、なんとか安定。 苦しみを取るためにかけていた麻酔も醒ましていき、意識が戻るかどうか試してみる期間。 私も、ちょっとでも変化を見逃さないように、異常を見逃さないように、付きっきり。 最初は朦朧でこちらの声かけにも十分に反応できませんでしたが、ボーっとしつつもコミュニケーションが取れるようになりました。 あまり覚醒させてしまうと本人にとって苦しいので、ご家族との面会の時間をメインに覚醒させるように薬をコントロールしていきます。 その週末は、ご両親とも田舎から出てくる日。 やはり朦朧とはしていますが、ご家族が来たのはわかるようでうんうんと頷いていました。 手の筋力が落ちてしまっているので筆談は困難で、文字板や指文字を使い看護師ともコミュニケーション。 その日は、ご家族の前でそれをやってみよう、と思いました。 …が、なかなかうまく手に力が入らず、指文字ができません。 治療に関すること(痛い、苦しいなどなど…)ならこちらから予想して声をかけてYes・Noでコミュニケーションを取れるのですが、彼が伝えたいのはそうではない様子…。 でも、頑張って頑張って頑張って…指文字で「あ」 疲れて時間を置いて、次は「り」… 次は「か」… …ありか? 在処?? なにかの場所を示したいのか?(刑事ドラマの見過ぎな私…) うーん…あっ!! 「Nさん、もしかして、『ありか』じゃなくて『ありが』? 『ありがとう』とか?」 こちらに目を向け、うんうんと頷く患者。 その日は、お母さんといっしょに足浴をしてマッサージをして、顔を拭いてあげていたんです。 「そんなの当たり前じゃない!!」 お母さん、号泣。 それを見て、患者もポロリと涙。 殺伐としたICUに、ほんのり温かな雰囲気が漂います。 やっぱり『ありがとう』の言葉の力は偉大だ☆ 一言で人の心を柔らかくする。 潤してくれる。 「このクソ忙しい中、maryさん一人個室にこもって何そんなことしてんの?!」…と先輩方の冷たい視線やイヤミが痛かったけれど、ついつい貰い泣きなワタシ。 ホントに重症で、出勤するたび処置や急変のオンパレードで、私なんかが担当看護師していていいのだろうかと思っていたけれど、この日ばかりは「担当看護師頑張ってきて良かった!!」 って思いました。 周りになんと言われようと、どんな意地悪やイヤミを言われようと、周りからの私の評価がどんなに低かろうと、この日の自分の看護は間違っていたとは思いませんでした。 誰にも文句言わせないぞって思いました。 毎日毎日つらくて眠れなくて泣いてばっかりの日々だったけれど、こんなこともあるんだな…と、昔の自分をちょっと取り戻せた気がした出来事でした。 (個人情報の問題から、状況はかなりはしょって、時期もちょっとずらして書いています。 この患者さんはその後みるみる回復し…既に退院のご挨拶を頂きました♪ この春から、1ヵ月遅れて大学に復帰できるそうです。) 今日のハッピー*爆睡 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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