MOANIN’/ART BLAKEY この古典的名盤を、恥ずかしながら全曲通しで聴いたことがなかったのである。あまりにも有名な1MOANIN’や、CMに使われた5BLUES MARCHなど、こういうぶつ切りでジャズのベスト盤にはいっているような曲が並ぶ。この時期のジャズ・メッセンジャーズは、ファンキー色が強いなどといわれている。それはボビー・ティモンズの参加によるところが大きいだろう。しかしバンドのカラーを云々する以前に、私などはどうしてもリー・モーガンのソロに耳がいってしまう。このはっとするような思いきりの良さ。コントラストの強さ。明らかに周りから浮き上がっている。ゴルソンには悪いが、彼のテナーと比べると音楽的にも器楽奏者としても明らかに格が上だ。3ARE YOU REALでのソロには目を見張るものがある。またしても凡人の疑問が頭をもたげてくる。「この驚くべき音楽を、いったいどこから取り出してくるのか・・・?」愚問である。その瞬間生まれているのだ。頭の中に準備したテープがないのがジャズマンというものだろう。肉体はすでに消滅しているが、時空を超越してどこまでも前向きな姿勢を見せ続けるこのアドリブ男にエールを送りたい。