〓自然体でいたいから〓　　　　　　　　　　この想い　軽くなって飛んで行け

今日は、蛍の通う養護学校の文化祭でした。
今年は中学３年として最後の文化祭を迎えました。

毎年、文化祭では中学部の創作劇が注目を浴びています。
緘黙症の蛍は、人前で声を出すことが苦手なので、
１年の時も２年の時も、１人だけピンマイクを付けさせてもらいました。
声を発することが出来るだけで十分でした。

が、今年は今までと違った蛍を見ることが出来ました。
もう、ピンマイクはいらなかった。
人前で声を発するだけでなく、その声は体育館の舞台から
客席のみんなに届く大きさだった。

そして常に劇の中心にいて、みんなを引っ張る役目を背負っていた。
時にはマイクを持ち、司会進行役もこなしていた。
でも気負いがなく、蛍自身が楽しんでいた。

どちらかと言うと、常に他人より二歩も三歩も後ろにいて
人目に付かぬように過ごしていたほうが好きだ、と言っていた蛍でした。
その蛍が、今日は舞台の上で拳を振り上げ、仲間とハイタッチをして、
喜びを全身で表現していました。

何が、蛍を変えたのか・・・？
最高学年としての責任感なのか、
いずれこの学校を出て世間に飛び出していく意欲なのか、
内に秘めていた感情を外へ出させてくれるような出会いがあったのか。

それは決して突然、劇的な変化を遂げたものではなくて、
繰り返し訪れる毎日の生活の中で、知らず知らず、
でも着実に少しずつ変化をしていたことなのだと思う。

最近、随分明るくなったなぁ・・・と喜んでいたら、
一週間も部屋に閉じこもってみたり、
今日は素晴らしい舞台演技を見せてくれたけれど、
実はこの１週間は遅刻続きだったという現実がある。

でも、この前は立ち直るのに５日間かかったことが、
今日は３日間で立ち直ることが出来た。
そんなちょっとした前進が、嬉しく思うし、
たぶん蛍の自信にもつながっているのだと思う。

一歩進んでは、二歩後退し、三歩進んでは、しばらく立ち止まる。
そんな毎日の繰り返しの中で、きっと彼女自身が何かを感じ、
何かを見いだしていったのだと思う。

そして、そこには多くの人との触れ合いがある。
苦しい経験も、嫌な思いも、楽しい出来事も、すべて蛍の身となり肉となる。
毎日の暮らしも、人の命も、地球の進化も、宇宙の営みも
みんな連続的なもの。
今更ながらに、そんな単純なことが素晴らしいことなのだと感じた。