知的財産とマスコミに関して、
もうひとつ話をしておきます。
少し前に新聞を読んでいると、
ある小さな会社の
新商品開発の記事が出ていました。
商売柄そのような記事には目を通すのですが、
その記事には大きな問題がひとつありました。
知的所有権登録(著作権)を済ませ云々
というようなことが書いてあったのですね。
これ知っている人は「あ~あ、また」と思うことですが、
知らない人には何が問題なのかが、
全く想像がつかないことと思います。
実は「知的所有権登録」というのは、
知的所有権協会なる民間団体が
勝手にやっていることで、
これに登録しても法的権利は全く発生しません。
記事にはカッコ書きで著作権と書いてましたが、
この知的所有権登録は、
著作権でアイデアを保護できると謳ったものです。
しかし、著作権は表現そのものを保護しても、
アイデアは一切保護されません。
機械や商品などの形や機構などは、
特許や意匠などの産業財産権で保護されることになっており、
著作権の対象外なのです。
だから、知的所有権登録された物の
アイデアをパクられても文句のつけようがないのですね。
つまり、件の新聞記事は、
「こんな新商品を開発しましたけど、
そのアイデアは保護されていないので、
どうぞご自由にお使いください」
と言っていることと同じなのです。
問題はその会社の社長と記事を書いた記者、
そしてその記事を載せた新聞社の三者にあります。
社長は、少なくとも知的財産権について、
最低限の勉強すらしていないことが問題ですね。
知的所有権登録なら安くて済むという
口車に乗せられてしまったということは、
オレオレ詐欺にひっかかったのと大差ありません。
記事を書いた記者は、
知的財産権のことについて
勉強したことがあるのでしょうか。
少なくとも企業を取材して記事を書く立場にあるなら、
裁判にもなっている知的所有権登録の問題ぐらい
知っていなければならないでしょう。
ネットで検索すれば、
山のようにこの問題を扱ったページが出てきます。
こんな簡単なこともしていないで、
かような記事を書いてしまった罪は重いと思います。
そして新聞社です。
なぜこの記事の問題について、
だれも気が付かないまま発行されてしまったのでしょうか?
余りにもお粗末なことではないでしょうか。
私は重大な責任があると思いますが、
みなさんはいかがお考えでしょうか?
いずれにしても、この知的所有権登録の問題が、
余りにも知られていないことに愕然とします。
この問題については、
例えば弁理士会のこのページなどが参考になります。