☆公共交通機関の在り方から変えていくのがよさそうだ
高温超電導応用技術は、開発段階を経て今や実用化の直前に達している。やろうと思いさえすれば、直ぐにでも普及レベルの製品が誕生するだろう。電力会社関連の組織で研究しているものは、送電系統の一部を超伝導化するためのものであるに過ぎない。超電導で送電を行うためには、低温を保つ冷熱システムを送電する区間の全域に、確実に維持する能力を保持していなければならない。 電力の備蓄が超伝導で可能な状態になると、送電する必要性そのものが直ちに消えてしまうのだ。発電システムは多種多様なものが市販されている。電力会社の電気を買わなくても太陽電池の電気を、損失なしで長期間貯めておくことができるのだ。超伝導現象を実用化するその方法は、二酸化炭素と電気代を同時に消し去ることを可能にするのだ。こんなことになったならら、経営に行き詰って困るのは電力会社の方である。 電力会社はこれからも末永く、交流送電という既存の方法から離れることはできない。これが40%もの送変電ロスの原因となっているため、二酸化炭素の排出を減らせない状況の根源となっていた。電力会社では消費の抑制より、消費の拡大の方を寧ろ望んでいる。消費量を増やすことができないと、誘導電流の供給能力を十分に活かすことができないからである。深夜電力料金制度はその課題解決のための措置なのだ。消費者がオール電化へ移行するなら、今まで過剰供給していた電力を捨てずに有効利用できるため、電力をお金に換えて収益として確保すことができるからである。 電力備蓄が需要地で成り立つような状態が成り立つと、自動車や鉄道なども自家発電して得た電力を、送電ロスなしで活用することが可能となる。直流で電車にキ(食+貴)電している地域では、これを交流の可変電圧と可変周波数で制御するVVVF方式で統一し、三相モーターで回転数を精密制御する方式が一般化する。電車の運行本数の多い地域では、直流で小刻みに電流を供給し、周波数を制御することで変圧し、インバーターがモーターをコントロールするようになるだろう。 電車の運行間隔が長い地方では、初めから長距離送電を前提とした交流キ電方式が採用されている。直流キ電方式では5kmごとに送電所があり、交流キ電方式では30kmごとに送電所が設けられている。超伝導電力備蓄システムが登場すると、すべての電車からパンタグラフを撤去することが可能になる。線路には充電用の電力備蓄システムが設置され、環境負荷の少ない電源から得た電力を、永久電流状態でためておくような仕組みが一般化する。 鉄道に超伝導応用技術を取り入れたシステムは、超電流が常時流れ続けていることから架線がいらない。超伝導電力備蓄システムは、送電用固定電源と移動電源として併用できる。条件によって使い分けることができるようになっている。電源は交流でも直流でもよい。交流なら電磁誘導が使えるので、非接触でキ電することができる。走りながら充電する仕組みは、EV用電源として転用する可能性を秘めている。 推進力を生み出すために、車両の超電導電力備蓄システムへと、電流を誘導するものなのであるのだから、仕組みは至って簡素。磁気エネルギーを電気エネルギーへと戻すだけなので、技術的に困難な課題はまったくない。寧ろ簡素化することが容易であることから、大幅なコストダウンが実現する。地下資源の消費そのものが、一切なくなっているからだ。 新幹線などは架線がなくなれば、もっと早く走れるようになっていた。磁気で浮上させる必要はそもそものなかった。リニアはもともと超伝導の応用技術の一つだった。発想そのものもリニアだったために、その他の応用方法に着眼できずにいたようだ。(思考傾向にみられるリニアりティーからくる弊害は、保険年金制度の設計思想にその欠陥が現れていた。人口の増加率をリニア化することを前提としていたため、少子高齢化が現実になったとき簡単に行き詰り、その後の辻褄合わせに苦しむという現実に学ばなければならない) 超伝導モーターは、リニアモーター・カーの開発を無意味なものにする。経済効果が高くてしかも走行速度にも遜色がなければ、経済合理性は新幹線車両の超伝導化の方が有利だ。リニアモーター・カーの超伝導は、液体ヘリウムを用いるタイプで高額なものとならざるを得ない。開発予算はリニアよりも格段に小さくて済む。建設コストも同様に大幅に低下したものとなる。 リニアモーターのアイデアは優れたものだが、経済合理性を勘案すると実用化は可能でも存続は疑問だ。技術に執着をもつと、それ以外の可能性を見なる。ただ突っ走るように成り勝ちなのだ。国際熱核融合炉の開発も、同じ経過を辿っている。開発が完了する50年後頃まで、交流の高圧送電方式が生き残っているとは限らない。経済合理性の裏付けのない技術は、生き残れないと相場が決まっている。 戦後の教育システムというものは、このような単純で直線的な思考をしたがる研究者を大量生産していた。優れた研究管理者がいればよかったのだが、すべての知識人が問題を内包する教育システムにのって、延々と再生産されている状態が今尚続いている。実用化が遠いアイデアに手をつけたために企業の利益が失われていくと、それは、最終的に国の経済活性を圧迫する遠因となる。損失の多い燃料電池の開発に企業は熱中しているのだが、水素の実体を調査せず開発に突入したため、製品は普及せずに経費だけがただ嵩んでゆくという展開を辿っていた。 水素はさまざまな化合物から抽出してこなければならないものであるため、それだけで既に割高な資源なのである。しかも水素分子自体が強い膨張圧力を帯びているため、高圧をかけて圧縮しなければ資源としては使いものにならない。水素が高額な資源となっている以上、CO2を量産する炭素を駆逐することははじめから困難なことだった。しかも湿潤化をもたらして地球のもつ水の絶対量を増やしていくことから、生命にとって非常に厄介な問題をこれから引き起こすことになっている。