☆実効ある温暖化対策を世界に示すのは日本の責務
気候条件の変化に伴う自然災害の強暴化という変容が、昨今きわめて深刻な問題となってきている。その原因が温室効果ガスである二酸化炭素の増産にあるということは、世間周知の事実になっている。温室効果を減らすには、石油と石炭、天然ガスの消費そのものを抑制しなければならない。経済成長を維持してエネルギー消費を減らすのは、実のところ容易なことではない。 国際会議で具体的な削減目標を数値化できていなかったのは、経済成長を優先しなければならなかったからである。温室効果をもつガスはCO2だけではなく、メタンと水蒸気にもあるのだ。比重の違いがメタンを成層圏中間域に屯させ、水蒸気を対流圏で循環させることで自然災害を生み出し、CO2を海水へと取り込んで炭素循環を保たせている。このため大気圏内にあるCO2は、たったの400ppm(0,04%)でしかないのだ。 既存のインフラを見直していくことで、有効な対策を導くことは決して不可能なことではない。地下資源に恵まれていない国である日本は、代替資源の開発に最も真剣に取り組むべき必要をもっていた。新資源の開発努力を永年怠ってきたそのために、地球の温暖化を大きく進めてしまうという結果になったのだった。有効な対策を確立してこれを世界に示すことを急いでいたのであれば、温暖化がこれほど深刻な問題になるようなことはなかった。 エネルギー資源の開発に関する努力を怠ったということが、日本を世界のリーダーとしてリスペクトさせる機会を奪い去った。この国はアメリカに従順でいなければならない劣った立場、へと陥れてしまっていたのだ。この判断を誤ったというそのことこそが、原油相場の高騰を5年以上も続けさせているのだ。そんな風にこれまでの経過を顧みることができるなら、日本のやっていた怠慢というもののもつ責任の重さがみえてくる。 原油高騰の煽りを受けてエネルギーコストは高まりつづけ、物価の上昇へ波及して世界中の国民を苦しめた。原油などの地下資源に頼る経済構造を維持しようと努めてきたのは、他ならぬ日本政府自身であった。原油にとって代わる新資源の開発は国家の急務であったのだが、エネルギー多消費型のアメリカ風の文化に染まってしまっていた。温暖化による気候の変動は化石燃料を燃やしたことによる、水素資源と炭素資源の同時酸化現象が生み出したものなのだ。代替資源の開発は地下資源に恵まれていなかった日本が、率先してやらなければならない最重要テーマであったのだ。 炭素資源が燃焼で酸化すれば、最終的に安定な化合物である二酸化炭素になる。化学的に安定した化合物であるメタンは、成層圏に滞留して温室効果を地球へと与え、それより重い水蒸気は対流圏で循環し、気候変動の加速要因となって作用する。最も重いガスであるCO2は着水して、熱を海面へと移してみずからは水和して炭酸や石灰質などの物質へと変容する。空気圏を温めている水蒸気の発生量が多いため、年々歳々空気圏の平均気温は同じ比率で高まる。 これが温暖化ということなのだ。海水の温度が上がれば、上昇気流はより強いものとなる。上昇したエネルギーはやがて反転して下降気流となり、優勢な高気圧となって乾いた空気を地表へと圧しつける。低気圧が風雨を募らせ、高気圧が乾燥を募らせる。この落差の拡大が、自然災害の狂暴化を引き起こす。洪水は低気圧が原因となった結果であり、山火事は高気圧が乾燥を齎したその副産物の結果であった。 上昇気流が生まれて低気圧が発達すれば、地表付近の気圧は下がる。上昇気流はやがて反転して下降気流となって大地に空気圧を押し付ける。その結果高気圧が優勢となり、地表付近の気圧は上がって大気の密度は高くなる。温暖化によってこのサイクルが次第に強化されるため、自然災害が猛威を奮うようになったのである。グリーンランド付近でできる氷山は、結晶化プロセスで塩分という不純物を海水中へおしだし、軽くなったことにより水に浮く。 塩分という不純物を多く含んだ冷たい水は、その沈み込む重さの故に海流を生みだす。塩分濃度が高まると、その周辺の海水は重くなって沈み込む。これが海流を生む原因となっている。酸素と塩分をたっぷりと含んで重くなった海水が深層水になるために、きれいで重い水が気象によって作られる。このため、浄化されてミネラルに富んだ水が、海洋深層水として人気を高めるようになっている。 (脱塩処理後に取り分けておいたミネラルを添加することによって、付加価値をつけた商品として販売されているものがある) 温暖化が昂じると氷山が融けたことによって、海流を生む重く冷たい大量の水が、一次エネルギーとなったことにより、沈み込むための重い海水が海底へと潜り、太古から脈々と続いてきた海流を、温暖化現象が維持することを不可能にする。海流が最終的に消えてしまうということは、コンピューター・シミュレーションによって早い段階から分っていたことである。 だが、自然災害が凶暴化するということについて、誰も予測してはいなかった。旱魃と洪水の被害が目立つようになってきた頃から、国連の環境部会が問題の深刻さを取り上げるようになり、京都議定書の策定を急ぐようになったのだった。この国際条約は難産の末かろうじて発効したのだったが、温室効果ガスの濃度は上がり続ける一方のままとなっていた。あらゆる国がエネルギー消費を拡大する行為を、今なお続けているようになったため、地球の温室効果は年々高まる一方という状況を保っている。 エネルギー消費を世界中で抑制すると、経済活動は収縮へと一斉に転じる。リセッションがおきることが分かっているため、エネルギー消費を実際に減らすことなど不可能なのだ。しかし、エネルギーの消費効率を改善することならできるため、この分野で先行する日本の技術が評価されている。当の日本の現状をみると、二酸化炭素の排出量は減らずに却って増えるのみだった。温暖化対策につぎ込んだ国の予算総額は、既に膨大な金額に上っている筈だ。つまり、実効をあげることはまったくできていなかった、ということだったのである。 日本がこの五年間で削減しなければならない二酸化炭素は、当初の6%から倍以上の比率にまで高まっている。この間名目上の削減数値は伸びたものの、実効値がどうなっていたのかということについては、誰にも分らなくなっていた。検証されたことがないからだった。現状に鑑みると、達成期限である2012年末までに日本が減らすべきCO2は、15%を大きく超えたものとなっているだろう。 省エネ技術や再生可能エネルギーでは、温暖化をくい止めることがつまりできない。ひいき目にみたところで、実のところ不可能な話だったのである。日本の現実は、その事実を結果として伝えていたのだ。温暖化を生み出しているメカニズムの実態を正しく知らなければ、有効な対策を導くことは即ちできないからである。 問題の所在とその本質に関する情報に接すれば、有効な対策が何かということはすぐ分かる。問題の本質をこれまでみてこなかったのだからこそ、巨額の国費を何年もつぎ込んでいながら、二酸化炭素を却って増やしてしまっていたのであった。日本が生み出しているCO2の四分の三が、電力業界と自動車業界が共同で生み出したものとされている。 この分野で生み出した二酸化炭素の比率を減らすことは、決して不可能ではない。今までそれをやらなかったのは、既得権を手放したくない勢力が優勢だったからなのだ。京都議定書を遵守できないことが明瞭に見えるようにならない限り、有効な対策があってもそれを実際に採用することはできない。 温暖化が進んでいながらも原油相場の高騰が尚続いているという事実は、ドルを過剰供給して市場で大量に余らせてしまった米政府の責任に帰することなのだ。イラクで使う戦費の調達に困窮していたのだったからこそ、このような顛末を生みだしたのだ。日本政府は問題の所在を指摘せずに、米政府の行動をひたすら支援し続けてきた。温暖化とインフレとはこれまで直接関わりあうことはなかったのだが、イラクの原油を手に入れようとしたブッシュ政権の浅慮によって、相異なった二つの事案がその時から連動するようになったのである。人類の愚かさは、この事実認識が未だにできていないというところに顕著だ。