テーマ:本のある暮らし(3205)
カテゴリ:ご本
杉浦日向子の江戸塾 笑いと遊びの巻 (文庫) (文庫) / 杉浦 日向子 著 『杉浦日向子の江戸塾 笑いと遊びの巻』杉浦日向子/PHP文庫 「遊びって、自分の人生なり、命なりを、時間なりスリルなりと取り引きしてやるものですよ。そういう意味では現代人は遊んでないということでしょう」(P133) 「プロセスの楽しみ方は、経験とか知識を積んできた年長者のほうが上手なわけです。だから年寄や大人がより多く遊ぶ権利を持っていたというのが江戸時代なんです。若僧のうちは、なかなか遊びの達人にまでは至らなくて、年長者の教えを乞うという形になっている。大人とか年寄が大きな顔ができる江戸時代というのは、それなりに成熟した文化の時代だなと思います」(P140) 「江戸の頃の豊かさというのは、天才とか、才のある人が、企業や大組織に取り込まれないで、遊びの中で才能を開花できたところにある。それがすごくいいですね。実学のほうに行かず、ホントの学問になった。私はホントの学問というのは、有益なものじゃないって思っているんです。有益になるのが実学で、役に立たないのがホントの学問。その学問を江戸の有能な人はきっちりできた。それが豊かさの証明になるのではないかと思います」(P145) 「江戸の戯作の面白いのは、そのまんまを書かずに読む人のイマジネーションを刺激することに一所懸命になること。どれだけのキーワードでどれだけのイマジネーションが広がるかが勝負であって、リアルに書くってことは幼稚なことであるという理解なんですね」(P147) 「私たちは常に右肩上がりでないといけないという強迫観念にさいなまれている。でも本来は去年と同じ年収で暮らせる社会のほうが幸せなんです」(P203) よく大人が「今の時代にあの人が生きていたら、何と言っていただろう」というようなことを言うのを聞いていたが、私が初めて実感を持ってこう思うのは杉浦さんだ。 杉浦さんが20代前半でデビューした頃、日本はバブル期だった。バブルが終わる前に「隠居宣言」をして、約10年後の2005年に亡くなった。 想像だけれども、アキバ文化を知っていたら(知っていたかもしれないけれど)、杉浦さんは興味を持ったのではないだろうか。内輪的、ガラパゴス的に進化した文化は江戸の洒落本と似ている。AKB48についてはどう思っただろう。 twitterとか、facebookについてはどう思っただろう? iPhoneは? 電子書籍は? 「東京、なんだかもうつまらないな」と思って江戸に還ってしまったのなら悲しい。 ■ハイライト 私は「影響を受けた人は?」と聞かれたら真っ先に杉浦日向子さんの名を挙げるであろうほど、杉浦さんのことが好きだが、その一方で、「嫌いな作家は?」と聞かれてすぐにその名を思いつくのは林真理子さんだ。 それで今回、杉浦さんと林真理子さんの対談があったものだから、これはもうなんて言うか。必見の取り組み。好物を食べるように、ゆっくり読んだ。好きなものと同じように、嫌いなものも気になるのって何でなのでしょう。 とはいえ、あんまりこの対談では林真理子さんの嫌みな感じが鼻につきませんでした。 冒頭の「まず、江戸時代の結婚のお話しから伺おうかしら」ってとこには思わず、「なんで上からやねん!」と突っ込みましたが、全体的に江戸時代について義務教育の教科書レベルの知識しかない(それでいいと思うけど)林さんが杉浦さんの話を聞いてピュアに驚きっぱなし。本当に単なる生徒役だ。カルチャー講座聞きに来たおばちゃんのようで取り立てて腹が立つこともなかった。あえて言うならば、「これで他の対談相手(田中優子・石川英輔・高橋克彦など)と同じ原稿料もらってんのか!」。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.04.03 06:50:52
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