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2007年01月05日
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 あけましておめでとうございます。今年も、投資家の皆様の投資と経済生活のヒントになるような情報とアイデアをお届けすべく、努力する所存ですので、よろしくお願いいたします。

■三階層説ではなくて、四階層説に修正

 このシリーズの二十三回目、2006年1月20日付けのレポートで、主にお金の稼ぎ方の形態の違いによって、日本に、「株式階層」、「ボーナス階層」、「給料階層」の三つの階層(単語としては「階級」という言葉を使う方が実感に近いが、「階級」では些か刺激的なので、「階層」を使う)が出来つつあることについて書いたが、その後、各種の「格差」に関する研究や現実の経済を見てみると、この、いわば三階層説を、四階層説に修正する必要があるのではないかと、思うようになった。日本経済を理解する上では、給料階層の下に、もう一つ階層が必要なのだ。

 以前の論旨の復習になるが、「株式階層」とは、上場に成功したベンチャー企業の経営者やストック・オプションを持っている幹部社員などが典型的であり、株価に連動した大きな収入を得る人たちだ。働いた年数で割り算した、年収ベースで数億円になることも珍しくないし、これが数十億円という場合もある。かつての大金持ちとの大きな違いは、株価による利益の場合、会社がその年に稼いだ利益から配分を受けるだけではなく、会社が将来も受けると期待される利益の分まで株価として評価され、いわば、将来の利益からの配分を現在価値ベースで先に受け取ってしまうことが出来るのが、彼らの特徴だ。逮捕されてイメージが変わってしまったが、前ライブドア社長の堀江貴文氏などが、この階層の象徴だろう。こうした、株式公開長者とでも呼べる人たちが、近年、人口の多数を占めるわけではないものの、かなりの数として登場してきたことが、いわゆる「格差」の上の方の拡大に貢献している。

 ただ、理屈を考えると分かって貰えると思うが、この種の稼ぎを、「世界が100人の村だとして、100人全てが得ることが可能か?」といえば、答えは「NO」だ。

 第二の階層は、その年の稼ぎの中から何割、何パーセントといった形で利益分配に預かる、「ボーナス階層」だ。外資系金融機関のフロントの職種(営業マンやトレーダーなど、直接利益を稼ぐ仕事)が典型的だが、大企業の経営者、役員、執行役員などの幹部社員もこのカテゴリーだろうし、稼ぎ方の本質からして、医者や弁護士などの、独立自営できるプロフェッショナルもこの仲間だ。収入にはもちろん個人差があるが、年収にして数千万円という辺りが典型的である。それぞれの職業的ポジションにあって、ある程度「余人を持って代え難い」仕事をしている、プロフェッショナル達だ。

 第三の階層は、「給料階層」だ。彼らは、半ば固定的な(給与テーブルによる昇給や、「成果主義」による多少の評価の差はあるとしても)給料から主な収入を得る人たちであって、その収入の典型的なゾーンは、年収にして数百万円の辺りであって、いわゆるサラリーマンの多数がここに属する。

 企業のP/L(損益計算書)をイメージしつつ、株主から見ると、ボーナス階層に払うお金も、給料階層に払うお金も、利益というよりはコストという認識だろうが、経営幹部から見ると、ボーナス階層への支払いには利益配分のニュアンスがあるが、給料階層への支払いには固定的なコストとしか見えないに違いない。

 とはいえ、給料階層は、まだ雇用が安定的で、まさに企業にとって固定コストに近い地位を占めることが出来ているだけ恵まれている。実は彼らの下に(あくまでも経済的な有利不利の意味での「下」であって、人間の価値や身分を指すのではない)、パート、アルバイト、請負労働者など、非正規雇用として働く、いわば「非正規雇用階層」とでも呼ぶべき立場の勤労者の集団があり、彼らにも個人差があるものの、いわゆる正社員である「給料階層」のざっと半分くらいの年収で、しかも、ほぼいつでも解雇できるような形で働いている。彼らの年収は、場合によっては、生活保護水準を下回る場合もある。

 近年、多くの企業は、業績を立て直す過程で、正規雇用を減らし、非正規雇用を増やす形で、人件費の削減と、変動費化を図って来た。非正規雇用階層が分厚く存在するおかげで、企業は人件費の抑制に成功してきたが、彼らの厳しい労働条件は、「格差」の下の方の範囲を拡げることに貢献してきた。

 日本企業のコスト構造を考える上でも、民間消費の動向を考える上でも、「非正規雇用階層」の数の増減と、労働条件の動向から目を離せない。


■労働需給と景気、物価、企業業績

 「いざなぎ景気」を越えたと言われる、現在の景気回復を「実感できない」と言う人が多い理由は、人数的に多数を占める「給料階層」と「非正規雇用階層」に属する人々の、経済的条件が改善していないからだろう。

 日本の多くの企業は、一方で人件費抑制をはじめとするコスト抑制に努めながら、他方で輸出や設備投資などの需要が発生し、これが波及することで、業績を改善してきたが、かつてであれば、業績の改善にほぼ並行して、勤労者への賃金が上昇したのであるが、利益配分上、「株主の利益」を重視する風潮が強化されたこともあって、企業は、賃金の(特に、ボーナスではなく、給料の)引き上げに対して極めて慎重であり、これが、現在の国内消費の伸び悩みの原因にもなっている。

 ちなみに、給料とボーナスの比較、さらには成果主義導入の個人消費に対する影響を考えると、収入におけるボーナスの割合の増加や、成果主義による収入の不安定化は、総収入が一定でアウトした場合、「恒常所得」と呼ばれる、消費者が将来安定的に確保できると考える所得の現在価値を減少させるから、消費に対しては、マイナスに働くはずなのである。

 企業の経営者としては、労働者が抑制された賃金で働いてくれる以上、できるだけこれを維持して、粗利の増加分を、できるだけ多く株主に配分したい。もちろん、教科書的にも、昔からそうなのだが、近年、株主から経営者へのプレッシャーが強まったことで、この傾向がますます強化された。

 そうなると、賃金の水準は、労働需給が逼迫するまで、なかなか上がらない。もちろん、数字上に表れる好況は、失業率の低下の形で、これまでの失業者に恩恵を与えるが、これまで職があった勤労者(国民の大多数)にとっての、収入は、少なくとも目立って改善したように見えないし、下手をすると、年金保険料をはじめとする社会保険料の着々とした値上げと、今年に予定されている所得税、住民税の定率減税廃止などの影響で、手取り所得が減る形にもなり、要は、「景気回復が実感できない」という状況につながっている。

 この状況は、労働需給が逼迫すると、決定的に変わるはずだ。

 現在は、まだまだ日本としては高めの失業率となっているが、今後、労働需給が引き締まってくると、賃金の上昇が起こるはずで、これは、民間消費や物価にも影響を与えるはずだし、ネガティブな要因として企業業績にも大きな影響を持つはずだ。

 中期的な視点で日本経済を見る場合に、最も注目すべき経済指標は、有効求人倍率であるかもしれない。

 また、業種や個別企業の分析を行う場合にも、その業種・企業が直面している労働需給、その職種の労働集約性の差、労務管理に関する経営的アプローチの差などが、大きな注目材料になることが予想される。

 昨年12月に発表された、日本経団連のいわゆる「御手洗ビジョン」などを見ると、既に、中期的には、経営者達は、日本における労働力不足を心配していることが分かる。同ビジョンでは、2015年の日本の労働力不足を400万人と見積もっており、これを外国人、高齢者、女性などの活用で何とか100万人以下に抑えたいと述べている。

 経営者や株主の側から見るか、従業員・労働者の側から見るかで、利害が正反対になる問題だが、労働力問題の重要性と、企業経営者側の危機感の存在を認識しておきたい。





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最終更新日  2007年01月05日 13時30分18秒
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