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GPIFとKKR 公的年金としては、厚生年金と国民年金を合わせた、ざっと120兆円の資産を運用す る年金積立金管理運用独立行政法人(通称「GPIF」)が有名だ。GPIFは有識者による運用委員会の議事や資料をかなり公開しているので、個人投資家が アセット・アロケーションに使うリスクのデータに、GPIFが使っているものを利用する事がしばしばある。筆者も、本連載でGPIFのリスク・データを 使ったことがある。 ところで、公的年金の運用組織はGPIFだけではない。たとえば、約8兆4千億円の運用資産残高があり、国家公務員の 年 金を運用する、国家公務員共済組合連合会(通称「KKR」)がある。筆者は、この組織の運用委員会の委員を務めている。 KKRでは、平 成 22年度に基本ポートフォリオの変更を行った。KKRは、基本ポートフォリオの作り方において、何点かGPIFと異なる方法・考え方を用いているが(たと えば年金の資産と負債との相対的なリスクをリスクと見て最適化している)、リスクと期待リターンを使ってポートフォリオを作る点は両者共通だ。 と ころが、KKRが使っているリスクのデータは、GPIFのものとは大きく異なる点がある。 GPIFの現行の基本ポートフォリオは、現在、 2004年度に策定されたものを、2009年度を超えても暫定的に利用することになっていて、1973年から2003年のデータから計算されたリスク値だ が、たとえば、国内債券、国内株式、外国株式について、以下のような数値だ。
これに対して、2000年以降2009年12月ま での 収益率データを使い、定性的な判断を加えたKKRのリスク・データは、以下のようなものになっている。
私 見だが、30年以上前のデータを最近のデータと等ウェイトで評価するGPIFのリスク推定には現実的でない面があるように思う。たとえば、国内債はかつて の大幅な金利変動を反映して5%を超えるリスク値になっているが、これは当面数年のリスク値として過大であるのではないか(もちろん、そうでない可能性も あるが)。 一方、KKRは株式と債券の相関(時期の取り方によって符号まで含めて変動して不安定だ)を0に割り切る一方、近年連動性を強 め ている印象の内外株式については0.7と大きめの相関係数を想定して保守的(分散効果を小さく見積もっているという意味で)な値を使っている。 も ちろん、参考にした時期が異なるので、株式のリスク値の大きさにも違いがある。 リスクのデータを変えてみる で は、異なるリスク値で同じポートフォリオを分析するとどうなるだろうか。「国内債1%、国内株6%、外国株8%の期待リターンを想定し、国内債40%、国 内株式25%、外国株式35%のポートフォリオを持っている架空の投資家のポートフォリオを二つのリスク・データで見てみる。 先ず、 GPIFのリスク・データを使ってみよう。 GPIFのリスク・データによるリスク計算アセッ トアロケーション計算ワークシート 分散共分散を利用
相 関係数
分 散共分散
次 にKKRのリスク・データを使って、同じポートフォリオを見てみよう。 KKRのリスク・データによるリスク計算ア セットアロケーション計算ワークシート 分散共分散を利用
相 関係数
分 散共分散
KKR のリスク・データで見たポートフォリオは、リスクの絶対値が三資産共に小さいのに、案外大きなリスクになっていて、GPIFベースのものとポートフォリオ 全体のリスクの大きさにおいて変わらない。 なお、効用を計算する際のリスク拒否度は、それぞれのリスク・データと投資家のポートリオがこ の 投資家にとってベストのポートフォリオであることを前提として、計算している(リスク拒否度=リターン÷(2×リスクの二乗)で計算)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年07月06日 09時12分10秒
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