『再生』 石田衣良
日常という身近な世界の中にあるドラマの12編。12人の主人公の周りには家族があり家がある。今年、新しい家族の誕生と新居への入居を控えたオレには、それらが自分の未来の姿と重なってしまい、物語の世界へ容易に入り込んでしまった。しかしながら、それらは実際には自分の身には起きてほしくない出来事ばかりで、現実の出来事ではなく本の中の物語で良かったと心底思えた。だからといって全ての物語が辛く悲しい物語ということではなく、そこにはどこか温かさや優しさが見え隠れしている。読み終えてみるとどう形容していいものか、一言ではとても纏めることができない。思えば人の人生なんて簡単には形容することはできないのかも知れない。楽しい、悲しい、嬉しい、辛い、愛おしい、苦しい。オレの平凡な人生だって少なくともこのくらいの形容詞をあてはめることができる。この物語を読み、ただ一つ言えるのは、毎日、平凡に仕事に行き、家族の元に無事に帰ってこれることが、何よりも幸せなことなのだということ。そしてそのことに気が付けたことがこの本から得た一番の収穫だった。