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風狂夜話2

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2008年06月05日
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映画「ゆれる」を観る。2006年の作品。監督西川美和。

主演オダギリジョー。その兄役に香川照之。父役に伊武雅刀。その他脇役の

布陣も豪華である。

119分。あきさせない。殺人事件をめぐる法廷シーンがなかなかリアルで

迫力がある。香川の内面的で抑制の利いた演技、いつふきでるか予測しがた

い激情の科白。オダギリの自由奔放とみせかけよりどころのない生活気分の

イライラした演技もいい。

その二人の兄弟の殺人事件をめぐる思いがけない確執。お互いの遠く隔たっ

た距離と時間へのあせり。つながっていると信じていた絆のはかなさ。

なるほど今の日本社会に潜んでいる親子や兄弟、都会や田舎のグロテスクな

乖離をこれほど淡々と、女流らしいきめ細やかさで、ときに男のエゴを鋭く

弾劾する位相も忘れず描き出す手腕は凡ではない。

ギリシャ悲劇をほうふつとさせるという評もあるが私には毎日のワイドショ

ーをていねいに分析すればおそらく想像できる事件といえるのではなかろう

か。兄稔の科白「(田舎の)この暮らしを続けるなら、刑務所の壁のなかに

いるほうがましだよ」

「(弟の猛に)おまえのように都会で自由に好きな道を選べるのが羨ましい」

稔はガソリンスタンドに来るやくざな男に突っかかり傷を負わせ、地元の警察

で幼馴染みの智恵子をつり橋から突き落としたと自白する。

そしてこの自白でいままでの胸のつかえがおさまったと弟猛に打ち明ける。

猛は兄の生真面目で誠実な人柄の裏に隠された憤懣と刹那感を知ることになる。

裁判の過程でつぎつぎと明かされる兄の絶望。

それこそがいまこの国で日々おこなわれている犯罪(?)の実態ではなかろう

か。だれもこの連鎖をたちきることはできない。

東京にいようがニューヨークにいようがおかまいなしに事件はそれぞれの内面

に突き刺さる。稔はどこへいくのだろうか。

突き落とされた智恵子の絶望は救われるのか。





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最終更新日  2008年06月05日 07時37分22秒
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