風狂夜話２

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• 菅内閣不信任案について

  菅内閣と民主党の混迷が続いている。東日本大震災や東京電力福島第一原発事故の対応で、内外の不満が高まっている。統一地方選挙の前半戦において大敗を喫したのもその現われである。菅政権や岡田民主党はこの民意に対して、震災対応に追われている事情という理由でいっさいの責任を回避している。まことに厚顔というべきである。側近議員との会合で、小沢一郎氏が「菅首相（党代表）を退陣させるためには内閣不信任案可決しかない」と語ったことが１３日分かった。震災や原発事故に対する政府対応の不備や、失策を強く批判し、「倒閣」に言及したのである。野党側が６月２２日の国会会期末に向け検討している不信任案への同調を示唆することで、首相に自発的退陣を促す狙いだ。小沢氏は「党代表は両院議員総会で辞めさせることができるが、首相は不信任案を可決させることでしかやめさせられない」と指摘した。内閣不信任案が可決すれば、憲法の規定により内閣総辞職か衆院解散となるが、小沢氏は首相が衆院解散に踏み切る可能性について「東北地方では投票所がないから当分選挙ができない。首相が解散を打つことはできない」との見通しを示したといわれる。自民党関係者によると、小沢氏は自民党の大島理森副総裁や森喜朗元首相、古賀誠元幹事長と接触を図っている。小沢氏が不信任案への同調を示唆したことで、与野党を巻きこんだ政界再編の動きが今後、活発になるであろう。（東京新聞４月１４日朝刊）政界の一寸先は闇という名言がある。小沢氏がようやく剛腕を発揮するときがきたのであろう。政界での離合集散を誰よりもつぶさに経験した、壊し屋の猛者である。きっと言葉通りの「倒閣運動」になるであろう。おそらく挙国一致、自らを数にいれず、裏方に徹することであろう。あれだけの原爆的「非難中傷」キャンペーンにもへこたれず、米国の裏工作に乗っかる外務・財務・検察などの官僚たちの脅迫にもめげぬ大きな度量を示した政治家だ。きっと復活するであろう。そしておそらく、２１世紀の日本の真の立場が表現される。

  2011年04月14日

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• 日曜日の朝　つれづれなるまま

  朝のテレビでは、東北出身の漫才タレントが、気仙沼での津波被災について、ごく達者に語っていた。伊達みきおという名前。宮城県知事を狙っていると、相方につっこまれるもまことに雄弁、時局便乗の「東北魂」を売り込むあざとさには感心した。朝食後、さっぱり盛り上がらぬ「都知事選」の投票にでかける。９時現在で２．２％の投票率だ。まあ、この空気じゃどうにもならぬが。そこで洗濯にいそしむ奥方を背にして、街中散歩に。地震や原発騒ぎがなければ、町内会の花見がどこでも真っ盛りの時期だ。ブックオフで、古本をあさる。４月号の「文藝春秋」を買う。１０５円也。この雑誌を拾い読みするために、マクドナルド店にて一服する。超大型企画と銘打って「これが私たちの望んだ日本なのか」という特集を組んでいる。まあ、今回の東日本大震災の前に企画したものだろう。菅政権や、民主党に対する罵詈雑言といった趣である。そのなかで、二つ三つ。鶴見俊輔氏の「遠慮なく申します」の一篇。「二度の相次ぐ原爆投下の意味を考える機会を今、まだ生きてもっていること。この機会に、日本国が大東亜戦争を自ら起こして招いたものであり、その開戦の当初に日本国民を三百万人殺すという見通しをもっていなかったこと。この二つが日本人に自覚されているのか。……日本の資源を活かして、小さい国として生きる道をさがす。米国の属国として、しかし、絶えず米国をいやがらせる国であることを求める。二つの原爆を、戦力をなくした日本を知りながら、日本人の上に落とした。それを、生きている限り、毎日毎日、ミレニアムにわたって追及したい。そういう余世を私は送りたい」山藤章二の「私にそっくりな民主党」。「……最近の例では、尖閣諸島での中国、北方領土でのロシアの振舞いに対しての菅政権は、ただ慌てふためいているばかりだった。この対応には、まるで自分を見ているようにイライラした。私のなかにはふたりの人間がいる。ひとりは少年期に培われたヘイタイさんに憧れ、世間から神国日本・鬼畜米英を叩きこまれた＜タカ的＞日本男児だ。もうひとりは、敗戦と同時に豊かな米軍ララ物資を与えられて、ころりと親米に染まった＜ハト的＞日本人である。このふたりが同居してあるときはタカに、あるときはハトに傾いて、アイデンテティの確立しないまま老人になってしまった。＜優柔不断＞で＜決断力のない＞民主党は嫌いだ。これらはすべて私自身にそっくり。近親憎悪ならぬ自己嫌悪におちいる」そして久石譲「落ちるところまで落ちるしかない」だ。「……およそ総理という顔ではない。普通のエコノミークラスでいいんじゃないか。やはり人間顔が大事だ。……民主党は所詮外野で吠えていただけで実働が伴ったら何もできないのは菅首相と同じでわかりきっていた。さりとてここまで日本を腐らせたのは自民党なのだから彼らの復権は言語道断だ。二大政党制は笑うがほかに手はないとすると、小泉ジュニア対橋下大阪府知事の対決まで待つしかない。日本はこれまでビジョンもなくなんとなく集団でやってたらこうなったという、集団民意決定主義、ナンバー２の発想なのかな。落ちるところまで落ちるしかないね」どうすればいいのかな。胸やけする。

  2011年04月10日

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• 学者の責任　山口二郎

  特定の業界の権益を擁護する政治家を族議員というが、学者にも族学者が存在する。原子力の世界はその典型である。彼らは真理の探究という学者の責任を捨て、特定業界の利益追求にお墨付きを与えてきた。近年の大学では、研究費をくれるスポンサーに尻尾を振るという幇間体質が一層強まっている。事故の教訓は明確である。原発事故を契機に、政官業学の鉄の四角形を解体すること。そのために、特定分野の政策を検討する審議会には、必ず異なった立場の専門家を入れて、実質的な議論をすることが不可欠である。民主党政権では、そうした人事にこそ政治主導を発揮すべきである。学問は人々の役に立たなければならない。それは、権力者や金持ちのヨイショをすることではない。逆にそういう連中がいやがることを敢えて言うためにこそ、学問の自由が保障されているのだ。（東京新聞「本音のコラム」より）＜福島第一原発の放射能事故＞経産省＋東電＋装置企業＋御用学者＋マスコミ・広告の翼賛体制及び福島県の補助金自縛＋雇用促進＋リスク隠蔽をともなう。これらは自民党独裁と官僚統治の長きにわたる国民不在の政策と国富略奪のシステムの結果であろう。誰もが責任をとれないほどややこしい。なんという破廉恥であろう。事故の後始末に増税も考えているらしい。よほど悪魔的な策略家がいると見るべきだ。民主党にも、連合労組にも、あらゆる「正義」を揚言する勢力にわれわれは監視の目をもたねばならない。

  2011年04月03日

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• 原発の危機にどうすれば

  「未曾有の災害の状況が進行中ですが、お前は考えているのかと問われれば、絶えず考えています。いくら考えてもわかんねえってこともありますが、自分なりに、ずっと考えています。……戦争が終わったとき、僕はとても落胆しましたが、思い返せば軍国主義だけはよく学んだけれど、それ以外のことは学んでこなかったじゃないかと思い、本を読みました。『新約聖書』も読んだし、マルクスの『資本論』も古典経済学のアダム・スミスも、自分なりの読み分けができるまで読みました。これから自分は何を警戒し、何を戒めとしたらいいのか。読みながらそれを考え続けました。（略）……『国家と革命』の中で、レーニンは共産主義の相互扶助が成就したら共産党を解散しようという考えを示した。そして年をとったレーニンは道なかばで病に伏すのです。妻が看病するのですが、スターリンはレーニンに対し、お前の妻は党の公事をないがしろにしていると批判します。そこから二人の対決が始まります。家族の看病や家族の死といった切実な私事と、公の職務が重なってしまったとき、どっちを選択することが正しいのか。スターリン的マルクス主義者であれば公を選ぶのが正しいというでしょう。ところがマルクスは、そうでないことを示しています。マルクスは、唯物論でなんでも白黒つけちまえという論者たちと異なり、肉親が死んだときの寂しさ、闘病のつらさといった切実なことは、公の利益のよさといったことと別のものだということを「芸術論」で言っています。この「私」をとるのがマルクス思想の本流であり、それは比較や善悪の問題でもなく、人間の問題なんだ、というのがレーニンの立場です。真理に近いのはどっちだ、ぎりぎりの時にどっちを選ぶんだとなれば、レーニンの立場を選ばざるを得ないでしょう」（吉本隆明「朝日新聞　本を開けば」）吉本隆明氏が言うように、レーニンの懸念があたって、スターリンの秘密警察的ソ連共産主義は「公の利益」を追及するあまり、残酷無残な党内粛清を敢行したのである。世界有数の電力会社であるはずの東京電力は、なぜ世界中を震撼させる危機を回避できなかったのか……。その理由は地震や大津波という「想定外の自然災害」ではない。背景には、原発をとにかく推進する国（経産省）、事業者である東電、チェックするはずの保安院の三者による「原発ムラの馴れ合い」ともいえるトライアングルがあった。東電側の思惑。爆発した一号機は稼働から四十年が経ち、減価償却を終え、「金の卵を産む鶏」のように利益を生みだす原子炉だった。それが、海水を注入すれば、廃炉になる。利益を生み出す装置を失う恐怖が、初期の判断を遅らせたのではないか。佐藤栄佐久前福島県知事の告発。「０２年には、保安院が原発作業員の内部告発を二年間にわたって握りつぶしていたのです。告発をしてくるのは、七次下請けとか八次下請けの労働者たちです。『東電側から二百日かかる作業を半分の期間でやるように指示された。作業員はどうしようもない状況で、これでは安全は守れません』というものもありました。利益を損ないたくなかったのでしょう。それでも経産省や東電の住民への説明は、『いかなる事態が起きても原子力は安全です』。しかし、私は県民の安全を守らなければならないので、東電側の『原発がクリーンで安全です』というイメージ広告を、福島県では一切やらせませんでした」「９７年、国はプルトニウムの新しい使用法として＜プルサーマル＞を閣議決定し、実施に向けた協力を福島県に要請してきました。しかし、それまでのデータ捏造事件などで不信感をもっていたので受け入れを拒んだのです。すると０１年２月東電は圧力をかけてきました。突然、会見を開き、『計画中のものも含めて、すべての新規電源開発を凍結する』と発表したのです。これで県内の火力発電所の建設計画も、それに伴う地域振興策も、すべて雲散霧消することになったのです」（週刊文春「原発大パニック」）佐藤氏がのちに露骨な検察捜査によって冤罪に追い込まれたのも、これらの反骨によるのであろう。まことに電力会社の国家意思は「個人」を蹂躙して恥じない。

  2011年03月24日

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• 内田樹氏の「専門家への委託」

  神戸女学院大教授の内田樹氏はかく語りき。「災害への取り組みは＜共同体の存続＞という喫緊の要請に応えるものであり、それゆえその手だては専門家に委託すべきである。いかなる＜政治的正しさ＞とも取引上の利得とも関わりを持つべきではない。私たちは、私たちが委託した専門家の指示に従って、整然とふるまうべきである。だが、今回の震災では福島原発の事故処理を巡り、専門家への信頼が揺らいだ。政治家たちは＜原子力カード＞を持つことで国際社会における威信が上がると信じる。ビジネスマンたちは低コストのエネルギーを市場に供することが仕事だ。だから原発の安全性を過大評価し、事故のリスクをできるだけ低く見積もろうとするのは、彼らの職業上の自然である。それは彼ら個々人の善意や倫理性とは関係がない。彼らを責めても意味がない。必要なのは政治家とビジネスマンの＜原子力を甘く見る＞体質を制約する、＜できないことは『できない』と言える専門家＞だ。原子力のような、一歩間違えると共同体の存続にかかわるようなハイ・リスクのテクノロジーの管理運営は、国威の発揚にもカネ儲けにも興味がなく、国土と国民の安全だけを優先的に配慮する＜かたくなな＞専門家に、委託すべきなのである。その平明な事実を私たちは忘れていたのではないか」（「週刊ポスト」４・１号「安全なところにいるもののふるまい方」）評論家の日下公人氏はしかし次のように語る。「原発関係の役所や企業、専門家と言われる人間たちは、原発について語ることに及び腰でした。誰もが自分以外の意見に倣うばかりで、自らの責任で判断しない。耐震基準がいい例で、責任の所在をあいまいにして決めたため根拠が薄弱です。事なかれ主義の無責任体質は今回の地震は白日の下に晒してくれたのです。巨大地震が起きて津波で町が流され、原発が爆発しています。そんな現実がある一方で、テレビでは真新しい作業着を着た政治家が会見をし、アナウンサーは真っ白なヘルメットを被って一日中同じことをしゃべり続ける。視聴者は＜何かが違う＞と感じたはずです。大地震という厳しい現実が、政治家のパフォーマンスやマスコミの嘘を炙り出してくれたのです」（「週刊ポスト」４・１号「政治とマスコミの嘘が炙り出された」）また作家の広瀬隆氏はもっと過激に語る。「原発の事故後に炉心溶融が起こりそうになったとき、必ず水素爆発は起きると思った。爆発が分かっているのに誰も指摘できない。事故後に対応すべき人が原子炉を理解せず、計算できない集団だったことは驚きだ。……私は原子力関係者を批判する立場だが、スリーマイル島で爆発を回避させた米国の計算能力を高く評価している。日本ではそれができずに爆発させてしまった。最優先の電源確保も今頃やっている。国力を挙げての対応が遅い。……とにかく被爆量を最小限に抑えてほしいのが今の心境。今回の事故が実証したのは、危惧していたことが起これば、すべての原発が福島原発と同じ状態になる可能性があるということだ」（東京新聞３・２１　「まず止めて総点検」）しかし財界総本山の日本経団連会長・米倉弘昌氏は余裕で語る。「（日本の原子力政策は曲がり角かと問われ）そうは思いません。今回は千年に一度の津波だ。（地震に）あれほど耐えているのは素晴らしい。（見直しの必要性について）ないと思う。自信を持つべきだと思う」読売新聞の渡辺恒雄会長の「セリーグはパリーグの自粛に従わない」とか、石原都知事の「東北大地震は日本人の我欲に対する天罰だ」という暴言には、この国の特権階級の人々の実に思いあがった国民蔑視と、財閥・官僚国家に迎合し、甘い汁を吸ってきた悪らつな国富簒奪の戦略が見えてしまう。菅政権もいつか彼らの誘惑に骨がらみにされていきそうだ。残念だ。

  2011年03月21日

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• 空気に支配される日本人

  日本人は「情況を臨在感的に把握し、それによってその情況に逆に支配されることによって動き、これが起こる以前にその情況の到来を論理的体系的に論証してもそれでは動かないが、瞬間的に情況に対応できる点では天才的だ」という意味のことを、中根千枝氏は大変に面白い言葉で要約している。「熱いものにさわって、ジュッといって反射的にとびのくまでは、それが熱いといくら説明しても受けつけない。しかし、ジュッといったときの対応は実に巧みで、大けがはしない」と。オイルショックのときの対応の仕方は、まさにこの言葉の通りだが、過去を振り返ってみれば、公害問題でも同じである。この傾向は確かにわれわれにあり、またあって当然と言わねばならない。われわれは情況の変化には反射的に対応はし得ても、将来の情況を言葉で構成した予測には対応し得ない。「公害問題」において、言葉による科学的論証は、現実の臨在感的把握の前に無力であったし、今も無力である。戦時中もそうであったが、このことは戦後も変わっていない。（山本七平「空気の研究」）たとえば戦時中の「神の国と万系一世天皇」というロジック。だれもこの論理に疑いをもつことができなかった。すなわち、誰もが一種の催眠状態におちいり、それに科学的根拠を求めたり、歴史学的問答を起こすことは「非国民」とされたのである。（神の国は不滅だ、天皇は最後に国民を救うなど）「一億一心」火の玉で戦争にかりだされ、忠君愛国を唱え、鬼畜米英を信じ、竹槍で白人帝国主義者を追いたてることができると本気で思いこんでいたのである。また戦後にオイルショックの「洗剤騒動」のときも、メーカーは少しも売り惜しみをしていないし、減産をしているわけでもなく、いかに論証しても無駄であったと、ある会社の社長が「ホトホト困り果てた」と話していたらしい。この場合も、この社長がどのように論証したところで納得せず、洗剤が倉庫に山積みになっており、代議士などの摘発隊が、勇ましくブッている写真と記事のほうに人々は強く反応したのである。（企業家はきっと利益のために売り惜しみするだろう）あらゆる事態において、日本人は科学的論証よりも、臨在感的事実のほうに強く反応するのである。一種の集団ヒステリーであろう。このロジックをマスコミが応用すれば、どうなるであろうか。たとえば今の民主党政権での消費税増税論議である。戦後６０余年の官僚・自民党支配が疲弊し、ようやく政治主導の民主党政権に交代したばかりである。旧支配体制はもはや立ち上がれないだろう。だが財務官僚たちは宿願の「消費税」増税を、ここで臨在感的事実である民主党政権の力を借りて成立させようと謀っているにちがいない。あの市民派の菅首相が「消費税」増税を叫ぶのだから、きっと国の財政は危機的状況なのであろう、と普通の国民は思いこむと。彼らはマスコミの体制派にも、ありとあらゆる偏向「情報」をばらまき、国民が「しょうがないな」と諦めるレベルまで、国の財政危機をあおるのである。かくて紆余曲折の末、市民派菅首相のもとで、消費税増税が成立するであろう。そして菅政権は「消費税増税」後の、民意をはかる選挙で大惨敗するであろう。そのあとは、いったいどうなるか、予測できない。きっと善意の国民はその戦後処理を、ぶつぶつ言いながら行うのであろうが。

  2011年03月16日

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• 「津波は天罰だ」と石原都知事

  石原都知事は１４日、蓮舫節電啓発担当相との会談のあと、東日本大震災に関連して次のように言い放った。「津波をうまく利用して『我欲』を一回洗い落す必要がある。やっぱり天罰だと思う」この発言は東北の被災者への配慮を欠いた、とんでもない暴言だ。都知事として、また同じ日本人としてもあるまじき侮辱発言である。なに様のつもりか、呆れるばかりだ。石原氏は、所在不明高齢者が社会問題化したことなどを挙げて、「日本人のアイデンティティーは我欲になった。金銭欲、物欲、性欲」と指摘し、「テレビのチャンネルも、グルメ・温泉・お笑いばかり」とからかっていた。今回は一応「被災者の方々はかわいそうですよ」とも付け加えたが、津波を「天罰」と評した発言は撤回しなかった。さっそく被災地・宮城県の村井知事が、「塗炭の苦しみを味わっている被災者がいることを常に考え、おもんぱかった発言をして頂きたい」と不快感を示した（朝日新聞）。石原氏は「言葉が足りなかった。撤回し、深くおわびする」と述べ、謝罪した。まあ、究極の後出しジャンケンで４選出馬を表明した権力主義者である。何でもありのメディアの暴走に乗っかっている７８歳の老人として、いかがなものか。２００７年３月に発生し多数の死傷者を出した能登半島地震のさいも、下劣な品性丸出しの発言をしていた。「震度６の地震がきた。ああいう田舎ならいいんです。東京ならかなりの被害者が出ただろう」と。３選目の都知事選に臨む、葛飾区・JR亀有駅前での街頭演説だった。（日刊ゲンダイ）なぜかこの人には、奇をてらった、マスコミの見出しになることにたけた発言が多い。とくに日本人の深層心理にある「差別意識」をことさら強調し、一種の大衆罵倒で自らを誇示するヒロイズム、底を明かせば卑しい選良主義がある。その選良主義に痺れる奴隷的ミーハーが彼を愚かしい老残の都知事にする。これでいいのだろうか。

  2011年03月15日

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• メア日本部長の沖縄侮蔑発言

  昨年１２月３日のメア米国務省日本部長の講義（ワシントン国務省の一室にて）。沖縄県民について以下のように発言している。「沖縄は、飲酒運転率が最も高い」「沖縄の政治家は日本政府との交渉で合意しても、沖縄に帰ると、合意していないと言う」「日本政府は沖縄の知事に『もし金が欲しいならサインしろ』と言う必要がある」さらに日本人や民主党政権に対しても同様に発言している。「日本人は合意文化をゆすりの手段に使う」「日本文化には本音と建前があり、駐日米大使は真実を言うと批判される」「民主党政権は沖縄を理解していない。同政権は沖縄にパイプがない」「民主党より自民党の方が沖縄と通じている」「日本国憲法９条を変える必要はない。変わるとも思えない。改憲で日本は米軍を必要としなくなり、米国にとってよろしくない」まことに遺憾である。本音ばかりで身も蓋もないから。「発言録の内容はメア氏の発言を正確に反映している」「講義の場ではオフレコ（公開しない）という説明は一切なかった」（共同通信）証言によると、講義を聞いたのは、デービッド・バインアメリカン大学准教授と博士課程のジェシカ・トーレスさん（２５）、沖縄に親族をもつ日系４世のトーリ・ミヤギさん（２０）ら学生１３人の計１４人。国務省側出席者はメア部長を含む３人の由。初めて実名での取材に応じたバイン准教授は「偏見に満ちた発言に大変驚いた」と話す。「とにかくショックを受けた」（トーレスさん）「米政府の地位ある人の発言とは思えなかった」（ミヤギさん）など講義が終わった直後から学生の間にも波紋が広がった。「人種差別発言だ」との声も出たという。（東京新聞「こちら特捜部」）また米軍普天間飛行場を名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に移設する米軍再編計画について「すでに日米両政府が合意したので、自分はその執行官であるとよく言っていた。地元の反対は意に介さない。非常に単純な思考回路だった」（地元メディア）おそらく辺野古沖移設問題がいっこうに進まないことで、責任者として、苛立っていたのであろう。国務省内の圧力も相当きついのであろう。だが、このたびは完全にこの「恫喝的侮蔑発言」は裏目にでた。沖縄の県民もさすがに、この人物の「人種差別」白人優位主義の放言を許さなかった。「沖縄に何年か総領事としていた外交官がああいう認識かというと、少し情けない」（仲井真弘多沖縄県知事）「長年押しつけられた米軍基地の撤去を願う県民を、『ゆすり』呼ばわりするなど言語道断。そんな人物に日本部長として、基地問題に関わってもらうわけにいかない」（沖縄国際大学の照屋寛之教授）９日、米政府はケビン・メア日本部長を更迭したと日本政府に伝えた。メア侮辱発言に対する沖縄側の強い反発を踏まえ、早期の事態収拾を図る狙いがありありと見える。来日中のキャンベル国務次官補の渋面がそれを物語る。だんだん面白くなってきた。沖縄県民の真の「ゆすり」を期待する。

  2011年03月10日

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• 石原都知事の核保有発言

  ロンドン＝橋本聡（朝日新聞）より。英紙インディペンデントは８日、東京都の石原慎太郎知事が同紙とのインタビューで中国の脅威に対抗するため、日本は核兵器をつくるべきだとの見解を述べたと報じた。また、石原氏の言葉を引用して「隣国である中国、北朝鮮、ロシアは核兵器を持っている。同じ状況に置かれた国が世界にほかにあるのか？」「人々は（核開発の）費用のことなどを言うが、現実には外交交渉力は核兵器を意味する」と語ったと伝えた。いよいよ保守政治家の「日本核武装論」が表にもうごめいてきた。７日の産経新聞には帝京大学の志方俊之氏が「核は持てるが持たぬが賢明だ」と題する「正論」を発表している。「我が国はすでにミサイル防衛網を強化しつつあり、状況次第では敵地攻撃能力も整備し得る。その日本が国会をはじめ公開の場でタブーなしで＜日本の核＞を論じ、日本が核保有へと転換しないようにと、周辺諸国が祈りつつその論議に耳を傾けるような状況もまた一つの＜抑止力＞になるであろう。高いコストを払って独自核を保有するよりも、その分、通常戦力を強化して、その分野で独自性を増し、対米依存度を減らすことの方が、有効かつ現実的である」明らかに保守系論者の間に米国の「核の傘」に安全を委ねることへの不審が強まっている。冷戦構造が消滅した現在、「仮に北朝鮮が日本に小規模な核を一発落としたとして、米国は必ず核で報復してくれるであろうか」と疑っているのだ。昨今の中国・ロシアの日本民主党政権に対する「戦後秩序を覆す歴史認識」に依拠する領海侵犯行動には、米国との暗黙の了解が明らかだ。米国の「恫喝と厳命にすくみあがる日本人」というロジックを、中国・ロシアの同じ核保有・安保マフィアの優越意識から共有しているからである。「日本は頭からガツンと言えばすぐにカネを出すよ」というわけだ。許せない。そこへいくと沖縄人は元気だ。米国務省のケビン・メア日本部長が「沖縄はゆすりの名人だ」などと発言した問題で米軍普天間基地の移設先とされる名護市議会は９日、「県民を著しく侮辱する発言だ」として、発言の撤回と県民への謝罪を求める抗議決議を全会一致で可決した。メア氏のほか、オバマ米大統領やルース駐日米大使らにも送ったという。かのルーピー鳩山氏は、オバマ氏との東アジアの状況認識において、きわめて「対等的な姿勢」を示していままでの「対日恫喝外交」を批判したらしい。「沖縄米軍基地の移転・縮小」や「東アジア共同体」などの独自論を展開し、オバマ陣営をあわてさせたという。アメリカ様に意見するのか、というわけだ。したがってルーピー鳩山氏は、政治献金や私生活のスキャンダルなどで完膚なきまでに従米マスコミの餌食となり、外交どころでなく修羅場に放り込まれた。日本をアジアの戦争にまきこませるような謀略説もある。悲しい現実だ。いったい日本人はどこへ向かうのか。

  2011年03月09日

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• 地域政党「減税日本」のうねり

  穂坂邦夫さん（地方自立政策研究所理事長・前埼玉県志木市長）「地方自治体では長年、首長と議員をいずれも直接選挙で選ぶ二元代表制が続いてきた。……その二元代表制の理念とは、選ばれ方の異なる個人と集団が相対し、監視し合い、政策を競い合うことで独裁的な地方政治を排することのはずだ。だが、現状は制度疲労がきわまり、どの自治体でも予算案を出すのは首長ばかり。議会は議決権という最高の裁定権を握っているにもかかわらず、執行責任を持とうとしない。これまで首長はこういう議会ともたれあい、妥協しつつ議会の既得権益を温存させてきた。人気の高い河村さんだから、名古屋の市議会と妥協し、ほどほどの改革をするだけでも２期や３期は首長にとどまれるはずだ。なのに自ら大汗をかいて既得権の議会の実態をあぶりだした。……私は市長当時、市議会に＜新年度予算のたたき台を作ってほしい＞と逆提案したことがある。必要な資料もスタッフもすべて提供するから、と持ちかけた。だが、議会側からは＜執行部の予算案をチェックして判断すればいい。議会が予算編成まで担うのは越権行為だ＞と拒まれた。……議会が単なるチェック機関に過ぎないならオンブズマンに役割を委ねれば十分だ。議員報酬はいかにも高いし、議員定数も多すぎる。名古屋市や愛知県でおきた民意の爆発は二元代表制の機能不全に対する懐疑の表れだ。大きなうねりは全国に波及するだろう」田中秀征さん（元衆院議員・元経企庁長官）「民主党は政治と行政のムダの排除を唱え、マニフェストの実現を約束して政権を獲得した。ところが政権の座につくと財政危機を唱えながら、自ら身を削ろうとせず、増税が必要だという世論調査を過大視し、手順を省略して消費税を上げようとしている。また国民と約束したマニフェストも変えようとする。民主党政権への期待はすっかり失望にかわった。……河村さんのやり方は対照的だ。＜税金で食っとる方が楽して払っとる方が苦労する政治を変える＞という簡明なメッセージを出し、まず自ら率先して給与を８００万円まで下げた。身を削る姿勢を示したわけだ。大きな政治的な事業をする際に、指導者の側がそれに見合うリスクを引き受けるというのは、歴史が教える大原則である。……さらに公約を徹底して守ろうとする。そのぶれない姿勢は、実は有権者が民主党に期待しながら、裏切られたものに他ならない。約束を守るのは政治家として当たり前のこと。選挙のときの国民との契約を曲げざるを得ないときは、いったん辞める。……やり方が独裁的という人があるのだが、支持率が下がっても辞めないと言ったり、約束を守らないのに辞めなかったりするほうが、よほど独裁的ではないか」民主党の佐藤夕子衆院議員（４８）＝愛知１区＝は４日告示の名古屋市議選で、河村たかし市長が代表を務める地域政党「減税日本」の候補者を支援するため民主党を離党し、減税日本に入ることを決めた。３日民主党本部に離党届を出した。佐藤議員は河村たかし市長の元秘書で、０９年の衆院選で後継者として出馬し、当選している。

  2011年03月03日

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• 沖縄はパラダイス

  鳩山由紀夫氏は相変わらず真顔で冗談を言う人だ。あるいはへろへろ顔で「真実」をあぶり出す人だ。沖縄の新聞記者のインタビューに答えて、「沖縄米軍普天間飛行場を辺野古へ移設すると決断したことについて米海兵隊の＜抑止力＞を根拠としたのは＜方便＞だった」と説明したのである。あにはからんや、米国と米軍複合機関に媚びてきた大手マスコミは一斉に反発した。いわく「沖縄県民の怒り」、「日米関係へ悪影響」、「米兵の日本防衛に対する無理解」、はたまた「東アジアの戦争危機」などなど。だが、はたしてそうなのか。これらのマスコミや外務・防衛官僚の戦後一貫して国民へ提供してきた情報は本当に「真実」だったのか？　うそはないのか？　むしろ彼ら連合軍が「日米安保体制」下で「利権」と「情報」を独占・操作して甘い汁を吸ってきた。そのツケがまわってきて、沖縄をいいように（パラダイスとして）蹂躙してきた「真実」が暴露される。それを怖がって、吠えているというのが実情ではなかろうか。鳩山氏は日米合意を結ぶ際に「学べば学ぶほど海兵隊の抑止力の大切さが分かった」と説明した。これを「方便」と発言したのである。まことに老獪な「意趣返し」であると私は見る。マスコミ連合は相変わらず「軽い発言」とか、「日米の信頼を無にする暴言」と矮小化して「ルーピー鳩山」を演出するのに躍起なのだが。菅政権の「普天間基地問題」への先送り姿勢に業を煮やしたゲーツ米国防長官は、さっそく米下院の公聴会で「今春遅くまでに（普天間の）解決を望む」とクギを刺してきた。いよいよ米国は財政破綻の危機を隠せなくなっている。とすれば鳩山発言は、軽いとか、ルーピーとかいう次元ではない。むしろ米国の政治・財政・軍事の心臓に直結する直球なのである。ただそれをできるだけ「小さく、軽く、冗談めかして」マスコミは扱いたいのである。彼らは菅政権をしっかり支えて、米国・米軍の共同シナリオに従属させ、操縦し、日本人の「思いやり」と「おもてなし」で米海兵隊の「パラダイス」に色を添えたいのであろう。馬鹿な人びとだ。「消費税増税」もその属国意識モロ出しの世論誘導策である。そろそろ彼らも「年貢の納め時」だ。いままでの脱税・電波独占・世論ねつ造を謝罪すべきだ。

  2011年02月20日

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• 官僚たちの「統帥権の独立」

  副島隆彦　今の憲法体制上、天皇は「内閣の助言と承認に基づいて、国事行為を行う」　　（日本国憲法第３条）わけです。小沢一郎はこのことを言った。「天皇は内閣と　　一体になって行動する」ということです。それに対して、羽毛田宮内庁長官が自　　分が玉体を取っているという発想自体が、違法であり、憲法違反です。自分たち　　が実質的には天皇の代理権や、国家の代理意思を持っていると思いこむことです。　　「天皇の代わりに自分たちが判断する。天皇には判断させない」……きっとそこ　　まで考えているのでしょうね。佐藤優　だからこれは、太平洋戦争中の陸軍の「統帥権の独立」みたいな話です。副島隆彦　天皇の統帥権への政府からの干渉を指して、「統帥権の干犯」と彼ら軍事　　官僚たちが言ったわけです。官僚は「理論の筋道」を捻じ曲げるのが得意です。　　天皇本人のご意思はどうなるのかというと、そこはもう語らないことにするわけ　　です。それで国家が暴走して中国侵略を行い、世界を敵にまわして無謀な戦いを　　行い、みじめな敗戦をしました。佐藤優　天皇陛下ご自身が本心を語れないことを理由にして、しかも天皇陛下の健康　　問題まで出してきたわけです。官僚が意図的もしくは無意識のうちに「天皇を管　　理下に置く」という発想をしている問題を徹底的に追及しなければいけません。　　（中略）副島隆彦　あの習近平国家副主席を天皇と会見させよ要請したのは誰だったのか。　　このことをはっきりさせねばならない。中国人を無理矢理天皇に会見させたとし　　て、一部が騒ぎました。小沢一郎の世田谷の私邸に押しかけ、警備の機動隊と騒　　乱を起こしました。それほどまでに中国寄りの小沢に対する敵視が激しかった。　　小沢幹事長（当時）は記者会見で「一か月ルールなんて官僚が勝手につくったル　　ールである」とはっきり言っていました。「天皇に会いたければ一か月前までに　　宮内庁に申請書を出せ」というのは法律ではないということです。官僚が勝手に　　つくったルールである。そんなルールに内閣官房長官までが従わなければならな　　いと、羽毛田は当然のこととして言い放ったのです。事実はどうやら膠着状態の　　のち、アメリカ国務省が外務省に「習近平を天皇に会わせろ」と要求してきた。　　それを外務省が鳩山首相に連絡したところ、平野官房長官が再度羽毛田に「なん　　とかならないか」とお願いした。それでも羽毛田は拒絶したらしい。そうしたら　　今度はH・キッシンジャーを通して、子分の中曽根康弘元首相に直接電話がいき、　　「習近平を天皇に会わせろ」となった。中曽根は平野にこの趣旨を伝え、圧力を　　かけた。困った平野が再再度、羽毛田に会見を要請したら、彼は宮内庁長官とし　　ての暴走会見を行ったのです。そうしたら小沢一郎が怒って、「内閣の一部局に　　すぎない宮内庁が内閣の指図にあれこれ反対するの許されないことだ。もう一度　　反対するなら辞表をもってすべきだ」と断じたのです。さらに皆が驚いたのは、　　小沢一郎が「私が中国要人を天皇に会見させよと言ったことはない」と発言した　　ことです。だから、本当は、圧力をかけたのは中曽根元首相だったのですがマス　　コミは右翼や親米保守言論人を投入して、「小沢による天皇会見セット」という　　デマ情報をさかんに流したのです。H・キッシンジャーこそ、世界基準では中国　　寄りの政治家であり、日本のことなど歯牙にもかけず、中国の希望を日本に押し　　つける人物なのです。中曽根が圧力をかけた張本人だったのです。この情報はワ　　シントンからの報道ですぐに露見しました。　　……羽毛田長官は、自分が大きな世界政治のなかに投げ込まれていることも自覚　　せずに「玉体（天皇）を取っている自分が偉い」と、とんでもない思い違いをし　　ている男です。「君側の奸」の行いというべきです。（福島隆彦×佐藤優「国家の主人は官僚ではない」）　　

  2011年02月16日

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• 電波オークションをめぐる省庁の利権争奪

  政府や企業、さらに国民にも「改革」を求めるのが好きなテレビ・新聞であるが、ただ一つ躍起になって反対するのが「電波利権」の改革である。今国会に提出される予定の電波法改正案のうち＜電波オークション＞の改革案が外されていたのだが、これこそ総務省とテレビ局という＜電波利権コンビ＞にとって不都合な改革なのである。なぜか？これまで日本では、政府が公共の財産である電波を恣意的に割り当て、テレビ局などに無料で免許を与えてきた。＜電波オークション＞とは、この電波を競売にかけることで有効利用し、かつ新規事業者にも電波を開放する制度である。山田肇東洋大学教授は以下のように解説する。「電波オークションでは、電波を国有地と考えて、利用したい事業者が入札し、一番高い値段をつけた事業者が落札する。そうすれば新たな財源として活用でき、公正な競争原理が働くことで新規参入が増え、意欲のある企業に電波が割りあてられます。だからOECD加盟国の大半では、日本のような国による電波の配給制をやめて、電波オークションに切り替えているのです」０９年のマニフェストで民主党は電波オークションの導入を掲げてその実現をはかってきた。原口元総務相も果敢に推進してきたひとりである。しかし閣議決定までして「電波利権の改革」を目論んだのが、内閣改造による事実上の原口氏更迭で、総務省はこの案を潰した。なぜか？総務省は電波を割り当てた事業者（テレビ局や携帯電話会社）から年間６４２・８億円の電波利用料を得ている。これは税金でないために財務省が行う国民への再分配の対象にならず、しかも電波法で使用目的を制限しているため、総務省がすべて自らの裁量で使える。名目は一般会計だが「事実上の特別会計」となってきた。「総務省にとって電波利用料は、天下り先の特殊法人などにばらまき、所管企業にいるOBに便宜供与して、いうことを聞かせる逆賄賂の財源なのです。総務官僚はこの『隠れ特別会計』を財務省に取られたくなかったのです」（経済学者の池田信夫氏）しかし、電波オークションはこの仕組みをひっくり返す可能性を秘めている。民主党の岸本周平衆院議員は以下のように解説する。「電波オークションを導入すると、その収入は一般会計に入り財務省に取られることになる。自由な財布が失われるのです。また、オークションになると、総務省が電波の割り当てを決め、業者を選ぶという裁量権も失うことになる。既得権益のためにはどうしても阻止したかったのでしょう。官僚たちの省益維持への猛烈な巻返しがあったのです」原口氏の事実上の更迭にはこのような謀略があったとみるべきであろう。政治主導の改革を役人が阻む……本来ならば新聞・テレビがもっとも批判すべき構図である。しかし、こと＜電波オークション＞について、大手メディアが言及することは殆どない。なぜなら、その恩恵をもっとも受けてきたのが他ならぬテレビ局だからだ。テレビ局は政府から電波を無料で割りあてられているのだ。しかも年ごとの利用料も格安である。資料によれば全国１２８局のテレビ局の事業収入が２兆９６７６億円にのぼるのに対し電波利用料はわずか４２億４６４１万円（０８年）である。テレビ局がいかに格安で電波を使用し、それで荒稼ぎしているかがわかろう。たとえば携帯電話会社（５社）が支払う利用料が約５４５億円であることを考えても、テレビ局の優遇ぶりは際立っていよう。この状況に対し、電波オークションの実施はテレビ局にとって「無料割り当て」と「格安利用料」という優遇制度を崩壊させる恐れがあるのだ。テレビ局は地デジ移行にあたっても、無料で電波帯を割り当てられた。その電波帯の価値を海外の事例で試算すると、総額２兆４０００億円に相当するという。「公平な競争」と「多額な国庫収入」を犠牲にし、総務官僚や天下り、電波企業が既得権益を維持しようとする構図である。菅民主党政権が大手メディアのバックアップを求め、この官業の権益を黙認するという姿勢でいいのか。おおいに疑問だ。（週刊ポスト「電波オークションが密かに潰されていた」より）

  2011年02月10日

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• 菅民主党政権は否定されたとみる

  「日刊ゲンダイ」は厳しく断じている。「菅民主党は否定された」「即刻退陣か解散総選挙が国民の要求」と。名古屋市長選と愛知県知事選で惨敗した民主党はきのう７日、菅首相が「敗戦はしっかり分析したい」などと言っていたが、敗因はもはやはっきりしている。有権者は菅民主党に＜不信任＞を突き付けたのである。「民主党は菅首相になってから、参院選、沖縄県知事選、福岡市長選、茨城県議選、西東京市議選……とあらゆる選挙で負けている。これほど敗北が続くのは、候補者が云々という話ではない。国民が菅民主党を否定しているということです。内閣支持率が２１％、不支持率が７７％に達しているのを見れば明らかでしょう」（政治評論家・本澤二郎氏）菅首相が選挙で連戦連敗しているのは、国民を裏切り、希望を失わせたからである。民主党は０９年衆院選マニフェストで「政治主導」「日米対等」「国民生活が第一」を掲げ政権交代を実現させた。民主党なら政・官・財で癒着し、行き詰った日本の政治を転換させられると国民は期待したのである。ところが、菅首相はこのマニフェストをことごとく見直し、政権交代の原動力だった「ムダの根絶」まで放棄してしまった。その一方で「消費税増税」などマニフェストに書かれていないことに血道をあげ、与謝野馨を大臣に起用するなど、民主党の「自民党化」をどんどん進めているのだ。おそらくこの政権は、自己保身のため、自民党の一部との連立も視野においているに違いない。菅氏や岡田幹事長の権力的な口吻が、露骨である。総務省などのマスメディア権益擁護や、偏向報道による政権維持という取引がその背景にある。当選を決めた６日夜に、名古屋の河村市長は低迷と裏切りを続ける民主党を当てこすり、「政治は公約をまもらなあかんですよ」と批判した。「市民税減税」や「議員報酬半減」などの河村氏の政見が、名古屋市民だけでなく、多くの国民の民主党に求めた主張なのだが、菅首相や岡田幹事長は強引に対立候補を立て、県連民主党を煽りたてたが、圧倒的な負け方を喫した。ここまでくれば今後の統一地方選挙の民主党惨敗は、ほぼ常識だ。だが、その後の展開がよくわからない。キーワードは「外圧」であろうが。中国か、アメリカか。

  2011年02月08日

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• アメリカが選んだ菅直人首相

  オバマと胡錦涛との歴史的な米中首脳会談の日に合わせるかのように、日本の菅首相は東京のホテルで外交・安全保障政策の演説を行った。「日米同盟」を基軸に据えたきわめて野心的な政策と銘打っているのだが、いかんせん新聞のトップを奪うほどの見出しに欠けていた。むしろ小沢一郎氏の政倫審出席を、岡田民主党幹事長が断念したとの記事に次ぐ三番手の位置を保ったに過ぎない。東京新聞はその前日に「米が望んだ菅首相？」という見出しでかなり痛烈な批判記事を載せている。これがなかなか面白い。例によって内部告発サイト「ウィキリークス」の米外交公文書で裏付けている。昨年２月３日、ソウルでキャンベル米国務次官補と韓国の金外交安保首席秘書官との会談内容の中で「両者は民主党と自民党は『全く異なる』という認識で一致。北朝鮮との交渉で民主党が米韓と協調する重要性も確認した。また金氏が北朝鮮が『複数のチャンネル』で民主党と接触していることは明らかと説明。キャンベル氏は、岡田外相と管財務相と直接、話し合うことの重要性を指摘した」と暴露された。この公電の意味を読み解くポイントは、米国が交渉の相手として当時の鳩山首相ではなく、岡田、菅両氏を名指ししていたことにある。鳩山氏は一昨年の夏の総選挙前に、米軍普天間基地の移設問題で「最低でも県外」を主張した。政権交代後に交渉に乗り出したが、米政府が猛反発し政権は迷走を始める。公電が打たれたのは、そんな時期と重なっている。ソウルでの会談から二か月後に、米紙ワシントン・ポストのコラムで鳩山氏が「ルーピー（現実離れした人）」と呼ばれ、笑い者にされた。同じ頃、民主党の渡辺恒三氏は講演で「普天間問題を解決できずに鳩山君が責任を取ったら、おそらく菅直人君が（首相に）なるだろう」と発言した。その言葉通りに、鳩山氏は急転直下で県外移転を断念し、６月に首相を辞任した。後継首相となった菅氏は「普天間基地を名護市辺野古沖に移転する」という日米共同声明を尊重する意向を示したのである。その後もロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問や、沖縄尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件が発生すると、「日米関係の冷却が、周辺事情に影響した」という北方、中国脅威論が幅を利かせるようになった。結果として、鳩山氏が打ち出した「東アジア共同体構想」はいつの間にやら忘れ去られた。それは偶然の結末だったのだろうか。元外務省高官で元防衛大学校教授の孫崎享氏は「ウィキリークスの公電の意味するのは米国が鳩山氏と距離を置き、岡田、菅両氏と対話すべき相手と判断したということだ。米国が同意したその後の『鳩山首相降ろし、菅首相誕生』のシナリオにつながった」と見る。「菅政権は米国にすべて丸投げしている。普天間飛行場の辺野古移転方針、日米共同統合演習の実施、在日米軍駐留経費（思いやり予算）の維持など、米国側の意向の通りの施策を進めている」と批判する。小沢一郎氏に対する異常なマスコミのバッシングもおそらくその一環であろう。かつてニクソン氏やキッシンジャー氏が田中角栄氏の「日中国交正常化」の政策を、世界の覇権国アメリカをなめた行動と認め、のちのロッキード事件での失脚につながる対抗策で政治生命を葬ったと同じ戦略であろう。全く懲りない人々である。菅首相はどういう末路を迎えるのであろうか。はなはだ興味深い。

  2011年01月21日

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• 菅改造内閣に関するコメント集

  海江田万里経済産業相「（与謝野氏の入閣は）一言申し上げれば、人生は不条理だ」西岡武夫参院議長「与謝野氏の入閣はちょっとおかしい。首相は不条理なことをした。民主党と戦った方が入閣したら海江田さんはたまらない」石原慎太郎都知事「感想なし。感想なし。与謝野氏には友人として心配している。男だてを売ったんだな。（与謝野晶子の）歌じゃないけど『君、恥かきたもうなかれ』だよ」渡辺喜美みんなの党代表「廃材内閣だ。リサイクルはエコだが、廃材内閣はエゴの固まり。一日も長く続けたい菅直人首相の権力欲がみえる。与謝野馨経済財政担当相は自民党の比例代表で当選し渡りに渡って菅内閣の増税の総元締めになる。『平成の増税王、渡り王』を目指しているのか」山口那津男公明党代表「与謝野氏が野党とのパイプ役というのは一方的な思い込みだ」志位和夫共産党委員長「消費税増税とTPP（環太平洋戦略的経済連携協定）推進という財界の要求に応える『財界いいなり内閣』だ」舛添要一新党改革代表「枝野氏は『仙谷傀儡』と見られても仕方ない。海江田万里、与謝野両氏がいるのは（経済政策で）アクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ」江田五月法相「崖っぷちの民主党内閣だから議長経験者などと乙にすまして神棚の上にいるわけにいかない。明るい明日を目指しみんなで頑張ろうという雰囲気を作っていきたい」安住淳民主党国会対策委員長「首相からの電話を知らないで寝ていた。朝起きたら、着信履歴が3回くらいあった」民主党中堅幹部氏「仙谷氏と岡田氏は政治手法でそりがあわない。ポスト菅をめぐり、仙谷氏がオーナーである前原グループと、岡田氏の間で権力闘争が激化するだろう」第一生命経済研究所永浜利広エコノミスト「国内景気はエコポイント制度終了の反動などで消費が冷え込み、今年前半は『足踏み状態』が続く見込みです。デフレ下での拙速な消費増税論議は、景気悪化の引き金になります」中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の人民ネット「枝野氏は講演で中国を『悪しき隣人』と呼ぶなど、対中姿勢の厳しいタカ派として知られている。……菅首相の最大の特徴は自分の意見を持っていないことであり、多くの問題は閣僚の意見に左右されている。……枝野氏が入閣したことで鳩山由紀夫前首相時代のような（友好的な）中日関係に戻ることはさらに難しくなるだろう」「ヤフー　みんなの政治」の世論調査菅改造内閣を「支持する」は１６％、逆に「支持しない」は７８％に達する。（１５日9時）改造で政権浮揚を図ろうとした菅首相の思惑は崩れたといえる。おそらく菅政権の前途は不吉の感にみちている。「仏滅」船出のとおりに。前途ある人々は乗船しなかったのであろう。賢明だ。

  2011年01月16日

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• 佐藤優氏の「後悔」

  鈴木宗男前衆院議員から１月５日付の手紙が届いた。便箋に検閲印が押してあった。喜連川社会復帰促進センターからのものである。「『イワン・デニーソビッチの一日』を読んで、あの酷寒のラーゲル生活を送った人を思う時、ここは天国と思われます。ソルジェニーツィンの苦労を考えれば、まだ恵まれています」と書いて寄越した。筆者は鈴木氏に「申し訳ない」と心の底から思っている。北方問題を解決するために外務省は鈴木氏の政治力を必要としていた。筆者は当時の外務省幹部の命令に従って、鈴木氏を外務省に引きずりこむ工作に従事した。鈴木氏は北方領土交渉、アフリカ外交、予算・定員の確保などで外務省の応援団長になった。２００２年小泉内閣で、田中真紀子氏が外相になり、機密費問題に手をつけようとした。外務省の腐敗、幹部のスキャンダルが一挙に表に出そうになった。その不祥事隠しを外務官僚は鈴木氏に依頼した。その過程で鈴木氏は外務官僚の秘密、スキャンダルを知りすぎてしまったのである。外務官僚は総力をあげて田中外相追放に成功した。そして「知りすぎた宗男」を始末する必要に外務省は迫られた。当時、筆者は外務省がこんなに恐ろしい組織だとは思わなかった。鈴木氏を外務省に引き寄せるのではなかったと後悔している。（東京新聞「本音のコラム」より）このような告白的な「外務省論」を読まされてわれわれ局外者はただ茫然とする。外務省に展開されるさまざまな利権派閥の存在も、いまや十分に納得させられる。そこには世界を嘗めつくさんとする巨大な金融・軍事複合体が操作するネットワークがあり、数知れぬ働き蜂の洗濯船が遊弋しているのであろう。「民主党政権の誕生」がそのグロテスクな正体を明かしてくれた。だが、いかにも傲岸な世界の首領たちの手によって、鈴木氏や佐藤氏は、表通りから追放され、政権はいまや青息吐息の状態だ。菅氏もすでに大きな右旋回を余儀なくされている。その眼は力なく、言葉はだらしない。　

  2011年01月14日

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• 菅直人氏の右旋回

  田中秀征元衆院議員はコラムで菅氏の政治姿勢を分析している。「私は菅首相を見ていると、第二次大戦直前のフランスのダラデイエ首相を思い出す。……ダラデイエは左翼政党から登場し、大臣、首相になるにつれて右旋回を続けた。そしてついには労働運動を弾圧したり、国民に向かって発砲するに至った」と。この見たてが当たっていれば、いずれ菅氏は国民に銃を向ける。批判する勢力の弾圧に乗り出し、政権維持を目指すだろう。なにしろ、「代表選が終わればノーサイド」と言っておきながら、小沢元代表を徹底的に干して、さらし者にするような男である。寝返りや背信は朝飯前である。田中氏の根拠は以下の通りである。かつての菅氏は、１）自民党、２）財界、３）官僚組織、４）米国の４つが敵であった。ところが、政権交代後、この４つになりふり構わず接近している。そこが変節漢のダラデイエと似ているという。実際に菅氏は「４つの敵」にすり寄り、延命を図っているのである。政敵だった自民党との消費税での大連立を探ったり、市民運動家にとって批判の対象であったはずの大企業には法人税減税の大盤振る舞い。「成績が良かっただけの大馬鹿」と罵った霞が関官僚には人件費削減や天下り全廃の主張をとりやめ、鳩山前首相が掲げた「東アジア共同体」構想も引っ込め、米国一辺倒の外交を復活させている。僚友の前原外相が「就任４か月でクリントン長官と４回会った」と自慢するぐらいに無邪気な関係では、対等は望むべくもない。「６月がメド」といっているTPP参加問題も、国民不在で進められている。「財界と米国に取り入るためにやっているのがミエミエです。ビジネスチャンスが広がる財界は大歓迎だし、普天間基地の問題が進展しない中、農産物を中心に輸出を増やしたい米国にも媚を売れます。しかし、財界も米国も、これほど人気がない内閣を本気で支えるとは思えません」（浅川博忠氏）それでも、財界と米国にしっぽを振り、政権を維持しようとする。これが菅政権の正体である。自民党のデタラメを受け継いだ政治が展開されているのだ。すなわち、財界と官僚と米国が権力を動かし、マスコミが誘導し、国民の暮らしはズタズタになる。官僚が税金を食い物にする構図は温存され、無駄の削減は進まず、庶民は消費税増税で苦しめられる。（「日刊ゲンダイ」より）

  2011年01月13日

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• 杉並区選管報酬の怪

  半年近く病欠し、会合にも出席していなかった男性の選挙管理委員（７１）に対し、半年分の月額報酬を満額の計約１４０万円を支払っていたことが六日、分かった。非常勤委員の報酬をめぐっては、全国的に日額制の導入など適正化の動きが強まる中、杉並区の対応は批判を呼びそうだ。区選管によると、この委員は、区議を二期務めた区議OB。選管委員だった昨年五月に入院し、同月十二日から辞職した昨年十月二十五日まで病気欠席していた。病欠の間、入院直後の約一か月間は意識不明の状態だったというが、事前に選任されている補充員を選管委員にせず、定員４人のところ３人のままで昨年七月の参院選と区長選、区議補選のトリプル選挙に突入した。結果的に、比例代表と小選挙区の投票用紙を同時に配布したため、有権者の混乱を招いて大量の無効票が発生した。同区の選管委員の場合、週一回、一回につき一～二時間の会合への出席に対し、月額報酬２４万２０００円が支払われる。今回のケースでは、十月分は、条例により辞職後六日分の約４万６０００円が返納されたものの、六か月分の１４５万２０００円は支給された。ただでさえ、選管委員をはじめ行政委員については、きちんと機能しているのか、議論があり、名古屋市の河村市長の議会リコールの際にも疑問の声が上がっていたが、全国的にその点検が焦眉の問題になっている。まして杉並区の場合は大量の無効票発生という重大なミスを犯しながら、原因究明や責任を明らかにせず、病欠委員への報酬支払を漫然と続けていたのである。奥山妙子区議は二月の定例区議会で、選管委員の報酬を日額制にする条例改正案を提案する予定だという。「生活給でもないのに、病欠の委員に月額報酬を支給できるのは金満自治体だからこそ」と区の体質を批判する。「選管委員は、区議や区執行部のおいしい天下りポストでもある。まずは日額制にして、税金の無駄遣いを是正したい」としている。（東京新聞「杉並区選管報酬問題」）まことに全国に瀰漫する「公務員の私的税流用」のみっともない実態の一つである。これは与野党問わず、税金で「政治をメシの種」にしているひとびとの「理想と現実」である。それにマスメディアが「世論誘導」の形で癒着し、納税者を裏切っている。心ある為政者がネット上で政見を披瀝するのも、彼らの編集と歪曲でとんでもない情報となるからである。まあ、今の民主党政権の周章狼狽の多くは、公務員たちの様子見・邪魔とマスメディアの既得権保持のためのネガ工作のせいであろう。実に断腸、ねじれている。　司令等の倉庫燃えをり心地よし　　　渡辺白泉

  2011年01月07日

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• 小沢一郎の対米自立論

  ……小沢排除派の官僚、政治家、大メディアなどの共通性をたどっていくと、アメ　リカの子供として日本で安住していきたい、という人たちが多い。小沢一郎　ああ（と言って小さく頷く）。……結局、アメリカのいうことを聞いている方が政治の舵取りが楽だからか？小沢　自分で考えなくていいから、気楽なんでしょう。ただ、アメリカだって自国　の利益を犠牲にしてまで日本のためにやるわけではないですよ。特に今は、イラ　ク、アフガニスタンで事実上、戦争をしているわけでしょう。ところが日本人は　何か自分に都合のいいときだけ、アメリカ人は血を流して（日本を）守ってくれ　という。しかも、自分は危険なことはやりませんという話ですからね。　アメリカは、本当に自分の利益に合致しなかったら、血を流してまで日本を守る　気はないです。だからその意味で、僕はもっときちんと自立した日本人と日本に　ならなくてはいけないと主張している。アメリカは最大の同盟国であって、日本　にとっても最も大事な国であることは間違いない。ただ、だからといってアメリ　カに尾っぽを振っているだけでよいわけではない。……菅内閣は武器輸出三原則の見直しを検討している。見直してくれなどと、アメ　リカがいうと思うか？小沢　いや、アメリカじゃないと思います。あれはね。……アメリカがいわなくても、「アメリカは見直してほしいんじゃないか」と勝手　に忖度して政策を考えるという、忖度派がいる？小沢　アメリカはむしろ自国の兵器を買ってもらいたいんですよ。日本が兵器を生　産して売ることには賛成じゃないでしょう。……あなたはかつて、アメリカが孤立主義、保護主義的な政策をとるようなことに　なるとしたら、それは日本外交の失敗、日本の責任だといった。この考えは今も　変わらないですか？小沢　変わりません。アメリカは自国だけで食べていけるから、従来から孤立主義　の考えかたがどうしても根強いですね。だけれどもやっぱり、あれだけ腕っぷし　が強い国だから、アメリカを除外して世界の平和、秩序が成り立たない。国際舞　台にアメリカを引っ張り出しておかないと駄目なんです。　そのためには、日本はただのアメリカの飼い犬ではなくて、本当に頼りになる友　人、パートナーにならなくてはいけない、というのが僕の持論なんですよ。今の　俗論は、アメリカのいうことを何でも聞いていればいい、その方が安心で楽でい　いじゃないか、ということでしょう。しかし、それはいずれ破綻しますよ。……同じ意味で中国に対しても、どうも今の政権中枢はおどおどとしている感じ。小沢　うん、そうですね。（中略）どこにもベタベタしている（笑）。本当に困っ　たものです。何も現在の内閣だけじゃないですよ。自民党政権以来、ずっとそう　ですよ。（「週刊ポスト」１月１４日号　小沢一郎の対米自立）

  2011年01月05日

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• 小泉元首相は独断でイラク戦争を支持した

  以下に朝日新聞松本一弥記者の署名記事を抄出する。７月から９月にかけて夕刊の「ニッポン人脈記」にて２３回連載した「イラク　深き淵より」の取材で、イラクや欧米、日本で多くの関係者に会った。とりわけ感じたのは、イラク戦争に関わる、日本政府の意思決定過程が不透明だということだ。「米国が武力行使に踏み切った場合は、支持するのが妥当ではないかと思っている」開戦２日前の２００３年３月１８日、小泉純一郎元首相は、記者団にこう話した。防衛庁長官だった石破茂氏は「イラク戦争を支持する」という小泉氏の言葉をこの時初めて聞いたという。「閣僚懇談会のような場で、イラク戦争支持の是非を議論したことはなかった」。石破氏はそう話す。官房長官だった福田康夫氏ですら、開戦前、小泉氏から「イラク戦争を支持する」という言葉は「明確には聞いていない」という。「総理一人の判断に、国家の命運を委ねるのはまずいと思っていた」。そう打ち明ける当時の政府関係者もいる。……国防上の重要事項を議論する安全保障会議はセレモニーの域を出なかった。「イラク戦争に根拠や正当性は本当にあるか」「米国を支持すべきか。それは歴史の検証に耐えられる判断か」……小泉政権はこうした核心の議論を欠落させたまま、イラク戦争支持を決めていた。その理由について、法政大の杉田敦教授（政治理論）は「戦後の日本は米国の顔色を見るだけで、本来の外交をやって来なかった。米国に『丸投げ』しているから、政治家自身にも当事者意識がない」と指摘する。……オランダ政府の独立調査委員会は今年１月、イラク戦争は国際法違反だった、と結論づける報告書を公表した。英国でも、政府の独立調査委員会が検証を進めている。検証過程の徹底ぶりには目を見張る。ブレア元首相ら１４０人以上を喚問し証言内容をそのつどネットで公開してきた。「検証過程は可能な限りオープンにして透明化を図る」というのが委員会の姿勢である。……日本には独立調査委員会による検証の伝統がない。外交上の問題を検証する政治風土もない。国会が外交政策を検証する場とされるが、国会審議は形骸化しているのが実情である。杉田教授は「日本では政権交代がなかったため、過去の政府の意思決定過程を根本的に検証するという機会がなく、そうした文化も育たなかった」と指摘する。谷内正太郎元外務次官は「日本にとって最も重要な同盟国の米国が、国際社会の反対を顧みず武力行使に踏み切ろうとしている時、『やめておけ』という態度は取りえないのではないか。……小泉元首相はリーダーシップがあった。だから広く閣僚らの意見を募って議論する、という発想はなかった」と当時の状況を語った。これが小泉氏の発揮した「リーダーシップ」の実態であり、日本の特権的な外務官僚の意見なのである。まことに肌寒い心地にされる。そして「小泉ブーム」に踊らされた国民のいじましい政治的無知を思わされる。やはり日本という国の「米国に拒否できない奴婢根性」を思い知らされて悲しい。

  2010年12月28日

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• 副島隆彦氏の戦後日本の行く末

  日本国憲法の第九条の戦争放棄・非武装・戦力（国防軍）不保持というのは、ダグラス・マッカーサーとその部下のルーズベルト時代に始まるニューディーラーという隠れ社会主義者たちが、敗戦直後の日本に征服者として乗り込んできて、日本国民に作って与えた、よく言えば理想主義の憲法である。悪く言えば、日本国民を上から強制的に人格改造した。異様な統率力を持ち、凶暴な性質を併せ持つ東アジアの一種族である日本人が、再び暴れだしてアメリカに軍事的に反抗し、アジア覇権を求めないようにと、ガッシリと枠をはめるために作って与えた憲法なのである。日本国民は、この日本国憲法と日米安全保障条約と、その付属条約である日米地位協定（アメリカ軍駐留条約）の三つによって、完全にアメリカの支配下に置かれた。私は、今はこの考えを信じている。大きな世界史的事実からすれば、こうならざるを得ない。だから、私は、戦後の自民党（民族主義保守党）がずっと、党の綱領の中に保持してきた「アメリカの押し付け憲法を廃して、自主憲法を制定する」という考えと、今頃になって一致した。というか、やっと数十年遅れで、追いついた。ところが、何と自民党自体が、その「自主憲法制定」という自分たちの政治綱領を隠してしまって、表に出さない状態である。どうやら自民党そのものも、内部から妙な勢力に乗っ取られてしまっているらしい。（中略）この日本国憲法の第九条が、世界に冠たる戦争放棄理想だなどという考えを、世界中の人々の方は、全く相手にしない、評価しない、鼻もひっかけない、ということをよく知っているからだ。アメリカや西欧諸国どころか、世界中のどこのリベラル派、反体制派の人々でも、日本国憲法を読んだとして、その九条を読んで理解したり共感したりする人などいはしないことを私は知っている。そんな馬鹿な、と思うかもしれないが、そうなのだ。日本の平和憲法が、諸国に先駆けた優れた憲法だなどと考える外国人は存在しない。その理由は、一体誰が、この憲法を作ったのか？　という一点にかかっている。作ったのは、日本人ではない。この一点からして、絶対に、立派な憲法典のわけがない。（中略）はっきり言う。日本はやがて、憲法九条の第三項を改正して、自衛隊を改編し、国防軍（国軍）を創設するだろう。それから将来起きるアメリカ軍の撤退に合わせて自衛武装せねばならないから、故に、核を保有することになるだろう。日本は将来、中国の核の傘の下に入ってしまうから、その事態に我慢できる日本人は、ほとんどいないからである。だから憲法九条を改正するだろう。どうせ、そうなるのだ。どんなに反対しても、世界史の中の日本として、そうなるのだ、と私は書くしかない。日本だけが、勝手に、世界の現実、即ち、国家と国家の利害のぶつかり合いを中心として動いている現在の世界を、廃止へ向かわせる、などと考えること自体がおかしい。国境線を取りはらって、国家を消滅に向かわせて、人間の移動が自由になる、などというのは、あと少なくとも百年ぐらい先の話で、今実現できることではない。国民国家と、主権国家という考えは、まだ当分は死なないのだ。そしてこの考えが死に始めるのは、やはり西欧諸国からであって、極東の日本からではない。（副島隆彦「日本の秘密」より）

  2010年12月25日

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• 佐藤優氏の「官僚の集合的無意識」

  鳩山・小沢連合の退場に対して、佐藤優氏は「霞が関官僚による＜静かなクーデタ＞が行われたことが問題の本質」と喝破する。メディア報道からではその姿がなかなかわからないという。以下佐藤氏は元外務官僚としての経験をふまえた「官僚の集合的無意識」について、鋭く指摘している。いままでの外務省での経験から、官僚の内在的論理が皮膚感覚でわかる。「存在が意識を規定する」というが、官僚の身分を離れ、文筆で生計を立てるようになってから官僚時代の私の意識が、いかに普通の国民の意識から遊離した頓珍漢なものであったかを深く反省している。その反省の意味を込めて、官僚の国家観をここで端的に述べておく。官僚は国民を無知蒙昧な有象無象とみなしている。勿論狡猾な官僚は、そんなそぶりは見せずに「全体の奉仕者」というような顔をしているが、腹の中では、普通の国民を「お前たちは手足だ。われわれが頭脳なのだから手足は余計なことを考えずに、一生懸命働いて税金を差し出せ」と考えている。そして有象無象の国民から選ばれた国会議員は、無知蒙昧のエキスのようなもので、こんな連中の言うことをまともに聞く必要はないと思っている。それでも「全体の奉仕者」である官僚は、主権者である国民に忠誠を誓っているのではないだろうか？　少なくとも、国民に奉仕するという建前を尊重しながら職務を遂行しているのではないのか？違う。断じて違う。明治憲法下の「官吏服務令」を少しだけ変形させたルールで官僚は動いているのだ。「官吏服務令」において、官僚は国民でなく、天皇に対して忠誠を誓っていた。あの戦争に大日本帝国が敗北したことによって、天皇は国政に対する機能を失った。それにともない官僚は、天皇なき抽象的日本国家に対して忠誠を誓って行動している。官僚は、国家のために必要と考えるとき、国民を平気で切り捨てる。そのことに良心の痛みなど、全く感じない。官僚は、国家公務員試験、司法試験などの難しい国家試験に合格した偏差値エリートによって日本国家が支配されるべきと考える。そうでないと、「食うか食われるか」の激しい競争が展開される国際社会で日本が生き残っていくことはできない。結果として偏差値エリートによる支配のほうが下々の国民にとっても幸せなのだと考える。もっとも、国家公務員試験や司法試験で測ることができるのは、人間能力のごく一部分に過ぎない。教科書や参考書に書いてある通説を記憶し、答案紙に再現する能力に過ぎない。信頼、いつくしみ、愛情など、数値化できない価値を国家試験で測ることはできない。霞が関官僚が最も苦手なのが、他人の気持ちになって考えることだ。自民党時代には、名目的権力は政治家、実質的権力は官僚という棲み分けができていた。しかし民主党連立政権は、本気で政治家が日本国家を支配することを考えている。この「暴挙」を、ありとあらゆる力を結集して阻止するというのが官僚の「集合的無意識」である。集合的無意識だから、特定の官僚が鉛筆をなめて、鳩山氏や小沢氏を失脚させるシナリオを書き、そのシナリオに基づいて謀略工作したということではない。無意識のうちに、検察官僚は腐敗政治家・小沢一郎を叩き潰す役割、外務官僚と防衛官僚は日米同盟を破壊する鳩山由紀夫を封じ込めるという役割をそれぞれ分担して戦ったのである。インターネットの「炎上」に近い現象が官僚の世界で起きて、「霞が関」が鳩山・小沢政権潰しに走ったのだ。マスコミも、この「炎上」に意図的もしくは無意識のうちに加担している。そして日本全体が催眠術にかけられたような状態になっている。現在、官僚たちは、菅直人氏が合理性を重視する構築主義者なので、うまく操ることができると考えている。「政治とカネ」や「党と政府の二重構造」という問題を打出すことによって、小沢一郎の息の根をとめ、「権力の器」を官僚階級が奪取するという目論見で動いている。（「小沢革命政権で日本を救え」より）

  2010年12月22日

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• 日本外交の恥ずかしい実態

  「ウィキリークス」が暴露した公電内容で日本に関連するものは国別で３番目に多いといわれている。それにしては、国内の新聞やテレビで報道される量が少ない。なぜか。政府にも政治家にも、そしてメディアにも「まずい情報」だからである。これまでの日本国内の報道を見ていると、やれアサンジ代表が逮捕されたの、クリントン米国務長官が各国に謝罪したのと、やや高級なワイドショーといった趣が深い。しかし、世界ではメディアが自国政府の嘘や秘密の検証、諸外国との関係に与える影響などを総力取材し、外交情報のディープな検討を繰り広げているのだ。では、日本は今回の暴露の標的になっていないのかというと、そうでなく、実は日本政府がひっくり返るような秘密が、ちゃんと暴露されている。メディアが無視し、隠しているのである。元レバノン大使で作家の天木直人氏が指摘する。「要するに、日本が対米従属国家であることがはっきりしたということです。米国務省の公電を見れば、日本がアメリカの先兵となって動いてきたことがわかります。小泉純一郎元総理が言ったように、アメリカとの関係さえよければいいという馬鹿げた考え方が明らかになった。こういう政府に不利な情報をきちんと報道しないメディアの姿勢にも疑問を感じます」と。国際原子力機関（IAEA）の天野之弥事務局長の「アメリカのいいなり宣言」もその一つである。昨年１０月の就任直前の公電（駐ウィーン米国際機関代表部）には、「事務局長（天野氏）は他の加盟国に配慮する必要があるものの、すべての重要な戦略的決定において、アメリカと同調する堅い意思を米IAEA大使に認識させた。重要な戦略的決定とは、IAEAの幹部人事やイランの核開発問題などである」と記述されていた。天野氏は外務官僚出身で、昨年７月の事務局長選挙では、麻生内閣と自民党が全面的に後押しした。アメリカの手先となってIAEAをコントロールし、イランや北朝鮮など「邪魔な相手」を国際機関の名のもとに弾圧する役目を担ったのもいかにも不名誉だ。また麻生首相と中国の温家宝首相との会談内容を北京のアメリカ大使館に「ご報告」していた外交官もいたらしい。廊下トンビの発想であろう。日本の国連代表部に長く務めた外交筋が厳しい顔でコメントする。「日本外交に常につきまとう課題は『どうせアメリカのいいなりだ』という国際社会の評価をいかに打ち破るかだ。現にアメリカに逆らう外交はあり得ないのだが、だからといって日本に自立した外交決定がないと見られることは国益を損なう。恥ずかしい話だが、国際会議などで多数派工作をする際、アメリカを味方にした陣営は、もはや日本には説明にすら来ない例も少なくない。『アメリカは最初から２票持っている』と嫌味をいわれたこともある。今回その内情が世界中に暴露されることは大きな失点といわざるを得ない」ウォールストリート・ジャーナル紙は、未公開の日本関連情報として「沖縄に関する文書」が大量にあることを匂わせている。政権交代後に明らかにされた「沖縄日米密約」でもわかるように、沖縄の返還から米軍駐留、その後の日米地位協定や「思いやり予算」、そして現在の米軍グアム移転計画にいたるまで、日本は常にアメリカのいいなりに、国民の税金を湯水のように渡してきた。メディアも何ら有効な追及をしてこなかった。むしろ「記者クラブ」の特権に安住し、政府や権力側の了解を得た情報ばかり発信してきて国民の批判性を摘み取ってきたのである。マスメディアの黒幕といわれる渡辺恒雄氏率いる読売新聞は「沖縄普天間飛行場の辺野古への移転を進めよ」と主張するが、これも「アメリカべったりの小泉内閣が官邸主導で強引に進めた計画で、裏には防衛・ゼネコンなど日米の大きな利権が渦巻く」（自民党防衛族）というシロモノである。この計画が決まった内幕が明らかになれば自民党も外務省も二度と立ち上がれない可能性さえあるのだ。どうすればいいのかなあとごまめの歯ぎしり。

  2010年12月21日

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• 日本人の政治言語の空疎

  内田樹　外来語と現地語のハイブリッドの形で残ってるのって、世界でもう日本　だけなんだよ。現地語であるところの大和言葉の音の上に漢語をのっけて１５００　年間やってきた。音声がもともとあって、そこに外来の文字がのっかっている。　後から来た外来の言語を地場のコロキアル（口語的）なものが受け止めている。　これが日本語の構造なわけで。さっき言ってた、日本語でしゃべるとおちゃら　けちゃうっていうのは、日本語は本質的にコロキアルなんで、ロジカル（論理　的）になりようがない。高橋源一郎　ロジカルなものを受付けないんだよね。きっと（笑）。内田　漱石の文学なんかだってそうなんだと思うんだ。あれってよく読むと、落　語的なコロキアルな文体の上に、ヨーロッパのハイ・カルチャーがのっかって　いるでしょ。そのせいで、外来のものが全部「おちゃらけ」に見えるように構　造化されている。あれは日本人が中国から漢字文明を受け入れて以来の伝統の　正系だと思う。明治維新になってから、ヨーロッパの、政治とか、科学とか、　哲学とかの新しい概念を入れるときに、その受け皿になったのは日本的な、ぐ　にゃぐにゃしたコロキアルなものだった。それでは理念は語れない。ある程度　以上複雑な論理は語れない。例えば、英語でオバマさんが喋ったみたいなこと　を、そのまま日本語で言ったっていいんだけども、何の説得力も持たない。ま　ったくソウルに触れてこないと思う。高橋　困ったもんだよね。だって、政治史を読むと、政治を動かしているのは言　葉なんだから。マグナ・カルタにしても、結局言葉なんだよね。自由の女神の　台座に書かれているのも、建国宣言も、政治的な言語っていうことになってる　んだけど。それを日本語にしてみると、釈然としない。すごく簡単に言うと、　自民党ってその釈然としないところに住んでるんです。つまり、「釈然とする　のはこれでしょ」っていう二つの対立するものの、中間に……左脳と右脳の間　の、脳梁に住んでるわけです（笑）。内田　だからさ、僕等が自民党を論じあおうとしても、自民党には「我々はこう　いうことを実現するために政党を作りました」っていう政治理念が書かれたテ　キストがないのね。だから「どういう社会を実現するために、あなた方は政党　を作ったんですか？　どういう政党なの？」って問われたときに、誰も、たぶ　ん自民党の総裁さえ答えられない。高橋　答えられないよね。つまり、実体しかないんだからさ。実体しかなくて、　言葉がないんだよね。つまり、言葉がないものに何言ったって無駄、ってこと。内田　じゃあ民主党には綱領があるのかっていっても、ないでしょう。自民党に　綱領があれば、対抗的な綱領が書けるけれど、もとがないんだから。　（中略）日本人は、日本国の立国の原理とか、国家理念とか、実現すべき国家　戦略って何かってきかれたときに、１億３０００万人が合意している答がない。高橋　ただね、唯一可能だったのが日本国憲法なんですよ。これはなぜ可能だっ　たかっていうと、たぶん、外国語からの翻訳だったからです。……日本の政治　的言語でもしかしたら唯一読める言葉なのかもしれない。内田　外国語に翻訳可能。英語にもできるし、フランス語にもできる。高橋　っていうか、もともと外国製だから（笑）。内田　だから改憲運動っていうのはさ、ある意味気持ちわかるわけ。何をしたい　のかっていうと、日本語じゃないから、日本国憲法は。コロキアルでぐちゃぐ　ちゃしたつぶやきの上に外来のクリアカットな政治概念がのっかる、っていう　のが日本語なんだから、「日本語の憲法にしてくんねえとわかんねえんだよ。　だから改憲しようぜ」っていう。高橋　石原慎太郎の気持ちもわかるね（笑）。内田　だけど「じゃあどんな言葉にすればいいの？」って聞くと誰も答えられぬ。……だから、自民党っていうのは、戦後そういう言語化されてない日本人のエモ　ーションと社会を維持していくスキルをうまく機能させていくシステムだったん　だけども、それが明らかに機能しなくなったわけですよ。じゃあどうすればいい　のかっていうと、きっと言語が要求されると思うんですが、それは作れないと思　うんです。ものすごいスキルが必要なんだよ。高橋　だからどうしたかっていうと、自民党はもう１個の自民党を作ったわけです。　つまり、民主党をね。（「さよなら自民党」内田樹＋高橋源一郎　SIGHT 2009夏号）

  2010年12月20日

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• 官房機密費再び

  本日発売の「週刊ポスト」鈴木宗男＋上杉隆より抜書。受託収賄罪などで実刑が確定した鈴木宗男氏が、１２月６日、ついに収監のため東京高検に出頭し、最後の会見に臨んだが、メディアが報じなかった「官房機密費の真実」についても悔しさをにじませた。７月２１日放送のTBS系『NEWS23X』でインタビューに答えた鈴木氏は「官房副長官を務めていた９８年の沖縄知事選で、機密費から３億円が投入されていた」と証言した。しかし１か月後の８月２７日、番組内で松原キャスターは、突如その証言について謝罪したのである。「報道は公平中立性を欠いていた。本来、官房機密費は、官房長官の専権事項であり、当時の野中官房長官に鈴木宗男氏の証言内容について改めて取材をしていなかった。これは報道の公平中立を欠くもので、視聴者に誤解を与えかねない。野中氏はTBSの報道に対し、沖縄知事選に官房機密費を支出したことはないと話した。視聴者、また野中氏をはじめ関係者の方々にもここに深くお詫びする」と。TBSは野中氏の抗議を受け、鈴木氏に相談もなく勝手に謝罪したのである。ところで４月に同番組で野中氏が「政治評論家などに機密費を配った」と発言したことがマスコミの機密費汚染を追及するきっかけであった。なぜ今になって機密費の使途を明らかにしようとした同志である鈴木氏を妨害したのであろうか。上杉隆　TBSは唐突に謝罪をしました。野中氏に対し取材をしなかったという理　由ですが、どう思いますか？鈴木宗男　私の官房機密費に関する発言は、TBSの取材を受けて、誠意をもって　答えたものです。どうしてTBSが野中氏に謝罪する必要があるんですか？　ふ　たりを呼んで話をさせる場を設ければいい。TBSにそう言いました。…だって　あの謝罪を見た人は、私のほうが嘘をついていると思ってしまう。上杉　TBSは結局、野中氏の側についたわけですね。…それがなぜかを取材して　調べてみたんです。野中氏は番組担当者ではなくもっと上の人間に「『時事放　談』に出なくていいのか」といっていたというんです。　（中略）　テレビ・新聞がなぜ官房機密費を報じることをそこまで恐れるのか、鈴木さん　はどう考えますか？鈴木　そもそも機密費のことを最初にTBSで話したのは野中さんです。TBS側に野　中さんに変な義理立てがあるのかも知れない。でも、それ以上に大事なのは、事　実、事実を報道することなんですよ。　（中略）上杉　なぜ私が官房機密費を追及するかというと、要するにその原資がすべて国民　の税金だからです。一般の人々が知らないところで、テレビや新聞の記者たちが　政府から税金を原資とした金をもらっている。その結果歪んだ情報が流されてい　るのではないかと。　仮に同じことが海外で起こったら、ジャーナリズムは勿論、検察まで動くだろう　と海外メディアの記者たちはいってます。もし政府の税金が渡ったことが分かれ　ばその記者は会社をクビになるのは勿論、業界からも追放される。これは世界中　のジャーナリストの共通の感覚なんです。　ところが日本の記者クラブは、取材どころか内部調査さえしない。他者に対して　はさんざん「内部調査しろ」「説明責任だ」などと言いながら、自分はやらない。　なぜ官房機密費がマスコミにとってタブーなのか。鈴木さんはどう思われますか。鈴木　ひとつの悪しき慣例ですよ。黙っているのが一番だ、触らないほうがいいと、　自己防衛、自己保身に走っているんでしょう。上杉　かつて『ワシントンポスト』のベン・ブラッドリーという有名な編集主幹が　言ったのは、ジャーナリズムの最低限の役割は権力の監視機能で、とくに国民の　税金の使い途をチェックすることが最終的な役割なのだと。極端にいえば、そこ　さえやっておけばいい。…この官房機密費がまさにそれなんです。鈴木　国民の税金をごまかしているわけですから、人から金を借りて返さないより　罪は何倍も重いですよ。……メディアの皆さんはよく「反権力」という言葉を使　います。ところが実際には権力に使われているんですよ。検察はマスコミにリー　クして、世論の反応を見て、また次のリークをするわけですから。官房機密費の　問題を報じないのは、自分たちが権力に使われているということが明らかになっ　てしまうからじゃないですか。　

  2010年12月13日

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• 日本人の国家観念

  司馬遼太郎　さきほどの天皇制の話になりますけれど、明治以後８０年間、天皇さま　に忠義せよ、という、忠義という持込み方でなければ、日本人に国家維持の観念、　義務、奉公の心を起こさしめることは出来なかったように思います。　というのは、初めて明治期を迎えた旧士農工商たちに、国家というこの漠然たる概　念を掴ませることは困難だったように思います。愛国という言葉で教えればいいよ　うなものですが、愛国という言葉ほど当時の日本人に掴みにくいものはなかったの　ではないでしょうか。海音寺潮五郎　明治以前にも国家という言葉はありましたが、それは藩という意味で　すね。幕末になると外国がやたらいろいろするので、今日の国家という言葉に相当　するものが必要になったけど、ないのですね。それで「皇国」という言葉を使って　いますね。幕府方でも使っています。いろいろ工夫して辿り着いたのでしょう。皇　国という言葉は本来は幕末語で今日の国家の意味ですよ。明治以後になるとまた変　わって来ます。廃藩置県があって、日本は初めて統一国家となり、国家という言葉　の意味も違ってきた。　新しく出来たものだけに、国民には国家というものの実体が中々わからない。政府　はやっきになって、天皇様に全国に行幸して頂いたりして、日本国家の新誕生を判　らせようとしたが、頭でわかっても、心では中々わからなかったでしょうね。司馬　だから、天皇に忠義という言葉でしなければ、国家を保てない。一生懸命忠義　を説明したところがありますね。海音寺　忠義というのが、当時の日本人には一番分かりやすいことだったでしょうか　らね。忠義とは日本では、天皇と公家、大名と家臣、武士とその譜代の家来とだけ　のものだったのですが、２７０年の江戸時代の間に、百姓や町人の社会にも及んで　忠僕・忠婢などというのが出ていますからね。対象を天皇様に移しさえすればよい　のですから、効果があった筈です。　国家という観念は、アメリカあたりでもちょっと掴みにくいらしい。アメリカはあ　あいう国で、日本みたいに単純な民族国家ではないですからね、一層そうなんです　ね。だからアメリカでは国旗に対する崇敬観念は大変なものだそうですよ。司馬　崇敬心というものが、雑多な要素の集団をまとめるのに大事なものかも知れま　せんね。日本の場合は、天皇への忠義は庶民にとって８０年の歴史である。忠義一　点ばりで愛国の概念がまだまだ育ってない頃に終戦が来て大瓦解した。ですから二　つとも失って、まだ荒無の焼け跡に立っている感じですから、ちょっと国家の秩序　が保ちがたいところがありましょう。ドイツなどは統一国家としての歴史的時間は　日本と変わりませんが、地続きで隣国がある。国家は、物理的にわかってしまうと　　ころがある。アメリカの場合は、州が一つの国家で、そこにいわば自然発生的な、　法律社会があって、対外問題を意識するときに合衆国というものが顕れて来る。だ　からアメリカ大統領は絶えず合衆国への忠誠心を、州の市民たちに訴え、それが市　民道徳の最高のものにしようとしてきた。その象徴を、国旗に置いてきた。（海音寺潮五郎・司馬遼太郎「日本歴史を点検する」より）

  2010年12月12日

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• ウィキリークスの機密暴露狂騒

  ウィキリークスの創設者、ジュリアン・アサンジ氏（３９）は７日、ロンドン警視庁に逮捕された。容疑は機密情報流出とは関係のない性犯罪である。逮捕状はスウェーデンから出されていたが、アサンジ氏は容疑を否認している。容疑の真相は不明だが、機密の暴露という事件に対し、権力側が個人の性的スキャンダルで対抗する構図は日本の過去の事件を想起させる。１９７２年の「西山太吉事件」である。毎日新聞記者だった西山氏が取材で得た外務省のアメリカとの密約を国会議員に漏らし、国家公務員法違反で有罪となった。このときもマスコミは密約それ自体より性的スキャンダルにのみ過重に報道した。このたびのウィキリークスの外交公電暴露に米国のクリントン国務長官は怒り心頭である。「人命や国家安全保障を脅かし、米国だけでなく、同盟国をはじめとする国際社会を攻撃するものだ」と非難した。日本の前原外相も「言語道断、犯罪行為だ」と率直すぎる同調を示した。米政府の反発に配慮して、米ネット通販大手のアマゾンはウィキリークスのサーバー使用を打ち切り、米ネット決済サービス「ペイパル」もウィキリークスの寄付送金業務を停止した。しかし、ネット上には公開された内容をそのままコピーする「ミラーサイト」が出現し、なお情報は拡散する一方だ。米国政府の現在の姿勢を「御都合主義」「ダブルスタンダード」として非難する見方も多い。というのも今年一月、インターネット検索大手グーグルが中国当局からサイバー攻撃を受けたとして、中国撤退を検討していた際、米政府は「ネットのアクセス規制は世界人権宣言に反する」と言い切り、「ネットの自由」を掲げて中国当局を非難していたからだ。今回の流出した外交公電にもこの件の情報が含まれていたのだが、もはや米政府にはこれを論評する余裕もないようだ。ウィキリークスから公電を入手して報じている英ガーディアン紙は６日付の紙面で、この問題に触れた大学教授のエッセーを掲載した。……一月のクリントン米国務長官による「独裁的な国々ですら情報ネットワークは人々が新たな事実を発見し、政府に説明責任を強いることを助けている」というグーグルの支援演説を引用して、その上で「いわゆるリベラル民主主義（オバマ政権）が、いまウィキリークスの閉鎖を要求していることは愉快な皮肉だ」と批判している。日本では朝日新聞が比較的、ウィキリークスの主張（権力への内部告発）に肯定的だが、読売新聞は「のぞき見趣味に迎合するかのような、無責任な暴露」と批判し、政府や企業に情報管理の強化を求めている。米政府と緊密な政治スタンスがよくわかる。（東京新聞「こちら特報部」より）デスクメモによれば、アサンジ容疑者の逮捕に対し、社内で知人が「どこでも同じことをするなあ」とつぶやいたという。権力は「邪魔者」を消すのに手段を選ばないと。あらゆる歴史の、あらゆる政治の局面で、展開されるいとなみである。権力者がその機密情報を暴露され、権力の舞台裏のホンネが明かされたとき、どんなに周章狼狽するか、いまのクリントン氏の外交努力を見ればよくわかる。残念ながら日本の存在意義や威信は、まるで検討されず、米のいいなりであるが。

  2010年12月10日

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• 武器輸出三原則の見直し

  民間内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した機密の米国外交公電で、日米が共同開発している海上配備迎撃ミサイル（SM３ブロック２A）の欧州への輸出解禁を米国が日本に打診し、国是である武器輸出三原則の事実上の見直しを求めていたことが１１月３０日、明らかになった。公電は昨年９月、東京やソウル、中東などの関係国の大使館に国務省から送信され米国のミサイル防衛（MD）戦略に言及している。米側は将来的な北大西洋条約機構（NATO)への装備売却を模索しており、SM3ブロック２Aをその候補に含めるかについて、その障害となりかねない武器輸出三原則の緩和を含め、日本政府と「戦略的な決断」に向けて連携したいとしている。ゲーツ国防長官は昨年十月、北沢俊美防衛相と会談した際にも輸出規制の緩和を求めていた。（東京新聞　１２月２日朝刊より）……日米では弾道ミサイルを迎撃するミサイル防衛（MD）システムで使う海上発射型ミサイル「SM3ブロック２A」を共同開発中である。ミサイルの先端を覆うノーズコーンを三菱重工業が開発するなど、米国が及ばない技術を提供している。SM3は、日本と米国のイージス艦のみが発射でき、量産が決まっても米国以外に渡る可能性はまずない。米国への技術供与や共同開発はすでに武器輸出三原則の例外扱いで、見直しは不必要である。防衛省の元技術幹部は「米国との共同開発は重要」という。「日本の国産武器は実戦には向かない。その点、実際に戦争をしている米国の武器は実用的。費用対効果の検証も厳しく、最適な武器を生みだしている」と説明している。さらに日本の大手防衛産業が加入する日本経済団体連合会は７月「戦闘機など国際共同開発が進んでいるのに、わが国は武器輸出三原則により参加できず、技術的な鎖国状態に陥っている。新しい武器の輸出管理原則を確立すべきである」との提言を公表している。（同東京新聞より）

  2010年12月07日

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• ウィキリークスの日本情報

  民間告発サイト「ウィキリークス」が米政府の外交公電を続々と暴露している。日本の外交当局も対応に追われているが、５千件以上あるとされる日本がらみの公電から、何が飛び出してくるか、戦々恐々の日々である。○中国外務次官が２００９年４月、日本の常任理事国入りに米国が積極的にならな　いよう、北京の米大使館幹部に要請した。米国は「国連分担金世界第二位の日本　を無視できない」とけん制したらしいが。○キャンベル国務次官補と韓国の金外交安保首席秘書官との今年２月の会談で、当時　の鳩山政権の北朝鮮政策について懸念を表明していた。自民党と民主党とは全く違　うと分析し、鳩山政権が北朝鮮と予備交渉する場合は米韓両国と連携すべきだとの　認識で一致した。○０９年９月、日米が共同開発しているミサイルの輸出を可能にするため、米国が日本　に武器輸出三原則の事実上の見直しを要請した。これらの暴露はまだ序の口であろう。仙谷官房長官は３日の会見で、米国のルース駐日大使から外交公電の暴露問題について前原外相に事実関係の説明があったことを明らかにした。ただ中身については「非常に微妙な外交上の問題なので、申し上げるのは差し控える」とした。だが外務省は連日、リークされた内容のチェックに躍起になっている。「ウィキリークスを片っ端から調べないといけない時代なのか」（幹部）との嘆きも聞こえてくる。外務省幹部にとってこれまでの対米従属の真相が、裸にさらされることが痛恨の極みであるらしい。すでに、ミサイル防衛で米国が武器輸出三原則の見直しを求める内容の公電が暴露された。今後、新たに防衛省関連の内容（思いやり予算等）が暴露されれば、重大な問題に発展する可能性もある。米軍普天間基地の移設問題にからむ「鳩山前首相や民主党政権への悪口や脅し」などの暴露が出たら大変だと漏らす関係者も多い。あの有名なオバマと鳩山の侮辱的会談の背景も明かされるであろう。鳩山の「海兵隊抑止力」発言の真相も明かされるであろう。中国と米国は日本の民主党政権を巡っていまや様々な「権謀術策」を繰り広げている。北朝鮮の危機感醸成もそのひとつの因子である。「沖縄の米軍基地をめぐる民意」も米中のお互いの東アジア覇権争いの重要なポイントである。沖縄知事選に照準をあてた朝鮮半島のこぜりあいもなかなか謀略的である。まあこの世が極めて独善的な「大魔王」の支配と遊び心で運営されているのは、古今の常識であるが、「ウィキリークス」がそれを余りにも素敵に証明したものだから、今まで「権威」や「正義」をまとっていた、新聞・テレビなどの情報機関がまったくの受け売り・下請け機関であったことを暴露した。われわれ一般庶民はいながらにして、この世の支配系統がどうなっているのか、誰が主人で、誰が奴隷、または使用人であるかが分かることとなった。恥ずかしいことだが、日本国が戦後いくら高度経済成長しても、青い目の紅毛人に指図され、思いやり献金しなければ、自主防衛もできない国となっているのだ。三島由紀夫氏が何十年も前に喝破していたことに、ようやく気付くのだ。どうすればいいのか、皆の衆。

  2010年12月04日

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• サッカーW杯はロシアとカタール

  またしても「日刊ゲンダイ」の記事から推測する。２０１８年大会の開催はロシア。「旧共産圏初のW杯」という大義名分が好アピールしたらしい。「理事会前に現政府が近年の経済成長をバックにスタジアム建設だけで４０００億円を投じると確約した。ロビー活動にも湯水のようにカネをつぎ込んだ」（専門誌記者）と言われている。プーチン首相の実力と得意を思うべし。当初の大本命はイングランドであった。５２年ぶりの開催を目指し、FIFA視察団による事前報告書も評価が高く、最終プレゼンテーションにはウイリアム王子、キャメロン首相、元代表ベッカムと豪華メンバーを揃えて注目を集めた。ところが１回目の投票で最下位となり姿を消した。わずか２票という惨敗だった由。敗因は英サンデー・タイムズがおとり取材でFIFA２理事の買収疑惑を暴き、投票権をもつ理事２２人の心証を悪くしたというもっぱらの噂である。日本は最初から泡沫候補だったらしい。しかし２０２２年の開催国が中東カタールに決まった瞬間、世界中のサッカー関係者がビックリ仰天したというのも事実である。およそW杯開催にふさわしくない国である。FIFA世界ランクは１１３位。W杯出場経験はゼロ。国土面積は秋田県よりも狭く、開催予定１２スタジアムすべてが地下鉄で移動できる距離にある。同国は「コンパクトなW杯」「スタジアムに太陽光発電の冷却機器を設置」などをアピールしたが、最終的には「同国出身のFIFA理事ハマムの政治力のたまものとの噂がもっぱら。各理事出身国の代表チームを招待して親善試合を開く際、１０億円単位の破格の報酬を用意し、それ以外に理事個人にも魅力的な媚薬をかがせて骨抜きにしていた」（専門誌記者）ことが決め手となった。もともと２０２２年は、米国開催が有力視されていた。スタジアム、インフラ、世界大会開催能力なども万全で「明日にでもW杯を開催できる」と評価の声は高かった。しかし、リーマンショックの震源地など経済的マイナス要因もあり、カタールの潤沢なオイルマネーの前には非力だったと言わねばならない。さて０２年W杯の招致活動には９０億円をかけた日本が、今回の招致には「総額９憶円」という貧しさ。W杯開催国が決まるまでに「理事一人当たり１０億円が蓄財できる」（放送関係者）という話があるなかで、９憶円では「日本はやる気なし」とコケにされて当然だという。FIFAの運営自体がおよそ世界の「金持ちクラブ」の公営ギャンブル事業となっているのは、オリンピックと同じこと。平和や民族という美名のもとに何かけしからん商売が行われていると思うのは私だけでしょうか。

  2010年12月03日

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• 官僚に籠絡された菅首相

  副総理時代は「霞が関なんて成績が良かっただけで大馬鹿だ」と虚勢を張っていたのだが、首相就任会見では一転して「官僚は政策のプロフェッショナル」とお世辞をふりまいた菅首相。所信表明演説で「消費税を含む税制の抜本的な改革」を表明し、財務省の悲願だった消費税増税にはっきりと舵を切ったのであった。その結果はげしい国民の反発を喰らい、参議院選挙で民主党は過半数を逸する敗北を喫したのである。マニフェストに違反し、党内の了解もとらぬ財務官僚の言いなりの宣言であったことは言うまでもない。なぜ菅首相は就任早々、みずから官僚の走狗になったのか。裏には、財務官僚の執拗な「籠絡作戦」があったといわれる。まず手始めは「座敷牢作戦」。副総理兼国家戦略室時代の菅氏は「予算編成の基本方針は国家戦略室で決める」と主張し、「予算編成権は財務省にある」とウソをついて抵抗する藤井財務相（当時）とはげしくバトルを演じた。憲法上、予算編成権は「内閣」にあると規定されているのである。このままでは予算編成権を奪われると危ぶんだ財務省は、管氏を監視する省出身の秘書官を通じて情報の届かない状況をつくり、戦略室を開店休業状態に追い込んだ。民主党議員との連絡や意見交換にも、できるだけ壁を設け、情報を遮断すべくあらゆる手段を行使したと言われる。要するに大臣の権威・実行力を限りなく貶めたのである。これが「座敷牢」と呼ばれる官僚のいじめ手法である。さらに今年１月、藤井氏の後釜で財務大臣として省に乗込んだ菅氏を、財務官僚は「恥かかせ作戦」で罠を仕掛けた。参院予算委員会で自民党の林芳正議員は、「乗数効果」という財政用語で、管氏の経済音痴ぶりを嘲笑い、答弁をつまらせ、大いに恥をかかせたのである。これにも裏があった。本来、大臣答弁は役人が事前に質問者から質問内容を聞き取りして作成するのだが、ここに罠が仕掛けられたのである。「財務官僚は事前のレクで菅氏が乗数効果について勘違いしていることを知っていた。それを本人に忠告しないで、逆に、菅氏は乗数効果を知らない。論戦を吹っかけたら勝てますよ、という情報を林さんなど財務省にパイプのある政治家に伝えたのだろう。大臣に恥をかかせるために仕掛けた罠だった」（内閣府の官僚）プライドの高い菅氏にとって、この恥かき事件が官僚の軍門に下る決定打になった。「プライドが高く、知識に自信のある政治家ほど官僚は操りやすい。菅総理にとって乗数効果質問がトラウマになっていることは、その後の国会答弁が官僚の答弁書の棒読みになり、すっかり覇気がなくなったことでわかります。（中略）有力な政治家が官僚を味方につけると、政敵のスキャンダルから官邸や党内の動き、どの議員がどんな陳情を取り次いだかなど、どんどん情報が入ってくる。次の首相をうかがっていた現実主義者の菅さんは、そこまで計算して副総理の頃に霞が関と組んだのではないか」（原英史・政策研究大学院大学客員准教授）その見返りに菅氏が官僚に踏まされたのが「消費税増税」の踏み絵であった。（「週刊ポスト」７月２日号より）

  2010年11月30日

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• 田母神氏の北朝鮮論

  本日の「日刊ゲンダイ」の記事「あの田母神さんがズバリ指摘」が痛快だ。「北朝鮮のミサイル脅威はアメリカの罠」という惹句がつく。先月刊行した著書「田母神国軍」のなかで「アメリカは北朝鮮情報で日本をコントロールしている」と指摘しているのである。「日本人は北朝鮮のミサイルに対して、過剰なまでに反応します。（中略）アメリカが、特に北朝鮮の情報だけを日本に流しているからです。アメリカは、北朝鮮によるミサイルの脅威を煽ることで、日本のミサイル防衛体制を強化させたいと考えています。（中略）恐怖を煽ればどんどん日本は（アメリカから）ミサイルシステムを買うのです。さらに、北朝鮮の情報も買うでしょう」ミサイル防衛システムといえば、安倍晋三元首相が官房長官だった０６年７月、日本海への北朝鮮ミサイル発射に慌てて、首相になって導入に突っ走った経緯がある。その仲間とみられる田母神氏が「ミサイル防衛ばかりにカネをかけても仕方がない」と主張するのだ。これはどういうことだろうか。氏は「北朝鮮のミサイルなんて交通事故以下の致死確率です」と断ずる。いわば情報通の内部告発に近い。普天間問題についても、「長期的に考えれば、鳩山（由紀夫）氏が当初公約していた「米軍基地の国外移転」と「対等な日米関係」を日本は目指すべきです」と書いている。米軍のグアム移転や対米従属の軍事機能に対する見通しにも言及する。連日、おうむの一つ覚えのように朝鮮半島危機を煽る大新聞テレビも、やはり、米国の一方的な情報操作におかされているのであろう。元外交官の天木直人氏が菅政権の外交姿勢を批判する。「今回の北朝鮮の韓国砲撃事件にしても、日本は米国から何の情報も入手していません。だから菅政権はただ右往左往している。情報を握られているからこそ、日本は対米依存度を増していくのです。一方通行に過ぎない日米同盟のいい加減さは自民党時代から綿々と続いていて、防衛省はもちろん、外務省にとっても常識です。それを知りながら、日本政府はずっと対米従属に甘んじてきた。その実態を、今回元防衛省幹部の田母神氏にばらされたのだから、管政権も頭を冷やすべきですね」田母神氏の言うごとく、北朝鮮のミサイルの脅威や核情報が「米国の対日情報操作」であり、沖縄における米軍基地の存在理由も、むしろ日本の財政援助や、核開発の自力調達を抑える目的であるとすれば、なんとも滑稽なお芝居に踊らされているものであるなと、日々曰くありげなコメントをまき散らす言論人に失望する。

  2010年11月29日

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• 寺崎英成の娘マリーの言葉

  寺崎英成は、明治３３年（１９００）東京に生まれた。昭和天皇の一歳年長である。旧福岡藩士にして貿易商寺崎三郎の二男。暁星中学より旧制一高をへて、東大法学部卒。昭和２年外務省に入り、外交官としての道を歩みだした。ちなみに兄の寺崎太郎も外交官である。英語が得意の英成は、はじめ米国に在勤、昭和７年までワシントンにあったが、同じ年の７月から１５年の暮まで、ほとんど上海ないし北京と、中国在勤ですごした。この間に中国在勤の米外交官との困難な折衝と交際をとおし、有数な知米派のひとりと見られるようになっていた。このワシントンの日本大使館在勤中の昭和６年に、テネシー州出身のグエンドレン・ハロルドと知りあって結婚した。また昭和７年８月、上海在勤中に一粒種の娘マリコが生まれている。（『昭和天皇独白録』より半藤一利の「はじめに」から）１９４１年１２月の日米開戦は、二人にとってまことに意地悪な神様のいたずらとしか形容し難い出来事だった。だが、真珠湾攻撃から広島・長崎への原爆投下に至る４年の長きにわたる、日米両国民数百万人もの命を奪い、日本の都市の大半を焦土と化したこの激烈な戦いも、父母の仲を割くことはできなかった。戦争中の日本で、テネシー生まれの母グエンは夫の祖国である日本に敵国人として住むことを当然のことと考え、日本人になろうと極力努めた。そして物の豊かなアメリカではとうてい考えられないような耐乏生活に、夫と娘とともに耐え抜いた。そうした母の愛情と献身を限りなく感謝した父は、病身に鞭打って戦時中の不遇に耐え、母と私の将来へのコミットメントを可能な限り果たそうと努めたのである。戦後、父と母が一緒に過ごし得た歳月は、わずか４年に過ぎない。１９４９年８月、母と私は体調のすぐれない父を西荻窪の家に残してアメリカに渡った。私の教育のために不可欠な措置だと、両親が合意しての渡航だった。だが、その日父はそれが最後の別れになることを知っていたのではなかったかと、私は今になって思うのである。……父は生粋の明治の人であり、生粋の日本人だった。だからこそ、あのような国際人になれたのだと私は思う。日本人としての教養と信条がしっかり備わっていたからこそ、海外に出たときに、世界の中における日本及び日本人の立場と役割を国際的な視点から定義できたのである。そんな父が「混血児」と呼ばれてよくいじめられていた私を、ある日次のように話して奮い立たせてくれたのだった。私はこの父の言葉にどれほど勇気づけられたことだったか……「マリコ、お前はとてもラッキーな子供であることを決して忘れてはいけないよ。普通の人は、たったひとつのヘリテージ（伝統）しか持っていないのに、お前にはふたつのヘリテージがあるではないか……二つの祖国と二つの言葉が。お前はブリッジになる子だ。ヘリテージがひとつだけでブリッジになるのは至難の技なのだよ」と。……父が最も心を痛めたのが、中国における日本人、特に兵隊の中国人に対する態度だった。北京や上海の日本兵のなかには、到るところで中国人を膝まづかせ、土下座させて優越感を味わう者がいた。在中時代の父は、軍人たちのそういう態度に反発してか、中国服を着て歩くことを好んだ。上海の街中に貼られた「中国人とイヌ、入るべからず」の貼り紙を見て憤慨していた父は、終戦直後アメリカ兵が日本に進駐してきて日本人をいじめるという噂を聞いて来た友人に、自嘲的にこう述べたものである……「ちょうど日本の軍人が中国人にやったように、というわけかね」と。戦時中ずっと、父は軍部のやり方に極端な嫌悪を抱いていた。特攻隊出撃のニュースを初めて聞いたとき、父の怒りは頂点に達した。「これは、狂気の沙汰だ！　ここまで来たら戦争をやめるべきだ。なぜここまで来たのに、軍部は方向転換をしないのだ。彼らは、日本民族を滅亡させるつもりなのか！」と。父は軍部が理不尽で、日本国民に対してフェアではないと考えていた。昔、ワシントンでデートしていた時代のこと。ある日父は、母と一緒にタクシーに乗り込んだ。するとその車の運転手が舌うちして、ジャップの女とつぶやいたのだ。父はこれを聞くとやおら車外に出て、運転席から男を引きづり出すと、首根っこをつかまえた。そしてタクシーのボディに運転手の頭を思い切り叩きつけたのだった。父によれば日本人をジャップと呼ぶことも、連れの女性を軽蔑するのもフェアじゃないのだが、特に失敬な言葉を相手に聞こえないようにつぶやいたのが「アンフェア」で許せないのだった。どうして相手に聞こえるように堂々と言えないのか、と。

  2010年11月27日

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• 小沢一郎とメディアの「２０年戦争」

  自民党派閥政治全盛のころ、政治部の記者は派閥ごとに分かれ、同じ社内でも担当派閥が違えばはげしく敵対した。「派閥の情報機関」となることで有力議員に食い込み、見返りに番記者限りのオフレコ懇談などで政府・与党の重要な情報を得るという両者の持ちつ持たれつの関係を築いてきたのである。霞が関でも、各省庁に組織された記者クラブ制度によって、役所への情報アクセス権を独占した。テレビ局に至っては国による電波の割り当てを受けて情報発信手段まで独占してきたのである。こんなメディアがゼネコンの談合を批判するなどは、ブラックジョークである。８０年代終わりに自民党内で頭角を現してきた小沢一郎は、政治改革をめぐる党内抗争の中で、「マスコミほど既得権を得ているところはない」「記者クラブというギルド組合を解体しなければ、日本には本当の言論の自由は成り立たない」と、メディアのあり方そのものを批判して改革の大きな標的にした。実際に小沢氏は細川内閣、新進党と自らの記者会見を外国メディアやフリーランスの記者に開放し、その原理は現在の民主党にも引き継がれた。新聞・テレビにとっては、小沢氏は既得権益を奪う憎き敵であった。小沢氏とメディアとの「２０年戦争」はそうして始まり、日本の政治が政策による再編ではなく、「親小沢か、反小沢か」という好き嫌いを軸とした離合集散を重ねてきたのも、小沢氏が権力を握ることをひたすら怖れ、敵対し、潰そうとしてきた大新聞・テレビの小沢報道と無関係ではない。立正大学講師の桂敬一氏（日本新聞協会研究所元所長）が語る。「小沢憎しという教義ありきのメディアは、政策の中身ではなく、脱小沢なら評価する、逆は評価しないという単視眼的判断になる。しかも、その根拠を世論調査で裏付けようとしている。聞くべき少数意見があれば、その意味を考える姿勢がメディアには必要だが、その姿勢はない。危険なのは国民がそれに慣れてしまうと、世論調査で聞かれる側も、安心したい、安定したいという心理が働き、どちらの意見が多そうかで自分の意見を決めることだ。この繰り返しが続けば、国民も自分の責任でモノを考える能力が劣化していく」「世論」「民意」は民主主義の根幹であるが、そこが大手メディアの意図的な報道によって歪められれば、政治改革も行政改革も進むはずがない。大手メディアと誼を通じて政策を広報してもらうという選択肢がない『小沢総理』には、少なくとも大手メディアの既得権打破だけはできるはずである。政策の論争において、反小沢勢力に味方する大手マスコミの論陣に後方支援するのは霞が関官僚とアメリカである。（週刊ポスト９月２４日号より）

  2010年11月24日

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• 菅政権の今後はどうなるのか

  柳田法務大臣の辞任が決まった。今後馬淵国交相、仙谷官房長官の辞任要求が起こされるのだろうか。閣僚の失言による菅政権の末期状況がいつまで続くのだろうか。本日の「日刊ゲンダイ」がこの政局の背景を詳細に解説している。……民主党の期待はずれ、裏切りはもはや犯罪的だ。政治ジャーナリストの野上忠興氏が言う。「改革に情熱を傾けている政権であれば、高い支持率を誇り、こうした閣僚不祥事問題が起こってもスパッと判断し、ズルズルと後に引かないものです。ところが、支持率が下がり、迷走している菅政権は問題大臣の首も切れず右往左往し、これが又国民の失望を招いています。負の連鎖で国民の怒りが増大してきました」民主党の堕落の原因は何か。小沢一郎の排除がその第一である。小沢を排除した菅や仙谷の裏に誰がいるのか。小沢を切って得をするのは誰か。こうしたことを考えていくと今の民主党政権の真の姿が浮かび上がってくる。もはや菅政権の背後にあるのは、米国に盲従し、国と国民を売ってきた自民党政権の蠢きである。自民党の末期政権に似てきたどころではない。自民党そのものに変容しつつある。昨日の読売新聞に「日米が対中戦略を詰める」という記事が載った。最近になって周囲を盛んに刺激するようになった中国に対し、日米が共同で対処する方策を、来春の日米共同声明に盛り込むという内容だ。横浜のAPECでオバマ大統領が提案し、管が同意したもので、１２月にも局長協議が始まるというのだが、これで菅と米国が小沢を目の敵にする理由がよく分かる。小沢は日中国交正常化を成し遂げた田中角栄の秘蔵っ子だ。昨年末に民主党所属の国会議員１４０人を含む６４０人の訪中団を引き連れ、北京を訪問し、胡錦涛国家主席と会談した。習近平国家副主席とも近い。今や、中国がもっとも頼りにする政治家なのだが、米国にはそれが面白くない。大々的な訪中を断行し、米国を刺激した小沢には「米国内で警戒論が噴出した」（シンクタンク関係者）とされる。さてその後に、年明け、東アジア重視を提言していた鳩山の故人献金醜聞が炸裂し、小沢の元秘書だった国会議員が政治資金問題で逮捕され、連日の追及報道の末、ダブル辞任ー菅政権の誕生ー小沢排除と突き進んできたのである。「秘密のファイル　CIAの対日工作」の著者でジャーナリストの春名幹男氏が言う。「米国だって、日本の政権に小沢を切れ、とは言わないでしょう。しかし、今年４月に行われた核安全保障サミットを見て、鳩山政権は『もたない』と直感しました。オバマ大統領との首脳会談は実現するどころか、晩餐会の途中の非公式会談になったからです。米国はあからさまでしたね」勿論日米外交当局の明らかな鳩山外交へのしっぺ返しである。米国が露骨な鳩山・小沢切りに動いていたのは事実で、そののち、米国のポチのような菅政権が出てきたのである。これは露骨だ。「菅政権の米国すり寄りは自民党時代より目に余ります。普天間移設問題でも、米海兵隊はグアムに移転するのに、その移転費用だけでなく、新しい飛行場を辺野古に造らされるわけです。更にTPPも押しつけられ、農業だけでなく、もう一度、郵便局を開放しろ言われますよ。小泉政権時代のアンチテーゼで民主党政権が生まれたのに、小泉政権時代に逆戻りするのではないか。それくらい菅政権は米国に何も言えなくなっている。来年４月に日米首脳会談が予定されていますが、管首相がノコノコ行って何を約束させられるのか、恐怖です」（元レバノン大使天木直人氏）米国はこの追い詰められた菅政権をシメシメと見ている。日本なんて、対中戦略の地理的拠点くらいにしか見ていない米国は、日本の政権が安定せず、米国の言いなりで金と基地さえ提供すればそれでいいのだ、無能首相がうってつけだというわけだ。中国も米国の意図や戦略をよく見越している。ますます菅政権をなめてかかるであろう。日本はいったいどう動けばいいのか。

  2010年11月22日

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• ミスターXは微笑んでいる

  本日の「日刊ゲンダイ」から。「ミスターX」は、今、笑いを噛み殺すのに必死ではないのか。まんまと民主党政権の改革潰しに成功したからである。小沢一郎の献金疑惑を流布するだけで、新聞が書きたて、世論が騒ぎ、民主党内の反小沢勢力が便乗した。濡れ衣とでっち上げの疑惑で、検察審査会を誘導し、小沢を政権の中枢から追い出したら、柔道の大技が鮮やかに決まるごとく、民主党政権はグラリと傾き、死に体同然になったのである。「ミスターX」とはさまざまな勢力の集合体である。自民党議員もいるし、霞が関の役人もいる。政管の癒着のなかで、甘い利権の蜜を吸い続けてきた企業、団体も含まれる。天下り法人などはその典型だ。またいわゆる闇の勢力もいよう。もちろん、大新聞・TVも仲間だし、米国や親米派と称する連中も、この類である。いずれにしても、管政権の末期症状を見ていると、彼らの忍び笑いが聞こえてくるのである。彼らは国民のことなど眼中にない。民主党政権が潰れて、何とかして自分たちの利益が守られればいいのである。思うツボの展開ではないか。……小沢排除に動いて、一時期政権浮揚に成功したかに見えた菅民主党政権の今の惨状はひどいものである。いつもの大手マスコミの常套手段で、内閣支持率は下がりっぱなし、不支持も６割近くになって毎日のように、閣僚の失言、失態がテレビで映される。仙石官房長官の「自衛隊暴力装置論」、柳田法相の「法と証拠」発言、北沢防衛相の「民主党政権は長くない」発言などまことに日替わりメニューのごときお粗末。「ミスターX」はここを先途とばかり、あらゆるチャンネルを駆使して、この迷走菅政権を追いこんでいくであろう。特に霞が関官僚のサボタージュや様子見があまりにも歴然として、もはやお陀仏内閣の感。やはり天下り官僚たちが全国津々浦々にその資金と情報を整備してきた巨大なネットワークの力は半端ではないのだ。「ミスターX」とはまさにそれだ。　　戦争にたかる無数の蠅しづか　　　三橋敏雄　　友よ我は片腕すでに鬼となりぬ　　高柳重信　　こちら日本戦火に弱し春の月　　　三橋敏雄

  2010年11月18日

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• ケネディ暗殺事件

  腹心の部下犯人説は、世界の指導者の暗殺によって歴史的に証明されている。ケネディが暗殺されたその日から、腹心による暗殺説はこの犯罪に対するもっとも有効な説明のひとつと考えられてしかるべきだった。ケネディが殺されたとき、多くのアメリカ国民はジョンソンが関係しているかも知れないと疑った。だが誰にもその疑いを声にだす勇気がなかった。ほんの少数の人たちだけが、世間の冷笑や死の危険さえ恐れず、ケネディ暗殺についてこの疑問を声を大にして主張してきたのである。現実問題として、アメリカは冷戦の最中にあり、アメリカの政治家たちは自由の国で血なまぐさいクーデターが起きていたかも知れない、あるいは実際に起きていたという事実を世界に知らされたくなかった。国民も見て見ぬふりをし、暗殺の証拠が押収されて捜査が重要参考人に統制されるのに目をつぶったのである。しかし、国民がスキャンダルに口をつぐんでしまうのは珍しいことではない。ほんの数十年前、ヒトラーはドイツで政権を掌握し、ユダヤ人の虐殺を開始した。だがドイツ国民は抗議をしなかった。国民たちはうすうす真相に気付いていたにもかかわらず、あるいは真実を知っていたにもかかわらず、なぜ何百万人もの人々が虐殺されていくのを見過ごしたのか？　なぜ冷酷にも国をあげてそのようなことができたのか？こうした問いの答えには、ケネディ暗殺後にアメリカで起きた事態がそっくりそのままあてはまる。恐怖、自己防衛、そして祖国に対するプライドから、これは現実ではなく、自分達の考え違いなのだという間違った希望のもとに、あきらかな不正と暴君的な行為は黙認されたのである。ケネディ暗殺に関する紛れもない真実を無視して、われわれアメリカ人はほんの数十年前のドイツ人のように、一人の男に権力を握らせ、その男の好き放題にさせたのだった。われわれは強力な動機をもった容疑者が暗殺の証拠を押収するのを許しその容疑者の人選による委員会の調査結果が世界に公表されるのを黙認した。こう述べるのはアメリカ国民全員を起訴するにも等しい行為である。ほとんどの事柄にジョンソンが関係しているのである。テキサス・コネクションはリンドン・B・ジョンソンに始まり、リンドン・B・ジョンソンに終わるのである。ジョンソンははじめからケネディ大統領の遊説計画に携わっている。そして特別のパレードのルートが選ばれ、それがケネディの死につながっていく。ジョンソンの統制の仕上げは、彼が暗殺の証拠の押収を命じた１９６３年１１月にはじまり、封印された証拠が公開される２０３９年まで続くだろう。だが、おそらく証拠はなくなっているはずだ。ジョンソンが既に手をまわしているに違いない。それが古来の政治常識である。暗殺後ただちにワシントンに戻る機内で、大統領専用機に乗り合わせた人々のなかには新大統領の隣に座ることも、彼のそばに寄ることさえいやがる人々がいた。ジョンソンから無理やり就任の宣誓に同席することを強要されたジャクリーヌ夫人は血まみれの服を着替えることを拒否した。おそらくは無言の抵抗だったのだろうが、夫人は宣誓式がすむと、夫の棺が置かれた専用機後部の部屋に引きこもった。あとでわかったことであるが、専用機に乗っていたケネディの側近たちは「ケネディの暗殺はジョンソンのせいだと思っていた」という。だが、ケネディ家はジョンソンに暗殺の疑いをもちながら自分たち一族のためか、ロバート・ケネディの将来のためなのか、あるいは他の理由からなのか、その疑惑を公にはしなかった。ジャクリーヌ夫人は彼女の夫を殺した祖国に心から怒りを覚えて、アメリカを離れヨーロッパに発った。冷酷にも殺人を政略に利用して保身をはかったケネディ一族や知人・側近らにも激しい怒りを禁じ得なかったと言えよう。（クレイグ・ジーベル「テキサス・コネクション」より）

  2010年11月14日

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• 戦争をなくすには

  アーチスト月下美紀さんのメッセージ「核なき世界へ」より。米国の未臨界核実験は「いずれやる」と思っていましたから驚きませんでした。巨大な技術を保つには実験が欠かせないからです。なのに被爆地では「裏切られた」という反応がほとんどです。僕に言わせれば「よく言うよ」です。米国では、原爆投下が戦争を終わらせたという考え方が支配的です。オバマ大統領が核廃絶を口にしたからと言って、そんな簡単に核を捨てるわけがない。「オバマに乗っかればいい」という考えがあまりに無垢すぎました。オバマに広島、長崎に来てほしいとの声があります。彼が来た時、何を求めるつもりなのでしょうか。謝罪か、核実験中止か。被爆地なりの「外交」が求められるはずですが、議論の整理すらできていません。「原爆の悲惨さを見て」と感性に訴えるだけなら「外交」ではありません。僕は広島の爆心地から４キロで被爆しました。「太陽が落ちてくる！」と家に飛び込んだ記憶があります。小学生だった１９５２年、平和記念公園に「過ちは繰返しませぬから」の文章を刻んだ原爆死没者慰霊碑ができました。戦争という過ちを二度としないと誓ったんだと思っていました。ただ５４年のビキニ事件以降、核の脅威が叫ばれると、「被爆地の願いは核廃絶」といつしか絞られてしまいました。仮に核がなくなる時が来たら、広島長崎の役割は終わりでしょうか。広島のプリンシプルはいったい何でしょうか。今こそ「戦争反対」の原点に返るべきだと思います。「戦争反対」を根底に据えることで、今も世界で続く悲惨な戦争をなくすにはどうすればいいか、一緒に考えることができるのではないでしょうか。（朝日新聞１１月７日朝刊より）英仏が近頃「未臨界核実験」を実施すべく提携しているとの報道があったが、彼らの意図は昨今の米国の経済的、軍事的退潮と、中国・ロシアの軍事的連携・膨張主義をいち早く予測し、防衛することにあるのは明らかである。現在の国連安保理の常任理事国５国が、いずれも核大国で、その維持のため核実験を行い、いわば世界の軍事的領袖の立場を維持しているのは、まことにこの世が友愛の海ではなく、弱肉強食の修羅場であることを証明する。国連という組織がまた彼ら５大国の利益と権益を権威化するものだと言えよう。西独や日本がいかに国連分担金を上納しようと、英仏や、中ロが邪魔し、韓国などの中間勢力の傀儡を事務方などに起用するのである。そして上納金は彼らの国際紛争の軍事費に費消されるのであろう。まことに美しい嘘で戦争は起こされる。日本だって「大東亜共栄圏」という壮大なスローガンで国民を戦場に駆り出し、無知で、臆病な婦女子を泣かせたのである。裏でどのような美しい計算がなされたか、誰も証明しようとしない。きっと詐欺師が手綱を握っていたのであろう。嘆かわしい。　　鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる　　　　加藤楸邨

  2010年11月07日

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• オバマ民主党敗北のゆくえ

  学習院女子大の石沢靖治教授は「米国の国力低下」を指摘する。「経済不振と失業率が９％台もあるのが敗因であろうが、大国だった昔に戻ることを期待しても実際には無理。リーマン・ショック後の米国経済はバブル崩壊後の日本と似て、立て直しは大変だ。経済の状態がひどいことはブッシュ前政権からで、イラク戦争などの後遺症もあり、オバマ大統領の責任とするのは気の毒ではある」オバマへの「大きな政府」批判は、日本にも影響がありそうだ。「日本でも国民は、反霞が関などと言いながら、結局は役所や国家が何かやってくれることを期待し、当然と思う風潮がある。オバマ大統領は医療保険改革に全力をあげて公約を果たそうとしたが、それも財政赤字を拡大させると批判を浴びた。日本も今後政府に何でも頼ることが難しくなったと考えるべきだ」と語る。対日政策でどのような変化が出てくるのか。経済評論家の森木亮氏は「徹底的にドル安に持って行くはずだ。一ドル＝５５円までの円高に追い込むだろう。破綻が迫る米国にもはや学ぶことは少ない。日本は国会議員や公務員削減を進める英国を手本にして財政構造にメスを入れるべきだ」と強調する。経済ジャーナリストの町田徹氏も「オバマ政権と不協和音が生ずることはやめてほしいとの要求が日本に来るであろう。共和党は過去二年間で日米関係が悪化したことをオバマ政権の失態とたたくであろう。そのため日本が米軍への思いやり予算を削減したり、普天間飛行場移設で沖縄が新たな要求をすることは、オバマ政権の存立基盤を危うくさせる。（米国議会の軍事予算の増加についての厳しさは言うまでもない）したがって米国が必要以上に日本に強圧的な要求をする可能性もある」と言う。日米中の関係についても影響が及ぶ。信田智人国際大教授は「オバマ政権は日本と距離を取りつつ中国に近づいていたが強硬な対中姿勢を求める共和党陣営の声を無視できなくなる。中国がもつ貿易黒字が焦点となり、人民元の切り上げなどを求めていくことが考えられる。中国が矢面に立つ分、日本との距離が近くなるのではないか」と予測する。先の石沢氏は「普天間移設問題を抱え、在沖縄海兵隊のグアム移転費もさらにに負担してもらいたいとの圧力が高まる環境にある。思いやり予算も同じことになるであろう。安全保障も含めてアジアの激動に日本が目を覚まさなければならない時期かも知れない」と警告する。（東京新聞「こちら特報部」より）米国の国際的なリーダーシップの弱体化は日本にとって大きなマイナスである。おそらく日本に対するロシアと中国の強硬な領土対決姿勢もこの米国退潮の機運に乗じたものである。「核」と「軍備力」のベクトルが米国退潮でいっそう際立って日本に向けられる。もはや経済力のみに頼る立場は捨てねばなるまい。

  2010年11月05日

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• 菅総理は典型的なマキャベリスト

  「菅と小沢の闘いはまだまだ続くんですかね」「どうかなあ。結構、簡単にやっつけちゃうんじゃないの、小沢のこと。だって彼のやった通りにやればいいんだもの。簡単なことでしょ。小沢は国に政治資金を出させる仕組みを作って、その金の分配を士切ることで絶大な権力を握った。だったら、小沢をどかしてそこに自分の手下、今なら枝野かやを置けばいい。で、小沢とその手下を干せばいいんだよ。小沢は自分が何年もかけて作ったシステムによって、自らの政治生命を断たれることになる」「そんなにうまく行くかしら。だいたい参議院が過半数にだいぶ足りないでしょ。法案が通らないじゃないですか」「だからって解散なんて絶対しないよ。解散してもいいことないもの。参議院が動かないって言ったって、とにかく予算握ってるんだしね。国民が困ろうが、マスコミが騒ごうが、鼻ほじりながら昼寝してればいいんだ」「品が悪いですね」「あいつは平気だよ。そのうち、風向きが変わるかも知れないしね。公明党とか、みんなの党とかさ。与党の旨みってのがあるからね」「でもちょっと恥ずかしいでしょ。ポストに釣られるなんて」「仙石とかさ、悪知恵が働く奴がいるんだから、うまーく顔が立つようにお膳立てしてやればいいんだよ。たしかなことは、戦後の総理大臣は、かなり強力な存在だということ。辞めないと言い出せば、辞めさせるのはほぼ不可能ってこと」「うーむ」「菅は典型的なマキャベリストだよ。権力を維持するためなら」「でも、その権力で一体何をするんですか」「財務大臣時代に、官僚と大分つきあったらしい。菅みたいなタイプは、教条主義とは縁がない。野武士上がりだから、とりあえず使えるものは何でも使う。その点、小沢とか渡辺善美とかは二代目のボンボンだから、官主導は駄目だとか、何だとか能書をたれるけれど、管は言わない。とりあえず役に立てばいいわけ」「でも、管と経済って、ピンと来ないんですけど。すごく数字と名前が苦手みたいでたびたび、言い間違えていますよね。実はそれほどキレ者じゃないのかも」「まあね。だけどさ、今の一番の問題は、経済がうまくいってないことでしょう。給料が下がる、仕事がない、それは一番響くところだからね。自民党が長期にわたって政権を維持できたのは、何といっても、岸、池田らがアウトラインを描いた産業政策、経済政策が国民生活を豊かにしたからでしょう。だからこの大きな問題を解決すれば、政権は盤石になるはずです」「うーん、確かに。でも、今の財務官僚とか、経産官僚とかに、日本経済をよくしたりできるんですか」「そこがね、大きな問題なんだけど、下手すると大コケにコケるかも知れない。その危険はあるけれど、もし菅政権が二年ぐらい続けば、日本の政治が激しく変わる可能性もあるね。図々しく、口八丁、手八丁でやりますよ」（週刊新潮「福田和也の世間の値打ち」より）「

  2010年11月01日

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• 共同幻想の崩壊

  イギリスは、貴族、資本家階級が富と権力を独占し、彼ら支配階級と労働者階級とがあたかも異民族のようにはっきり分かれている国であり、その上、異民族のスコットランドとウエールズを抱え込み、アイルランドを植民地として成り立っていた。そこにそもそも国家としてのイギリスの無理があったと思われる。近代におけるイギリスの世界進出、植民地主義は、経済力、軍事力もさることながら、そのような無理に追い立てられたためであった。言いかえれば、海外に広大な植民地をもつことで辛うじて国家として保ち得ていた。労働者階級も国内の異民族も、大英帝国の収益のおこぼれに与ることができていた間は、支配されることに甘んじていた。しかし、彼らに対するイギリス支配階級の扱いは、海外の有色人種に対する扱いと少しも変わらず過酷で侮辱的であったから、その恨みつらみは蓄積していった。従って無理が露呈するのを防いでいた海外の植民地を失うと、イギリスという国家にその国民をつなぎとめるものが何もなくなってしまったのである。北アイルランドのテロはご承知の通りだし、そもそも労働者階級は資本家階級と同じ国家の一員だという意識をもっていない。我々から見ると、イギリスの労組はなぜあんなにストをやるのかあれでは国をますます疲弊させ、結局自分たちが損をするではないかと不思議だが、彼らは国の疲弊で損をするのは「あいつら」であって、自分たちではないと思っているのである。要するに、国家を成り立たせるのは、強い軍事力をもつことでも戦争に勝つことでもなく、国家を自分と多かれ少なかれ同一視する国民の共同幻想であり、国家を滅ぼすのは、外国の侵略ではなく、国民がそのような共同幻想を失うことである。国民がそれをいったん失うと、もうどうしようもないことは今日のイギリスの状態が証明している。イギリスが救われる道は、かつての日本のように戦争にでも負けて、北アイルランドがアイルランドの鞘に収まり、スコットランドとウエールズが独立し、財閥（貴族）解体と農地解放ぐらいの根本的改革が行われる以外にはないのではないか。逆にもし日本が大東亜戦争に勝っていたならば、今頃は朝鮮民族の反逆に手を焼き、軍閥や財閥が威張り散らし、彼らに対する国民の反感が、国家を支える共同幻想の崩壊を招き今日のイギリスのようになっていたかも知れない。ソ連の脅威よりも、日本の軍事力の強化が日本を内側から掘り崩す危険のほうが恐ろしい。（岸田秀「不惑の雑考」より）

  2010年10月31日

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• アメリカの虎の尾を踏んだ小沢一郎

  「小沢は非情な覚悟を微妙に語ろうとしているように思える。つまり、法廷での田中角栄を見つめながら、政治権力と心中する覚悟が自分にあるだろうか、を６年間問い続けていた。小沢は政治権力が大義のために法と激突することが必然であること、その際に、自分は政治家としての責任を選ぶか、一市民として法の範囲にとどまり安全を選ぶか、を考えていたはずである。（中略）ひよっとしたら彼は政治のために死ぬことを覚悟している唯一の政治家ではないか。この死は、『お国のために死ぬ』などというお調子者の政治屋の言ではなくて、汚辱にまみれ、不名誉の中で、たとえ角栄のように野垂れ死にしても政治の側にたつということである」（『エロチックな政治』新井将敬著）この発言は自民党の論客として知られ、日興証券の不正利得事件で逮捕される直前に縊死した新井将敬氏のものである。田中角栄の法廷闘争を傍聴し続けた小沢の姿勢に、政治権力と法の相克という問題を読み取ったのであろう。田中元首相が失脚したロッキード事件は「田中の中東やロシアへの資源外交や米国抜きの対中接近を危惧した米国支配層が仕掛けた」とする陰謀論が有力である。角栄氏と同様、小沢一郎の失脚も「米国の逆鱗に触れたこと」とする声がある。鳩山首相退陣直後に米国の知日派論客「ニューアメリカ財団」副理事長のスティーブ・クレモンズ氏が以下のように語った。「普天間基地移設問題で県外移設を推進したのは小沢氏と鳩山氏だ。二人はルース駐日大使や複数の米国議員を通じてホワイトハウスと折衝を続けていたようだが、オバマ大統領はそのチャネルを突然切り捨てた。米政府中枢には『日米中正三角形論』を掲げる小沢氏や、『東アジア共同体構想』を唱える鳩山氏に対して強い警戒感を抱く者が多くいた。二人とのパイプを遮断したことには、一気に政権を窮地に陥れる狙いが見え隠れする。二人の失脚はホワイトハウスの計画だったのではないか」ロッキード事件同様、明確な陰謀の根拠はない。しかし、移設問題では日本側からも「米国の意向」という言葉が頻繁に持ち上がっていたのは紛れもない事実だ。鳩山氏は首相辞任後に、「移設は辺野古しかないという思いが役所に、そして米国にもあった」と語っている。小泉政権下の０６年に合意された辺野古移設は、日本の防衛族政治家、外務・防衛両省と米国のネオコン軍需派の間で取り交わされたものである。当時の防衛事務次官だった守屋武昌氏は「日米の利権が絡んでいた」と後に明かしている。県外移設となれば、滑走路建設など日本側当事者たちに転がり込む利権（ゼネコン・建設・港湾など）がすべて泡となる。そこで「米国が怒っている」という宣伝がマスコミを通じて繰り広げられ、その圧力と、政治資金問題の執拗な追及で鳩山政権はコントロールを失ったという「国内親米派主犯説」も有力である。アメリカの虎の尾を踏んだ小沢氏の今後はもはや、田中角栄と同じ道筋をたどることであろう。小沢を支える人々は本当にこの巨悪に堪えられるであろうか。凄まじい権謀術数の世界を冷静に、計算し尽くして切り抜けられるであろうか。ゆく秋や何をおそるる心ぜき　　　久保田万太郎

  2010年10月30日

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• 三井環氏の告発について

  小沢一郎捜査では検察はいくつものタブーを犯している。政権交代が視野に入った時期の総選挙前の秘書逮捕、洪水のような西松献金疑惑のリーク、相変わらずの小沢個人の波状人身攻撃など。ついに小沢は民主党代表の辞任に追い込まれた。普通には考えられないことである。検察も選挙前には配慮するというのがこれまでの不文律なのである。自民党の長い一党独裁になれた検察の露骨な民主党政権潰しであったが、それでも民主党が選挙に勝ち、小沢・鳩山体制が確立すると、政治資金収支報告書の期ズレというような微罪で国会議員になっている元秘書、石川知裕を逮捕したのであった。水谷建設からの裏金について自供させ、小沢自身に上りつめようとした。しかし、これこそ、検察お得意の思い込みで、いともあっさり崩れてしまう。本来ならばここで検察の総ざんげである。トップが責任をとって当然の展開だ。しかし、彼らはその後も小沢を追っかけ、小沢＝極悪人という世論を誘導し、ついに検察審査会に「強制起訴」を出させるに至る。まさに犯人ねつ造検察の面目躍助ではないか。「検察の裏金問題」を告発をしようとして、逆に提訴され有罪の執行を受けた元大阪高検公安部長三井環氏は「総選挙前の小沢秘書逮捕は自公政権がやらせたことだろう」と断言する。検察は三井氏が告発した裏金問題で激震が走ったときに、自民党小泉政権に助けてもらったのである。裏金は「事実無根」と当時の森山真弓法相が大ウソ会見をして、疑惑にフタをしたからである。（法相が女性に多いのもこういう時のためかな）その借りを返すために、総選挙前に小沢潰しの国策捜査に出た。三井氏はそう見ている。司法・検察にしてみれば、小沢に権力を握られるのが一番困る。なぜなら田中角栄以来の検察の自民党官僚派閥に依拠した「秘密の暴露」が一挙に明されるからである。現菅政権も小沢憎しでは司法・検察と相通ずる。だから検察のでたらめを傍観し、小沢潰しに便乗している。その証拠に村木事件であれだけの不祥事が噴出しているのに、菅政権の追及の手が緩いこと。自公も同じく、国会では全然話題にならない。菅民主、自公が検察と裏で手を握り合っているのであろう。なんと嘆かわしいポンチ絵であろうか。いまこそこの検察特捜部の真の存在理由を、追及すべきであろう。中国や北朝鮮じゃあるまいに。

  2010年10月29日

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• 思いやり予算の維持

  政府は２２日、在日米軍駐留経費の日本側負担（思いやり予算）は、２０１１年度以降も当面、本年度と同程度を維持する方向で国内調整に入った。厳しい財政状況のため削減を検討してきたが、中国との漁船衝突事件をきっかけに、日米同盟強化のためには大幅削減は望ましくないとの判断に転じた。ただ、米国はさらに増額を求め、日米協議は難航している。菅政権が思いやり予算を当面は現状維持とする方向になったのは、軍事大国化する中国という存在に加え、米国と沖縄県に配慮しなければならない現実に突き当たったからだ。民主党の野党時代は思いやり予算に反対してきた経緯があり、ここで重大な方針転換になる。（東京新聞「米・沖縄に配慮の現実」）菅政権の重大な方針転換に対して、国会でも自民党や公明党の攻撃が少ないのも異様である。あれほど「マニュフェスト違反」に対して口汚い論難をあえて続ける自公連合が、らちもない「蓮舫大臣の国会内撮影」や「仙石官房長官の柳腰発言」などでお茶を濁しているのに、アメリカの軍事編成の「思いやり」強化については殆ど口を閉じている。自民党時代の米軍と沖縄とのずぶずぶの癒着関係に対しては鈴木宗男氏の「官房機密費による沖縄知事選への介入」告白ですでに証明済みである。この度の「円高誘導」によるアメリカの財政赤字圧縮政策でも、日銀・財務省が「思いやり」、介入を諦めた由。日本政治の相変わらずの「対米従属」を演じている。菅政権がいかに「小沢一郎失脚」や「鳩山由紀夫おとしめ」の米国戦略にびびり、方向転換を図ったかがよくわかる。いまや自民党時代を上回る「米国・官僚従属政権」になり下がっている。そこを中国の政権当局が狙いすまして「尖閣諸島潜入」事件を起こしたのであろう。事実関係をみれば、アジアの近い将来、米中の核大国による軍事・経済の新しい冷戦時代が始まろうとしている。その狭間に置かれた経済大国・日本は否応なく両国の恫喝と懐柔のあわれな奴隷と化して、恥ずかしい境遇にさらされる。これでいいのだろうか。もうそろそろ自尊自衛の自立国になるべきだ。

  2010年10月26日

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• アメリカ金融資本のアジア制圧

  アジア通貨危機のはらむ問題を、アメリカを中心とするマネー循環のなかで捉えなおしてみると、皮肉なことに、日本発のマネーがアメリカを経由してアジアに還流し、通貨供給量を膨張させたあげくの「危機」であったという事実に突き当たる。ヘッジ・ファンド自体が、もとをただせば日本の異常な低金利を活用して、投機資金を調達しているのである。著名な投機家ジョージ・ソロス氏が、日本開発銀行にまで融資を打診したという話も伝えられている。さらに重要なことは、アメリカの政治力がこうした投機筋の動きを支援したという経緯であろう。９７年の春にヘッジ・ファンドが動きはじめ、タイバーツへの売り投機を開始したとき、タイ政府はバーツの空売りを締め上げる作戦に出ようとした。ヘッジ・ファンドが空売りしたバーツを買い支えて、ヘッジ・ファンドが高値で買い戻さざるを得ないようにしむけたのである。こうしたタイ政府の市場への干渉に、市場の論理をふりかざして立ちはだかったのが、米ルービン財務長官であった。タイの経済危機に対する政府干渉を、特殊アジア的な資本主義（仲間内資本主義）と矮小化し、ウォール街の力ずくの資本移動の論理を押し通すのであった。IMF（国際通貨基金）が、それ自体、ドル基軸体制を前提として機能しているという現実も見逃せない。タイの通貨危機に関してルービン財務長官の取ったスタンスは、結果的にタイ経済をIMFの傘下に導くものであった。９７年の危機にあたって、タイ、韓国はIMFの傘下に入り、インドネシアではその圧力のもと、スハルト長期政権が倒れた。そしてその一方で、これら東アジア、東南アジア各国では、アメリカ系資本による現地資本の「底値買い」が進んでいる。業種的には携帯電話などの情報通信関連、建設不動産関連などが、新たに米系資本の傘下に入ろうとしている。アメリカによるアジア経済制圧の方針は、日本の直接投資にも大きな翳をおとす。たとえば８０年代に、マレーシアのマハティール首相が提唱したEAEC構想は「東アジア経済協力体」として、円経済圏への展望を示したものであった。この構想によって日本は円の経済圏を確立し、円の対ドルレートを相対的に安定させ、世界最大の債権国としての本来的な対外投資を継続できたのではないか。しかし、この構想は日本がASEANとアメリカの板挟みにあうなかで頓挫した。円経済圏の創出は、アメリカの死活的利害に関わるため、ベーカー国務長官がときの宮沢首相に強力な圧力をかけ断念させたのである。EAECは太平洋を分断する、APEC（アジア太平洋経済協力機構）こそが双方の利益にかなう、これが一貫したアメリカの立場であった。（吉川元忠「マネー敗戦」より）以下は吉川氏の痛切な訴えであり、遺言である。……２０１０年、この年が人口動態の変化からみたアメリカの消費と弁済の「危機」のピークとなる。そしてそのときのアメリカを取り巻く資金状況によっては、この危機が顕在化する。それがもし、ドルの暴落となって表れたとき、今度は日本経済にバブルのような防壁はない。壮絶なババ抜きが起こる。これからの日本経済は、日米二国間の健全な経済関係のためにも、貿易・マネーの両面にわたって「ドル離れ」「アメリカ離れ」を中・長期的な目標に掲げるべきであろう。２０１０年には、奇しくも、日本が８０年代はじめに大量に購入したアメリカ国債（最長期・３０年もの）が償還期を迎える。償還を受けて手にしたドルは、さて今度はどのような投資に向けられるのだろうか。「償還」ではなく、大部分がドル債の単なる「乗り換え」になってしまっては、日本はドルの鎖のなかに国富が流出する構造から永遠に抜けられないだろう。……まさにアメリカの泥舟の馬鹿な乗組員として溺れていくのかが問われる。

  2010年10月25日

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• 司馬遼太郎の言葉「日本は東アジアから離れている」

  日本は人口が頭打ちになり、成長率が伸び悩んでいる。だから「東アジア共同体」を作って、中国や韓国の活力を借りるべきだ。いっそのことEUみたいに一緒になったらいいじゃないか、ということを言う人さえいます。とんでもないことだ、と司馬さんが生きていたら言うと思います。司馬さんは、「日本は東アジアから離れている」とはっきり言っていました。単に島国だからではありません。文化的背景が中国や朝鮮半島とはまったく異なるから、一緒になっても喧嘩になるに決まってる、と言いたかったのでしょう。中国・朝鮮を規定するのは、儒教文化です。では儒教とは何か。一言で言えば、人間のあくなき欲望を、モラルで上から押さえつけるやり方です。裏返せば、それだけ人々の欲望が強い。一方、日本社会を規定するのは、「世間」でしょう。山がちで田畑は狭く、限られた資源を分かち合っていかなければ暮らしていけない。そこから「ムラ社会」のルールが生まれた。確かに息苦しい面もありますが、一面では助けあって生きる知恵でもあったのです。農耕文化においても、中国と日本はまったく異なります。「中原」と呼ばれる中国の平野部は、小麦文化圏です。エネルギー大量消費型で、土壌や水を使い果たす。それに対して日本の稲作文化は、本来省エネ型です。肥料を大量に使うのが小麦耕作の最大の欠点ですが、稲は肥料がなくても育ちます。稲作文化は、人口密度の高いところと相性がいい。限られた土地の生産性を高めるためには、人々の和と工夫が求められる。その習性が、日本社会の根底にあると思います。その延長線上に司馬さんは、「なぜ東アジアのなかで日本だけが近代国家なり得たか」という問いの、一つの答えを見ていたような気がします。明治政府が殖産興業に成功したのは、日本人のもつ協調性・創意工夫の精神が、資本主義とマッチしていたからでしょう。産業が興った結果、人口が爆発的に増え、食いぶちを求めて大陸アジアに攻め込んでいく、という愚かしい副作用をもたらしましたが。司馬さんは、日本でインダストリーが発展した理由として、絶対政権が成立したことがなく、常に権力が分立していたことを挙げている。律令時代の天皇制は、地方に割拠する豪族たちのバランスの上に乗っていた。江戸幕府も、外様大名という「野党」をかかえていた。その結果、権力の相互監視が生まれ、官僚の腐敗は起きにくかった、というのです。中国はどうでしょう。儒教的な抑圧のもと、皇帝の専制と強固な官僚体制がつづいてきた。「反対勢力がないから、その体制は自らが朽ち果てるまで倒れない」。だから「儒教的中国体制というのは、もともと腐敗を原理としている」「華僑だけでなく、近代中国も商業だけでしょう。商業は確かにうまいけれども、商業が資本主義なのかといえば、必ずしも近代資本主義ではない」（「日本、中国、アジア」）バブル経済の裏で、共産党幹部の汚職が横行している今の中国を、まさしく予言しています。真似してはいけません。（養老孟司「インダストリーは汚職する国家では興らない」より）日本の戦後の「官僚と政治」の腐敗はまた別の力学によって起こされたのであるか。またしてもアメリカか。

  2010年10月24日

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• NTT分割による弱体化

  １９９０年に行われた日米構造協議関連のある会議では、元USTR（アメリカ通商代表部）次席代表が「日本はハイテクでアメリカを脅かしている。その力の源泉になっているのがNTT研究所で、その下でNECや富士通などがコンピューター産業を発達させてアメリカの脅威になっている」と発言した。これはアメリカの本音をうっかり漏らしたものですが、そのとき既にNTTを解体して弱体化させたい、という意図がありありと感じ取れました。その後、ご承知のように、１９９５年にNTTの分割・再編問題が沸き起こります。そのころ、NTT分割問題は、もっぱら国内における公正な競争、つまり独禁法問題という観点から論じられていました。「NTTは図体が大きすぎて、ベンチャー企業などの新規参入を阻んでいるからけしからん。分割してしまえ」という議論です。しかし、その論議には、背後にアメリカの対日戦略が絡んでいるという視点がまったく欠落していたんです。実は１９９５年の春ごろからNTTがFTTH国際標準化に向けた技術戦略を本格化させるのですが、その時期に「NTTを分割・再編すべきだ」という議論が活発化したのです。アメリカは時の日本政府に「年次改革要望書」などを通して圧力をかけてきたのです。世界に冠たるNTTの高度な技術開発力と、それを前提とした国際標準化戦略を脅威に感じたアメリカは、NTTの分割を仕掛け、その弱体化を狙ってきたのです。FTTHとは光ファイバーの家庭への普及推進技術のことです。NTTはヨーロッパの通信会社６社と連携してこの技術仕様の国際標準化に向けた努力を開始し、早くも１９９８年には、ITU規格に承認されたのです。NTTがヨーロッパと組んだ華麗なる国際標準化の成功にアメリカは激怒したのです。アメリカは当時のゴア副大統領が推進役だった「情報スーパーハイウェイ構想」がNTTに遅れを取ったこともあり、日本の成功に嫉妬して思いもよらぬ批判を浴びせてきたのです。「日本のやりかたはアンフェアだ」と。アメリカの強硬な圧力で１９９７年にNTT法が改正され、翌１９９８年に固定電話部門はNTT東日本とNTT西日本の二つの市内電話会社と、NTTコミュニケーションズという長距離通信会社に三分割されてしまったのです。NTT分割は、NTTの研究開発力を弱め、光ファイバー網の整備などにも悪影響をもたらしました。技術力を支えてきたNTT研究所は分割を免れましたが、研究開発費の確保には非常に苦労することになりました。これがアメリカの思う壺だったのです。公取委などを誘導して「独禁法」にからめて分割・再編をうながすという戦略です。要するに日本には絶対に技術的優位性を許さない、絶対に飛行機をつくらせない、ロケットも、衛星も、暗号技術もダメ。少なくとも技術に関しては、GHQ的な支配がまだ続いている。日本人がつくろうとすると「お前には絶対につくらせないぞ」と、そういう世界になっているんです。明治以来、営々と築かれてきた日本の電気通信網をズタズタにしようとするアメリカの発想に、私は我慢ならない気持ちです。私はNTTの人たちに、「政府持ち株の開放と会社法改正、とくに三角合併には気をつけろ」と警告しています。いかに危険であるか、分かっていないようですが。（石黒一憲「NTT解体という謀略」より）

  2010年10月22日

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• アメリカイニシアティブ

  「日米構造協議」という名称自体が日本側による苦心の意訳なのである。英語の原文はStructural Impediments Initiative(SII)となっており、正確には「構造障壁イニシァティブ」と訳すべきものである。アメリカが日本の市場に参入しようとする上で邪魔になる構造的な障壁をアメリカ主導で取り除こう、という意味である。「主導権」という意味の英単語initiativeを日本側があえて「協議」と誤訳しているのは明らかに政治的意図がある。アメリカ政府はこの「イニシアティブ」という誠に便利で奇怪なメカニズムを駆使して『年次改革要望書』を歴代の日本政府に突き付けることによって、機械仕掛けのように望むものを手に入れてきた。日本は日本の構造改革という美名の下にアメリカ型大改造を強いられたのである。アメリカはなぜ、日本にアメリカ型の経営制度を導入するよう圧力をかけているのか。次の要求事項を読むとよくわかる。・取締役の条件として特定の国籍や、その会社の社員に限るといった規約を禁止せよ。・電話やビデオ会議や書面による取締役会の決議を認めよ。・電話やファックスや電子的手段による株主総会の投票を認めよ。これは日本企業の社外取締役に就任したアメリカ人が、アメリカにいながら経営をコントロールできるようにしようとしていることを意味する。将来、ハゲタカ・ファンドが日本の企業を乗っ取ったときのことを見越してあらかじめ手を打っているのだ。２００１年版になると、そのあたりが段々露骨になってくる。・企業買収が成功した後に、抵抗している少数株主に彼らの保有する株を強制的に提　供させることにより、被買収企業を完全に私有化できるようにせよ。・系列会社や株式持合いの関係にある会社の人間は社外取締役有資格者から除外せ　よ。日本人が伝統的なお家芸（系列や株式持合い制度）を駆使して社外取締役制度が尻抜けになってしまい、アメリカ人が入りこむ余地が無くなるのを心配しているのだろう。次のような思わず苦笑してしまう項目もある。・弁護士や会計士が誤った査定を行った場合、彼らの法的責任を厳しく追及せずに、　重役会議に責任を課すようにせよ。書いている当人たちの顔が浮かぶではないか。アメリカ通商代表部の『外国貿易障壁報告書』２００２年版をあわせて読むと、事の次第が段々はっきり見えてくる。アメリカ型の社外取締役制度を日本に導入させる理由は「企業幹部が株主より会社への忠誠を優先させることがM&Aの申し入れを早い段階で拒絶することにつながるため、こうしたことを減らす」ためだとはっきり書いてある。国際会計基準を日本に導入させる狙いのひとつには、外資による日本企業の買収を妨げる系列や株式持合いの解消を促進し、外資が株を取得するチャンスを増やすことも含まれているということまで書かれている。M&A認可の審査を迅速化するために公正取引委員会の人員を増員させたり、M&A取引に必要な弁護士や公認会計士の不足を補うため、外国人の弁護士や会計士が日本に進出しやすくさせることも既に日本政府に提案したという。まことに手回しがいい。ちなみにM&Aというのは投資銀行だけでなく、コンサルタント会社や会計事務所や法律事務所のみんなが儲かるウォール街の一大産業なのである。（関岡英之「拒否できない日本」より）

  2010年10月17日

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• 米中の谷間で自滅するのか

  かつて湾岸戦争で約１兆８０００億円（１３５億ドル）の戦費……アメリカの財布のどこに入ったか、ついに分からない……を負担して、感謝もされずに侮辱されたあの日の屈辱を、日本人はその後も再体験し続けている。国連分担金の額の高さで常任理事国入りができると思いこんだ外交の甘さは、ピエロ役の再現である。退官した日本人外交官が、もう一度生まれ変わったらという雑誌の質問に「そうねえ、やはり外交官だね。ただし、日本と交渉する外交官になりたいね」と答えた。同席したもう一人の外交官は「私も同感ですね。日本には外交上の戦術、戦略がないから、交渉相手として実に楽なんです。いまより敗戦直後の方が、むしろ独立国としての気概がありましたよ」と応じた。勿論、自嘲気味のジョークである。西尾幹二氏は「外交がないというのは国家意思がないということである。日本は経済の力で外交をやっているが、これは間違いであり、国家意思と連携しなければ、早晩経済も立ち行かなくなるだろう」と喝破する。冷戦終結が明らかな頃、金融大国にのしあがってきた日本に対し、アメリカは軍事的疲弊の極にあった。第三次大戦の勝者は日本であったといまいましげに爪をといでいたのである。冷戦後彼らは第一の標的に、日本を指名した。日本の経済には牙がないとも西尾氏は言う。経済が国家の権力欲や利己心を表現する政治の表現にならない限り、経済は自分を維持する事さえ難しい隘路に次第に追い込まれるだろうとも。ソ連との戦いにケリをつけた後のアメリカは、１９８９～９０年度の日米構造協議に於て「第二の占領政策」と言われる強攻な経済制裁に打って出た。日本は２００５年の「郵政民営化」まで続くこの対日戦略の獰猛さに気付くべきだった。同じくＥＵが冷戦後急速な統合に向かって、市場を形成したのも急増する日本の生産力を睨んでの「西欧防衛」の戦略であった。当時の雰囲気を「新しい黄禍論」だと言う日本経営者がいる。日本人独特の集団思考のふるまいであり、外交オンチである。アメリカの日本再占領を思わせる一連の構造改革は、日本の「文化」を否定する破壊工作とさえみなされた。系列における株の持ち合い、談合、行政指導、労使協調、年功序列、終身雇用といった無言の了解のもとに行われる日本的な「和」の経営法を一網打尽で破砕した。「市場競争原理」とか「グローバリズム」の美名の下にアメリカは、一貫して日本を第一の敵国とみなしてきたのである。「郵政民営化」はこの１５年戦争の最終段階に位置づけられる日本の「実行案件」なのであり、小泉・竹中コンビはその操り人形に他ならない。ここに至ってようやく日本経済も牙を磨いて、ときに戦う必要があると気がついた。アメリカに再占領され、見放され、世界のグローバル経済のなかでもう一度戦う姿勢を見出したというべきである。さらに日本経済にとって強力なライバル「中国」が、台頭してきた。その経済には牙がある。中国はその牙を軍事にも備え縦横無尽に振り回しているのだ。いまや世界第一位の外貨準備を備え、ＧＤＰもアメリカに次ぐ第二位であり、ほどなく世界一の経済大国になるのは間違いない。核をもつ軍事大国でもある。まことに脅威である。日本はいまや米中の狭間で、徹底的な外交の力が試される。勿論軍事力も試される。アメリカの国家意思は奈辺にあるか。アメリカは中国の「共産党独裁」の政治体制に内包する人権問題には、結局目をつぶり、支配層の利権集団（党・軍・財）と手を組むという２０世紀初頭にも試みた大陸政策の伝統に回帰することになるとの観測もある。アメリカはアジアでは二度ともう戦争はしまい。中国とアジアの利権をお互いに譲り合う二極構造を守るであろう。日本はなすすべもなく自滅するのか。相手の無言のふるまいの「メッセージ」に神経を使え。先手を打て。

  2010年10月15日

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