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番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

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視聴率問題-その後

◎『視聴率問題』-その後。


今年(2004年)5月20日、日本民間放送連盟(民放連)の諮問機関
「視聴率等のあり方に関する調査研究会」が報告書をとりまとめた。

昨年秋に発覚した日本テレビのプロデューサーによる「視聴率操作事件」を受けて、
「視聴率がどうあるべきか」、「視聴率以外の指標がないか」といったことを12月以来検討を重ねてきた。

その概要が民放連のHPで公開されているが、(「視聴率等のあり方に関する調査研究会」報告書概要
その中味のなさ、具体性の欠如に、予想はしていたもののガッカリである。
現状を解説し、分かり切ったコメントを付け加えただけだ。

例えば、事件の重要性を鑑み、報告書はこう述べている。

「すべての関係者が視聴率調査の信頼性を損なわないよう肝に銘じておく」

肝に銘じる・・・・。
こんな、関係者にモラルの徹底を呼びかけるための「調査研究会」ではないはずだ。
このレベルのことは、関係者それぞれの組織、そして個人に任せておけばいい。

視聴率にかわる指標を模索し、その端緒をひらくのが、この調査研究会の使命だったはずである。


調査委員会が設けられた大きな目的のひとつに「視聴質」がある。
視聴率にかわる指標としての「視聴質」という概念は昔からある。
日テレプロデューサーの事件を受け、この調査委員会がどのように「視聴質」を具現化するか、
それをぼくは期待していた。淡い期待だが。

「視聴率にかわる指標を短期間で作るのは困難」

淡い期待に対する、テレビ局側の回答が、まずこれである。困難なのは分かり切ったこと。
その困難さを分かったうえで、どうすればいいかを話し合ってきたのではないのか、5ヵ月間も。

それに対し、有識者はこう提言している。

「この現状を少しでも改善するために、
新しい番組評価基準の策定に向けすべての関係者が努力すべきである」

「肝に銘じる」というのと同じ思考での「努力すべきである」という言葉。
この程度のことを「報告書」としてまとめることの、なんとムダなことか。

結局、「調査研究会」は、具体的なものをなにも生み出さなかった。
議論の結果に必ず具体性を帯びさせる、そんな強い姿勢がこの「調査研究会」にはあったのだろうか?
視聴率にかわる、「視聴質」という指標を作ろうという気概があったのだろうか?

この「報告書」を読む限り、疑わざるを得ない。


有識者からは、こんな意見も出されている。

「視聴率の高い番組制作を追い求めるあまり、番組の内容が低俗化する危惧がある」

「低俗な番組を流せば視聴者は飛びつく」ということか。
視聴者は低俗を求めているというのだ。
そのように有識者や番組制作者が思っていること自体、視聴者を愚弄しているし、
“低俗”の定義もなしに、報告書という公的性格を持つ文書にこうした表現を使うのはいかがかとも思う。

有識者のアタマの中では“視聴者=低俗”という等式ができているのだろう。

しかし、テレビ開局以来半世紀以上にわたって“低俗”な番組作りにきゅうきゅうとしている現場が、
有識者の言う“高尚”な番組を作れるか?

大大大疑問である。(2004年6月)





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