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よく例に出している床屋さん。
お客はおおむね1.5時間で入れ替わるからいろんな情報がはいる、 とされるが、果たしてそうか。 仕事が部屋の中。一日中。それも頭限定の仕事である。 だから、部屋内の情報。それも来店されるお客との耳より情報。 見るのも、関心も頭、それも頭髪が中心。 それにかけっぱなしのTVといったように、 きわめて限定的、部分的なのである。 昔2年ほどある理髪業界の経営指導をしたことがある。 その体験で言えば、この業界は、 外の世界を見る機会が少ない業界の典型である。 それに、お客を物理的に、かつ心理的、両面で 縛る典型的な仕事といってよい。 似た仕事にお医者さんだってそうじゃないか、という声もある。 確かに個人病院の歯科医は、まさに同じである。 いずれにしてもだから問題だ、 といいたいのではない。 こうした一種の仕事の特性を踏まえて対応したら、 すごいことになりますよ、と言いたいのだ。 床屋さんの場合で、今度はお客様の方から見てみよう。 1時間~1時間40分の拘束は、手錠をはめられているのと同じ。 それに剃刀でひげを剃られる時間は、手術台に乗せられた患者の心境。 なにせ刃物を持った人にじっと見下ろされているのだから。 あの1時間~1時間40分の拘束が如何にお客様にとっての緊張か辛いか、 それをしかたがないこととして我慢しているお客さんの立場が理解できていない。 繰り返すが、いわば手錠をはめられて、剃刀などの刃物を持った人に じっと拘束されているお客の苦痛がイメージできない。 なぜか。答えは簡単である。 床屋さんは床屋に行ったことがない。 客体験がない。 自分の頭は、家族か弟子が刈る。 また地域の他の床屋さんに刈りに行く人はない。 こうした話をしたのは、S62年5月、長崎市の清流荘で 理髪学会の全国大会が行われたときの基調講演。 この頃、1000円床屋が出現、いわゆる「床屋離れ」が、 この業界を襲った頃である。 千人を超す理容師の皆さんに、 床屋離れとは、床屋が離れたのではなく、 お客が床屋から離れたことを言う。 だから、離れた理由を、こちらが考え、議論し 多数決で決めてもしょうがない。 これは、これ以外にないのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.02.08 14:24:57
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